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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
72/219

ギルガメス王国連邦 内情

へー、そうだったんだ

 艦隊司令部は困っていた。二択は無いと思った。


 貧乏だが数的有利なエンメルカ侯爵家の勢力


 恐らく裕福であろうが数的劣勢のイシュタル公爵家の勢力


「家令殿、いきなりそう言われても我々はギルガメス王国連邦の政治体系を知らないのです。なんとなく予想は付きますが、それで行動するわけにもいかんのです」


「失礼をいたしました。急ぎすぎましたか」


 だが司令部の面々は

(急ぎすぎてないだろ。わざとらしい)司令長官

(あきらかにこちらを誘導しようとしている。要注意だな)参謀長

(こちらの知識不足をいいことに)航海参謀

(多数派の上に、欲で簡単にコントロール出来そうな方が楽で良いな)作戦参謀

(いきなりか)主計参謀

 等と考えていた。要注意人物にされてしまった家令。


「ギルガメス王国連邦は幾つかの独立国の連合体なのです。ここまでは話しました。国の他に自治領が幾つかあります。自治領は経済的に立ち行かなくなり、王権、国権とも言いましょうかを王国連邦に預け軍備を領内警備程度まで減らした国だった物です。この先さらに自治領は増えていくと予想されています。ですから、どうせなら王権を一つにして今までの独立国は全て自治領にしてしまおうと言うのがエンメルカ侯爵家の表向きの考えです」


「エンメルカ侯爵家の表向きの理由は理解できたかと思います。そして一つの大きな王国になったギルガメス王国を影から操ろうとしていると言うことも理解できたかと思います。では、イシュタル公爵家の勢力はどうしたいのでしょう」


「イシュタル公爵家の勢力は、統一を望みません。今はという意味です。このような小国が乱立している連邦制はいずれ破綻すると見ている国が多く、されど急激な統合は内戦に容易に繋がると見ています」


「では現状維持で、徐々に統一に進む方が良いという考えですか」


「イシュタル公爵家の勢力の国々は概ねそのように考えています」


「ちょっと待って下さい。政治体系を聞いたのですが、いつの間にか勢力争いの内情になりました。話題を戻して下さい」


「失礼をば」


(どうしても自分の勢力に引き込みたいようだ)司令長官

(こいつは信用してはいけない)参謀長

(焦ってないか?)航海参謀

(利用した後で捨てると厄介なタイプだ)作戦参謀


「ギルガメス王国連邦内に在る独立国から王や王の代理が集まり連邦議会を形成しています。連邦首都はエンキドで、そこに議会と連邦主席がいます。連邦の機関も概ねエンキドにあります。連邦主席の権限は絶対ではなく、議会の決定に対する拒否権や議会を停止する権限はありますが、基本的には議会の決定は重視されます。なぜなら、連邦主席も王の中から選ばれた存在なのですから」


「つまり、現状多数派のエンメルカ侯爵家の勢力が連邦内で優勢であるという認識でよいですかな」


「はい」


「経済的には苦しい勢力が多数派で、楽な勢力が少数派。少数派は現状維持または緩やかな統合を望んでいると」


「はい」


「そのエンメルカ侯爵家の勢力が統一王国を樹立し国権を握ると何か不味いのですか」


「その過程で流れる血のことです。多くは望んでいない。緩やかにやれば流れる血は少ないはずです」


「確かに急激な改革には血が大量に流れますな。我々の国でもそうでした」


「では味方になって頂けるのでしょうか」


「それはなんとも言えません。我々は全権を任せられていますが、国の都合もあります。それは分かって頂きたい」


「理解できます」


「ありがとうございます。その上でおききしましすが、現在の連邦主席はどちらの勢力なのでしょうか」


「イシュタル公爵家の勢力です」


「では議会運営は大変ですな」


「はい」


「分かりました。我々がどうするのか決定するまでしばらくお待ちください」


「お願いします」




「長官。あの家令はあくまでも家令です。セーラム家では有りませんし、イシュタル公爵家の勢力を代表しているわけでもない。彼の言い分で決定することは危険です」


「当然だな。だが、大凡の事情は分かった。イシュタル公爵家の勢力はかなり劣勢だ」


「余裕はなさそうでしたな」


「このまま放置すればどうなるかな。作戦参謀」


「はっ、エンメルカ侯爵家の勢力が冷静で無い限り内戦に突入するでしょう。数で勝ると言いますがどれだけの戦力差が有るのかは分かりません。今は介入する必要は無いかと」


「そうか。松永秀久の子孫の言うことだ。それで行こうと思うが意見は無いか」


「長官、それは止めて欲しいのですが」


「何故だ。事実だろう。さすが謀将の子孫だと思うよ。誇っていいぞ」


「はあ」


「では、当面は様子見とする。ボラールは特定勢力では無くギルガメス王国連邦へのお土産とする。シロッキについては、双方に二匹ずつ。残りはこちらで換金材料とする。意見は無いか」


