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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
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セーラム冒険者ギルド

初登場、冒険者ギルド。

なろうの伝統的に行きたいと思います。

 救助された冒険者チーム「サイデリア」はセーラム港上陸後、冒険者ギルドに向かった。

 途中船が難破したにしても依頼の失敗には変わりない。まだ期日は残っているものの、今から船を仕立てたのでは間に合うわけも無かった。


「あ~あ、気が重いぜ」


 マッシュが嘆く。


「そうだな。違約金は不慮の事故によるものだから二割か」


 アルスが答える。多少余裕があるとは言っても、今回の難破で幾つかの装備を失っているはずだ。その補填もしなければいけなかった。出費は少ない方が良い。


「そう言えば、不慮の事故は調査が入るのよね」


 レイラが指摘する。


「そうだな。認定されるには、結構厳しいらしい条件があるそうだ」


「でも今回は大丈夫じゃ無いか。証人もいるしな」


 ゴンゾが答える。


「まあ大丈夫なはずだ。何しろ証人がハイランド船長とあのとんでもない艦隊の人達だ」


 サザラーンが言う。


「違約金はいいんだ。チームの準備金で払うことが出来る。問題は装備だ。ハシマールにどれだけ残っているか」


「拡張袋と保存袋か。痛いな。結構いろいろ入れてあったし」


「でも、あの時そんな余裕無かったじゃ無い」


「まあ、そうなんだが」


「そうよ、船室まで取りに行ってたら死んでたわよ」


「拡張袋はまたダンジョンに潜るのか。デカい容量のは、買うととんでも無い値段だしな」


「買えば?」


「何言ってるんだササラ。そんなカネないぞ」


「有るじゃない。もらい物が」


「アレか。ボラールのウロコか」


「そうそう。売ったら幾らになるのかしらね」


「待て、アレは俺たちの装備にするはずでは無かったか」


「でも拡張袋は是非欲しいわ」


「他にボラールの魔石の値段も聞いて欲しいと言っていたわよ」


 カーラが言う。


「あー、使い道が決まっていない奴が十個くらい有るとか言っていたな。売る気なのか」


「十日間で四匹捕ると言っていたよな」


「とんでもねーな」


「お前らそれギルドで言うなよ。このウロコの価値が下がる」


「でも知っていて黙っていたのが後でバレると不味くない?」


「っ、確かにそうだな。いずれわかるだろうから正直に言うか」


「その方が良いわよ。私たちの評判が落ちるじゃ無い」


 いろいろ言いながら歩いて行くうちにギルドに着いた。



「あら、サイデリアの皆さん、依頼終了ですか。早いですね」


 受付のイルマがこちらの事情を知らないのかニコニコした表情で語りかける。


「あー、南のホーン岬の依頼なんだが。えー、そのなんだ。早すぎるだろう。分かれよ」


「依頼失敗ですね」


 ことさらに大きい声で言う。

 ギルド内でそこかしこから笑い声が上がる。


「よー、サイデリア。ホーン岬の依頼なら楽勝じゃ無かったのか」


 こいつは「星樹の誓い」とか言う上品な名前のチームには不似合いな奴だな。


「六級に上がったばかりじゃえらかったのか」


「船が難破したんだよ。俺たちのせいじゃない」


「あー、それはなんだ。悪かった」


「いや、いい。俺たちもよくからかうからな」


「でもよ、難破か。嵐は来なかったぜ」


「シロッキにやられてな。海岸沿いには居ないはずだったんだが」


「流れの奴か。そりゃ、災難だな」


「分かってくれればいい」


「でもよく助かったな」


「通りすがりの外国船に助けられた」


「「「「外国船だと」」」」


「私も聞きたいな。サイデリアの面々はこちらに来てくれ」


「副ギルド長」


「ああ、そう言えば港に行けば珍しい物が見られるかも知れないぞ。飯の種になるかもしれん」


 ワムルが悪い顔をして言う。

 ガタタとかななりの人間が出て行く。


「サイデリアはこちらに来てくれ」


「はい」


「依頼失敗か、珍しいじゃないか。どうしたんだ」

「船が難破しまして、目的地に着けませんでした」

「難破して助かっているだけいいじゃないか」

「そうですが、かなりの装備を失っている可能性がありまして」

「いわゆる遠征セットか?」

「そうです。拡張袋と保存袋です」

「お前達はダンジョンでかなりいい拡張袋を手に入れていたな」

「はい、それを持ち出す暇がなくて」

「命があるだけいいだろう。普通、難破は助からないものだ」

「外国船に助けられたんです」

「外国船か。国名を言わないところを見ると、ガンディスでもラプレオスでもないのか」

「日本。彼等はそう言いました」

「聞いたことがないな」

「副ギルド長、落ち着いて聞いて下さいね。彼等は国ごと転移してきたそうです」

「・・・・」

「ですから国ごと転移してきたと」

「それは本当なのか」

「はい、彼等が言っていました。こちらの常識もかなり知らないようです」

「そうか、これはまだ上層部しか知らないことだが、東の大陸は知っているな」

