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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
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移住者護衛艦隊

海軍さんですね

 紫原少佐は上司の一水戦司令山下少将から陸に上がってくれと言われ唖然とした。

 雪風艦長を拝命してからまだ一年経っていない。勘弁して欲しかった。

 そう言うと、俺も同じだ。一水戦司令になって一年経っていないと。


 新たな配属先はエルラン帝国移民事務局と言う。

 エルラン帝国が征服され、行き先を失った人々を受け入れるのだという。

 総数百五十万人以上。大事業だ。

 受け入れ先はほとんどがシベリア大陸、日本と東鳥島はわずかだろうという予想だ。

 シベリア大陸で新たにエルラン帝国を復興させるも良し、別の国を興すも良し、日本国民と成るも良し。

 恐ろしいのは全て国家予算では無いと言う事。神倉庫から引き出したそうだ。やったのは山下少将。恐るべき交渉人である。

 さらに驚かされたのが専用の艦隊を持つこと。現役復帰に期待が掛かるが、駄目と言われた。事業が終わるか、移民の数がごく少数になるまでは艦上生活は出来ないと。

 

 俺の役目はディッツ帝国との交渉で、出張所を設ける事が出来れば駐在員にと言うことだった。

 

 レンネンカンプ大臣との交渉で、移民乗船港である帝国東部のカムランに移民事務所を構えることになる。

 階級も少佐では軽いとされ中佐になった。はっきり言って中佐よりも少佐で雪風艦長のままでいたかった。


 正和十九年五月、紫原中佐は日本国エルラン帝国移民事務局カムラン支部支部長としてディッツ帝国に赴任する。



 

 移民船団の中心となる貨物船の改造は順調に進んでいた。一万積載トンの貨物船である。船倉の容積は大きかった。

 カムラン-カラン間十日間の航行に精神的に耐えるのは一般市民には無理とされた。自ら望んで乗るのならともかく、無理やり乗せられるのである。狭苦しい居住区画は精神的に負担になると言うことで、一人当たりの専有面積と天井の高さを大きく取った。

 これは、最初の航行で明らかになったことである。精神的におかしくなった者が少数だが出た。途中に上陸休憩を入れても出るのである。

 今後の移民は収容所みたいな所に長くいるので相当ストレスがたまっているだろう事は考えるまでもなかった。

 トイレの数が足りないことも問題となった。風呂の大きさも広げられた。


 貨物室内下部にバラストタンクと水タンクを設置しその上を居住区画とする案が採用された。

 積荷が軽い(何しろ人で、密度も低い)ので、ある程度重くして吃水を下げないと安定性が悪くなる。

 外寸で幅十四メートル長さ十五メートル高さ三.五メートルの居住ブロックを標準*船によって寸法は変わる*として工場で量産。

 貨物船の方は船底部に追加のバラストタンクと清水タンクを設置。

 その上に居住ブロックを乗せる。

 居住ブロックは船倉内に積まれるが、下層部に風呂・トイレ、上層部に客室と交流スペースが配置された。

 このトイレ配置は不評で、屈辱にまみれた者もおり後に改善される。

 食堂も交流スペースに移された。

 何故最初の配置をこのようにしたのかと聞くと、水回りを纏めたかったと言う答えが返ってきた。


 甲板後部にディーゼル発電機を設置して、室内電力を確保した。軍の輸送艦は最初から兵員輸送を前提としているので発電機の容量は貨物輸送時には過剰とも言える容量が確保されていた。


挿絵(By みてみん)


 転移前、日本の外航貨物船は中華民国出着が主な航路であった。中華民国 ⇄ 北米、中華民国 ⇄ 欧州、この二航路が経営の柱になっていた会社も少なくない。

 日本出着は半分程度だった。

 純粋な貨物船は少なく、多くは二十人から百人程度の乗客を乗せるようになっていた。純粋な客船では乗客が埋まる航路ではないし利益は出ないが、その程度の客数なら埋まるのであった。客室のグレードは特別室や一等室はなく、二等室と三等室が多かった。またその程度の客数とグレードであればそれ程大勢の客室乗務員を必要としないため、ついでに乗せるとしても採算性は良かった。

 機関はディーゼルで航海速力十八ノット以上の船は二機二軸推進が多かった。

 日本のフラッグシップとなるべく建造された橿原丸級二隻は蒸気タービン機関だった。


 一般人の扱いには慣れており、まあ見たことも無いような人達が相手だが徐々に慣れていくのだろうとされた。


 一隻当たり五百人程度を乗せての航海であり船医を乗せることになったが、いかんせん地球人相手の医者では不安があり、移住者の中から医者を探して貰うことになる。


 

