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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
前章 日本、転移の理由と転移先を知る
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驚異の世界

チュートリアル回です。

 元の地球との違いを説明しなければならない。

 面倒だなと思う。この二人の男ツールとマレーはどちらが説明するかでしばし睨み合う。ちなみに軍港の担当は、ラルプとデュエズ。

 

 ツールが折れた。

「ではご説明しましょう」

「まず一番最初に覚えて欲しいのは、この世界には魔法があります」

「「「魔法?」」」

 神田一等飛行兵曹が聞く。

「あの、なんか呪文を唱えるといろいろな事が起こる、あの魔法?」

「まあそういうものです」

「おまえよく知っているな」

「子供の絵本にあった」

「へー」

「おまえ結婚してないだろ」

「親戚ん家」

「なる」


 パンパンと手を叩いて無駄口を止める。

「次に大事なのは、皆さんと見た目が違う人達、種族がいます」

「えーと、白人とか黒人ですか」

「皆さんと肌の色が違うだけですね。そうでは無くて耳が長かったり少し背が低いけれどがっちりして髭が凄かったり・・」


 ガタ。椅子を倒して起き上がった奴がいる。後ろの迷惑も考えずに。

「まさか、エルフとドワーフが実在する?」

「ほう良くご存じで」

「いや、そんな、あれは物語の人物、実際にいるなんて」

「物語ですか。想像力の強い人はまれに他の世界を意識できる事があります。もしかしたらそういう方かもしれませんね、その作家は」

「トールキン、トールキン先生です」

「どちらの生まれですか、もうお亡くなりですか」

「イギリスです。まだ生きています」

「ほうイギリスですか。面白いですね」

 ツールがニヤッと笑う。


「栗原少尉、興奮するな。後ろの迷惑を考えろ」

「失礼しました」

「栗原、どっちがエルフでドワーフなんだ」

「はっ、耳が長いのがエルフで背が低くてがっちり髭が凄いのがドワーフです」

「ツールさん、正解か」

「正解です」

「凄い、凄いですよ。栗原少尉」

「凄いな」


 栗原は今になって恥ずかしくなったらしい。真っ赤になって縮こまってしまった。まあよく日焼けしているので赤くなってもあまり分からないが。


「エルフとドワーフだけではありません。普通の人に獣の耳と尻尾がついた獣人という人もいます」

「顔は如何なんですか」

「顔は普通の人間です。耳と尻尾だけですね、違いは」

「猫!猫の獣人はいますか」

「いますよ。ネコ、オオカミ、ウサギ、クマ、イヌ、キツネ、牛、山羊が主ですね」

「主と言うことは、それ以外にも」

「います。ただ少数民族でめったに会えません。この世界の人でも種族は答えられ無い人もいます」

「へー」


「今まで紹介した種族は人と敵対していません。これからは敵対する種族です」

「敵がいるのですか」

「います。ケンネルとオークです」

「なぜ敵対を」

「種族的なものですね。彼等は人種を食料と苗床としか思っていません。ですからあなた方がその二種族と出会ったら、逃げるか殺すかしてください」

「話し合いは出来ませんか?」

「過去、記録にあるだけで数百人が対話を求めて食べられました」

「苗床というのは?」

「苗床は、ここには女性がいませんので正直にお話しましょう。ズバリ人種の女性を妊娠させます。生まなくなるまで強制的に生ませます」

「生まなくなったら?」

「食料です」

「・・・・・・」

「ここは良い世界ですが、楽園ではありません。そのことをよく心得てください」



「替わるよ」マレーが説明役になった。


「ケンネルとオークは完全に敵なわけだが、時たま敵になるやっかいな種族がいる」

「時たまですか」

「そう時たま。魔族と竜人族だ。これら二種族は普段はおとなしく人種との付き合いも良い」

「なぜ」

「魔族の住んでいる土地は人種と隣接していてな、彼等はその魔法技術で大地を肥沃にしている」

「ではその土地を狙って?」

「そうだ。襲われれば当然反撃はするよな?」

「しますね」

