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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
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カラン村の日々

三十七話 「カラン村再び」の続きです。

話が飛び飛びで申し訳ありません。

 次の日、ケイルラウがケンネル上位種を解体している。状態が良いのでとてもやりやすいし、取れる素材も良質になると言う。

 上位種は使えない場所は無いと言っても良いそうだ。


「なあ、ケイルラウ。その手に持っているのは大腸だよな。使うのか」


「何を言っている。使うに決まっているではないか」


「でもその中身ウンコだぞ」


「ウンコはある薬草と混ぜてから、日光にさらしておくと良い肥料になるのだ。使わないわけがない」


「そうなのか」


 肥だめみたいな物か?堆肥なのか?


「だから上位種は使えない場所はほとんどないと言っただろう」


「ウンコまで使うとは思わなかったものだから」


「ウンコ、ウンコ五月蠅いな。ウンコ好きなのか」


「好きな奴がいるのか」


「いないだろうな」


「で、ウンコを出した後の大腸はどうするのだ」


「大腸は皮だけにする。皮以外のものはさすがに使わない」


「皮は?」


「特殊な薬液につけてから乾かすと、薬液の保管に適した容器になる。肛門も使わないぞ」


「なんだ、肛門から絞り出すと思った」


「お前、こっちをなんだと思っている」


「不思議なことが出来る人」


「むう、なんだかはぐらかされた気がするが、まあいい」


「すまなかった」


「許そう。それで追加の上位種は明日着くのだな?」


「その予定だ。後、こいつをどうやって倒したか、報告書も来る」


「楽しみだな」


「俺はやらないぞ」


「なんだ、上位種相手に戦いそうだが」


「そんな危険な事はしない。俺は中型中位までで十分だ」


「欲がないな」


「そういうのは若い奴の仕事だ」


「確かにな」


 ケイルラウと上村が話をしている所へ、人が入ってきた。


「あ、上村中尉、お久しぶりです」


「だれ?」


「いやだな。間ですよ。第一次部隊の」


「間、間・・ああ、思い出した。確か本間先生の弟子かな?」


「そうです。本間先生の弟子です」


「すっかり人相が変わっているのでわからなかった」


「そんなに変わっていますか。良く言われるんです」


「すっかり逞しくなって、髪も伸びた。ぱっと見じゃ誰かわからんよ」


「逞しいですか。今狩りから帰ってきた所なんです」


 照れくさそうにする。

 うらやましい。俺なんか、事務仕事ばかり増えて運動不足もいい所だ。


「クロは、魔法陣を発動出来た、初めての日本人だぞ」


「彼がそうですか。村長から聞きましたが。そうですか」


「うむ、中々見所はある。混沌獣を狩りに行くしな」


「混沌獣狩れるの。君」


「まあ、小型中位までですが」


「混沌獣を狩ると、強くなるのだ」


「初めて聞きました」


「知らなかったか?」


「はい」


「では言い忘れたか」


 また新発見です。今度は何を言われるんだろう。参謀本部には行きたくないな。


「それはどういう事ですか」


「クロが逞しくなったと言ったろう?」


「言いました」


「クロは最初、小型下位の混沌獣でさえも狩ることが出来なかった」


「それは言わないでください。ケイルラウ」


「いいじゃ無いか。可愛いクロの物語だ」


 なんだ?可愛い?間、真っ赤になっているぞ。んーーー


「わかりました。自分で言います。上村中尉、俺は最初、ネズミクラスでさえびびってしまい倒せませんでした」


「アレは、棍棒が当たれば充分倒せるぞ」


「それが出来なかったんです。僕、俺は軍人じゃないし、武道もやりませんでした」


「今は出来ると。ウサギクラスがいけるのか」