 移住者第一陣がやってきてから十日後の十九年三月、新たな南遣艦隊が出発した。

 今度の陣容はささやかである。


 第一次移住者護衛艦隊


 旗艦 長門


 第二戦隊

  長門 陸奥

 

 第七戦隊二分隊 

  愛宕 高雄


 第二航空戦隊

  火龍 雷龍

   第二直衛隊

    影月 冬月 春月 初月


 第三水雷戦隊

  旗艦 酒匂

   第七駆逐隊

    朝潮 大潮 満潮 荒潮

   第八駆逐隊

    山雲 夏雲 朝雲 峰雲

   第十八駆逐隊

    磯波 夕霧 天霧 狭霧

   第二十駆逐隊

    朧 曙 雷 電


 艦隊型輸送艦

   尾道 廿日市はつかいち


 艦隊型油槽艦

   清水 


貨客船

 十四隻 一隻を病院船として使用 

 今回は通常の客室のみ使用とした。

 十三隻で五千人余りの乗船が可能だった。

 いざとなれば、尾道に三百人くらい詰め込む事になる。前回は詰め込みすぎて不評であったが。


付属として以下の艦隊が同道する。多島海の測量をするためである。

測量艦

 明石 伊良湖

 第四駆逐隊

  時雨 村雨 春雨 五月雨

 多目的水上機母艦

  日新

 潜水艦母艦

  大鯨


 測量艦は、拡大した日本周辺海域の海図製作のために陽炎級駆逐艦の図面を流用して急遽建造した艦である。

 陽炎級に比べてボイラーを小型の二基とし機関出力は二万五千馬力と半減した。

 主砲は、前部に八十九式連装高角砲改二を一基とした。

 水雷兵装は魚雷、爆雷とも全廃。

 機銃は三十三ミリ機銃連装二基。二十五ミリ機銃単装四基。 


 日新は最初高速機雷敷設艦として計画されたものの、一号機雷の有用性に疑問がつき甲標的母艦として建造された。

 敵艦隊の進撃が予想される海域 想定したのは主にマーシャル、マリアナ に高速で進出し甲標的をばらまくという計画の元建造された。

 甲標的は、五十三センチ酸素魚雷を二本搭載した小型潜航艇で小型のディーゼル機関と電池推進を使った超近海用迎撃潜航艇である。

 転移でこの計画自体が無用になり、工事が中断されていた。

 ただ、廃棄とするには船郭工事が進んでおり機関の積み込みも終わっていた。上甲板以上の工事が残っていたので、改造することにした。

 水上機母艦が千代田と千歳のみであり拡大した日本周辺の偵察には不足と考えられていた。

 水上機母艦に改造された。

 ただし相当量の工事が進んでおり、小改造で済ますことになった。

 結果、水上機八機を運用し多少の補給能力も有する中途半端な艦に仕上がった。海軍はこれをもって、多目的水上機母艦と称した。

 

 潜水艦母艦大鯨は、潜水艦の運用が領域内に限られているためにお役御免というか、使い道が無い船になっていた。

 通常の補給であれば艦隊型油槽艦と艦隊型輸送艦の方が能力的に適切であり、潜水艦母艦の出番は無かった。

 一部に空母改装という声もあったが、改造期間とかかる費用、そして使い勝手から新造の方が良い。となり立ち消えた。

 結局小規模な戦隊への補給任務を割り当てられたのである。



 戦力的には前回の南遣艦隊に比べてかなり劣るが、途中敵対勢力も無く海洋性混沌獣の目撃も無かった。

 これで充分だろうという甘い判断と、艦が回らなくなっているためだった。今回の航海で大丈夫であればさらなる減少を考えていた。

 それ程までに艦船需給が逼迫していた。また領域外では海洋性混沌獣の脅威があり、居る居ないにしろ常に高い緊張を強いられていた。

 艦の整備と乗員の休養のためにも出ずっぱりは出来なかった。

 急造される艦が配備されるには後最低でも一年半は待たなければならない。

 それまでは、少しずつ増える艦を運用するのみである。  





南に東に国内周辺警備にと、海軍艦艇と海軍軍人が酷使されていますので船の手配が付きにくくなっています。

早く人員の増員をしなければ。


次回は 十二月七日 05:00予定

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