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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
33/219

東鳥島攻略戦 この化け物め

殲滅戦です。

多少グロがあります。

 グナイゼナウ連隊長は自ら小銃を持ち、切り倒した木で作った簡易陣地にいた。ただのケンネル集団なら出て行く気は無かった。しかし、大型混沌獣をも従える上位種は、見てみなければいけない。そんな考えで最前線にいた。


 迫撃砲の挙げる土煙で視界が悪い。手前に此方へ向かってくるケンネルが見えるだけだ。

 皆、必死にボルト操作をして引き金を引いている。ほとんどの兵士が生き物に向かって初めての引き金を引く。相手は、シベリア大陸で撃ち取られた4本足の動物型では無い。ケンネルだ。混沌獣だと知ってはいても2足歩行の人型だ。考えたら引き金を引けなくなる。そんな必死さも伝わってくるような戦場だった。


「迫撃砲、撃ち方止め」 

「迫撃砲、撃ち方止め」

「参謀長、迫撃砲が何発撃ったか確認を」

「分かりました」


「連隊長、各砲八発だそうです」

「何基あったけな」

「二八基です」

「あの数の相手に対して撃ちすぎだな」

「確かに。しかも視界が悪くなりました。次回からの課題と言うことで」

「そうだな。見えないと小銃も撃てん」

「撃ちましたか」

「装填した分はな」

「再装填は?」

「勿論してあるさ」


 視界がだんだん良くなってくる。


 銃声が自然に減ってくる。ほとんどの混沌獣は倒されたようだ。

 大型混沌獣も複数の三十七ミリ砲弾を受け倒れている。

 迫撃砲の直撃を受けたのか、バラバラになったケンネルもいる。


 逃げ出したケンネルでもいるのか、散発的に銃声が聞こえる。まだ撃ち方止めには早そうだ。

 

 しばらくして銃声が聞こえなくなった。


「撃ち方止め」

「撃ち方止め、安全装置を忘れるな」


「よし、行くか」

「お待ちください」

「なんだ、羽宇阿はうあ

「連隊長が行かなくても良いと思います。ここは自分が」

「まて、俺が駄目なら参謀長も駄目だろう」

 チッ

「なんだ」

「いえ、なんでも」

「神田副官、様子を見てくるように」

「は。おい、お前ら付いてこい。着剣して安全装置は外しておけ。いつでも撃てるようにな」

「了解」


 神田少佐は、ゆっくりと前進していく。銃剣が日の光を反射してきらめく。周りに居た兵隊の銃剣も光っている。

 それを見た、大隊長達も各所からじわじわと近寄っていく。クソ、あいつら部下じゃ無くて自分たちで行きやがった。

 亜天慕楼あてんぼろう少佐が「待て」をした。何かあるのか?生き残りか?全員軽く中腰になり警戒する。

 亜天慕楼少佐が、ゆっくりと近寄っていく。小銃は前に向けている。生き残りのようだが。

 撃った。そして


「待避、全員戻れ。急げ」


 大声で前を向き銃口を向けたまま、後退していく。

 他はもうパニックだった。全員後ろも見ずに自分たちの陣地に走って行く。何があった。


 倒れている混沌獣が揺れた。生き残りか。しかし、亜天慕楼が撃った上であの指示だ。よほどまずい存在か?


「対戦車銃、撃ち方用意。あの中で動く物を撃て。正体は分からん」

「重機関銃も撃ち方用意だ」


「「了解」」


「速射砲も念のために用意しておくように」

「了解」


 さて、何が出てくるのか。


 突然、死骸の中から立ち上がってきた。

 黒いケンネルだった。二十ミリ対戦車銃を喰らって生きているだと?

 口に何か咥えているようだが、なんだ?灰色だな。ケンネルの手か?

 ゲ!あいつ仲間を食ってやがる。

 此方を向いて、なんだ?笑いやがった。


「撃て、あいつが倒れるまで撃て」


 思わず口にしていた。あいつはまずい。総毛立つ。背中がムズムズする。

 対戦車銃が命中する。後ろへ後ずさっただけだと?