「長官、よろしいでしょうか」


「なんだ主計」


「実はシロッキはかなり旨いのです。本艦隊の分も確保して欲しいのです」


「どのくらい有ればいい」


「二匹と本国への持ち帰り分で一匹でしょうか。帰りにも捕獲できるとは限りません」


「そうだな。東鳥島南方の海洋混沌領域にはあいつは見かけないな」


「はい、混沌領域によってかなりばらつきが有るような気がします」


「これからの研究課題か」


「はい」


「分かった。では現地換金分は14から4と3を引いて七匹とする」


「ありがとうございます」





「家令殿、申し訳ないが我々はギルガメス王国連邦については余りにも無知だ。今回はどちらにも与しないとしたい。ただ、ボラールはギルガメス王国連邦への土産としたい。どうだろうか」


「こちらとしましては力を貸して欲しかったのですが、どちらにも与しないという回答をいただけただけでも有り難い。ボラールの件はこちらの副ギルド長に任せます。セーラム家は関わりません」


「冷静な判断いたみいる。ギルガメス王国連邦内の問題は全権が有ると言っても一艦隊の手出しすべき事項では有りませんのでな。滞在中に情報収集をして本国に持ち帰り検討材料とします。滞在は認めて頂けるのでしょうな」


「セーラム家としては問題ありませんが、港湾長一派がどう言うか」


「セーラム家と港湾長一派にシロッキを差し上げます。二匹ずつではどうですかな」


「シロッキですか。港湾長一派に与える鼻薬としては二匹は豪華すぎますな」


「では一匹に減らしますか」


「それはセーラム家に対してもですか」


「そうです。どちらにも与しないとい事は同じ数にすると言うことです」


「分かりました。一匹ずつで結構です。それでシロッキはどうやって捕獲するのですか」


「既に捕獲済みです。余剰分はギルドで売却しようと考えています。交易に使う現地通貨、こちらのギルガメス王国連邦内で通用する通貨ですな。我々は持っていませんので」


「シロッキを売って頂けるのですか」


 副ギルド長が割り込んだ。


「主計参謀、南雲船長、頼む」


「「はっ」」


「それでは私が説明します。他にも売却予定の物は有りますが、こちらで需要があるかどうかは分かりません。それで皆さんに見て貰いたい。商品はこちらの南雲船長の船に見本が積んであります」


「南雲です。そちらのサイデリアの皆さんとは二度目ですな。また当船を訪れてもらえるようですね。歓迎します」


「では皆さん。南雲船長の船に移乗しましょう」




 司令部要員で橿原丸に移乗したのは主計参謀と作戦参謀だけだった。

 皆は乗り組み員の案内で、遊技場を痛めないようにしてから配置された交易品見本を見て回る。


(ねえ、ラララ。あの塗る奴はどれなの)

(焦らないで、アルマ。これどれも凄いと思わない?)

(そうだけど、似たような物は有るわよ)

 女子はコソコソしていた。目的の物はどれだ。はっきりしている。


「これは・・」


「これはウロコですな。名前を教えて頂くまでは単に巨大魚と呼んでいました」


「何枚有るのですか。出来るだけ買い取りたい」


「副ギルド長、焦ると足下を見られますぞ」


「あ、ああ、すまない。余りにも無造作に置かれている物だからついな」


「ふむ、これは貴重品なのですか」


「く、確かに貴重品です。欲しいのも事実です」


「いや、そんなに慌てないでください。なんでしたら数十枚はギルドに差し上げてもよろしい」


「なんですと!!」


「南雲船長殿、そのウロコの価値がお分かりで無いのか」


「軽くて良い防具の材料になるとか、切れ味が良く耐久性の高い刃物の材料になる位の知識しか有りませんな」


「それだけ分かっていれば結構です。ああ、こちらの価値というか値段が分からないと」


「全くその通りです。ただ貴重な物ですと、値段は有ってないような物でしょう」


「確かにそうです。そのウロコを数十枚貰っても良いのか?」


「かまいません。君、ウロコは何枚積んでいたかな」


「一千枚となっています」


「「1000・・」」


「足りませんか」


「いや、充分です。国に贈って頂けるボラールのウロコも含めてですか?」


「いえ、これはウロコのみです。そうでしょう、滝本中佐」


「はい、そうです。贈り物とするボラールは保管場所の関係で細切れになっていますが、解体しただけであり内臓・骨・ウロコはすべて揃っています」


「解体済みですか」


「そのままの方が良かったですか。まさかこうなるとは思いませんので、自家消費用に解体したのです」


「「ボラールを自家消費ですか」」


「一万人近くいますので、食糧の管理が大変で」

(いけない、つい言ってしまった)


「一万人の艦隊ですか」


「想像も付きませんな」

 

「それにそのような高級品を自分達の食料にするというのも想像できません」


「全くです」


 日本人としてはただ魚を食べているだけだった。

どちらかに加勢するには情報が少なすぎて決定できませんでした。

しなかったとも言う。

当然のことだと思います。


次回で進出編は終わります。

国内編を経て大陸交流編へと移ります。



次回 11月30日 〇六:〇〇 予定


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