表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/219

KD航路 受け入れ側

年末になりました。ここまでこの凡作にお付き合い頂きありがとうございます。

短くて申し訳ないですが、今年はこれで最後の更新です。


 カラン港では、月六回に増えた移住者の受け入れでえらい目に遭っていた。

 月四回なら週一回である。

 三千人の上陸と宿舎への移送に丸一日。新宿舎は遠くなったが間に鉄道がそれも複線で入っていた。お行儀良く並んでくれればいいのだが、中には興奮しているのか言うことを聞いてくれない人間も多い。

 そういう時は、五級以上の冒険者の出番だった。日本兵もいるが同族の方が何かと都合が良かった。

 それが埠頭四基の内二基を占拠しての二日である。残りの二基は移住者輸送船が着けられる大きさでは無かった。

 カラン港では移住者の受け入れのみならず、開拓地への物資供給窓口でもあった。

 そのために埠頭の占拠期間は短い方が良かった。

 移住者の受け入れを始めてから一年。十三万人ほどがこの港から各地に散っていった。ほとんどはこのシベリア大陸山東半島が受け入れ先立ったが。

 最近は本土での認知度も高まり、移住者を受け入れる人数が増えてきていた。

 開拓地の開墾も進みさらなる人員の受け入れも可能となってきた。とにかく広いのだ。山東半島にエルラン帝国の国民全てを受け入れても余裕は有るだろうというのが最近の見解だ。

 それを受けてさらに受け入れ能力の強化と受け入れ人員の増加を図ろうとしていた。

 そして最近の港湾能力強化で移住者専用埠頭が完成。しかも四隻が着けられる上に鉄道の引き込み線まである。

 これであの上陸後の混乱は無くなるだろう。無くなるといいな。



「ここがカランなのか」


「そう聞いているわよ。私もあなたも一緒に聞いたでしょう」


「そうだが、ここには普人族しかいないぞ。しかも我々をここまで運んできた日本人だけだ」


「おとーさん、まだふねからおりてないよ」


 小さな子供、息子のユーリが言う。


「ほら、子供の方が賢いのよ」


「ふん」


「やーね」

「やーな」

「やーね?」


 下の娘も言葉の意味も分からずに続く。


「諦めなさい。ここには私たちの仲間の一杯いるのよ。悪いことにはならないわ」


「しかしな、ここには俺の職が有るのか。料理人だぞ」


「でも船の中で紹介されたじゃ無い。どこでも働けるし、職種は出来るだけ希望に添うと」


「俺は店を持っていたんだ。今更他の奴の下に着けるか」


「ふーん、じゃあ、お金有るの」


「うっ」


「じゃあ日本人に借金するのね」


「借金だと?」


「聞いてなかったの?店をやっていた人なんかにはお金を貸してくれるのよ。凄く低い金利で」


「むう」


「聞いてなかったんだ」


「五月蠅い」

「「うるさい?」」


「子供達が真似するから、変な態度は止めて」


「分かったよ」


「どうするの」


「日本人に聞いてみる。お前達を食わせないといけないからな」


「まあ、今頃分かったの」


「「わかったの」」


 周りからクスクス笑い声が起こった。子供達の突っ込みが絶妙だった。


 

「皆さん、船から降りる前に名札を忘れないようにして下さいね」放送があった。


「これが読めん。日本語だと言うが」


「その上に共通語で書いてあるじゃない」


「これを覚えないと日本では働けないのか」


「あら、あなた日本で働くつもり?」


「あれだけ豊富な調味料と旨い料理を出されたんだ。俺は挑戦したい」


「私たちのご飯は?」


「何とかする」


「何とかって?」


「何とかだ」


「答えになってないわよ」 


「分かったよ。開拓地で頑張るよ」


「それならいいわ」


「でも開拓地に料理の仕事はあるのか」


「それこそ聞けばいいじゃない」


「ああ言えばこう言う」


「あなたの頭が単純なだけでしょ」


「「たんじゅん」?」


「こら、お父さんにそれは無いだろ」


「「ん~」」


「可愛いわ。私の子供達」


「この階の人は下船して下さい」そう放送があり、乗り組み員が案内に来た。


「娘を抱っこしてくれる?私はユーリと手を繋ぐから」


「分かった。おいで、シェラ」


「おとーさんだっこ」


「よしよし」


 そのエルフの家族は船を降りた。


「この列車に乗って下さい。順番はありません。満員になったら発車します」放送がうなる。


「またアレに乗るのか」


「いやなの」


「煙が酷くてな。真っ黒だったじゃ無いか」


「そう言えばそうね。アレは堪らなかったわ」


「うん?煙が出ていないぞ」


「あら、ほんとね。それに形が違うわ。蒸気も出ていないもの」


「ああ、奥さん。アレは真っ黒い煙の出る蒸気機関車では有りません。ディーゼル機関車です」


「ディーゼル?」


「まあ多分今は分からないでしょう」


 駅員だろう制服を着た日本人?え?耳が。エルフなの?


「私も来たばかりの時は驚きました。でももう慣れました。最初に乗った船の大きいことと護衛とか言う船のとてつもない大きさ。驚きの連続でした」


「エルフなのよね?」


「ようこそ、カランへ。歓迎します。エルフで間違いないですよ」


 移住者が落ち着けるよう、そこかしこにエルラン帝国からの移住者が配置されていた。








エルフ夫婦の明日はどっちだ。


次回は年明け一月一日早朝更新予定です。

05:00予定のはずです。


皆様、良いお年を

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