勇者
久しぶりの東大陸です。
ギルガメス王国連邦では、南北に魔王発生とその手先による国内動乱と大事であったが、国内動乱は日本の助力も有り鎮圧に成功。
カストロプ伯爵家と分家で有るカストロプ子爵家は取り潰し。三親等以内の男子全員処刑。女子も二親等以内全員処刑。領地・財産は没収となった。それ以外でも計画に関わっていた者はもれなく同じような処罰が下された。
問題は魔王であるが、国内の混乱を治めるのに時間と人材や予算を取られ、対応は難しかった。
日本も魔王の存在を初めて確認したものであり、対応策など分からなかった。
統一ギルドも独自に動きを見せるが、魔王など数百年ぶりであり対応は難しかった。
三者は会談を繰り返すが、良い方法は考えつかなかった。その中で過去の文献をあさり解決策を模索していた王国連邦図書館では、ついに勇者が実在したことを示す資料をまとめる事に成功した。
360年前、今のラプレオス公国の前身、ラプラス神国だった時代。
神国という名の通り、神殿が絶大な権力を有していた。魔王出現前夜、民は圧政に苦しみ神官達は黄金をまとい酒池肉林の日々だったという。
魔王が出現したのは、神官の中からだった。魔王は処女の血をすすり、妊婦の腹を割き胎児をむさぼったという証言もある。
そして、魔王がすすりむさぼった残りは神官達に分け与えられたという。神官達も進んで口にしたおぞましい時代だった。
魔王とその影響を受けた神官達により更に疲弊する民達。圧倒的な戦力差であり暴動や一揆など起こしてもすぐに制圧と言う名の虐殺をされてしまう。民には絶望しか無かった。
そこに出自不明の若者が現れ、数名の仲間と共に神官や神殿兵を倒していった。
後のラプレオス公王、ジャンニ・ラプレオスとその仲間である。その魔王を倒す旅の記述は多く、史実だろうと思われるものから、おとぎ話程度のものまで千差万別だった。
ただ共通しているのが「神に頼まれた」「神にお願いされた」「神に強制された」「神に…」と、いずれも神の介入を示すものだった。
公国に保管されている公文書や書物、手紙などの文献にも神の介入を示す文書があり、それらは複製されて王国連邦にもある程度の数が存在していた。
その神を示す部分とジャンニ・ラプレオスとその仲間を重ね合わせる膨大な作業が行われたのだった。
王国連邦図書館によると、共通するのは神との接触の他、いずれも力強く優しい人物であるとされた。
最初はそんなことを信じていなかった面々であるが、他に方策も無く信じてみるかと予算少々で行動を開始した。つまり王国連邦は動かず、構成王国と地方領主や代官・統一ギルドへの調査依頼だった。
国民全体が魔王化の影響を受けなかったのかという問いには「魔王化の影響を受けるのは魔王になった人物をかなり否定していない人間だけの模様」との見解があった。
日本は日本で独自に動いた。そう、南紀白浜に神の代理人とも言える管理者が居るじゃ無いですか。と。
南紀白浜では
「勇者ですか」
「はい。魔王が3人存在しています。対する勇者の存在をご存じないかと思いまして」
「教えていいのかな。少し待ってもらえるかな」
「お待ちします」
「もしもーし。日本の管理者です。勇者だけど、扱いはどうなっているの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「フンフン、へー、ホー、そうなんだ。はい、分かりました。では、そのように」
「お待ち」
「分かりましたか」
「分かったけどね、制限はあるよ。ヒントは与えるが自分で探せと」
「ヒントがあるだけでもありがたいです」
「日本国内にはいないね」
「いませんか」
「いない」
「では、他の国にいるのですね」
「そうだね。山東半島にひとり。ディッツ帝国にひとり。ギルガメス王国連邦に二人。ガンディス帝国に二人。ラプレオス公国に三人だ」
「魔王三人に対して、それだけいるのですか」
「今のところ、実力は無いか低いからね。実力を付ける必要がある。実力が付けば対抗できるだろう」
「実力を付けるとは?」
「君たちでも混沌獣を倒すと力が強くなるだろ。アレを延々とやるのだ」
「私はやったことがないのですが、そう言うものですか」
「そう言う事」
「では探し方はどうなのでしょうか」
「そうだね。実は既に神託を告げたそうだ。だから、そのうち分かるよ」
「詳しくは」
「ダメだね」
「残念ですが、探すしか有りません」
「頑張ってくれ」
「ありがとうございました」
山東半島では神託を受けた者がいないかの調査や、いかにも受けそうな人物の調査が行われた。
上村少佐(昇進した)は、本土と山東半島を半々で勤務している。
ここまで関わっている軍人は上村くらいなものだろう。それだけに上層部からも重要視され、ついに佐官にされてしまった。少佐になる前の本土勤務は、七割の時間が教育だったな。何度、知恵熱を出したことか。
真田は中将まで行き営門大将で退役した。参謀長は陸軍省勤務になった。部隊参謀だった中村中尉は中佐になって師団参謀をやっている。和田主計参謀はまだ付き合ってくれているというか「もう他で呼ばれることも無いでしょう」と、転出と再配置をした後、諦めている。それでも少佐になっている。最初からカラン村に関わっている軍人はずいぶん減った。
上村はこの指令を受け取り、アビゲイルかなそれとも…と思ったが奴らももう中年。勇者とか言う年じゃ無いだろう。では、誰だ?
勇者という勇ましい響きに上村は男だとばかり思っていたのだった。
発見したと上がってきた報告に驚いた。女性だった。それもよりによって。
なんでだよと思う。
報告書には
神託を受けた人物
旧エルラン帝国第2皇女 ヒュギエア・エルラン
勘弁して欲しかった。
数話東大陸の話になります。
次回更新未定、二週間以内を目指します。




