表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/42

9.

レビューをたくさんお願いします

私はポケットを探った。


前世なら… こういう時はスマートフォンを取り出して、パッ!と検索しただろうに。


‘ちぇっ。’


正直、美術館にはたくさん行った。


お金がないのにカタログをたくさん買って集めた。


それでも、必要な時に美術史の本や作家の伝記、さらには毎月出る展示会の雑誌まで探して読んだ。


それだけ手間をかけて!


知識が必要なこの時に、その簡単な記憶が一つも浮かばないなんて?


確かに見た。


‘何かのフリーマーケットだったような気がする。’


たった3万ウォンで買ったドローイングがルネサンス時代の作品で… それでどれだけ儲けたんだっけ?


ちくしょう!


昔読んだ本でもない。


わずか2、3年前?


それなりに注意深く見たと思ったのに!


‘これが思い出せないって?’


まあ、覚えていないこともあるだろう。


人間はコンピュータではないし、どうやって読んだ本を全部覚えるんだ。


頭ではそう思っていても。


でもなぜか。


まるで自分のお金を失ったように… 胸が苦しいんだ!


‘お前の絵か? なんでお前が騒ぐんだ?’


無理に自分を慰めようとしても。


“……”


詰まった胸は良くなる気配がなかった。


まったく読まなかったならともかく、確かに見ておいて記憶できないから逃してしまうなら…!


‘それが金を無駄にするってことだろう!’


ああ。


私はこんなに欲深い人間だったのか。


前世の私は… ただ文章を書ければそれなりに満足して生きる人だったのに。


そんな私がどうしてこうなった?


でも、その考えも一瞬で…


‘何だ、欲が多いといけないのか?’


突然衝動的になってしまった。


そうして5分ほどショーをしても。


“……”


前世に読んだ本の内容がなかなか思い出せなかった。


ちくしょう。


でもこのまま諦めるわけにはいかない。


‘記憶が曖昧なら… もっと鮮明にしてやる。’


与えられた情報はルネサンス時代、またはその直後の作品ぐらい。


イタリア出身の作家だったなら何とか思い出せただろうが、ぼんやりとしか覚えていないということは辺境の画家である可能性が高いだろう。


‘よし、やってみよう。’


決心がついた私はカウンターに堂々と歩いて行き言った。


「すみませんが、こちらからあちらまで、すべての本を包装してください。」


家に帰る車の中で私はずっと本を手にしていた。


今日買った本は約30冊。


全部ルネサンスに関連したものだった。


どうあれ読もう。


思い出すまでひたすら読むんだ。


‘それだけは自信があるからな。’


精読する必要はない。


作家や作品名中心に、手がかりになりそうなものを素早く見ればいい。


そして気になるものがあれば……。


‘うーん、これは興味深いな。’


ちょっと待て!


今、楽しみで読んでいる場合か?


心ではそう決めても。


‘前世では絶版になって手に入らなかった本が… ここにはたくさんあるな。’


読書好きの血が流れているせいだろうか。


活字を読むとすぐに夢中になってしまった。


そうして車の中でだけで2冊を読み終えたころだった。


「坊ちゃん、着きました。」


「もう?」


「はい。実は5分前に到着しましたが、本をあまりにも熱心に読んでいらっしゃったので……。」


「あ、ごめんなさい。」


「いえ、大丈夫です。」


ワードプロセッサーに数十冊の本まで。


荷物が多かったので、運転手のほかにも数人のスタッフが出て手伝わなければならなかった。


あまりにも騒々しいせいだろうか。


「これ全部何?」


ソンスヒが玄関まで出てきた。


次々と入ってくる本を見て彼女は目を丸くして尋ねた。


「これ全部買ったの?」


「はい。気になることがあって。今回もらったお金もあるし、大胆に買いました。」


「何がそんなに気になるの?」


彼女は返事を待つ代わりに本のタイトルを見た。


「全部ルネサンスだね?」


「はい。」


「今度は美術まで勉強しようとしているの?」


美術というよりお金のため…うん。


「今日ソウル大学の美大に行ってきたんだって?」


「どうしてわかったんですか?」


「学科長先生が直接電話をくれたの。目を輝かせて絵を見ていたって。」


「あ……。」


「絵は買えなかったんだって?」


「はい。作家のお兄さんと連絡が取れなくて。」


「学科長先生がずっと連絡を取ってくれるって言ってたけど?」


玄康だけが受けられる特別待遇。


‘便利ではあるが。’


こんなことに慣れてしまうと特権意識に染まってしまうだろう。


‘気をつけよう。’


私が短い決意をした直後だった。


「お母さんも見た絵だよね?」


「うん。見たことあるよ。」


「お母さんはただ通り過ぎただけなのに、ジフンはしっかり選んだんだね?」


「なんとなく気に入ったんです。」


「おじいさんにはそう言ったらだめよ。」


「え?」


「最初に見せろって言ってお金までくれたじゃない。なぜその作品が気に入ったのか、ジフンなりに説明できるようにしないと。できる?」


パク会長が怖くてそんなことを言っているわけではないだろう。


子供たちのためなら… 義父の前でも自分の意見を言う女性だ、ソンスヒは。


そんな彼女がそう言う理由?


