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KD航路 山東半島列伝 四

いよいよ魔法です。

地味なのは作者のせいです。

 ベテラン魔法使いムカライ・フェルナンデスからウデの程を問われた魔法使い四人である。


「私、五級になったばかりなので」

 リサ・クールリッジ

「俺は土専門みたいな物だから」

 キース・オブライエン

「私は治癒魔法が得意で攻撃魔法は苦手なんです」

 リリア・ルーカス

「では、私が挑戦してみましょうか」

 マライア・エバートソン


 三人はへたれた。一人挑戦するようだ。


「ほう、やるのか。こいつは魔力を扱うのが下手だと制御が難しそうだぞ」

「やりますわよ。昔乱戦で杖を失って、木の枝で代用したことありますのよ」

「木の枝でか。普通は出来ないものなのだが」

「要は魔力を集中させてから放出する部分が杖なのです。だから何でも使えますよ。理論上は」

「いや、お見それした。それを知っている人間は少ない。さぞや高名な方とお見受けするが」

「お友達からは「雷光姫」と呼ばれていますの。名付けてくれたのは「常識知らず」と渾名されるケイルラウなのですけれど」

「凄い名前が出てきましたな。では、もうじき八級と噂される「雷光姫」ご本人ですか」

「そうですわ。私も「万能研究者」と呼ばれるフェルナンデス様とお目にかかれて驚いていますの」

「自分で言うのも何だが長く活動しているだけ有名だからな。ああ、それとムカライでいいぞ」

「ありがとうございます。ムカライ様」

「様もいらないんだがな。あなたの好きに呼べばいいよ」


 残りの三人は「雷光姫、ウソ・・・」「万能研究者だと?」「雷光姫?万能研究者?アワワワワ」

「おもしれー、こんなに切れるのか」「あの太さを楽に貫通だと?」「出来た!夢の空中十字斬り」などと剣を光らせて遊んでいた冒険者達も「雷光姫」と「万能研究者」という二つ名に反応して静かになって魔法使い達を見ている。 


「なあ、雷光姫は元御貴族様だよな。何で冒険者やっているんだ。嫁入り先はあるだろうに」

「あの女か。貴族なんて碌でもない奴らだろう。嫌われてるんだよ。だから嫁入り先が無くて冒険者になって飯を食ってんだろ」

「俺たちも冒険者なんだが。まあ大抵は飯が食いたくて冒険者になっているな」

「とにかく俺は貴族は嫌いだ。ササデュール共和国軍が攻め込んできたとき、真っ先に逃げ出したんだぞ」

「誰だよ、その恥さらしは」

「エーダ伯爵だよ。一族のほとんどと家臣もほとんど連れて逃げやがった」

「エーダ伯爵か。トポッポ侯爵の子分だったな」


 五級以上の冒険者になると貴族と顔を合わせる機会もある。貴族の情報はある程度仕入れている。


「あんた、あそこの領地なのか」

「あそこで生まれ育った。俺たちが戦っているのに一目散だぜ。酷いだろ」

「その後でササデュール共和国軍に捕捉されて滅んだからいいじゃないか」

「そうだな、ササデュールの奴がやった唯一のいいことだ」

「俺んとこなんて、敵が見えたら即降伏しやがった」

「それはまた酷いな。でも逃げるよりは良いんじゃ無いのか」

「良くねーよ。あのトポッポのゴミ野郎。話し合えば分かるなんて言って相手の大将を屋敷に招き入れ宴会だぞ。許せるか」

「トポッポか、生まれてくる場所を間違えたな。諦めろ」

「ちくしょう」

「俺のとこのホウ子爵夫人なんか、戦争が始まったと同時に領軍と冒険者に停戦命令だぜ。やはり話せば分かります。と言って相手を屋敷に招いていたな」

「それ通じてたんじゃ無いのか」

「皆そう言うぜ。おかげでよそで肩身が狭くていけない」

「そう言えば、ツツナオとオーザワは少し戦って降伏らしいな」

「かっこつけただけだろ。逃げたり、即降伏よりは世間体はいいわな」


 皆のダメ領主自慢?が始まっていた。


「俺は雷光姫の領地出身だ。エバートソン子爵家は最後まで踏みとどまって領民の逃げる時間を稼いでくれたよ。最後は領主様も白兵戦をして亡くなられた。うちの領主様やエバートソン家を悪く言う奴は許さん」