「その反撃が過剰になることがある。襲った奴らだけで済めば良いのだが、周辺も長期かつ広範囲に荒らされてしまう」

「それが敵対ですか」

「そうだな、やり過ぎは良くないという見本さ」


「それだけじゃ無い。時々、二百年から五百年おきくらいに魔王という存在が生まれる。魔王が生まれれば魔族のかなりの人数を従えて、人種と敵対し攻めてくる」

「魔王ですか」

「魔王だ。三百年前の魔王はとくに凄かったな。自称、第六天魔王だ」

「第六天魔王、もしや」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」


「ただ彼は征服した土地の人々はごく普通の生活を許した。それどころか、支援をして生活を向上させもした」

「なぜですか、敵対して征服するなら、後の施政は過酷になるはずでは」

「彼はそうした方が、自分たちに返ってくる部分が大きくなることを理解していた」

「税収の増加と、敵対心の低下ですか」

「有り体に言ってしまえば、そうなるかな」

「今はどうなっていますか。第六天魔王」

「内部抗争が有ってな、彼も油断したのだろう。側近にやられたよ」

「まんまですね」

「そうとも言う」


「では、竜人族だ」

「わくわく」

「普通の人間に角と尾、後はウロコだな」

「ウロコですか」

「ウロコだ。ただその角とウロコにはずいぶん価値があってな、それを狙って竜人族を捕まえたり殺す者がいる。そうすると怒るわけだ」

「魔族と同じですね。ここの人種は馬鹿なんですか」

「人の欲望には限界が無いからな」

「で角とウロコの価値とは?」

「角は不老薬として扱われる」

「不老ですか」

「不老と言うが、そんなことはない。多少若返るだけだ。しかも複数回使用すると酷い副作用がある」

「副作用?」

「化け物になる」

「化け物ですか」

「化け物はその都度姿が違うのでな、化け物としか言えん」

「ウロコは、どうゆう物ですか」

「特定の加工をすると、とても丈夫で美しく変化する」

「装飾品とか、武器ですか」

「そうだ。それを自慢する奴がいる。竜人は必ず復讐をする」

「人が悪いですね」

「それでも欲しいほどの物なのだ」

「普通には流通しないのですか?」

「しているよ。竜人族でも罪人はいる。そいつらの角とウロコは高いが手に入る」

「なら、わざわざ、襲わなくとも」

「竜人族の罪人から取った角とウロコは、竜人族によって劣化措置が施されてから人族に売却される」

「劣化ですか?凄く落ちるとかですか」

「そんなに酷くは無い。ただ劣化処理されていない物との差が明らかに分かる」

「差とは?」

「色艶や強度だ。劣化版でも性能は凄いがそれ以上だ」

「必要なのですか?」

「通常は必要ない。ダンジョンや領地争いではかなり差が出る。それ故ほしがる」

「「「「「ダンジョン?」」」」」

「あ、しまった。ダンジョンは忘れてくれ。また後でな」


 マレーはツールにポイされた。


「では、私ツールが説明を続けよう」

「ダンジョン」

「今は忘れて欲しい。後ほど説明する」

「分かりました」

「他にも少数種族が存在するが、その都度理解して欲しい」

「はい」

「では世界情勢だ」

「む」

「そうだね、一番関心が強いだろう。そういう世界から来たのだから」

「戦争はありますか」

「あります」

「楽園では無いと言われましたね。そんなに争ってばかりなのですか」

「そういうことは無いです。戦争などたまに起こることです。でも油断すると負けますからね」

「心します」


「この世界の文明は地球基準で行けば中世から現代までいろいろ有ります」

「現代国家がすべて制圧しそうですが」

「それが魔法によって妨げられます。運用によっては一個師団程度吹き飛びます」

「そんな凄いのですか。魔法とは」

「そんなこと出来るのはごく一部の者です。あ、魔族と竜人族は結構いますね」

「そんな相手にけんかを売る人達はなに考えているのでしょうか」

「さて、その人ではありませんので」


「国家間の争いは地球並みにあります。また、魔法のせいで科学技術が必ずしも優位とは言えません」

「では日本も負ける可能性があると」

「有ります。ですから日本の皆様には慎重な立ち回りを期待します」

「努力しましょう」

 矢口司令は言った。

(((((司令って中佐だよな。しかも辺境基地の)))))


