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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
36/219

内地 対応策を考える

新たな問題発生

対応策を会議する

ほぼ会話です

 東鳥島攻略戦で初めて上位種と遭遇し勝利した日本軍だが、勝った勝ったと浮かれるわけにはいかなかった。

 

1. 密林での不意遭遇戦で戦死者を出したこと。


2. 小型混沌獣の上位種に三十七ミリ速射砲以上でなければ、対抗出来ないこと。言い換えればそれ以上の上位種には三十七ミリ速射砲では対抗出来ないと考えられた。


3.大型混沌獣には三式重機関銃では対抗出来ないこと。

3.1 二十ミリ対戦車銃でも限定的な損害しか与えられなかったこと。

3.2 最低三十七ミリ速射砲が必要なこと。


4.工兵隊を随伴しての戦闘では、工兵隊の利便性が発揮され有利に戦闘が行えたこと。

4.1 工兵隊を守る必要性から、戦闘正面に人員を割けないこと。


5.魚型大型混沌獣に、駆逐艦二隻が撃破されたこと。


6.地上と航空機の意思疎通が不十分で、航空支援が徹底されなかったこと。



 他にもあったが、主にこの6点が注目された。


 陸軍では、参謀本部が主体になり会議をしていた。


「この世界ランエールに来て、初めての戦死者を出したわけだが、対策はどうする」


「戦死と言うよりは殉職では?」


「いや、東鳥島攻略戦という作戦名だ。戦争だよ。戦死でよい」


「それなら良いです。軍内部や世間、遺族の方々の受け止め方が違いますから」


「災害復旧や治安維持では無いからな。今後も混沌獣との戦闘での死亡者は戦死としよう」


「「「異議無し」」」


 お役所であった。


「では、議題に戻って、不意遭遇戦での死傷者を減らすにはどうすると言うことだな」


「そうです」


「それについては、こちら教育総監部から意見があります」


「ほう、いいアイデアですかな?」


「はい、カラン村からの情報ですと、ランエールには冒険者という混沌獣相手のなんというか、猟師みたいな存在があるそうです。その冒険者という連中は、通常4人から10人程度の集団でチームを組み行動しているそうです」


「ではそれに習って、分隊程度のチームを作れと?」


「そうですね。少なくとも歩兵相手ではありません。郷に入りては郷に従えと言うことです」


「確かにそれで上手くいっているなら正論だな。だが、もっと大勢が必要になったらどうするのだ」


「それにつきましてもカラン村情報ですが、チームが集まった集団をクランというそうで。それ以上の人員が必要になれば冒険者ギルドという冒険者を統轄する組織がまとめ上げるそうです」


「それでも足りない場合は国か?」


「そうなるようです」


「よく考えられているのか。長いことやってきた集積の上で出来上がっているなら、有利なのだろう」


「ですが、組織的には変わりませんね。最小戦闘単位が分隊なのですから」


「ああ、そういうことか。わかりました。混沌獣相手には従来の歩兵戦闘のような散兵戦術ではいけないと言うことです」


「何がわかったのか、野田作戦参謀」


「はい、ケンネル戦での死傷者は散兵戦術での戦死傷者がほとんどです。散兵戦術は単独行動に近いものがあります。ケンネルを相手とした戦闘では、それが不利に働いたかと」


「不利だと。どうしてだ、一気に掃射されて損害を出さないようにした戦術だぞ」


「そこが我々の考え違いでした。相手は銃を持っていません。棍棒を使った超近接戦闘です」


「そうだな。そういう報告だ。だがそれが如何した。銃で撃ち払えばすむだろう」


「それで駄目なことは今回の戦闘でわかりました。弾を込めている間に接近されて棍棒で打ち倒されたようです」


「接近を許したのが散兵戦術のせいだと」


「そうです。相互援護が棍棒相手には遠すぎたのでは無いでしょうか」


「距離の問題か」


「取り囲まれて背中から攻撃を受けた事例も多数あります」


「では最低でも4人いれば相互援護が可能ということか」


「意思の疎通が十分であればですが」


「そこは、訓練しか無いだろう。いきなり分隊を作って放り出すことも出来ん」


「4人というのは最低だな?」


「おそらくは、我々日本陸軍は分隊単位とした方がよいかと思われます」


「では、編成や指揮系統をいじらなくても良いか。分隊長の責任は重くなるな」


「そうですね、行動指標が小隊単位から分隊単位に代わりますから」


「クランというのは、小隊や中隊ということでいいのかな」


「私もよく存じませんが、概ね違ってはいないかと」


「では、分隊単位で密集隊形だな」


「ケンネルなどの集団で襲ってくる混沌獣相手ではその方が良いと思われます」


「ではそうしよう。1の対策はそれでいいか」


「では2ですが、上位種という厄介な奴がいます。ケンネルの上位種でも三十七ミリ速射砲で無ければ通用しなかったようです」


「報告書にあった。体に穴も空かないとか」


「頭に当たれば、頭蓋骨を潰せるようです」


「その後白兵戦をした豪傑がいるな」


「その件で非常に重要な現象が起きました。これは今後の日本を左右する問題だと思います」


「まあ、その件は後にしよう。今は上位種対策だ」


「失礼しました」


「チハの五十七ミリ砲なら吹き飛ばせました。バラバラだったそうです」


「魔石は傷付いていたと言うね」


「残念ながら使い物になりませんでした」


「三十七ミリ速射砲で滅多打ちしか無いのか」


「三十七ミリ速射砲には滅多打ち出来るほどの機動力がありません。東鳥島攻略戦では三十七ミリ速射砲の比率を上げています。従来の比率ではそこまで集中出来なかったでしょう」