 さらに命中する。駄目だ、倒せない。腕にも当たったが、吹き飛ばせず、腕が暴れただけだった。

 三式重機関銃が撃ち始めた。二十ミリで効果が少ない。十三ミリでは弾数が多くとも効果は無いだろう。

 駄目だった。十三ミリなど気にしていないような気がする。機銃弾の中で、仲間の腹に手を突っ込んで何かをつかみ出して食った。

 化け物め。

 

 砲声がひびいいた。三十七ミリ速射砲だ。


 やった。後ろに吹き飛ばしたぞ。腹に命中したようだ。体をくの字にして飛んで行った。

 駄目だ、まだ動いている。周囲にある死体を食べ始めた。


 もう一発、三十七ミリ速射砲が撃った。頭に当たった。首がねじれる。

 どうだ。


 倒れた。やったのか?

 

 皆固唾を呑んで見つめている。怖くて見たくは無いが目も離せない。そんな状態だろう。


 勘弁してくれ。まだ動いている。

 起き上がった?ふらついているが、ウゲ、脳ミソこぼれてるじゃ無いか。

 周囲で何人かもどしている。わかる。俺もとても胃がむかついている。


 突然突撃を始めた馬鹿がいる。おい止めろ。そんな化け物相手に突撃するな。どこの馬鹿だ。

 シェーンカップ少佐と副官の毘天びてん大尉じゃないか。あの突撃馬鹿。しかも小銃に銃剣じゃ無くて、スコップだと?


「「おおおおお」」


 二人でスコップを振り回して攻めている。あれ?上位種の化け物に通用している?三十七ミリ速射砲を数発喰らって生きている化け物だぞ。上位種は二人の攻撃をさばくのに必死なようだ。

 やがて、毘天大尉の一撃が頭蓋骨に突き刺さった。脳ミソがこぼれていた所だろう。

 ようやく倒れた。おい毘天大尉。まだグリグリしているのか。とどめを刺すのはわかるが、そんないつまでもやっていると、ああ、やっぱりだ。周囲でもどしている。


 ようやくスコップを抜いた。周囲の地面に突き刺して血を拭っている。必死に見える。何かあったのだろうか。

 毘天大尉の肩をシェーンカップ少佐が叩いて何か言っている。


「記録班、写真とフィルムは回したな?」

「は、写真も映画も撮れております」

「大至急、神州丸に運んで現像するように。最優先だ」

「了解しました」

「神田少佐、付いていけ。師団長によく説明するように」

「はい」


 神田少佐や記録班の顔色が悪い。見回せば、皆青ざめている。中には明らかに震えている者や座り込んでいる者もいる。いつもは厳しい軍曹や曹長も何も言わずにたたずんでいる。気持ちは同じなのだろう。

 多分俺の顔色も悪いに違いない。


「連隊長」

「なんだ、羽宇阿」

「参りました。あれは無い。あれは酷すぎる。あれは・・」

「よせ、羽宇阿。思い出すな」

「無理です。忘れることなど出来ません」

「それでもだ。戦争神経症になるぞ」

「戦争神経症ですか。この連隊でも大分出そうですね」

「そうだな。そこらで休んでいろ」

「申し訳ありません。連隊長」



「連隊長。お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしいでしょうか」


 連隊補給参謀の佐野少佐がやってきた。


「なんだ」


 気持ち悪さで部下への対応もつっけんどんになっている。いかんな。


「混沌獣の素材採集を行いたいと思います」

「素材採集?ああ、そう言えば、混沌獣を倒したときには素材採集を実行するように言われていたな」

「そうです。許可して頂けますか」

「わかった。やってくれ。それと生き残りがいるかもしれん。気をつけるように」

「了解しました」



 佐野少佐は次席参謀の由貢那大尉を引き連れて、凄惨な戦場跡にやってきた。他に連れてきたのは、連隊の中で肉屋、魚屋、漁師、猟師、の息子達だった。勿論、他の部隊の許可を取ってこの島限定で補給部隊に組み込んだ連中だ。

