表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

筆者は死ぬ死ぬ言ってるけど本当に冒険者はそんな死ぬもんなの?

 死ぬ死ぬ言ってるけど本当に冒険者はそんな死ぬもんなの?

 そう思う方もいることだろう。


 ではちょっと考えてみよう。

 生還率99%の依頼を週一回繰り返す場合。一年52回として。

 一年で六割、三年で二割、九年で1%を切る。

 生き残る確率である。


 生還率99.9%だとしても十年で六割だ。四割死ぬ計算である。


 さて、魔物を相手にする冒険者の仕事、一回ごとの生還率はそんなに高いだろうか。


 まず、冒険者は元はごく普通の一般人である。

 ノウハウもなく、実戦経験もないのに他に就ける職業がないので登録したような者たちだ。

 まずは町中の仕事で慣らしたとしても、対魔物のノウハウは得られない。

 どうにか最小限の装備を整えて魔物と遭う「かもしれない」仕事をやってみる。

 そのうち魔物に遭遇する。

 ここで99%生き残ることができるだろうか。死なないまでも怪我をして再起不能になるかもしれない。

 ここで遭う魔物が最低ランクの魔物である可能性はどれだけで、手に負えない種類や数と遭遇する可能性はどうだ。

 初めての戦いでちゃんと動けるか。

 そもそも遭遇時気づけるだろうか。奇襲受けたりしないか。

 これまで協力して頑張ってきた同じ村出身の仲良しグループは果たして生き残れるのか――。


 最初の一回を生き残る可能性は99%より高いかというとそうは思えない。


 また、危険は魔物だけではない。

 街出身の冒険者は、あるいは農村出身でも、はじめはフィールドアドベンチャーのノウハウなどないだろう。森に限らず荒れ地や草原でも迷って帰れなくなることもある。

 初めてならなおさらだが何度かやって多少慣れてからも危ない。アウトドア趣味がある人なら素人知識で野外活動はそれ自体が危険であると知っていると思う。


 経験者をパーティに入れればいいという考えは順当だ。

 徒弟制ではないが熟練者のパーティに新人を組み込むことで新陳代謝を促しつつ新人教育も兼ねるというのは一見効率的に見える。

 しかし、テンプレではそれは行われない。新人は新人同士で組むのが一般的だ。

 理由はいくつか考えられるが、ランク制度がその一つだろう。

 熟練パーティはランクが高い。新人はランクが低い。新人を連れていけるような仕事だと稼ぎも減る。無理に連れて行っても足手まとい。

 極端な話、ドラゴン退治ができるパーティに新人指導させるのは本当に効率的だろうかというはなしになる。

 そこまで極端でないとしてもランク別に分けたものをわざわざ混成させるとランク制の意味も薄れてしまう。

 ある程度のランクを持つ冒険者にはランク相応の仕事をしてもらわなければならず、足手まといを追加して機能を低下させると冒険者ギルドの処理能力も落ちる。

 新人は新人同士で組む、実力が同程度の者同士で組むべきだ。

 長い目で見れば教育に力を入れたほうが良いという考えはあるだろうが、それができないかするべきでない理由もあるのである。

 さらに間引き選別説を採る場合、下手に教育を充実させると自力での問題解決能力が育ちにくくなるのも問題になる。先輩に指導されたとおりにしかできない冒険者を間引き選別説は求めていない。


 というわけで初心者で構成されたパーティが生き抜いた後。

 徐々に魔物との遭遇可能性が高い仕事をするようになり。

 失敗と成功を繰り返しノウハウを蓄積。

 魔物を狙って戦う、討伐の仕事をするようになる。


 ここまでの失敗は命にかかわらないものだけで済むだろうか。

 調子に乗って油断した時に想定外に強い魔物と遭遇したり。

 初めての野営で普段なら楽勝の相手にやられたり。

 試行錯誤の中に致命的なものはないだろうか。

 万全を期したつもりで想定外の敵に遭遇する可能性はどうだろう。


 ゴブリンを五匹村の近くで見かけたので退治してくれという依頼があったとして。

 戦ってほぼほぼ勝てる算段をつけて出かけて。

 実はそのゴブリンは斥候に過ぎず大集団の一部だったとか。

 ゴブリンはもっと危険な魔物に追い出されてきていて、討伐中にゴブリンを追ってきた魔物と会敵してしまうとか。

 道中通りすがりのドラゴンなり、ゴブリンより強い魔物に遭遇するだとか。

 そんなイレギュラーは起きないだろうか。

 もう少し身近なたとえをすると、ウサギを獲りに行ったら熊が出たようなイレギュラー。

 コンビニに買い物に行ったらいつもものすごい吠えてくる近所の犬が脱走しているところに遭うような。

 そんな心の準備をしていない想定外の事態を毎回うまく切り抜けられるかどうか。なお失敗したら大体死ぬ。


 魔物は人間がコントロールしているわけではないのでいつだってイレギュラーがつきもののはずだ。

 これは街の中で頑張って調べても起こりうる。

 コントロールしていても事故は起こる。交通事故が無くならないくらいだ。

 コントロールできてなければ起きないわけがない。


 改めて、魔物を相手にする冒険者の仕事の生還率は99%より高く見込めるものだろうか。

 そして当然生還率99%を下回るなら、数年務めて生き残る確率も格段に減る。


 つまりやはり冒険者は死ぬのである。

 あるいは怖くなってやめる者のほうが多いかもしれない。最後の砦の冒険者ギルドを辞めてしまって次の仕事があるものだろうか。あるようなら冒険者になっていないのではないか。


 そうなると犯罪者か物乞、あるいは体を売るか、そのあたりが末路だろうか。


 ある程度の実績があれば、それを担保に引き抜かれることもあるかもしれない。

 平和的で安定した収入を得ることができれば冒険者のあがりである。

 しかし冒険者としての活躍を見込まれたのであれば、冒険者に近い役割が求められるだろう。その先はうまくいくよう祈るのみ。



 結論として、死ぬかやめるかがほとんどでやめても近いうちに死ぬんじゃないかなという話。

 成功する冒険者は一部であり、一部だからほめそやされるのである。



 次は何か思いついたら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