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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
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ハシマール帰港

ようやく港に入ります

 東海域捜索隊は海岸から10キロほどの距離を保ち八ノットの速度で北進していた。

 目的地は、ハシマールの母港であるギルガメス王国連邦セーラム港。

 距離的には一日で行けそうな距離だが、難破したハシマールを曳航している状態では三日後の入港を予定していた。

 前路啓開は十四戦隊伊吹の瑞雲が行っていた。進路上の見える範囲には、浅瀬・小島・暗礁・環礁などは見受けられないと言う報告が来ていた。


 艦隊後方の捕漁船団は、シロッキを数匹捕獲していた。

 これは橿原丸船長南雲忠治の提案で、シロッキを捕獲して金に換えようと提案した。

 彼が言うには、貨幣経済がある世界で貨幣を持っていない我々は、何か貨幣に換金出来る物が必要だという。

 これに対して艦隊は「金塊が有るでは無いか」と言った。

 南雲船長は


「ディッツ帝国とは違います。慎重に行くべきでしょう」


「確かに違いますな。第一かの国は金が無くて困っていたようで、こちらにかなり譲歩してくれたとか。ですがギルガメス王国連合が、どういう国なのかは全くわかっていません。慎重に行くのは賛成します」


 と、参謀長の大村寛少将が言う。


「そうだな、南雲船長の言うことはもっともだ。こちらが金塊を持っていると知ればどう動くかわからない。さすがにスペインの銀行強盗にはならんだろうが」


 艦隊司令長官の木村徐福中将が言うと、会議室は失笑に包まれた。スペイン内戦時、ソビエトとドイツがスペインから国庫の金塊を持ち出そうとして日本海軍に阻止されたことは有名な事件だった。


 この会議が行われたのは難破船を救助した後、曳航を決定したときのことだ。


 命令を受けた捕漁船団は、ボラールの浮子に特製のワイヤと釣り針を付け、ボラールの身を括り付けた。

 救助者に見られないよう、しばらくかなり沖合でトローリングをしていると、急に浮子が沈んだ。掛かった。何が掛かったかは知らないがボラールの引きよりも大分軽い。

 そして、浮子の先に向けて三式対潜迫撃砲を発射。信管は着発では無く水圧信管だ。

 一気に爆発する弾頭。吹き上がる水柱。

 腹を横にして浮き上がる魚体。目見で十五メートルほどだろうか。

 アレがシロッキなのだろうか。確かに白かった。とどめとして頭に100ミリ捕魚砲を発射する。ボラールより相当柔らかい。銛が全部沈み込んでしまった。動いていたエラが止まる。仕留めたようだ。

 艦隊司令長官の木村徐福中将がもういいと言うまでに、十四匹を釣り上げた。

 食べられると言うことで、捕魚母船の厨房でさっそく料理にしてみる。醤油の煮付けと、天ぷら、後は焼き魚が試された。

 見た目は巨大だが、どう見てもシロギスである。煮付けか天ぷらが正義であった。焼いてもホロホロとしてとてもおいしかった。

 白身で小骨も少なくあっさりとした淡泊な味であった。しかし、ボラールよりも美味であると言う報告があった。 

 