「続けます。魔法のおかげで生活水準は高いです」

「中世でも高いのですか」

「例えば、遠隔通信や上下水道に準ずる物はほぼすべての国にあります」

「日本より凄い?」

「衛生状態は上下水道に限ってはこの世界のほうが高いですね」

「厠が臭くないのですか?」

「消臭という魔法が有ります」

「魔法凄い」

「すぐに導入をしなければ」

「またほとんどの家に消臭と滅却の魔法が着いた道具。これを魔道具と言いますが、有ります」

「滅却とは?」

「文字通り、小と大を滅します。後には残りません。それと消臭ですので、どこの家庭でも便所は臭く有りません」

「これは是非導入を司令」

「「「「「司令」」」」」

「まあ分かったから、続きを聞こう」

「「「「「はっ」」」」」


 なぜかみんなの意見がまとまることが多い。


「飲み水ですが、浄化と言う魔法が在ります」

「浄化」

「ですから、殺菌されるとみて良いでしょう。不純物もかなり除去されます」

「浄化の魔道具はあるのですか」

「有ります。ただ、消臭と滅却の付いた魔道具よりも高いので、普及はそれほどでもありません」

「水はきれいですか」

「そうですね、日本の清流並の所は多いですよ」

「「「おお」」」


「話がそれました。世界情勢に戻します」

「はい」

「この世界ランエールでは、混沌の領域という人が生きるには厳しい領域があります」

「混沌ですか」

「そう。まず開拓が不可能です。木を切り倒しても、一ヶ月もすれば元通りです。建物を建てても下から木が伸びてきて壊されます。現代水準の国家が鉄筋コンクリートで固めましたが三ヶ月しか持ちませんでした」

「木ですよね。まるでここは俺の物だと主張しているような木か」

「とんでもないですね」

「ですが、木材の供給に困ることはありません。ですから混沌の領域の近くはかなりの人が住んでいます」

「確かに言われてみれば、良い場所ですね」

「良い場所と言うことは場所取りも厳しいのでは無いですか」

「厳しくはありません。混沌の領域に住む代表的な種族がケンネルとオークです。ケンネルとオークは人を襲います。かえって近くを嫌うこともあります。また混沌獣という生き物がいます。ネズミ程度の物から象クラスものもいます。ほとんどが人を襲います。対抗する手段が必要になります」

「近くに住んでいる人達は対抗できると言うことですか」

「被害は出ますが出来ます」

「それでも住むほどの利点が木材以外にあるのですか」

「良質の薬草が採れます」

「薬草ですか?」

「漢方薬のような物?」

「近いですか、効果が全く違います。大怪我でもすぐ治る効果を持つ薬草もあります」

「それは凄い。栽培は出来ないのですか?」

「混沌の領域以外では育ちません。かなりの利益になります」

「日本にはないのですか」

「この世界固有のもので転移したところにはありません」


 少し休憩を入れた。


「日本が転移した場所は、他の国からかなり離れています」

「離れている?」

「はい、日本の西に大きな島。大陸とも言えますがあります。その島を越えてさらに海を渡らないと近代国家と接触は出来ません」

「西はそうですか。では東は如何なのですか。この島が日本で一番東です」

「この星は直径が地球の2.5倍です。円周は八万七千キロ、表面積は6倍にもなります。ここから東の大陸まではかなり距離があります。飛行機では行けません」

「北には少数民族がいますが国家と言えるほどではありません。南は国があります」

「敵対的ですか」

「日本の出方次第でしょう」


 いろいろ教えてもらってその日は日が暮れた。




まだ続きます。

次回で大阪に場面が変わります。


九月七日05:00予定です

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