第3章 サンタの本当の正体<前編>
第3章 サンタの本当の正体<前編>
よく晴れた天気の、ある12月24日のこと。
きらきらと眩しい太陽と小鳥のさえずりで目覚めた俺は、目覚まし時計がぴったり12に短針と長針がぴったり合わさっていることに気が付いた。
それは、12時を示しているのであり、遅刻という2文字も示しているのだった。
昨日のサンタとぴったり12時にスーパーの裏の場所、つまりサンタがいることを思い知らされたところで、待ち合わせをしてるのだ。
俺は服を着替えて、前髪を水で濡らしながら歯を磨き、ドライヤーで乾かすと、食パンをくわえて、ようやくチャリに乗ることができた。そして、全速力で飛ばした。
まあ、そんなに焦ることも無かったんだが……。
店のチャリ置き場に、何とか返して貰ったチャリを止めて、次は絶対に取られないようにしっかりと鍵を閉めた。
腕時計をみると15分overといったところだろうか。我ながら、朝起きてから15分で到着できたことに感謝したい。チャリキーを振り回して、店の裏に行くと……。
俺はまたもやその光景に唖然としてしまった。
それはサンタが白い大きな袋の中にチャリごと入れている時とまるで比にならないぐらいのことが起きていた。
そこには、サンタの格好した奴と女子高生がいたのだ。
それも隣の家で、幼馴染の真央だった。
まったくこの原理というものが、いまだに分からないが、何を思って真央までいるのだろう。こんなひっそりとしたところに、サンタの格好した奴と女子高校生が2人だけぽつんといれば誰だって驚くだろう。そうじゃなくて何で真央がいるんだ。
ということは、真央もサンタの手伝いとでも言うつもりなんだろうか。その時、真央は俺に気がついたのか眼を点にして言った。
「頼もしい助っ人ってあんただったの!」その声はどことなく響き渡った。
でも驚いたもんだ。真央が堂々とサンタと話していたのだから。
てっきり、サンタの正体を知ってしまったのは自分だけだと思い込んでいた……。
そして、真央の近くまで寄ると俺は口を開いた。
「おまえもサンタの助っ人か?」
真央は不安そうな顔でつぶやいた。
「そうよ……。」
そこでようやくサンタは俺と真央が知り合いであることを理解したのか、相づちまで打った。
「友達ですか?」
「そういうとこかしら……。」
サンタは、はっとした顔をしてもう一度相づちを打った。
「そういえば、お二人さんの自己紹介を―。」
真央はサンタの方に向いた。
「私の名前は桜真央。まあ、真央でいいわ。で、ちなみにこの目の前にいるスケベで頼もしい助っ人さんが、私の幼馴染の水本拓よ。」
何か得意げな表情で真央は胸を張っていた。こういう時の彼女の目はどこか輝いていた。
本当にしみじみと感心してしまう。
このでしゃばりなところに……。