野球の審判が投手にぶちギレ!?何があったのか!
『……うんちがしたい』
(あ……あいつ)
球審は人の心が読める能力を持っていた。
投手が一球二球と投げる毎にどんどん顔色が悪くなっている。投手のピンチに気がついているのは球審だけである。
「ボール!」
「えっ?」
キャッチャーが今のはストライクだろうと不満そうな顔をしている。投手も苦笑い。
(ストライクだよなぁ?あいつもそう思ってるんだな)
(違う!お前もキャッチャーだったらピッチャーの異常に気づけよ!)
どうやらキャッチャーは投手の異変に全く気がついていないようだ。
(あの苦笑いは判定に不服があるからじゃない。うんちを堪えているからだ)
ピッチャーは肛門に力を入れて構えた。
(うんちしたいうんちしたいうんちしたいうんちしたいうんちしたいうんちしたい)
球審は悲痛な心の声に耐えられなくなった。
(ここは俺が悪役になるしかねぇ!)
「おい!なんだその顔!今笑ったなぁ!?何か文句あるのか!?」
怒声を上げてピッチャーに近づく球審。それを止めるキャッチャー。何が起きたのか全く分からないと行った表情の投手。監督がベンチから飛び出てきて投手の身を護る為に投手をベンチに下げた。
(良かった)
これで投手はトイレに行けるだろう。キャッチャーには睨まれ、ファンからはブーイング。この試合が終われば関係者からもお叱りを受けるだろう。だが球審は投手を守れた満足感で一杯だ。
『やーいうんちマン!うんちマン!』
『お漏らしヤンキース~♪』
『クライマックソシリーズ開幕ってかー?』
球審は思い出していた。自分が現役だった頃にマウンドで漏らしてしまった時の事を。三年連続で三冠王を取ってもアダ名は引退までずっと『うんちマン』だった。
(……うんちマンは俺一人でいい)
「しゃあっ!やりますかぁ!」
マウンドに戻ってきた投手は見違えるように元気になっている。
(どうやらスッキリしたみたいだな)
試合再開だ。
(この審判。なんだったんだ?更年期か?でもそういう不器用な所がとぅき。さーて。よっこらせ……うぐっ!?)
(……どうしたキャッチャー!?とぅきってなんだ!?)
(う……うんちしたい)
(おいっ!お前もか!?)
(……このままじゃあだ名がウンチマンになっちゃうよぉ。好きな人の前で漏らしたくないぃ。おぉ!おぉ!おおーー!んぎゅうう!?)
スッキリした投手は160キロ台のストレートを連続して投げて三振。それを受け止める度にキャッチャーは心の中で悲鳴をあげた。
(どうする!?二度もキレたら不自然だろうな。しかしこいつ好きな人が球場にいるのか?ズキンチョ。えっ?何で俺は嫉妬してるんだ?確かにこいつは可愛い顔してるけど……)
『四番……バッター。レイリー・ウンチマン。背番号93』
「ウンチマン!?」
いやはや。不器用な二人の恋はこれからどうなるとやら……。
……適当だが?何か文句あるかい?