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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
60/219

移住者護衛艦隊構想

盛大にぶち上げました

 移住者護衛艦隊構想とは、山下少将が管理者から使用権を得た金で新たに艦隊を作ろうというのである。

(これ、海軍何杯分出来るのか)

 山下少将はおののく。

 艦隊を作る前に人材の確保である。「仏作って魂入れず」に成ってはいけない。



 海軍省に赴く。籍は海軍だが、今の身分は首相直轄の移民担当官である。


「と言う訳で、移民護衛艦隊に船と人を回して欲しい」


「大臣からも伺っております。国策としてやるのであれば是非はありません」


「恐らく海軍をもう一つ作ることになりそうだ。人員が決定的に足りん」


「それ程の物ですか」


「片道四千五百海里をローテーションで回す。一つの護衛艦隊に正規空母二隻、戦艦あるいは重巡二隻、軽巡二隻、一個水雷戦隊だ。途中の休憩を入れると往復で一ヶ月は掛かる。二週間ごとに入港とすれば、四艦隊必要になる。整備と休暇のために予備で一個艦隊が必要だ」


「水兵は求人すれば来ます。国内が落ち着いたので緊急を要する事業が減りました。その人材が来ます」

 

「転移景気で求人難だと聞くが」


「今は落ち着きました。ですがこの艦隊を整備するとなれば、造船関係を筆頭にまた求人が増えるでしょう」


「では、そうなる前に海兵団に入れてしまおう」


「承知しました」


「士官と下士官だが」


「士官は兵学校の増員もしますが出てくるのが三年後ですし、すぐに使えるもんでもありません」


「そうだな、それは分かっている。予備役や退役した者で素行の悪くない者を当たってみて欲しい」


「条件はありますか」


「普通に船に乗れればいい。如何しても足りなければ仕方が無い。再招集を行う」


「承知しました」


「そう言えば、かなり年齢幅がありそうだな。何歳まで採る気だ」


「二十二歳までです。何かお考えで」


「年齢制限は無しで良い」


「無しですか。それでは体力的にきついのでは」


「構わない。そういう人間は港湾業務等の後方支援業務に回す。艦船乗り組み員は二十二歳までで良い」


「了解しました。ですが、年齢制限無しだと求人が凄いと思われますが」


「移住者の受け入れ業務に大量の人間がいる。一万人や二万人は受け入れても良い。この受け入れ業務は陸軍との共同で行う。陸軍も求人を出すそうだ」


「受け入れ業務の範囲を伺っても」


「港湾業務から田畑の開拓、居住地の整備までだ」


「要するに何でも屋ですか」


「混沌獣以外との戦闘はさせない。それは徹底してくれ。船乗り以外は通常の戦闘業務は無しだ」


「それは陸軍も同じですか」


「同じではない。陸軍は移住者の警備任務が発生する。だが、移住者関連と本来の軍の任務は徹底的に分離する」


「それは何故でしょうか」


「君は今から私が喋ることを口外していけない」


「了解しました」


「一つは資金源の問題だ」


「資金源ですか?」


「この事業の金は、国家予算からでは無い。神倉庫からだ」


「神倉庫管理者が許可したら、使い道は自由なのではないのですか」


「この件については条件が付いた。移住者関連以外に使ってはいけないと」


「もし使えば?」


「日本に不幸が訪れる」


「戦争ですか?」


「戦争ではない。戦闘にならんだろう。相手は神にも等しい存在だそうだ」


「ぞっとしませんね」


「全くだ。そうならないためにも、徹底的に分ける。人員からもな」


「理解出来ました。いや、理解したいです。一つはと言われました。まだ有るのですか」


「そう、もう一つの方が厄介かも知れない」


「厄介ですか」


「8月に衆議院解散と総選挙が行われるのは聞いたか」


「噂では」


「確実に行われる。そして、現政権は旗色が悪い」


「負けると」


「そう考えているらしい」


「なんとなく理解しました。次期政権がどういう政策運営をするか分からないから、今のうちにいろいろ片付けてしまうと言うことですか」


「それが分ければ良い」


「では、可及的速やかに人員の補充を行います」


「頼む、金はこちらで用意する。海軍の金は使わないように」


「ここからですか」


「問題は無いと思うが、相手がどう判断するか分からん」


「警戒すると」


「そういうことだ。初期の立ち上がりは仕方が無いが、準備でき次第に移住者支援専用の機関を作って対処する」


「了解しました」


「頼む」


 山下少将は海軍省を後にした。

 次は艦政本部か。


「艦隊を作る。正規空母二隻、戦艦あるいは重巡二隻、軽巡二隻、一個水雷戦隊だ。これを五個作る」


「正気か」


「大臣から聞いていないのか」


「聞いている。それでも規模が大きすぎないか」


「移住者支援が終われば海軍の物だ。それでもいらないか」


「気合いが入れるな」


「分ければ良い。それに付随する支援艦もだ」


「大盤振る舞いだな」


「今しかチャンスはない。この機会を逃せば二度と無いだろう」


「しかし、金は如何する」


「金は神倉庫から出た」


「賄えるのか」


「余裕だ」


「それなら任せろ。ごつい奴を作っても良いのだろう」


「ほどほどにな。艦が退役するまでは費用は負担出来ると思う」


「維持費用の心配はいらないと」


「おい、うわさのA-150は駄目だぞ」