 素材採集と言うからには解体しなければいけない。多少でも耐性のある人間を選んだつもりだった。


 周りに3個分隊いて、対戦車銃まである。なんだと思ったら、とんでもない化け物がいたという。万が一のための護衛だそうだ。

 こいつらの顔が引きつっているのはそのせいか。しかしまずいな、これからはそんなもんじゃ無いぞ。


「由貢那大尉、集積所まで戻って目隠しになるような物を持ってきてくれ。今の状態であれを見せるとな」

「ああ、そうですね。確かにまずそうです。では行って参ります」


 由貢那大尉が戻ってくるまでは、どいつを解体するかの見積もりだな。


「佐野少佐、意見具申よろしいでしょうか」

「なんだ、小林一等兵」

「これを解体するのですよね。あらかじめ場所を空けておいた方が良いと思います」

「そうか、場所か」

「はい」

「わかった。誰かを借りてこよう。細かい奴はでかい奴から遠ざけよう」

「ありがとうございます」


 佐野少佐は人を借りるのに顔色の悪い連中は避けて行く。何かおかしいな。こちらの方だけだな顔色が悪いのは。一九三大隊の方はそこまで酷くないな。一九三大隊から借りよう。

 交渉の末、補給に多少色を付けることで借り出した。


 借り出した連中は、作業現場について早々盛大にゲロした。止めてくれ、もらいゲロしそうになるから。

 それでも、なんとか作業を始める。うん、実に手際が悪い。気持ち悪いのはわかるが、なんとかならんのか。借りてきた連中に無理を言っても仕方が無い。のんびりやって貰うか。


「さて、アレは持ってきただろうな」

「はっ、持ってきております」

「由貢那も来たようだし。準備をするか」

「はっ」


 由貢那大尉が軽輸送車で天幕を持ってきた。


「おい、他には無かったのか」

「ありません。野戦用の迷彩網ならありましたが」

「よせ、あれでは役に立たん」

「ではこれですね」

「皆、天幕を展開するぞ。手伝え」

「はっ」


 目隠し代わりの天幕を展開した。ここからは耐性の無い者にはきついだろう。


「解体用の包丁は準備良いか」

「出来ました」

「じゃあ、まずケンネルからやるか。採るのは魔石だけだが。他は何の役にもたたんらしい」

「そこに胴体だけの個体があります」

「じゃあそれだな」


 包丁を入れる。おそろしい切れ味だ。ほとんど力を入れずにスッと入る。

 これは鉄では無かった。この海域で仕留めた巨大な魚型混沌獣のウロコだ。カラン村で加工して貰った物だ。

 包丁で胸に切れ目を入れ、てこで開く。そこに手を突っ込んで魔石を探すのだが、皆素手はいやなのだろう、ゴム手袋をしている。

 手引き書によると、心臓の横の中心部にあるという。

 あった。小さい。ビー玉くらいしか無い。全員やらせてみる。全員出来たようだ。


「ではケンネルから魔石を回収する者と、でかい奴から素材を回収する者に分ける」

「はい、でかいの希望です」

「ほう、良いだろう。佐藤上等兵だっけな。お前はこっちだ」

「藤本、渡辺、柴田、小林、はこちらででかい奴担当だ。由貢那は、北島、藤田、下川、林を指揮して、ケンネル担当な」

「「「はっ」」」

「作業に入る前に確認だ。由貢那、保存袋は持ってきているな?」

「はい、カラン村謹製であります。一〇枚持ってきました」

「よし。この袋は素材を長持ちさせる袋だ。魔法道具だ。聞いたことが無いはずだが、そういうものだと思え。具体的には五日後でも1日経ったくらいだという。本来は風呂敷みたいな形だが無理を言って袋にして貰った」

「この中には魔石以外の素材を入れる。魔石は普通の容器で良いそうなので、ガラス瓶に入れる」

「何か質問はあるか」

「その保存袋、売って貰えますか」

「まだだな、将来的には売り出しもあるかもしれないそうだ。お前達の実家のことを考えれば欲しいだろうな。だがまだ当分先だ」

「残念です」

「他には?」

「無いか。では作業始め」


 この黒い奴からやるか。ケンネルの上位種だという。気味が悪い。こういうのは先に片付けるとしよう。


 

上位種の脅威。ケンネルでこれか。

スコップ無双か。なぜ?グリグリ。

スコップで対抗出来たのは、ケンネル上位種がHPを大幅に削られていたのと、状態異常・骨折、状態異常・内臓破裂などで弱っていたせいです。

素の状態なら二人とも相手にもならなかったでしょう。


カラン村はもうけているようです。


一等兵が少佐に直接意見具申など出来ませんが、一〇人程度の小部隊と言うことで。


解体シーンはどうするかな。グロ注意にしておくかな。


毘天大尉、まアレです。ビッテンフェルトで毘び天てん


次回 10月12日 05:00予定


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