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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
40/219

東海域捜索隊

東鳥島から東へ大陸探しに出かけます

 海軍は、東海域の捜索に大戦力を充てる気は無かった。そんな艦の余裕が無かったのである。

 当初は重巡一隻、空母二隻、軽巡二、駆逐艦八、油槽艦二、補給艦二、民間徴用の貨客船一で構成するつもりであった。

 重巡は高雄級、空母は瑞鳳級、軽巡は阿賀野級、駆逐艦は陽炎級の予定で在った。

 途中で会う可能性のある海洋性混沌獣は、捕獲せずに全て沈める気でいた。

 そこへ民主光輝党から文句が入った。


 曰く

「文明と遭遇する可能性があるので、もっと見栄えを良くしろ。戦艦は大和を加えろ。空母も小さい奴は見栄えが悪い。海龍が出来上がっているという話は聞いた。海龍にしろ。巡洋艦や駆逐艦も最新鋭の艦で行くように」

 さらに追加で、海洋性混沌獣の捕獲も命令された。

 沈める気でいたが、勿体ないし新しい個体の可能性があるとされた。新しい個体には反論出来なかった。

 

 捕魚母船の最大速力は十八ノットだ。艦隊に付属する艦隊補給艦と艦隊油槽艦は転移後の設計で二十三ノット発揮可能になっていた(注)。艦隊の最大速力は二十三ノットである。機関を強力な物に載せ替えて二十三ノット出せるようにする。幸い建造中の母船があったので調達期間は少なくてすんだ。母船は高速航行に向いた船形では無く全速航行などすれば、悲惨な燃料消費になることは十分予想出来た。

 捕漁船は二十五ノット出るので新しい船を持って行くことになった。


 海軍は困った。時期的に大和・武蔵・甲斐は定期整備の為交代でドック入りである。甲斐は大和と武蔵が出てきたらドック入りする予定だった。

 それを説明すると、使えない奴らと言われた。海軍が民主光輝党のことが大嫌いになった瞬間だった。

 海龍は一隻しか無い最新艦で、まだ慣熟航行がすんでいないというと、なんですぐに使えないのと文句を言う。

 説明した海軍大佐は心の中で素数を数えていた。落ち着け。落ち着くんだ。2って素数だっけ。


 結局、東海域捜索隊の出航は与党が希望した正和十九年冬では無く、正和二十年春となった。

 南アタリナ島に集合してから航海に出る旨伝えると、大阪沖から出るように要求してきた。どうも盛大に見送りをして、自分たちの実績にしたいようだ。


 結局新鋭艦で編成された。


東海域捜索隊

 旗艦

 第一戦隊二分隊

  甲斐


 第七航空戦隊

   海龍 黒鶴 凍鶴


   第三直衛隊

   新月 若月 霜月 照月


   第四直衛隊

   宵月 満月 花月 清月 


 第四戦隊

  越百 八海


 第十四戦隊

  伊吹 生駒


 第二水雷戦隊 

 旗艦 能代


   第二十二駆逐隊

   長波 巻波 高波 大波


   第二十三駆逐隊

   清波 玉波 凉波 藤波


   第二十四駆逐隊

   早波 浜風 沖波 清霜


   第二十五駆逐隊

   朝霜 早霜 秋霜 沖霜

 

 艦隊補給艦四隻、艦隊油槽艦四隻、橿原丸

 捕漁船二隻、捕魚母艦一隻

 

 能代以外は転移後に完成、配備された最新鋭艦である。

 珍しく軽巡一隻、四個駆逐隊十六隻の完全編成の水雷戦隊が出来ていた。


 

 正和二十年四月一日大阪沖に集合して出航した。付近にはカメラマンや記者を乗せた漁船で一杯だ。危ないので下がるように警告しても近づいてくる馬鹿がいる。社旗を見ると「朝」と「毎」となっている。危険なので単縦陣でゆっくりと進む。

 案の定近づきすぎて転覆した船がいた。こちらは危険なので近づくなという警告をしながらの航行だ。彼等が得意になって使う自己責任とやらで事故の責任を持って貰おう。こちらは止まれないし。それでも駆逐艦が一隻隊列から離れて助けに向かう。