 換金出来る物は確保したが、艦隊が換金用に持っている様々な交易品のうち、どの程度が換金出来るかは不明だった。



 三日後、艦隊はセーラム港沖に姿を現した。

 このような大艦隊は、鉄の船でさえ見たことが無い現地の人々に恐慌をもたらした。

 完全な黒船である。いやそんな物では無いか。一目見れば対抗不能だと思える艦船だ。

 それでもこちらが何もしないのを見て、一艘の船がやってきた。


「ここはギルガメス王国連邦である。私は港湾警備隊隊長ミッチェルである。そちらはどこの所属であるか。そちらの目的は何か、返答をせよ」 


「我々は日本から来ました。私は、この艦隊の司令長官木村です。目的は、探索。そしてこちらの港所属のハシマールが難破していたので救助してここまで持ってきました」


「日本?聞いたことがありませんな。それにハシマールですか。どこに乗組員がいるのか。ハシマールは如何した」


「ハシマール乗員は今からそちらに船で送るが許されよ」


 今応答をしていたひときわ巨大な船の影から、一艘の船が現れた。手で漕いでいるでも無いのに進んでいる。大発艇だった。


 手を振っている人間がいる。アレは見たことが有るな。ハイライド船長か。では、難破は本当なのか。


「よう、隊長さん。元気か」

「船長、そんなこと言っている場合では無いだろう」

「ああ、この船達か?」

「もちろんだ」

「いい人達だぜ。目的は探索と交易に国交樹立とか言っていたが」

「なんだと。本気か」

「本気らしい。何でも三年前に国ごと転移して来たって言うことだ。信じられんが本当らしい」

「確かに信じられんな。それよりも船は如何した。船員や乗客は?」

「あー、船は大破だな。シロッキにやられた。船員は半分がやられた。客は無事だ」

「ほう、客が無事なだけいいか。それでハシマールを持って来たと言うが、ハシマールはどこだ」

「驚くなよ。今はあの船の向こうにあるが、こちらの港に入れていいかと聞いて欲しいそうだ」

「ハシマールの係留場所か?」

「いや違う。ハシマールはもう駄目だ。解体するしか無い。どこでやるか聞いてくれと」

「運んでくれると?」

「そうだ。どこがいい?」


 ミッチェルは少し考えてから、「港湾長と相談する」と言って帰っていった。

 大発艇は後を付いていく。船員と乗客のことを忘れているぞ。隊長。


 港湾長から解体するための場所の指示を受け戻ってきた隊長。


「港湾長は逃げたそうだったぞ」

「まあ、あいつなら逃げるだろうな。人目が無ければ」

「確かにな。なんであれで港湾長など出来るのかな」

「そりゃー、コネだろ。後はカネか」

「違いない。あいつでも貴族の端くれだしな」

「能力的には問題ないんだがな。責任感が無いというか」

「それには、いつも困って居る」


 隊長は船でハシマール解体場所に先導する。


「ここだ。この浅瀬なら問題無いから使って良いと言ったぞ」

「ここか、確かに悪くないな。岸とも繋がっていないし干潮でも少し沈む程度か。わかった、奴らにここへ運んでくれるよう頼んで貰う」

「頼めるのか」

「出来るみたいだぞ」


 ハイライドは、大発艇の艇長に「ここで解体したいのでハシマールをここまで運んで欲しい」と頼む。


「船長。ここの水深はどのくらいありますか」

「水深か。結構でかい船も入るが、あんたらの船ほどじゃないしな。隊長、どくらいの深さがある?」

「ここか?港か?」

「両方です」

「そうだな。ここは四メートくらいか。港の方なら八メートはある」

「四メートと八メートですか。少しお待ちを」


 なんだろうか。艇長という奴が何かに話しかけている。魔道具か。通信の魔道具はかなり高価で主要都市に置くのがどの国でも精一杯のはずだが、まさかこいつらそんな金持ちなのか?

 ミッチェルは驚く。


「船長。港までは小さな船、補漁船という。それで押してくる。その後はこの船、大発艇というのだが、小さな船で押し上げる。それでいいだろうか」

「出来るならいいよな。隊長」

「ああ・・」


「了解してもらいました。満潮は今から三時間後だそうです。実行お願いします」

「了解。港の中は出船は無いな」

「隊長さん。出船はありますか」

「いや無いはずだ。と言うか、沖にあんなゴツい奴らがいれば出ようとは思わんよ」

「それは申し訳ない。ではハシマールを入れます」


 その後、通信を幾つかして「二時間後に入ってきます」と言った。その後でこう言った。


「艦隊から、こちらの港湾長や町の町長?偉い人?に挨拶をしたいそうですが、よろしいでしょうか」


 ミッチェルは思う。あんなゴツい奴らにそんなこと言われたら受け入れるしか無いだろう。


 ギルガメス王国連邦の冒険者ギルド所属、チーム「サイデリア」の九人は先に上陸させて貰った。船長や船員はハシマールを見守りたいそうだ。



 捕漁船第十六鳥島丸の大島康夫船長は、緊張していた。


「船長、力入っていますよ」

「当たり前だ。初めて入る水深もわからん港だぞ。貴様だってかなり緊張しているじゃ無いか、航海」

「そう言う意味では全員緊張していますけどね」

「緊張しない方がおかしいがな」

「あ、少し右へ流れます」

「左舷押せ」

「押します」

「戻せ」

「もどーせー」


 鳥島丸他の捕漁船にはバウスラスターが取り付けられていた。速力0でも旋回が出来るのである。狭い湾内では抜群の機動性があった。他にも艦隊で一番小さい船という理由もあった。


 ハシマールを浮かせている緊急展開フロートは前を大発艇に曳かれながら第十六鳥島丸に押されて港に入ってきた。見物人は勿論沢山である。

 見物人達がざわめく。自分達が見たことが無いデカい船が何かわからん白い物を押して港に入ってきた。

 その後には小舟が何艘か続いてくる。その小舟も櫂で漕いでいない。何もかもが常識外れだった。


「全部蒸気船かよ。とんでもないな」


「蒸気船?」


「ああ、ガンディス帝国で作られているやつでな、風が無くても進むそうだ」


「じゃあアレもそうなのか」


「多分な」


「でもよ。アレ鉄じゃ無いのか」


「鉄だと?」


 後ろから声が掛かった。

 

「おお、ドワーフの鍛冶屋じゃないか」


「なんか騒がしいので来てみれば、鉄の船だと?浮くわけが無かろう」


「じゃあアレ、見て見ろよ」


「なんじゃあ」


「浮いてるだろう。鉄の船だよな」


「おおお、凄い。なんで浮いているんだ。中を見たいぞ」


「さすがドワーフだな」


「当たり前だ。あんなゴツい奴見て興奮しないドワーフがいるものか」


「ああ。旦那、沖の船を知らないのかよ」


「なんじゃ沖の船とは」


「あの今目の前にいる船の何倍もある奴が沢山いるぞ」


「・・・嘘じゃろ」


「嘘じゃ無いぞ。皆見ているからな」



 第十六鳥島丸は、大発艇に従ってバウスラスターで細かく進路を変更しながらハシマールを押して行く。

 前進停止の指示があり後進をかけて停止する。海底が掻き回されて周辺が茶色く濁った。

 何杯かの大発艇がハシマールの前に回り曳航策を架けていく。

 じわじわ動き始めた。

 押せの指示が出る。


「両舷前進最微速」

「両舷前進最微速」

「前部バラスト放出」

「前部バラスト放出します」


 気持ち前が浮いた。

 ハシマールは前を大発艇に引っ張られ後ろからは第十六鳥島丸に押されじわじわと浅瀬に乗り上げていく。 

 やがて動かなくなった。曳航完了の合図が上がる。

砲艦外交が始まりそうです。こちらは意図しなくとも相手との技術レベルが隔絶していたらそうなりますよね。


シロギスは煮付けか天ぷらが正義だと思います。


次回 1月23日 05:00予定

遂に冒険者ギルドか

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