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両親がまだ幼かった頃、漫画とは『読む』ものだった。
紙媒体や電子媒体に絵や字を描き、それを読んで物語を楽しんだ。
しかし古の創作者たちは『漫画を描く』という行為に負担を感じ、紙やパソコンと睨み合いながら夢を見た。
『頭の中の妄想がそのまま漫画になったら、とっても楽なのに。』
締め切り前、突然気になりだした部屋の掃除をしながらそんなことを考えていた先人たちは、ありとあらゆる技術を注ぎ込み、本当にそれを実現してみせた。
基本の形は眼鏡に似た『デベログラス』を眼鏡と同じように掛けることで、目の前に漫画の世界が広がり、その漫画の一部となってストーリーを体感することが出来るのだ。
完全に再現された妄想の共有…とでも言ったらわかりやすいだろうか。
思考や行動、台詞などは全て作者が設定した通りとなるため、例えば目の前のヒロインのスカートを捲ったりだとかは出来ないが、匂い、温度、空気などを実際に感じられるリアルは、すぐに人々を魅了した。
ラジオがテレビになったときと同じ感動が巻き起こり、漫画は『読むもの』から『行くもの』へと変わっていった。