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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
32/219

東鳥島攻略戦 激突

いよいよですよ。本格的な対混沌獣戦の始まりかな?

 混沌獣はそもそも混沌領域が無ければ生まれない。

 ということは東鳥島に混沌領域が有ると言うことである。

 そしてそれは、規模によっては災厄級の存在も居ると言うこと。


 この星ランエールに、そして混沌獣や混沌領域に、日本は理解というのもおこがましいほどの知識と経験しか持っていなかった。


 仮称東鳥島攻略軍は、その日思い知った。


 雷龍は一九連隊支援を下命されていた。

 一九連隊からの要請に基づき、最奥野営地を中心とした地域への航空偵察を実施していた。

 雷龍は通常通り、戦闘機二二機、艦爆二四機、艦攻二四機を搭載していた。零戦三二型、九九艦爆二二型、九七艦攻二二型である。最新の彗星や天山は生産数の関係もあって翔鶴級に優先配備されていた。どのみち天山は着艦制動装置の許容荷重の関係も有り搭載出来ない。


 その日早朝、雷龍を発艦した鈴木ペアが搭乗する九七艦攻は、野営地から90度西方向の偵察に赴いていた。一応磁気羅針儀の示す北を真方位0として行動している。

 野営地から三〇kmくらいの地点でうごめく物を発見した。


「機長、地面に異常」

「太田二飛曹、何が異常だ?」

「異常としか分かりません。地面が灰色になっています」

「灰色だと。どこだ」

「八時の方向、離れてしまい見えません」

「田中二飛曹、一八〇度変針。以降は太田の指示に従え」

「了解しました。一八〇度変針します」


 機体は、機長である鈴木少尉の命令を受け反転した。


「発見、三時の方向。田中、大きく旋回してくれ」

「了解」

「ありました。あれです。木々の間が灰色にうねっています」

「まてよ、あれか。俺にも見えた。確かに異常だな。一九連隊に知らせておこう」


「此方、雷龍索敵七番。一九連隊応答せよ」


「此方一九連隊。索敵七番、状況を知らせ」


「野営地から西へ三〇kmほどの地点で地面に灰色の異常を発見。これより接近を試みる」


「一九連隊了解。気をつけられたし」



「連隊長、雷龍索敵七番より通信。本野営地より西へ三〇kmほどの地点で地面に灰色の異常ありと」

「西へ三〇km?近いな。異常とは?」

「接近を試みるそうです」

「分かった。通信隊の所に行く」



 鈴木少尉は通信機を全通話にして、状況が周囲に分かるようにした。機内の会話も聞かれてしまうが、情報を周囲に届けたかった。


「機長、高度下げます」

「五〇〇くらいで行こう」

「了解。現在高度二〇〇〇、一五〇〇まで下げます」

「現在灰色発見地点上空を旋回中。灰色はゆっくりと移動している模様」

「一五〇〇です」

「太田見えるか」

「機長、双眼鏡で見ていますが、はっきりと個々の判別がつきません」

「田中、後五〇〇下げ」

「五〇〇降下します」

「現在一〇〇〇」

「機長、混沌獣です。ケンネルと思われます」

「あれが全部か」

「そうですね。全部ケンネルでしょう」

「どのくらい居る?」

「さあ?ですが幅一〇〇メートル奥行き五〇メートルほどの集団だと思われます」

「そうだな、俺もそう思う。ただ地上に対象物が無く正確には分からないな」

「機長、ケンネルと違う個体を発見」

「どこだ」

「集団の中心から後方くらいです」


 鈴木少尉も双眼鏡を構えて観察する。


「見えた。でかいな。太田、ケンネルは身長140センチくらいだったな」

「そうです。手引き書にはそうなっていました。ではあれは、四メートルから五メートル位有ることになります」

「ゾウかサイ並だな」

「一〇頭くらい居ますね」

「待て、おかしい」

「どうしました」

「混沌獣は違う種類で群れ無いはずだ。手引き書にはそうなっていた」



 聞いていた者は全員驚いた。群れだと?異種混合は無いはずだ。ではどうして?答えは考えついたが無線機からも流れ出た。


「上位種か」

「上位種ですか。手引き書には確かに記載されていました。じゃああの集団は上位種に率いられていると」

「それしか無いだろう。一九連隊聞いているか。上位種に率いられていると思われるケンネル集団はそちらへ向かう。移動速度は人が歩く程度。なお集団内にゾウ程度の大きさの混沌獣を一〇頭ほど認める」

「こちら一九連隊了解」

「機長、どうしますか?」

「俺たちは偵察するだけだ。この無線は全通話にしてある。偉い人が考えるさ。太田は手持ちカメラで撮影を。俺は写真機で空撮だ。田中。群れ上空を往復せよ。高度このまま」

「「了解」」


 

「連隊長、どうしますか。上位種なんて聞いていませんよ」

「俺も聞いておらんが、混沌領域がある。予想は出来たはずだ」

「そうですね。確かに考えなくてはいけませんでした。申し訳ありません」

「いい。俺たちは初めてずくしだ。経験するしか無い」

「師団長は聞いていますかね」

「新型の無線機はかなり届くようだが、地球に比べると7割くらいだそうだな。交信範囲は」

「一応、転送しておきましょうか」

「そうだな、通信班頼む」

「了解」


「さて、皆聞いていたな」

 