「アレか?九万トンで五十一センチ砲九門の戦艦」


「そうだ。オレが艦隊勤務だったのは知っているだろう」


「栄光の水雷戦隊司令だったな」


「はかない夢だったよ。一年も乗っていられなかった。そのオレでも分かる。これからは航空の時代だ」


「航空の時代か。確かにそうだな。ここでも新造艦は空母が主流だ」


「戦艦はツボにはまれば強いが、汎用性に欠ける。空母は汎用性が高い。遠距離攻撃が出来るしな」


「じゃあどの程度の戦艦なら良い?」


「五万トン前後で良い、大和級でもいいが載せる主砲が無い。三十六センチ砲なら五万トンで重装甲かつ高速の戦艦にしようと思う」


「強力な長門だな。全部で五十万トンか」


「基本はそうだ」


「じゃあ同じ船形を元に空母を作っても良いだろ」


「空母か?勿論良いぞ。ただし、最初は就役が早いほうが良いから、早めに作ることの出来る翔鶴級が良いな。いや、雲龍級でいい。とにかく急ぐ。今の艦隊は通常任務に戻したいからな」


「最初の四隻は雲龍級で残りの六隻は新艦型にしよう」


「間に合うのか。移住が終わるまでにだぞ」


「去年初めから工事に入っている雲龍級が続々と進水を始める。海軍から買ってくれ。軽巡は九頭竜と黒部・四万十が進水して艤装に入っている。これも買え。重巡は、越百級が去年工事に入っている。四隻だ。駆逐艦は、夕雲級を民間の造船会社に出来るだけ分散して発注する。空母直援艦はいらんのか?」


「秋月級は欲しい。これも民間か」


「出来ればな。とにかく民間の工事量が足りん。政府の補助で倒産はしないが良い状態じゃ無い。一息つかせたい」


「民間で軽巡以上の大型艦艇を建造出来る所はどのくらいある?」


「少し待て」


 問い合わせに行ったようだが、どうなるのか。そう言えば、大型優秀船が一斉に改造に入るが、空きはあるのか。


「待たせたな」


「どうだ、有るのか」


「建造用ドックが四ヶ所、船台が十二ヶ所有る。ドックはもっと空いていて良いはずだが、何故か貨物船の改造工事予約が入っているようだ」


「移住者を乗せるために、貨物区画に居住性を持たせる改造を頼んだ」


「それでか。比較的短期で儲かるか。では船台は軍で予約するが良いか?」


「頼む。軽巡と重巡は船台で出来るだろう?」


「越百級は難しいが、海軍から監督を出して何とかしよう」

「それと人数はこの距離だ。出来ても年間十万から十五万だろう。違うか」


「見積もりでは、最大でそのくらいだ。だが、船を増やせばもっといくぞ」


「増やすのか?」


「こういうことは早いほうが良い」


「船があるのか?」


「外国航路の貨物船がかなり空いている。船会社が儲かると思えばもっと増やすかも知れない。遊ばせているよりもいいからな」


「国内に使えんのか」


「でかい船ばかりだ。内航船相手の港では接岸が出来ない」


「じゃあ、最短でどのくらいで終わる?」


「最短で、六年」


「六年か。ではそれ以内に全艦完成させないとな」


「出来るのか」


「やる。こんな機会は二度と無い。もう戦艦を作ることもないだろう」


「頑張ってくれ」


 そう言って艦政本部を後にした。



「甘いぞ、山下。貴様、戦艦あるいは重巡と言ったな。ならば、こちらで勝手に振り分けさせて貰う」


 艦政本部造船部長荒巻少将がほくそ笑む。

 内線電話を取り、笹川大佐と木下大佐を呼ぶ。


「部長、お呼びでしょうか」


「忙しいところ、すまんな。実は、新型戦艦を建造することになった。六隻は建造する。他にも空母など多数を作る」


「新型を六隻ですか」

「空母もですか。凄いことです」


「まあな。ただA-150は駄目だと言われたよ」


「アレは、ただの目標というかですから」

「実際、不可能でしょう」


「何故かね」


「予算がありません。大和級二隻分です。大和級でさえ、旧式戦艦五隻の廃艦と引き換えだったのにA-150の予算があるとは思えません」

「それに主砲が造れるかどうかも」


「そうだな、予算は有ると言ったら如何する」


「予算があれば建造は出来ますが、その後の運用が人員不足の海軍で出来るとは思えません」

「二十インチ砲の製造に何年かかるか」


「では、もっと現実的なところに落とそうか。五万から七万で。主砲が十六インチから十八インチならどうだ」


「十六インチなら可能と思われます。恐らく五十口径でもいけると思われます。十八インチは四十五口径なら、五十口径はどうでしょうか。十七インチは、十六インチで上手くいけば五十口径も可能かと。どちらにして、設計は出来ます。しかし、製造のノウハウが十四インチまでしか有りません。現に、OTO社製三十八センチ砲の製造が出来ません」

「船体の方は大和級で経験を積みましたので、七万でも問題は有りません」


「では、設計に入れ。戦艦は六隻で四十五万トンだ。重巡は超甲巡計画が有ったな。アレをいじって二万から三万で四隻だ」


 艦政本部の暴走が始まった。














出るか四十六センチ砲九門


次回 11月14日 05:00予定

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― 新着の感想 ―
[一言] 時節遅れのコメントですが(^_^;。16インチ45口径砲を実用化したなら、15年後に18インチ45口径砲を開発するのは大丈夫かと。砲身命数の関係から50より45口径の砲が良いでしょうかと。
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