 和歌山沖でようやく着いてこなくなった。ここから南アタリナ島までは一気に進む。



 海龍は十三年計画で唯一計画された空母 十七年冬竣工予定だったが転移のゴタゴタで予定がずれ十九年夏の竣工となった

 翔鶴級を元に艦型の拡大と全面装甲された飛行甲板を持ち、他の非装甲空母がやられても装甲空母だけは着艦が可能となるよう計画された。


基準排水量 四万六千トン

機関出力 二十万馬力

最大速力 三十二ノット

航続距離 九千八百海里 十八ノット

長10センチ高角砲連装八基

一式三十三ミリ機銃連装六基

一式三十三ミリ機銃四連装八基


搭載機 五十五機 補用八機 格納庫は一層、機体の大型化に対応して高さを高くした。

斜行甲板、カタパルト三基、舷側エレベーター二基、大型エレベーター一基、翔鶴級と同じ煙突一体型艦橋

カタパルトとエレベーターの数を増やし、発着艦の迅速化を図った。

装甲は八〇番の3000メートル水平爆撃に耐えうるものとされた。八〇番は通常であった。

竣工時期が延びたことにより、電探は最新の十三号水上捜索電探、二十三号対空捜索電探、三十三号射撃管制電探が装備されている。


海洋性混沌獣対策として三式対潜迫撃砲を両舷に装備している他、三十三ミリ機銃連装六基を近場の海面が撃てるようにスポンソンを改造した。



 四戦隊の越百と八海は、青葉級以降の重巡を更新すべく建造された新鋭重巡だ。転移前から建造が始まったのは二隻。転移前の計画では八隻建造予定であった。残りの六隻はいずれも起工されるが、竣工は二十一年秋から二十三年冬となっていた。


越百こすも

基準排水量 一万六千五百トン

機関出力 十八万馬力

最大速力 三十五ノット

航続距離 十八ノット一万海里

兵装

二式二〇,三センチ砲 連装四基八門

一式一二,七センチ高角砲 連装八基一六門

一式三十三ミリ機銃 連装八基

一式三十三ミリ機銃 四連装八基

九九式二号一型二〇ミリ機銃 単装八基


航空機 水上機三基

カタパルト二基


前級の利根を元に水雷兵装を廃し、対空能力を強化した。

利根級より本格的な砲塔防御がなされたが、本級では砲塔前面装甲厚を厚くしている。

二式二〇,三センチ砲は半自動装填を実現し、毎分七発の発砲を可能にしている。利根は五発であった。

戦艦の配備数が今後減ることが確実視されたために、旗艦機能を重視し高雄級のごとき巨大艦橋を備えた。艦橋の装甲は戦闘艦橋や操舵室・無線室・電探室・海図室など一部に限られた。

利根級の艦橋は最上級よりも大きい程度だった。

九九式二号一型二〇ミリ機銃はエリコンFFLの艦載用として開発された。前面に防楯を備えている。ドラム給弾とされ装弾数は六〇発である。弾倉の交換は二人でも可能であったが三人以上を推奨されている。

東海域捜索隊に参加するに当たって、三式対潜迫撃砲を両舷に装備した。三十三ミリ機銃連装を近場の海面を撃てるように台座を手直しした。



一四戦隊の伊吹・生駒は改最上級であり、ほぼ最上級に準じているが、主砲の装填機構に半自動装填を採用し、毎分一二発の発砲が可能になっている。装填機構で重量や場所が取られたため、三連装から連装になっているが、単位時間での投射弾量は増えている。最上級毎分九〇発から、伊吹は一二〇発である。

やはり、東海域捜索隊に参加するに当たって、三式対潜迫撃砲を両舷に装備した。三十三ミリ機銃連装を近場の海面を撃てるように台座を手直しした。



 艦隊は南アタリナ島で一日休養し、東鳥島に向かう。

 東鳥島では最後の補給と休養をする。捕漁船が途中の食料にするために巨大魚二匹を捕獲した。


 艦隊は以前第一次東遣艦隊が到達した東鳥島東一千五百海里を通過してさらに進む。第一次東遣艦隊によると「水平線ノミ視界ニ在リ」となっている。既に東鳥島で出している電波は受信出来なくなっている。

