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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
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魚型混沌獣対策および東大陸発見の旅が始まった理由

巨大魚対策ですね。

海のアレと言えばやはりアレを出さないと。アレと並ぶもういくつかのアレはまた後で。


東大陸発見への理由がしょぼいです。

 海軍は悩んでいた。一部の人の毛根が危うくなる程度には。

曰く

損害が多すぎる。

たかが魚を捕るにしては、やられすぎだ。

他、諸々。

 事情を知らない奴らは好き勝手言ってくれる。お前ら絶対漁場に送り込んでやる。

 文句を言われる担当者は誓う。


 損傷は船体はまだいい。良くはないが、推進器や舵に比べればましだ。


 推進器損傷対策として、スクリューガードを付けてみた。それなりの強度で。


 結果、二回くらいは耐えられる。三回目は怪しい。変形してスクリューに当たると、それだけで行動不能になる。おまけに船体の取り付け部分が変形してしまい修理費が高く付いた。


 結局、アルキメディアンスクリューを採用し、船体内に推進器を納めることにした。


 結果、良好でした。何回にもわたる体当たりに耐えた。

 欠点も無いわけではない。コストが高かった。ただ、スクリュー損傷の修理費と比べれば些細な問題と言えた。

 スクリューと比較すると同じ速度を出すのに馬力が必要だった。これは高速回転させるとキャビテーションによって著しく効率が落ちる為と外筒に掛かる圧力が増える事による駆動抵抗の増大だった。今後の水槽試験での研究結果次第だという。

 やはりポンプジェット推進の実用化が急がれる。


 舵は困った。これは内蔵する訳にはいかなかった。舵をアルキメディアンスクリュー後方に取り付け、舵部分までガードを付けた。舵がスクリュー後方なので水流が直接当たり効きは良かった。

 バウスラスターを小型化したが旋回性能は落ちなかった。

 聴音からは相変わらず「使うと五月蠅い」と言われる。


 船体を三重構造にしたが、やり過ぎではという声も多い。二重構造にしたが内側の板厚を上げて強度が落ちないようにした。

 同時に防水区画を細分化して強度区画に組み込んだ。これで体当たりに強くなるはず。

 うん、三重底とコストはあまり変わらないぞ。


 百ミリ捕魚砲だが、後部設置のものはほぼ使わないのでいらないという声もあり、取り外して代わりに対潜迫撃砲を設置した。


 捕魚母船の方は、問題にされなかった。損傷修理が少なかったと言うこともあるがこちらは漁船扱いだった。直接戦闘がないのも良かったかも知れない。


 海にある混沌領域は東鳥島南方海域で、位置は特定された。東鳥島南東端から南へ五十海里のところが中心らしかった。

 そこを中心に巨大魚が回遊している。今まで運が良かったのだろう。端の方ばかりを航行していた。

 現在他にも無いか探索中である。


 海軍は捕魚事業から手を引き本来の任務に戻った。捕魚事業は捕鯨船団を運用していた会社に任せた。

 ただし兵器を搭載しており、その運用は海軍の人員が乗り込んで行っていた。

 船の設計は、海軍が続けて行っている。



 混沌領域内部に踏み入ったことがある。酷いものだった。内部は危ないから近寄るなという指示は出ていたが、巨大魚との戦闘中に誤って踏み込んでしまいアレと遭遇した。


 クラーケンである。捕漁船が一隻巻き付かれて転覆沈没し、生存者はいない。航空支援のため飛行中だった艦攻によると全長は捕漁船とほぼ同じだったという。


 現在対クラーケン用イカ釣船の設計中である。クラーケンに負けないとすると二百メートル級になってしまうので建造するかどうか、意見が分かれている。ただし、良い状態で捕獲することが出来れば莫大な売り上げになる可能性もあり、悩む所である。 

 イカ母船も二百メートル超級となるのは確実視されている。



 この頃には東大陸との交易も始まり、この巨大魚の素材は高値で取引されていた。ウロコと骨が特に売れていた。これは、素晴らしい切れ味と耐久性を両立出来る素材の性能のためだった。また同時に軽量で耐久性の良い防具にもなった。これは対混沌獣戦でかなり有効であり、皆ほしがっていた。漁獲量の半分を輸出して金儲けに邁進していた。