「ウサギクラスなら一人で行けます。囲まれても五匹までなら怪我はしません」


「へー、凄いじゃ無いか。陸軍でもなかなかいないぞ」


「そうなんです。何でこうなったと言っても混沌獣を倒しているからとしか言えません」


「それで強くなったことを実感出来たと」


「はい、そうです。ついでに魔力も強くなりました」


「はあ?魔力もだと」


「そうなんだよジンイチ。この間、魔石無しで魔法陣の発動に成功したんだ」


「どういう事だ?」


「混沌獣を狩るとな、強くなると言っただろう。魔力も強くなる」


「なぜ?」


「さてな。昔からそうなんだ。神の御業だと考えられている」


「神の御業じゃあ、なぜかわからないな。そういうものだと考えるしか無いか」


「素直じゃ無いか」


「何しろ日本人は神の奇跡を体験しているからな」


「そう言えばそうだったな。実際に体験しているから、素直に受け入れられるのか」


「そういうことだ」


「ジンイチも小型の混沌獣を狩ったことはあるのだろ。強くなった実感は無いのか」


「そう言われれば何か体調が良くなったような気がする」


「小型の上に数が少なければそんな物だよ」


「まて、小型ではかなり数をこなさなければ、実感出来るほど強くならないと言うことか」


「そうだ」


「なら、間君はどれだけやったのだ」


「え?俺ですか?ここに来てから三百以上はやっています」


「三百か、陸軍では多くても二十から三十くらいだしな、実感出来るほどでは無いか」


「そうだな、そのくらいでは健康維持程度だろう」


「ちょっと待て、健康維持程度とはなんだ」


「少し強くなって、風邪を引きにくい程度かな。後かすり傷くらいなら少し早く治る程度だ」


「傷の治りも早くなるのか」


「なる。ただこの間解決した寄生虫のような強力な奴には対抗出来ない」


「どういう事だ?」


「アレは生き物だな」


「まあな」


「だから健康になると言ってもその程度だ。体の中の別の生き物に作用するようなものなら、我々は滅びているよ」


「つまり、病原体には効かない?」


「なぜか効かない。ただ一度罹って治った病気には二度とならない」


「なんだ重大な事だな。間君は知っていたか」


「いえ、俺も初めて聞きました」


 参ったね。今度の報告書で参謀本部行きは決定だな。内務省もあるかもな。気が重いぞ。


「そう言えば本間先生が来ているぞ」


「本当ですか、すぐ会いに行きます」


「広場にいると思う」


「ありがとうございます」


 間は走って行った。


「元気だな」


「ほんとにな。村に来た頃はヒョロヒョロだったのに」


「この村の人と比べると日本人は皆ヒョロヒョロだよ」


「そうだな。こんな奴らが混沌獣を倒せるのかと思った」


「そうなんだ」


「そうだ。強力な武装があってこそだな」


「まあな。頼りになる武器だ。この武器を基本とした戦い方を習得している」


「前の世界ではそうだったのか」


「そうだ。先進国はだいたい似たり寄ったりだった」


「日本は先進国なのか?」


「先進国の尻尾くらいだな。頭の方じゃ無い」


「頭の方はどんな奴だ」


「絶対に戦争はしたくない、くらいの相手だ」


「その国はランエールに来ているのか?」


「来ていないようだ」


「分かるのか」


「その国が飛ばされた所から帰ってきた人間が言うには、夜空が違うと言っていた。間違いないと思う」


「じゃあ安心だな」


「そうだな。ただ日本以外の国もこの世界ランエールに来ているようだ」


「ほう、分かるのか。ああ夜空か」


「月が同じだと言うが、他の世界にもこういう月が有るかも知れないだろ」


「それはそうだ。では出会ってみなければ分からないか」


「そういうこと」


 その後世間話をして、ケイルラウの所を失礼した。大怪我用魔法陣は、小型上位種の良質な素材があれば胴体程度の怪我をカバー出来るものが出来るそうだ。製作に一ヶ月ほど掛かるようだ。


