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冒険者が家を持つのってお得なの?

 前回書き忘れたことがあったので今回も家の話。


 冒険者って街に家を持つ余裕と意味があるのだろうか。


 基本的に仕事場は街の外で、日をまたぐ出張も多い。

 高いお金を出して家を買う価値はあるのだろうか。

 街の中に土地と建物を確保する以上、別に税金もかかるだろう。

 滞在期間と留守にする期間、どちらが多いかわからない。

 要るの?


 しかしいると判断する冒険者が居る世界を結構見かける。無限収納やらをもつ主人公ですら持つことがある。偉い人から賜った場合は別だ。自分で金を出して購入する例だ。


 要るからと言って持てるかというのは前回に譲る。



 家を持つ利点はなんだろうか。それは宿やほかの施設の利用では補えないものだろうか。


 まず、家自体に価値があり、さらに家の中にものを置ける。

 冒険者は財産を持つことが難しい。街の外を移動していることが多いからだ。

 価値があるものは目の届くところになければ持っていかれるので、自分で持ち歩ける範囲でしか財産を持てない。

 どれだけ稼いでも、持ち運べる量に限界はあるし、持ち歩けるということは盗まれる大きさであるということでもある。

 だが不動産は別だ。

 土地建物を盗むことは簡単ではない。

 そして家の中にさらに財産を保管できる。


 ただし、家を留守にすると当然盗まれる危険がある。

 セキュリティを高めるにはコストがかかる。

 また、財産を預かるサービスが存在する場合もある。銀行機能を冒険者ギルドなどがもっているテンプレもある。長期契約した宿で預かってもらえば警備費は向こうもちである。もちろん手数料は取られるだろうが、自前で十分なセキュリティを用意するのと比べてどうだろうか。なお冒険者の社会的信用は低い。


 家に住み込みの管理人を置けばどうだろうか。集合住宅や長屋なら管理人がいて防犯に努めてくれるかもしれない。

 その管理人は人格、能力ともに信頼できるのか。そして雇用費はどうだ。

 家を買うような冒険者が保管したい財産は、一般市民から見ると莫大なものであるのではないか。たくさん稼いでたくさん稼ぐのが高ランク冒険者だろう。ちょっと一千万円警備してねとその辺のおばちゃんに頼むことはあり得ない。魔が差さないだろうか。空き巣ならまだいい、強盗が来たら?相手が強盗でも太刀打ちできる相応の能力が必要だ。雇用費は能力によって増えていく。


 さらに、何かの際、街の支配者によって接収される可能性がある。

 それは横暴なものに限らず、正当な手続きとしてもだ。街を管理している者による街の管理に必要な手段であれば抵抗できない。街の防衛の都合であったり、犯罪捜査であったり、留守中の税の不払いの差し押さえであったり、長期放置家屋の没収であったりだ。不慮の事故で長く帰れなかったらそんなことがあってもおかしくないだろう。


 個人はもちろん、パーティでシェアしたとしても、一緒に仕事に出るのでは留守になることに変わりない。

 セキュリティが確保できなければ荷物を置く場所としては不適切だ。

 セキュリティを確保するのは相応のコストがかかる。

 この問題を解決できれば財産の保管場所として有効だろう。

 ただそもそもテンプレ的無限収納だとか魔法のカバンだとかを持っているなら財産の保管場所は不要である。



 ほかにメリットがあるだろうか。満足感とか。安心できる場所とか。

 転生転移主人公であれば技術の秘匿のため私的なスペースを求めることもあるかもしれないが、この話はその他の冒険者のことである。

 連絡先を固定できるというものはあるだろうか。

 言付けを預かる人員を置いておくことで内外の連絡をスムーズにする効果がある。

 クランと設定されることが多い、複数のパーティもしくはパーティの枠を超えた大人数の冒険者集団がその活動のための拠点を持つ、という設定だ。

 これはわかる。一定の規模を超えると拠点は必要になるだろう。別行動することがあればなおさらで、誰かしら常駐させる余力があればそれでいい。

 だが個人あるいは数人のパーティであれば宿や冒険者ギルドでも事足りるだろう。


 あとは家を持っていることによる社会的信用。

 高額資産である家を街の中に持つことで得られる信用はある。何かあったとき財産を守るため、街のために働くだろうと期待できるからだ。

 だが冒険者が社会的信用のために家を手に入れるだろうか。明日死ぬかもしれないのに。逆に有能な冒険者が偉い人から与えられた場合ならわかる。


 家族を置いておける。

 子どもができちゃったから妻と一緒に住まわせて夫は冒険者家業を続けるよという場合。

 これは冒険者の家というよりはその家族の家とみるべきかもしれない。

 留守にしないなら話が変わってくるのだ。



 さて、メリットはこのくらいにしてデメリットを。


 まずセキュリティはすでに言及したので簡単に。

 宿であれば安全と防犯は料金のうちである。

 信用できる宿であればだが、自前で安全を防犯を維持するのとコスト的にもノウハウ的にもどちらがいいか。


 家事。

 家を維持するに必要なことは多い。

 掃除洗濯料理補修。外注するなら宿と変わらないし個別に依頼する分まとめて処理する宿より高くつくかもしれない。

 家事は昔から重労働で時間もかかる。電化製品の普及でものすごく手間が減った現代でも、本気で家事をしようとすると時間をいくらでも使えるだろう。

 個人で? パーティで? 家をもつのはいいが家事はどうするのか。

 家政婦を雇う信用は家を買えるくらいならあるかもしれないが、個人で人を使うのと宿に客として世話になるのとでは、これもだいぶ違ってくるだろう。


 汚れて疲れて帰ってきてベッドにばたんした場合、自宅では自分で洗わなければならない。宿はクリーニング代を請求されるかもしれないがやってくれる。どちらがいいだろうか。


 あとは固定資産を持ち定住するなら税を取られるだろうこと。

 さらに、何かあったとき、簡単に逃げられなくなること。恨みを買ったからヤサを移すか、とはいかなくなる。これらは社会的信用とバーターなので受け入れるしかないだろう。



 ざっと挙げてきたがどうだろう。

 冒険者が家を買うのは大変で、維持するのも大変だ。

 それでもそこに意味を見いだせるのなら、買うだろう。買えるかどうかは別にして。

 タチの悪い先輩冒険者のたまり場にされて悲しいことになったりしないことを願う。


 次は何か思いついたら。


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