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祝 KD航路タンカー初就航

遂に石油輸出国になった日本

ディッツ帝国向けに初出荷

 ディッツ帝国へ原油と石炭を輸出することになった。輸出と行っても代金後払いで資源でも補填可能という貸与や供与に近いものだった。

 それでも今までずっと石油輸入国で有った日本が初めて海外に石油を輸出するのである。朝と毎の新聞は何処で嗅ぎつけたのか「目出度い、遂に石油輸出国へ」など派手な一面を飾っていた。

 向こうで産出すればそれまでなんだぞ。分かっているのかいないのか。他の全国紙や地方紙は落ち着いた論調であった。

 日清戦争の時も散々煽っていた新聞だ。ロシアが半島を取ったときなど絶叫していたな。三百年も国策として半島には手を出さないが暗黙の了解で有ったにもかかわらずだ。



 海軍は自前の艦隊型油槽艦を出してくれるという。ガダルカナルに常駐している給油船は民間の足が遅いタンカーだから、高速を出せる奴は手が空いているらしい。

 本土に在る十四隻中十隻を当てるという。これで八万トンは行ける。この十隻を先発させて、後は民間の十ノットから十八ノットの船を連綿と送り出すという。大きさも五千トン級から一万トン級までバラバラだが元々統一されていないのだから仕方がない。同じ船形の船は固まって運用する。さすがに航海速力八ノットの退役寸前の船では時間が掛かり過ぎると言うことで外された。

 八ノットの船はオハと本土間に廻された。

 このタンカー特需には既に移住者輸送で利益が出ている海運会社がさらに笑うのであった。ディッツ様々であると。

 

 護衛は移住者護衛艦隊と海軍が共同で出すことになっている。ディッツ帝国側ではカムラン港とキール港・ブレスト港の二港を新たに日本船舶受け入れ港に指定。指定日時に付近を遊弋していればお迎えが来るという話だ。


 各鎮守府に在った艦隊型油槽艦は徳山燃料廠や各地の港でタンク代わりに使われているタンカーから精製前の原油を一杯に詰め込んだ。各艦は三々五々に出航、台湾高雄沖で集結。そこから護衛を伴ってガダルカナルに向かった。


 朝と毎の記者は盛大に船団を組んで大阪から出発と思っていたらしく、誰一人取材に来なかったという。


 タンカーの護衛は海軍から出た。貴重な艦隊型油槽艦なのだ。当然と言えば当然である。

 護衛も初回は巡洋艦一隻と駆逐艦八隻であるが、護衛艦隻数の不足ということもあり直接護衛ではなく航路帯警備に変わっていくのであった。 




「おい、山下。貴様こんな所にいていいのか。司令長官様だろう」


「かまわんよ。今回は新たな任務のためにディッツ帝国と顔つなぎという意味もある」


 六水戦司令官大村義之少将は同期の山下少将に尋ねたら、こんな答えが返ってきた。山下少将は首席移民担当官兼移住者護衛艦隊司令長官だ。

 船は六水戦旗艦、軽巡手塩の戦闘艦橋で話していた。ここなら通常人はいない。


「紫原中佐は駆逐艦に乗りたがっていたが」


「俺は役得だよ。たまにはいいだろ。あいつはディッツ帝国の情勢について外務省やら通産省やらのお役人の相手をして貰う。十日間もあるんだ。有意義な話し合いが出来るだろう」


「丸投げかよ」


「責任は取る?ぞ」


「なんだその踏ん切りの悪さは」


 二人は紫原中佐と役人達の乗る貨客船を見ていた。 




「紫原中佐、ではディッツ帝国の政情は現状では安定していると?」


 外務省南方総局局長今川一真かずざねが聞いてきた。今川家の直系だという。桶狭間で義元が討ち取られた後、氏真が周囲の予想を裏切って旨く立ち回り、織田家による日本統一まで何とか駿河一国を守り通した。その立ち回りが上手くいかなければ今川家は滅びていたと歴史家の評価である。


「そうですね。接触初期に投入した金が効いているようです。現在も定期的に金を提供していますので、よほどのしくじりがなければこのままかと思われます」


「現在の皇帝以外の二勢力は評判が悪い上に劣勢と言う評価でいいのか」


 通産省外国貿易局局長井伊直久が聞く。この人も徳川家に仕えた戦国武将井伊直政の直系だという。その先祖の関係か今川一真との仲はよろしくない。あんた赤備えなんだから陸軍に行なかったのかよと紫原は思う。そうしたらこんなに胃が刺激されずにすむのに。


「概ねそうですね。市中で聞いてもそういう雰囲気です」


 今回来ている官僚達は皆、軍で言えば少将クラス。野戦任官の中佐には荷が重かった。司令長官恨みますよ。


「以前読んだレポートだと、確かに一般受けは悪そうだな。だが貴族の間ではどうだ」


 運輸省航路局局長太田康夫が聞いてきた。この人は普通の人らしい。あの二人の後だとホッとする。


「地獄の沙汰も金次第とか、金の切れ目が縁の切れ目とか言いますから。資金的に現政権が余裕が出ていますので、貴族達もその二勢力とは距離を置いているようです。軍部も装備の充実や待遇改善をしてくれる現政権を支持しているようです。強硬派の力は落ちました」


