第4章 サンタの本当の正体<中編>
空は雲ひとつなく、青空が空一面に広がっている。
しかし、外の空気は身にしみるような寒さだ。
真央は、パーカーの上にダウンジャケットを着て、それでも寒そうに手を震わせながらサンタの話に耳を傾けていた。
サンタは今日の一連の仕事を話終えると、つかつかとチャリ置き場の方向に行ってしまった。そして、真央は俺の顔を覗きこんだ。
「拓。あんたはいつから、サンタの助っ人始めたのよ?」
「昨日だよ。」
真央は急に立ち上がって、腕組みをした。
「そ~なんだ。じゃあ私の後輩ってことね。」
「言ってる意味がわからないんだが……。」
得意気な顔で、真央は口走った。
「簡単に言えば、あたしの方が先に助っ人になったってことでしょ。」
「お前はいつからだよ?!」
「2日前……」
「…………、ってはあ!たった1日だけで偉そうに言うな。」
「まあ、後々身に染みるように分かるわよ。」と真央が言い終えると同時に、サンタがココアを3本抱えて1本ずつ俺たちに渡した。
「じゃあ、よろしく頼むな。」
そう言い終えると、サンタはココアを一気に飲み干して、白い吐息を吐いて俺達にカイロを渡した。
半信半疑で見ていると、ボタンが3つ付いていた。そして、上から1、2、3とある。
「このカイロは何なんだ。」
と俺が尋ねると、サンタは言った。
「このカイロは、3つ性能があります。上から1、2、3とボタンがあるのが分かると思いますが、1を押すと私達と無線で会話ができます。2を押すと透明になり、浮くことができます。
3は本当に何かあった時だけ押してください。3を押せるのはカイロ1つにつき1回だけです……。」
「なんで、3は1回しか押せないのよ。」
サンタは、深刻な顔つきと鋭い目のまま黙り込んでしまった。
しばらくして重い口を開いた。
「とにかく、本当に何があった時だけにしてください……。それでは、サンタの世界に行きましょうか。」
そう言い残すと店の裏へと歩き始めた―。