 五百海里進んだが水平線しか無い。前面に出した哨戒機でも見えないという。


 さらに進むこと八百海里、哨戒機から入電があった。船を発見したと。難破しているようなので救助が必要とも言ってきた。

 接近すると警戒されたが攻撃は受けなかった。

 見えたのは人種で獣人もいる。

 船は三十メートル前後の木造船で傾斜している。

 帆船に見えマストが折れて航行不能の模様。


 艦隊から二百海里であった。


「司令長官、救助をしましょう」

「救助か。ここから二百海里なら巡航で十一時間だな。十四戦隊から生駒と、水雷戦隊から駆逐艦を二隻分派して先行させよう」

「賛成です。早いほうが良いでしょうから」

「七航戦から、水・食料を投下したい旨、上申がありました」

「許可する」

「了解しました」

「哨戒機には現地点で後続機の誘導をするよう」

「了解しました」


 海龍から天山が二機発艦していく。腹に抱いているのは水・食料を入れた救命投下缶だ。缶と言ってもブリキ製で投下後割れて中身とは分かれるようになっている。中身はパラシュートで降下するが海面に落ちても沈まないようにゴムボートが膨らむようになっている。


「海龍哨戒三番へ、こちら海龍艦攻一番」

「こちら海龍哨戒三番、感度良好。現在難破船上空を旋回中」

「了解。あと十分くらいで到着予定」

「了解、現状で待つ」


 二機は見事な機動で難破船に近づき、救命投下缶を投下する。意味がわかれば良いが。


 膨らんだゴムボートに何人か泳いでいった。興味があるのだろう。搭載物資には絵で大凡の意味がわかるようになっている。カラン村の住民に見せても、わかる。大丈夫だ。と、お墨付きのあるものだ。

 意味がわかったようだ。梱包を開けて中身を確認している。両手を挙げて喜んでいる。

 こちらにも、手を振って頭を下げている。感謝のはずだが、いいよな。

 その後しばらく旋回してから帰投した。発信器は作動が確認出来た。後は船の番だ。


 生駒は秋霜と沖霜を従えて三十ノットで航行していた。この速度で暗礁や小島を見つけても避けられそうに無い。勝負だった。幸い先行した哨戒機からは暗礁や小島の類いは見つけられずと報告があった。

 しかし、わずか数機の哨戒機での前路啓開など当てには出来なかった。海図の無い海である。


「見張りしっかり見張れ」

「やっています」

「クソ、電探のせいでマストに見張りを置けん。マストからなら見晴らしはいいのに」

「艦長、そんな興奮しないでください。手空きも出して見張ってます」

「航海、不安じゃ無いのか」

「不安です。しかし、見張りを信じています」

「後三十海里という所か?」

「そうですね。先ほど帰投する哨戒機とすれ違いました」

「そうだなもう日が傾いてきている。水偵を出しても帰還は夕方か」 

「艦長、行きます。夜間でも着水出来る技量はあります」

「飛行長、そうは言うが・・よし、出そう。正確な場所がわからん。電波源目指しているが小さいから見落ちしもあるだろう。行ってくれ」

「了解です」


 水偵が発進した。すぐ発進したと言うことは準備はしていたか。


「いるのか。どこだ」

「機長、電波はもう少し先です」

「もう少しか」

「機長、少し左です」

「左か」

「もうちょい」

「ちょい」

「針路乗りました」

「まだ明るいが、この星だと九月か、今は」

「そうみたいですね。夏至が八月なので今が一番日の入りが遅い頃でしょう」

「それは助かる」

「機長見えました。十一時下方」

「どこだ。お、見えた」

「生駒に通信、ワレ発見セリ」

「ワレ発見セリ、通信しました。この距離なら無線電話でいけると思いますが」

「確実にだよ。遭難者救助だろう」

「そうですね。確実が第一です」

「なあ、駒木、水偵は三人欲しいよな」

「どうしたんですか。機長」

「二人だと見張り能力がどうしても落ちる。目は多い方が良い」

「そう言われればそうですが、羽田大尉、こいつは高性能だと言って喜んでいませんでしたか」

「まあな、降爆出来る水偵なんて今まで無かったし。主翼の二〇ミリも頼もしい」

「どっちがいいんでしょうね。戦争ならこっちでしょうが、救難捜索だと三座水偵が良いでしょうか」

「とっ、右艦影」

「艦影か、来たな。翼端灯に尾灯、さらに着水灯まで点けよう」

「電探で見えています」

「目視が確実だろう。下に要救助者がいるし」

「そうですね」


 秋霜と沖霜が近寄っていく、暗くなり始めたが大丈夫だろう。両艦から発見した旨通信が入る。


「帰るぞ」

「了解」


 生駒が取り舵で内側に静水面を作ってくれる。着水だ。




要救助者発見

ケモ耳もありだよ


降爆が出来て、二〇ミリ機銃装備の水上偵察機と言えば、アレしか有りません。


注*ただし、積載量七割状態。満載だと二十ノットが一杯。


次回 十月二十日 〇六:〇〇

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