「八雲君か」


「そうなります。ケンネル相手に従来の編成では柔軟な対応が出来ないと言って」


「では混沌獣相手の場合は小型の砲を増やすと言うことだな」


「そうですね。七十五ミリ野砲は出番が無かったそうです」


「なぜなのか」


「遠くで砲撃して集団を散らかしたくないという理由でした。まとまっていてくれる方が殲滅する場合やりやすいですから」


「では、九十五式軽戦車を投入するのか」


「現場では、それしか無いかと」


「制式化から七年だぞ。旧式に過ぎないか?」


「他にありませんし、他国と戦争状態になってもアレでは使えません。ここに投入して戦訓を溜め新型を作るのも良いかと思います。新たに開発中の試製三式軽戦車ケロはまだ完成しておりません」


「わかった。ではシベリア大陸の分はどうする」


「あちらは少数あれば良いと思います。奥へ行くのはもっと経験と装備を調えてからにしたいです」


「では陸軍省から各部隊へ九十五式軽戦車を集めるよう言っておく」


「お願いします」


「一式中戦車の戦力化も急いだ方が良いと思われますが」


「なぜだね」


「転移後、生産が止まっている状態です。たまに作るくらいですね。ですからまとめて運用出来るほどの台数がありません。東鳥島攻略戦でも各地から抽出して配備しました」


「工場では何を作っている?」


「ブルドーザーとか建設機械です」


「何台あれば良いかな」


「最低でも二百から三百は欲しいです。訓練用にする台数が馬鹿になりません」


「それも陸軍省から指示しておこう」


「ありがとうございます」


「では3ですが、2と同じ対策で良いと思われます」


「良いのか」


「はい、戦車や速射砲が入れない所をどうするという問題が有りますが、戦車や速射砲の所まで誘導という運用で対処したいと思います」


「それで良ければ良い」


「4ですが、これは金山工兵隊が参考になるかと思われます」


「「「金山か・・」」」


「まあ悪い意味で有名ですから」


「それで何が参考になるというのか」


「彼等は、自分たちで運用すると言って三十七ミリ速射砲や二十ミリ対戦車銃に九十式重機関銃を装備しています」


「はあ?」


「装備しています。今回は十六連隊と協同で三十七ミリ速射砲を運用しています」


「どうする?」


「このままで良いのでは?」


「工兵隊を武装させるか、護衛兵力を付けるかだな」


「今回の戦闘は、連隊の野営地を造成中に偵察に出ていた中隊が密林内で不意遭遇戦となっています。戦線を後退させるまでに出来る限り切り開いたようです」


「それで自分たちの武装も加えたと言うことか」


「そうです。十六連隊はかなり助かったと言っています。不意遭遇戦であり、連隊主力は後方、いたのは一個大隊だそうです」

「戦車と装甲車にトラックで出来るだけ運びましたが、戦闘開始までに一個中隊しか運べなかったようです」


「工兵隊も前線で活動することが多いのか」


「道を作らないと主力が前進出来ませんので、ある意味最前線ですね」


「それで武装するのか」


「どうしましょうか」


「金山モデルとして、武装工兵隊を作ろう。今の金山工兵隊を強化する感じだな。それとは別に、通常の工兵隊に護衛兵力を付けた部隊を編成しよう」


「どちらが良いともわかりませんから、試験的運用ですね」


「5は海軍さんか、6も海軍さんがいないと話にならないな」


「東鳥島にも飛行場を作りたいですね」


「シベリア大陸には出来ているのだろう」


「海軍との共同運用です」


「東鳥島の飛行場も共同運用になるでしょう」


「海軍は対地支援には慣れていないからな。是非陸軍機を置きたい」



 会議は踊らずに済んだようだ。


 現状では九十五式軽戦車の後継として、三式軽戦車ケロが開発されている。主砲は三十七ミリ戦車砲で九十五式軽戦車と同じだった。エンジンを直列6気筒からV型6気筒かV型8気筒にならないかという意見もあったが、安く作ろうとしているのにV型のような高く付くエンジンは採用しないとされた。

 車体を流用して海軍の二十五ミリ機銃を搭載した車両も作られた。対空射撃は出来ない仕様で、俯仰角が-5+10に抑えられたため電動で弾倉に機銃弾を補給する装置が作られた。

 また一式中戦車の車体を利用して海軍の三十三ミリ機銃を単装動力銃塔にした車両も開発される。

 この車両は対混沌獣用の車両で、大きすぎる機銃のせいで対空射撃は出来ない。仰角も-5+10が一杯だった。その他、仰角が水平前後に限られたため給弾機構に無理が無く小型化が可能だった。

 大型混沌獣には効果を発揮したという。


 陸軍は二十ミリ対戦車銃と三十七ミリ速射砲の間を海軍の二十五ミリ機銃と三十三ミリ機銃で埋めることになった。

 弾は対混沌獣専用に無垢弾が開発された。後に対装甲車両用として対地攻撃機に積まれ威力を発揮した。



金山工兵隊は戦闘工兵隊になるようです


次回 十月十七日 05:00予定

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