「ではこのまま安定化すると考えていいのかな」今川が言う。


「いえ、まだ予断は許されません。情報によると、軍の強硬派は綱紀粛正も有りおとなしくなりましたが、まだまだ不満を抱えているようです。資金面で優位にあった選民思想派は政権の資金力が回復するにつれて発言力が低下しています。ですがまだかなりの影響力を持っています。特に気をつけなければならないのは選民思想派です」


「まだ安心するのは早いと」


「そうです。軍の強硬派はこちらの軍事力と自国の軍事力がかけ離れていますから手を出してくることはないでしょう。手を出すなら日本に近い技術水準になった時です。人口はディッツ帝国の方が五割増しです。戦力的に優位になるまで手を出してこないことは予想されます」


「では選民思想派か。危険なのは」今川が言った。


「選民思想と宗教は容易に結びつきます。地球でもそうでした。ディッツ帝国にも無いとは言えません」


「軍人さんに言われるとは」井伊が言う。


「駐在武官など半分以上は情報収集が任務ですよ。色々勉強しないといけません。こんなに勉強したのは兵学校以来です。後は政治と外交ですがカムラン事務所には私の他は外務省と通産省から出向の事務員しかいませんので」


「田中と中村はカランと大阪か」今川が言う。彼の部下だった。政権が正和十九年夏の総選挙で変わったが、政権が変わって変わるのは政務次官であって、事務次官以下の官僚団が変わるわけではなかった。

 一時的に移民担当官の立場になっているだけで所属が変わっていないのは海軍と同じであった。

 二人は山下少将と同時に移民担当官に任命されていた。恐らくこの二人も山下少将を恨む人間である。


 

 タンカー船団はガダルカナルに着いた。六水戦の駆逐艦は急増する駆逐艦需要を満たすためと旧式艦の代替に造られた駆逐艦で、航洋性と居住性を重視した汎用駆逐艦松級である。十九年夏頃から配備され始めた新鋭艦だ。

 航続距離が夕雲級ほどではないためにここで給油しないといけなかった。


 民間から雇用しているタンカーから給油を受ける松の群れ。泊地に投錨しているためタンカーの両舷に付けて給油する。

 もう日が暮れる。

 大村少将は泊地で一夜を明かすことにした。山下少将は本来貨客船に乗る立場であって、同期と言うことで無理やり手塩に乗っているだけだ。指揮権は無い。 


 翌朝、泊地を離れディッツ帝国に向かう。ここから五日であった。

 カムラン港まであと一日という所で。ディッツ帝国の哨戒機に発見される。移住者護衛艦隊と移住者用船舶にはディッツ帝国の無線機が搭載されていたが、今回は緊急と言うことで船の手配が出来ず積んでいる船は無い。

 無線機の変調方式に違いがあり互換性が無かったためである。現在両方の変調方式が使える無線機の開発が進められている。

 今回はトンツーで交信する。国際周波数は決められていた。

 既に前日、トンツーで近くに来ていると連絡している。トンツーでと言うのはモールス式の信号文字変換では無いためだ。相変わらず会話は出来ても相手の言語で読み書きが出来無いのであった。

 幾つかの符丁を決めておき、信号を送るしかなかった。


 カムラン港から出航した移住者護衛船団のうち駆逐艦三隻が分派されてくる手筈だが、まだ会合はしていない。

 


「逆探に反応。友軍の周波数です」


「無線入りました。移住者護衛艦隊所属葛葉です。鞍掛・三国と共にこちらへ向かってくるそうです」


 葛葉と鞍掛・三国は峠の名前だった。遂に駆逐艦に使う天象気象の名前が尽きたのである。天象気象の名前は海軍が使うとして、移住者護衛艦隊所属駆逐艦は駆逐艦の名前に峠を採用した。軽快に峠を上り下りする様は駆逐艦にふさわしいとして。軽巡は河川であったし、重巡が山、戦艦が国なのは同じだった。


「電探に反応。距離三十海里、反応三。IFFに反応。友軍です」


 IFFの技術は転移前にイギリスから教えて貰っていた。

 最初の接触の時こそ電探を秘匿したが二回目からは外すことなく見せていた。数回目にアレは何だと聞かれたので、電波の反射でと言ったら驚いていた。最初期の電探技術は渡してみた。電探本体の供与も打診されているが日本政府はまだ協議中である。


 葛葉・鞍掛・三国は夕雲級だった。会合の挨拶もほどほどにタンカーを三・三・四で分け、葛葉に率いられた三隻はカムラン港、鞍掛に率いられた三隻はブレスト港へ、三国に率いられた四隻はキール港へと向かうことになった。護衛部隊も手塩は葛葉と共に、駆逐艦は駆逐隊ごとに鞍掛・三国と行動を共にする。ブレスト港とキール港へ向かう船団にはディッツ帝国海軍の先導が付くという。どこにあるのか分からないので当然だったが。

 カムラン港へ向かう途中で移住者船団とすれ違った。挨拶を交わして行き交う。


 そしてタンカーはディッツ帝国へ到着した。






この先どうなるんでしょうね

選民思想と宗教とか書いてしまったし


次回 十二月二十二日 05:00予定


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