 間君は、広場の隅で本間先生に一生懸命語りかけていた。本当に好きなんだな。


「本間先生、間君の成長はどう思われますか」


「上村君か。驚いたよ。逞しくなったし、なにより、魔法陣を魔石無しで発動出来たというじゃないか。村に健康にも役立っている。ここでどうやって鍛えたやら」


「本間先生、あまり褒めると間君が居づらそうですよ」


「はっはっは、いいじゃ無いか。弟子の成長は嬉しいものだ」


「先生、ありがとうございます」


 間君はほんとにいい顔をしている。成長したという実感があるのだろう。



 翌日、午後になって日本から上位種の素材が届いた。報告書と共に。

 読むと、憂鬱になりそうなことが書いてあった。

 素材はケイルラウに渡す。


「その素材はあまり良くないだろう」


「確かに良くないが、これでも良い方だぞ」


「そうなのか」


「だいたい傷だらけだ。切った痕や魔法で攻撃した痕などで、ボロボロのことが多い。こいつは断面以外は綺麗だ」


「だけど内臓は全滅。魔石も壊れていると言うことだ」


「内臓はともかく、魔石は残念だったな。欲しかったのに」


「それがな、恐ろしい報告書が回ってきた。後で村長やアビゲイル達とも知ってもらいたい事がある」


「なんだか聞くのが怖いな」


「俺も話すのがいやなくらいだよ。ひょっとしたら君たちは知っているかも知れないが」


 ケイルラウの所を辞し、村長にアビゲイル達を交えて話がしたいとお願いした。要件は小型上位種を倒した時のことだ。

 その日の夜。ケイルラウ、村長、アビゲイル、ロウガ、ミカヅキ、タガナキ他数人を交えて、上村の話が始まる。


「日本から小型上位種の素材が来たことは知っていますね」

「知っている。どうやったらあんないい状態になるのか分からないが」

「強力な鉄砲で滅多打ちです」

「滅多打ちって、可能なのか」

「やれたみたいですね。これがその弾です」


 上村が見せたのは、各種弾頭だ。七ミリ、十三ミリ、二十ミリ、三十七ミリ、五十七ミリ。


「この中で一番小さい奴が、我々が常に持ち歩いているものです」

「イノシシの混沌獣でも苦労する奴か」

「そうです。それでですね、今回手に入れたケンネルの小型上位種ですが、この十三ミリと二十ミリは通用しませんでした」

「そんなでかい奴が通用しないだと」

「報告書ではこの十三ミリは無視されたと言うことです」

「当たったのを無視なのか」

「そうです。報告書によると痛痒を感じなかったようだとなっています」

「それシカの混沌獣に通用するよな」

「しますね」

「通用しないか」

「次に二十ミリですが、邪魔くさく感じたようだと」

「邪魔くさい?」

「そう書いてあります。多少体がふらついたと」

「多少かよ。シカなら一発だよな」

「一発です。頭が吹き飛びます。頭の素材がとれないのでシカ相手には最近使わなくなりました」

「クマをやっているよな」

「クマならちょうど良い威力のようです」

「それがふらつくだけなのか」

「報告書では」

「それじゃあ、上位種をやった弾はそのでかい奴か」

「そうです。五十七ミリは体が半分にちぎれたそうです」

「あの上半身と腰から下だけの素材か」

「そうですが、混沌領域から三十キロメータくらい離れていたと言うことなので、どの程度弱体化していたかは分かりません」

「三十キロメータだとそこまで弱体化はしていないよな?」

「そうだな、八割程度か」

「そんなものだろう」

「では普通の混沌獣と同じ弱体化傾向にあると?」

「そうだ。ここでは上位種は出ないので、言わなかった」

「必要なければ言いませんよね。分かります」

「そうか、対抗出来るのなら有り難いな。俺だけでは手に余るから」

「アビゲイルは上位種に対抗出来るのか」

「そうだな。このくらいなら、一人で相手をして倒せる」

「凄いですね」

「アビゲイルが強いのは分かったから、綺麗に倒せた奴の話をしろ」

「アレは、ケンネル一千体くらいの集団に、大型混沌獣十体を従えた個体です」

「「「「はあ?」」」」

「なんだそのでたらめは」

「報告書によるとそうなっています。写真が付いていました。これです」


 皆で見る。唸る。



次回は、東鳥島での上位種との戦闘場面ぽいものになります。あくまでもぽいです。


次回、十月二十四日 05:00予定

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