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「そろそろ夕飯の時間か…。」
時計を見る。思ったよりずっと時間が過ぎていた。
危ない危ない、もうそろそろ『奴』の帰宅時間じゃないか。
漫画が進化したことによる最大のデメリットは時間を忘れてしまうことだ、と俺は思う。時間泥棒界の石川五ェ門だ。
至って冷静に、何食わぬ顔で夕飯を準備して、なんなら『奴』の存在なんて今の今まで忘れてましたって感じで立っていなくては。
(確かハンバーグが…うん、やっぱりあった。)
ピピ、っとドアロックの解除音が鳴る。
もう一度頭を振って、『何食わぬ顔』を作る。
よし、大丈夫だ。うん。
「ただいまー…えっ、今日帰ってくる日だったっけ。」
「部屋の主が部屋にいてなにが悪い。」
「んもぉー、いーっつも私が漫画に没頭したいときに限って帰ってくるんだから!」
「別に、気にせず漫画に没頭しろよ。お前が気持ち悪い顔でニヤニヤハァハァしてるのなんて見慣れてる。」
俺の部屋に堂々帰宅してきた『奴』は、布団に世界地図を描いていた頃からの幼馴染だ。
一緒に暮らしているけれど、決してそういった関係ではない。無理無理、こんな、見た目は美女で中身は猛獣な生き物、俺には扱いきれない。
月に一度くらいしか帰ることがないからこそ実現できた同居だ。