 羽宇阿はうあ少佐、河野少佐、小長井大尉、亜天慕楼あてんぼろう一九一大隊大隊長、シェーンカップ一九二大隊大隊長、三田麻伊矢みたまいや一九三大隊大隊長がうなずく。

 連隊本部の天幕で会合が行われていた。


「当初は、小集団を各個撃破していく予定だったが、上位種と大型混沌獣が居ることが確実になった。方針を決めたい」

「その前に集団はあれだけなのでしょうか」


 三田麻伊矢少佐が問いかける。


「そうだった。小長井、雷龍に追加で偵察機の派遣を要請しろ」

「了解しました」

「助かった、三田麻伊矢少佐。すっかり抜け落ちていたよ」

「実戦は初めてですから。私も先ほど上位種と聞いてどうしようと思いました」

「正直だな。でも、ありがとう」

「どういたしまして」

「偵察機によるとこの先も森ですね」

「そうだな、迎撃には不利か」

「森の中では、銃砲の有利さが生かされません」

「銃対銃では無いからな」

「ここを引き払って、後退しましょう。ここへ引き込んで一気に片を付けませんか」


 亜天慕楼少佐が言う。


「どうやって引き込む。亜天慕楼」


 意地が悪いぞ、シェーンカップ。


「案山子はどうでしょうか。奴ら見たことが無いはずです。後は肉を置いておけば良いかと」

「混沌獣は人に襲いかかるか。肉は餌だな。それでいけそうかな。どうだ」

「いけるのでは無いでしょうか」

「そう言えば、工兵隊は如何した」

「作業は中止しています」


 連隊副官の 神田雅弘少佐が答えた。居たのか。驚いたぞ。


「先ほどケンネル集団発見を聞いて、作業を中止して貰いました」

「よくやってくれた。では後方に下がるように言ってくれ」

「どこまで下げますか」

「そうだな、一〇キロ後ろの野営地にしよう」

「了解です。あと倒木を手前にひっぱてきてバリケード代わりにして貰います。その後撤収と言うことで」

「分かった。それでいい。頼むぞ」

「行ってきます」


「「遅くなりました」」


 連隊補給参謀の佐藤少佐と由貢那久留人ゆぐな・くると大尉が来た。

 そう言えば補給物資が少し遅れていると言って、後方に交渉に行かせたか。


「ペガサスは如何した」

馬羽ばは大尉でしたら、砲兵隊と共にあとから来ます」


 馬羽大尉。バッハであるが、祖父が帰化するときに馬羽と日本名登録をした。馬に羽と言えば天馬、ペガサスだよねと言うことで渾名がペガサスである。


「砲兵隊はどこに展開する気だ」

「ここから一つ後ろの野営地に迫撃砲を展開。速射砲はここまで来るそうです」

「でかいの相手に張り切っているな」

「まあ各個撃破という展開では速射砲の出番はありませんからね」


 その後機関銃の配置や案山子と肉の準備等を話し合っていく。



「ケンネルの集団と大型混沌獣に上位種だと、どんな冗談だ」

「冗談じゃありません。師団長」

「分かっているが、出現が早すぎないか?もっと奥だと思っていたぞ」

「たまたま出てきたんでは無いですか」

「迷惑な話だ」

「まったくですな」

「雷龍はどうしている」

「追加で偵察機を出したそうです。何機か爆装で待機させると」

「対応が早くて、ありがたいな」

「第二航空戦隊も外地は先陣を三回目だそうです。慣れているのでしょう」

「金山工兵隊と同じだな」

「慣れたくは無いですな」

「同意する」

「艦砲は戦艦以外射程外で、支援は出来ないそうです」

「航空支援が有るだけでも有り難い。多くを望むのはよそう」



 上位種に率いられた群れは一九連隊の待ち構える野営地にやってきた。

 何匹かが案山子と山と盛られた肉に向かって走ってくる。


「速度は人とあまり変わらないな」

「まったく警戒していないぞ」

「一気に崩れたら撃ち始めるつもりだったが崩れないな」

「上位種は統率力が優れているらしいな」

「厄介だな」

「勘弁して欲しい」

「まあぼやくな」

「あと五〇メートルか」


 あと五〇メートルで迫撃砲の包囲網に入る。のんびりと待ち構えていたのだが。


「なんだあれは!」

「黒いじゃ無いか!」

「大型上位だと!」


 野営地に入ってきたのは、ゾウくらいの大きさと言われた大型混沌獣だった。色はかなり濃い灰色。黒では無いが、初めて見る存在に慌ててしまって黒と言ってしまった。


「まて、よく見ろ。あの上に乗っているぞ。なんだよあれ」

 

 落ち着いてよく見ると濃い灰色の大型混沌獣だが、そこに乗っているケンネルは違った。


 黒かった。上位種を目撃した初めての日本人だった。

 

「迫撃砲、待て」

「対戦車銃、目標上位種。撃ち方始め」

「対戦車銃、目標上位種、撃ち方始め。了解」

「速射砲は対戦車銃発砲後、大型混沌獣へ撃ち方始め」

「対戦車銃発砲後、大型混沌獣へ撃ちます」



 対戦車銃が撃った。上位種がのけぞる。


  てー!


 速射砲が大型混沌獣に向けて撃つ。

 ケンネルは立ち尽くすだけだ。何が起こっているのか分からないのだろう。


「迫撃砲、撃ち方始め」

「機関銃、撃ち方始め」

「総員、撃ち方始め」


 半包囲体制だった部隊が全体で撃ち始める。生き残る混沌獣はいそうに無かった。

 



戦闘シーンは難しい。

上位種は?対戦車銃の威力は?

速射砲は大型混沌獣に通用するのか?


帰化した人達の名前ですが、明治期は漢字表記を求められました。

大照以降、カタカナでも良いことになりました。

なぜか難解な漢字を使いたがる人も居ますが。


次回 10月10日 05:00予定

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