 

 東鳥島攻略戦が始まってから一年経つ。島の北東部は混沌領域を除いて制圧した。と言っても混沌獣を排除しただけである。文明を持った人種はいなかった。通常の獣は鹿と猪にウサギなどの小動物がいたが、どうやら孤立してから長い年月が経つようで、固有種と言っても良いほどに変化していた。

 北東部の都合の良い所に港の建設が始まった。この島は日本が領土とする価値は有る。実効支配して他の国に領土で在ることを示す必要があった。

 やがて開拓者も募集し、人の住む街も出来るだろう。


 海軍は、ここからさらに東へ向かうことを求められた。

 あまり行きたくは無い。もう十分広い領土を得ている。現在でも海軍としては負担が大きかった。これ以上は現実問題として、防衛はおろか一般船舶の護衛や航路の安全確保さえ怪しかった。


 しかし、正和十九年晩夏に成立した新内閣は海軍の反対を押し切り、東へ向かうよう命令を出した。

 転移時の内閣は、対米戦争前提の戦時内閣であり、通常の内閣に戻した方が良いという意見が多かった。

 また国内も安定しており、国家非常事態宣言中に怪しい人間や勢力はあらかた排除されたこともあり、普通選挙によって国政を新たにするべしとなった。

 これに先立ち、国家非常事態宣言は解除されている。

 

 選挙の結果であるが、政府与党は負けた。国家非常事態宣言中に若干やり過ぎたことが非難された。

 普通の人々は、国内の政治的不安を取り除くよりも、生活の安定を願っていた。

 そこに、中道左派と言われる勢力がつけいる隙があった。彼等は結成以来過激な行動は控え、政府や役人に脅威と見られないよう行動していた。害は無いが役にも立たない程度の扱いだった。

 それがなぜか国民に受け、国内第一党となり政権を把握してしまった。議席数五分の三である。

 負けた与党は、潔くすべての役職から退いた。


 しかし、彼等、民主光輝党は政権運営などしてこなかった議員・関わる事が少なかった議員が政権を取ればどうなるかという見本のような政権運営を行った。

 党首は政界内で、すぐに意見を変える芯が無い信用出来ない奴として有名だった。ただ金持ちの実家があり金離れは良かった。当然、金目当てですり寄ってくる人間も多い。

 民主光輝党はそういった人間が多かった。後は政権与党を追い出された人間と、他党から意見の対立で飛び出した人間で構成されていた。

 彼等がやったのは自分たちから見れば無駄な出費の削減だった。


 陸軍と海軍の縮小。

   今戦争していません。周りに敵対国もありません。


 各国立大学への研究費の削減。

   数学とか理論物理学とか哲学とか、何の役に立つの。


 半官半民の研究機関への出資削減、あるいは閉鎖。

   成果が出ない研究は不要でしょう。


 教職員の削減。

   もっと教員一人当たりの授業数を増やせ。


 患者数一定以下の国立病院の統廃合。

   大きく立派な病院を作りますので、そこにまとめます。

   税金は効率的に使いましょう。


 生徒数の少ない国立大学の統廃合。

   税金は効率よく使いましょう。


 彼等が無駄と言った主な項目だった。



 民主光輝党は以下の政策を大々的に打ち出した。


 減税。

  これは転移前の水準に税率を引き下げるというものだった。

   国家非常事態宣言中に一時的に増税された分を下げると言うことだった。

   国家非常事態宣言が解除された今、税率を元に戻すのは当然だった。

   当然の事を自分達の手柄のように言うなという非難は各所から上がった。 

 

 鉄道を全国津々浦々に開通させる。

  かなり整備されている現状では、これ以上の新規鉄道開設は採算も取れない可能性が高く、国鉄全体が赤字になったらどうするという疑問には答えられなかった。


 全国各地に飛行場を開設し、もっと旅をしやすくする。

  飛行機の切符代は凄く高くて、利用者はごく一部の金持ちや仕事に使う人に限られる。

  飛行場は税金で建設するのであるから、採算が取れない事業は効率化の元に廃止するのでは無いのかと言う疑問にも答えず。


 学校の教育無償化。

  今の義務教育課程は、授業料も国家が負担します。

   これは珍しく賛成が多く、枢密院でも可決された。


 赤線の廃止。

  赤線とは赤字路線のことでは無い。公的に認められた娼館のことで在る。

  原点は織田政権中期に出来た、売春宿取り締まりで影に隠れてしまった娼婦達を一カ所にまとめ上げて管理する目的の吉原令だった。

  一カ所にまとめ上げることで性病の蔓延を防ぎ、地場のヤクザの収入源を減らすという目的もあった。

  これに関しては概ね賛同が得られたものの、娼婦達の廃止後の生活をどうするのかという疑問に対しては、生活保護をしている間に他の職種に就けるよう教育をするという条件で可決された。