「それ自体が勉強になりますね。」


私の言葉にソンスヒは大きな笑みを浮かべた。


「そうね。どうしてこの絵に惹かれたのか考えて説明すること自体が一番いい勉強になるわ。」


「それじゃあ、お母さんも勉強しているんですか?」


「……?」


「おじいさんが毎日仁寺洞に行けって言ったじゃないですか。」


「うん。そういうことだね。」


話が逸れてしまったが。


むしろ良かった。


聞きたいこともあったし。


「お母さん、最近骨董品屋にたくさん行ってますよね。そういうところで宝物を見つけることもあるんですか?」


「宝物?」


「例えば、まだ発見されていない名画とか。」


子供特有の好奇心だと思ったのだろうか。


ソンスヒが妙な笑みを浮かべた。


「それがなぜ気になったの?」


「本を読んでいると、似たようなことがよくあるようで。」


「そうね。たまにあるわね。でも、ジフン、みんな考えることは同じなの。」


「……。」


「隠された宝物を見つけようと、みんな仁寺洞に集まるの。」


「じゃあ、いいものはとっくになくなっているんですね?」


「そうね。」


「それでも仁寺洞に行く理由は何ですか?」


私の質問にソンスヒはしばらく考えているようだった。


幼い息子だもんな。


どこまで説明するべきか、迷っているのだろう。


「外国では大人が亡くなるとフリーマーケットをするの。遺品を無闇に捨てることができないから、必要な人に安く分けてあげるのよ。」


「そうなんですね。」


「それに比べて韓国にはそういう文化がほとんどないの。だから遺品をどうすればいいのか、処理に困ることが多いんだけど……。」


「そういう時に仁寺洞を訪れるんだ。」


「そうよ。鑑定も兼ねて、遺品を持ってくるの。」


「じゃあ、放置された悪性在庫よりも… 最近入ったものの方が良い場合が多いんですね?」


「そうね。そのおかげで毎日出勤印を押しているのよ。」


『遺品。』


『韓国にはない文化。』


『フリーマーケット。』


ある歌はタイムマシンに乗ったように私をその時代に連れて行ってくれる。


私にとって今ソンスヒの言葉がそうだった。


寒い冬の日。


給食室のアルバイトを終えた午後。


布団を深くかぶって電気カーペットに寝転び、みかんを食べていた記憶。


そうだ、その時私はその本を読んでいた。


『建築家の死。』


『遺品を売るフリーマーケット。』


『古いドローイング。』


『フリーマーケットで買った絵が本物だったって?』


なんてことだ、ラッキーだな。


私は布団の温もりと部屋いっぱいに広がる甘いみかんの香りを今でも覚えている。


その日の夜はインスタントラーメンを食べたっけ、多分。


「ジフン、いいことあった?」


「え?」


「急にニコニコして。」


「……?」


「話をしている途中で、とても幸せそうに笑っていたよ。」


「僕が… 笑ってましたか?」


「うん。今も笑ってるじゃない。」


私は顔に手を当ててみた。


確かに。


ニヤリ。


思い切り上がった口角。


「あ、それが… 突然何かを思い出して。」


「うん?」


「後回しにしていた宿題を急に思い出したんです。」


「宿題があるのにどうして笑うの?」


それが… 遺品で出てきたんだけど。


たまたま本物だったんですよ。


「お母さん、ありがとう。」


「なにが?」


私の気持ちを知る由もないソンスヒの目には疑問符だけが浮かんでいた。


「お母さん、ちょっと忙しいから… 早く上に行ってくるよ。」


「急にどうしたの?」


「ちょっと急ぎの宿題で。」


「ジフン、手を洗ってから。」


「上で洗います!」


私は階段を駆け上がった。


パク・ジフンの部屋。


ワードプロセッサーを起動し、思い浮かんだ情報を入力した。


2010年代のアメリカ・ボストンで起こったことだ。


ある建築家が亡くなり、彼の遺品を売るフリーマーケットが開かれた。


そこにはどう見ても古そうなドローイングが一枚あった。


油絵なら専門の鑑定士に見てもらっただろうが。


‘それでもドローイングだから。’


大したことないだろうと思って、たった3万ウォンで絵を売ったそうだ。


ところがこれがなんと!


そのドローイングがまさかのアルブレヒト・デューラー(ドイツ美術史で最も重要な美術家とされる作家)の遺作だったのだ!


単なる未公開作品ではなく… なんと遺作とは。


名だたるデューラー専門家たちが群がり、間違いなく本物だと鑑定された。


鑑定額は現在の基準でおよそ200億ウォン!


3万ウォンで買った絵が200億ウォンだって?


もしかしたら歴代最高の投資記録になるかもしれない……。


‘重要なのは。’


このすべてを知っているのは私だけという事実だ。


もちろん情報は十分ではない。


‘アメリカ、ボストン、建築家、デューラー。’


まだ中国で王さんを探すようなものだが。


‘王さんが200億ウォンくれるなら! 探さないわけにはいかないだろう?’


方法を考えなければならない。


うーん。


11歳の私がアメリカまで飛んで直接探すわけにはいかない。


‘人を送らなければならない。’


ボストンを徹底的に探すなら少なくとも数十人は必要だろう。


さて。


往復の航空券に滞在費、手間賃まで含めると……。


‘1億ウォン近くかかるか?’


頭がクラクラする金額。


しかし驚いたのも一瞬。


‘今1億ウォンが問題か? 報酬はその200倍になるんだぞ!’


私はすぐに心を入れ替えた。


「ふぅ。」


これも一種のビジネスだから投資を受けてみる?


‘ソンスヒにお願いしてみる……。’


私は首を振った。


11歳の息子が金を稼ごうと騒いでいるのに喜んで迎える親がどこにいる?


ましてや1億ウォンも出してくれというのだ。


‘許可されたらそれこそおかしいだろう。’


ちぇっ。


やっと思い出したのに!


ただ年齢のせいでつまずかなければならないのか?


ため息が出そうになったその時。


‘…ちょっと待て!’


その時思い浮かんだ顔があった。


お金さえ儲かるなら11歳の子供の言葉にも耳を傾けてくれる唯一の人物。


‘おじいさん?’


可能性はある。


ただし。


‘どう話を切り出すか?’


私はじっと唇を噛んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