「はい」

「東の大陸の東にも転移してきた国が現れたそうだ」

「偶然ではないと?」

「偶然でこんな事が起きるか?」

「分かりません」

「国もギルドもどう対応していいか迷っている。相手が分からないとどうしようもないしな」

「日本は、真面目に国交を樹立したいようでした」

「何?国交だと」

「はい、交易もしたいと」

「誰か知っているのか」

「港にいた者は全て知っています」

「秘密にはできんか」

「秘匿は無理ですね」

「そうか、ギルド長はギルド会議でエンキドに行っている。ちょうど良いのかもしれんな」

「如何するのですか」

「領主様に面会を求める」

「会ってくれるでしょうか」

「副ギルド長だ。会えるさ」

「通信の魔道具ですか」

「そうだ。だがこの騒ぎだ。じきに領主様の知るところになるだろう。待っていた方が良いのかもしれんな」

「情報が速いと言って、評価が上がるかも知れませんよ」

「それがあるか。よし、今から行く。アルス、お前も着いてこい」

「え?なんで俺」

「お前が良く知っているからだよ。当事者だろ」


 アルスがメンバーを見回すと、皆小さく手を振っていた。


「ワッハッハ、アルス諦めろ」


 副ギルド長が笑う。


「お前ら」

「「「「リーダーだろ(でしょ)」」」」

「チクショー」


「おい。領主様のところへ先触れを出してくれ。重大事項だと言ってな」

「はい、副ギルド長とアルスですか?」

「そうだ。頼むぞ」

「はい」

「馬車の準備も頼む」


「じゃあアルス、俺たちは馬車でゆっくりとだ。先触れより先には着けないからな」

「はい」

「馬車の準備が出来るまでもう少しタネがないのか話そうじゃないか」

「タネなら有ります」

「ほう、どのくらいのタネだ。麦か、それともカッキンか」

「カッキンです。いや?それ以上かも」

「なんだそれは、お前達も知っているか」

「「勿論、これですよ」」

「ん?なんだそれはウロコか?見たことは有るな。まさか」

「そうで~す」

「馬鹿な、ここしばらく揚がったという話は聞かないぞ」

「だって、これはあの日本の人達からのプレゼントですから」

「はあ?プレゼントだ?そんな高価なものを?」

「あー。その、なんだ。副ギルド長、落ち着いて聞いて下さいね。興奮しないで。俺たちも驚きましたから」

「言って見ろ」

「あの人達、日本人は十日間で四匹ボラールを捕ることが出来るそうです」

「・・・嘘・・」

「ほんとらしいですよ。私たちもボラールの料理いただきましたから」

「ボラール料理だと!私でも数回しか食べたことはないぞ」

「数回はあるんだ」

「個人では無い。招かれた先の料理でだ」

「ま、そういうことですよ。これからはボラール素材の値段はガクッと下がるでしょうね」

「そうか、で、彼等は今もボラール素材は持っているのか」

「こちらに来る途中で捕ったとか言っていましたね」

「そうそう、一匹分は友好の証にこちらにくれるそうですよ」

「何でだ!何でそれを先に言わん!!」

「だって、言う暇が無くて」

「それは済まんな。だがこれだけいっぺんに事が起きるとな」

「分かります。凄く分かります」

「なんだ、物わかりが良すぎないか」

「あの艦隊に救助されれば物わかりも良くなりますって」

「そんなに凄いのか」

「それはもう」


「副ギルド長、馬車の準備できました」

「今行く」


「アルス、行くぞ」


「ああ、それからな、そこのボラール素材の依頼は全部、保留だ。大量に入手できる可能性が出来た」

「大量ですか」

「そうらしい。確認はこれからだが、間違いないところだ」



 二人は馬車でセーラムの領主、セーラム男爵の館に向かう。


「アルス。他には何か喋っていないことは無いのか」

「国交樹立と交易に、ボラールの素材でしょ。他に何が有ったっけな。ああ、そうだ。彼等はこちらの通貨をほしがっていました。ギルドや商会に売り込むそうです。他にも売り込み先があったら教えて欲しいそうです」

「また、重要なことを。売り込む物は教えてくれたのか」

「いえ、そこまでは言いませんでしたし、教えてくれる雰囲気でもなかったです」

「何故通貨が?ああ、分かった言わなく良い。そうだな、こちらの物価が知りたいか」

「物価ですか?」

「取引をするのに、物価が分からなければ大損か物別れだからな。知らないと損をする」

「それでですか。盛んに我々の生活を聞いてきましたよ」


 二人の乗る馬車はセーラム男爵の館に着いた。


 セーラム男爵は、男爵位でありながらも重要な港町を治めておりギルガメス王国連邦内での影響力は小さくなかった。財政状況もかなり良好で、実力は平均的な伯爵家以上と言われている。

 男爵の館は街外れの小高い丘の中腹に在った。周辺には直臣の住宅が点在する他は畑が広がっている。

 


声が大きい受付嬢は必須ですね。

セーラム男爵の館では?


麦か、それともカッキン

カッキンとは、見た目は大きい柿である。ただし普通の柿とは違ってタネが異常に大きい。実の三分の一にもなる。

情報が些細な物か重要な物かの比喩に使われる。


次回 セーラム男爵 11月23日 06:00予定

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