「でもそのせいで、ササデュールに睨まれて貴族じゃ無くなったんじゃ無いのか」

「違う。今では伯爵だよ。ササデュールからは何も言われなかった。逆に勇敢な人達であった。と言われるくらいだ」

「じゃあ、何で冒険者?」

「それは俺もよく知らないんだが、領地経営がかなり苦しいらしい。どこも領地を削られただろ。働き盛りの男が減っておまけに領地が減ったんだ。苦しいよな」

「でもトポッポとホウのところは、ああ、そういうことか。売国奴め」

「それで領地に少しでも金を送ろうと?」

「そう聞いている。エバートソン伯爵家でかなりの数の孤児を引き取ったというから」

「凄いな。それなら尊敬に値するぜ。お前は如何なんだ。仕送りか」

「家族にしている。ここに来ても仕送りは出来るというからな」

「お前普人族だから残れただろう」

「戦友や仲間を見捨てることは出来ん。家族にも言ってある。それに今のディッツ帝国になってから稼ぎが激減した。冒険者では苦しい」

「それで雷光姫もこっちに来たのか」

「そうだろうな。だから俺はあの方を応援している」

「そうなのか。悪いことを言った。許してくれ」

「いい。悪い領主もかなりいたのは確かだ」

「すまん」

「でもそうすると、かなり内通していたのか」

「そうだろうな。数で圧倒されて内部で手を引いてか。負けるべくして負けたな」

「まあ過ぎたことだ。いつまでも引っ張っていると前に進めん。それにササデュールも滅びた」

「それだけはディッツを褒めてやる」

「そうだな」

「おい、雷光姫が始めるみたいだぞ」


 皆で注目した。やりにくそうだ。


「それでいいのか。もっと強力な奴も用意してあるが」


 ヘリウスが聞く。


「このくらい弱い杖で無いと、初めて扱うのですから制御しきれるか分かりませんわ」

「そうか、あんたがそれでいいならいい」

「では、姫始めようか」


 ムカライが促した。


「ええ、では水にしますわ。見えますし、威力がわかりやすいですから」

「いい選択だと思う。おい、お前達。も少し離れろ。しくじると危険だ」


 皆が少し離れる。それを確認したマライアは魔法を発動した。杖の先端が少し光るだけだ。

 

「行きます」

「水よ、あの木の周りを濡らし給え。世界よ力を貸して下さい」


 詠唱が終わり魔法が発動する。目標の周りはずぶ濡れだった。成功した。

 だが、マライアの様子が変だ。考え込んでいる。


「如何しました、お嬢さん」


 ヘリウスが問いかける。


「とんでもないですわ。今普通の杖なら少し濡れるだけの魔力を使っただけですのに、あの濡れよう」

「そのくらいだったのか。トレントに匹敵するというのも頷ける。良い物だな。トレント材より安ければ」

「値段か?確実に安いぜ。光るという欠点もあるからな。それに結構な量も確保できる」

「どうだ姫、予備にならいいのではないか」

「いえ、それがトレントの杖は手放してしまいましたの」

「なぜだね」

「少し入り用でして」

「悪いことを聞いた。すまない。では、ヘリウス君。私から姫へプレゼントだ。三本ほど見繕ってくれ」

「そんな。悪いですわ」

「ふむ。では出世払いでいい。八級になってくれ。それが代金だ」

「でも・・・」

「遠慮するな。年寄りの我が儘だ。受け取れ」

「はい。ありがとうございます」

「それでいい」


 周りでやりとりを見ていた連中は


「あの親父格好いいじゃ無いか」

「アレは憧れるな。俺もああいう機会があったらやってみたい」

「誰か、私にもプレゼントくれないかしら」

「おめえはあの小僧に貢いで・グハ!・・・」

「何か言ったかしら?」

「いえ、失礼しました」

((((バカめ))))

「なあ、万能研究者だぞ。あの人。ろくに依頼を受けないから銀級だけど、真面目にやれば金級といわれている。金持ちだぞ、俺たちなんかと違って」

「そう言えば手持ちの金を日本で通用するように交換させられたな」

「紙の金だけど軽くていいよな。嵩張らないし」

「でも、金塊との交換も出来るといっていたし、実際に交換した奴もいる」

「そうなんだよな。俺たちのためにずいぶん金を使っているらしいしな」

「日本は金持ちか」

「金払いのいい親玉は貴重だし、丁寧に扱わないとな」

「現状俺たちが丁寧に扱われているな」

「違いない」


 ひとしきり笑いが起きる。

 色々あって、お昼になってきた。お待ちかねの巨大魚料理の時間だ。

 かなり真剣な顔で料理を見つめる面々。

 あの「万能研究者」でも初めてらしく、緊張しているようだ。

 塩焼き、粕漬け、粕漬けを焼いた物、天ぷら、フライ、煮魚

 各種おいしく食べたようである。



 「雷光姫」は雷を混沌獣にぶつけて撃破することを得意としている。ただ、雷だけに焦げていることも多く素材の価値が落ちるので滅多に使わない。使うときは雷で無いと対処出来ない相手だけ。普段は水の魔法を使う。ただ、雷魔法は目立つので「雷光姫」の二つ名が着いた。二十代後半でやや焦りが見えるが、仕送りのために頑張っている。

 見た目は人並みであるが立ち居振る舞いが洗練されており、所作が綺麗で人気がある。

 ファンも多く、陰で悪口を言う奴は制裁されることが多い。


 「万能研究者」は自称百五十歳のエルフ。冒険者活動は若い頃盛んにやっていたが、級が上がり懐に余裕が出てくると魔法研究に重きを置くようになる。現在は金が減らないように活動しているだけ。もう少し依頼を受ける回数を増やせばすぐに金級になると言われている。

 ほとんど全ての属性を扱える。故に万能と呼ばれる。得意技はマッドホール。土魔法で土を軟らかくして水魔法の水を混ぜ泥にする。それを熟練の技で瞬間的に行う。結構深く泥の落とし穴が作れるので大抵の相手は足を取られる。足を取られた時に再び瞬間的に泥を凍らせる。相手が身動きできなくなったところを仲間が始末を付ける。自分で始末を付けるのは面倒らしい。






二つ名と呪文。

派手な呪文は作者の脳ミソが拒否します。

変な二つ名なら拒否しないのにね。


次回は山東半島から離れます。

次回 一月一一日 05:00予定

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― 新着の感想 ―
[一言] 超一流冒険者でも初めて? そう言えば、冒険者たちもボラールを知らなかった。 ということは、山東半島周辺ではボラールは捕れないのですね。もっと東の海域でしか捕れないと。
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