  ただ、性犯罪が増えるのでは無いかと言う疑問には誰もはっきりした答えは出せなかった。


 民主光輝党が与党である衆議院に対して、勅撰議員比率の多い枢密院では厳重な審議がなされた。


 結果

 陸軍と海軍の縮小。

   今戦争していません。周りに敵対国もありません。


 確かに現状はそうであるが、将来どうなるかはわからない。よって国防を放棄するともと捉えられる法案は認められない。また陸軍海軍とも大規模災害時には他に頼るべき存在がいない。代案はあるのか。

 差し戻しをするのでもっと現実的な法案にするように。


 各国立大学への研究費の削減。

   数学とか理論物理学とか哲学とか、何の役に立つの。

 半官半民の研究機関への出資削減、あるいは閉鎖。

   成果が出ない研究は不要でしょう。

 生徒数の少ない国立大学の統廃合。

   税金は効率よく使いましょう。  


 これらは三法案まとめて審議され、いずれも不可とされた。国家の基幹は教育と技術開発にある。それを放棄してどうするか。一喝された。


 教職員の削減。

   もっと教員一人当たりの授業数を増やせ。


 民主光輝党は教員の現実をわかっているのか。勉強が足りん。

  これも一喝であった。  


 患者数一定以下の国立病院の統廃合。

   大きく立派な病院を作りますので、そこにまとめます。

   税金は効率的に使いましょう。


 国民の健康を守るべき政府が国民の健康を守らずどうするか。これまで以上にきつい一喝が入った。


 鉄道を全国津々浦々に開通させる。

  これは法案審議中にいくつかの計画路線が民主光輝党政治家の地盤を通るという事がバレた。確実に不採算路線であるにもかかわらず。

  また、既存私鉄の並行路線のような計画もあり、民業圧迫という批判を浴びた。勿論政治家の地盤を通るようである。

  これらの不祥事を受け、計画路線は大幅に削減され、民主光輝党政治家の地盤には一本たりとも曳かれなかった。もし敷設すれば国鉄が非難を浴びてしまう。以前から計画に在った路線でも曳くのは避けた。


 飛行場建設は時期尚早とされた。

  これも政治家が地主のところが多く狙いはバレバレだった。


 これらにより民主光輝党は政権発足直後から支持率を下げ続けている。


 少しでも支持率を上げようとして頼ったのが、削減しようとした海軍である。

 海軍はあきれてものも言えなかった。


 海軍は、東鳥島東方海域を捜索。可能なれば新大陸を発見せよ。


 これが閣議決定され、枢密院の了承も得て正式に命令となってしまった。

 枢密院は明確な拒否理由が無ければ、衆議院で可決された法案や閣議決定を拒否することは出来ない仕組みになっていた。


 海軍は行くしか無かった。




まあアレです。

2位じゃダメなんでしょうか?

これには、とてもじゃないが、こいつ脳ミソが存在しているのかという疑問を持った。

後でベテランがフォローしていたが、表看板がコレでは駄目な政党というレッテルを張られただけであった。


枢密院は設立当初、勅撰議員のみでしたが衆議院から招き入れたり、外部から招き入れたりして硬直化と陳腐化を抑えています。

報酬はすべて国から必要充分以上に出ます。ただし、献金を受け取ることは一切禁止されています。

献金がバレたら議員生命の終わりですし、世襲制に近い制度ですので危険は犯しません。

その代わり金の流れからは離れていますので、極端な判断もしません。

勅撰議員は公家達にとって最高の名誉であり、金銭的に不自由しないことからかなり大局的な判断をする者が多く、国民からはそれなりに支持されています。


次回 十月二〇日 05:00予定

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