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コマンド困惑

コマンド困ります

 ムーア少佐率いるSBSコマンドは、林の中を進んでいた。 


 ムーア少佐は時々地形と照合している。簡易な地図だが、墜落地点は分かる。

 問題は距離だった。直線で50キロだという。空軍の奴らは直線で気軽に言うが、山林では迂回路になる。高低差も有るから大雑把に言って70キロから80キロ程度になるだろう。行程を3日と考えていた。後10キロもない。付近に到着したら、分散して捜索だな。日本軍は迷子ひもを使うと言うが、鍛えられた我々には必要ないと思いたい。

 生存しているという通信から既に3日だ。非常用食料や医薬品が墜落でダメになっていなければ、大怪我でなければまだ生きているだろう。

 ムーア少佐は何か聞こえたような気がした。他の隊員も辺りを見回している。


「サー、味方爆撃隊の模様」


 ぶっきらぼうに言ったのはデューク西郷だった。彼が指さす方に機影が複数見える。

 

「あれ?1機降下してくる?」


 モーリス少尉が指さすとランカスターが降下している。旋回を始めた?もしかしてあの下なのか?


「爆弾倉開いてます。あ!投下した」


 デューク西郷のスポッターを務めるキートン平岡が双眼鏡で見張りながら言った。 


「「「何?」」」


「パラシュート開きました。救援物資でしょう。あの下辺りにいそうです」


「「爆弾じゃなかった。驚かせやがって」」


「前進だ。あの下へ向かうぞ」


「「「イエッサー」」」


 大まかな場所が分かれば早かった。三時間後には救出対象を発見した。ランカスターと思ったがリンカーンらしい。山の緩斜面へ胴体着陸を試み、成功したのだろう。搭乗員の内、生存者は三名だった。通信手、爆撃手、副操縦員の三人だ。

 搭乗員の名前を聞いて空軍司令部が焦って救出命令を出すわけだと思った。

 機長に王位継承者がいやがりました。過去形ですが。

 あんたは立派に王族としての義務と責任を果たした。だから生き残った三人は、絶対に本国に送り届ける。状況が状況だ。それで勘弁してくれ。

 問題は三人とも結構な怪我をしていた。足の骨折が一人。肋骨骨折が一人。出血を伴う怪我が一人。モルヒネを打って痛みをごまかしている。特に肋骨骨折と出血の奴は顔色が悪い。歩いて移動しろとは言えない。

 どうする?俺が決めなければならない。

 先ほど投下された物資を漁ることにした。どんな物が有るのか確認してからだと思う。 


 「ブルックナー、モリス。サンダースとフォードと共に投下された物資の領収に行け。可能だったら、持ち帰ること。優先順位は医療品が優先だ」


「投下物資の領収に向かいます。優先されるべきは医療品。サー」


「よろしい。無理な量は持ち帰らなくても良い。では行動開始せよ」


「サー、イエッサー」


 行ったか。俺は生き残りから話を聞こう。


「ハーツ。具合はどうか。動かせそうか?」


「サー。移動は無理かと思われます。特に副操縦士の肋骨骨折が酷いです。爆撃手の傷も手術が必要だと思われます」


「フー」ダメか。ため息も出るな。ここまで来て移動不能では。


「肋骨は肺に刺さっているか」


「ノー、サー。それは有りませんが、結構な本数が折れており、移動させるとより重症化する危険性が。サー」


「分かった。では話を聞けそうなのは通信手か」


「そうです。サー。ただ、彼も添え木を当てた程度では行動は出来ません。ご承知ください」


「まあここから動けないのは分かった」


 通信手の所へ行き話を聞くか。


「君が通信手だね。私は救助に来た部隊の指揮官ムーア少佐だ。敬礼はしなくてもいい。楽にせよ」


「ありがとうございます。サー」


「話を聞かせてもらいたい。ああ、サーは付けなくても良いぞ。楽にしてくれ。聞きたいのは何故胴体着陸を?」


「はい。機長の判断です。当時敵基地攻撃に向かっていた我々の機体は敵の迎撃を受け、戦死3名と重傷者3名という損害受け、機体も帰還不能な損傷を受けました。機長は下が山林と言うことと重傷者のことを考えパラシュートによる脱出は止めました」


 そうだな。俺も空挺降下で山林に降りろと言われたら、言い出した奴に文句を言うだろう。そう言う無理な空挺降下はSASに任せろとな。SASもいやだろうが。


「なんとか着陸は成功させましたが、機長、副操縦士とも重傷を負いました。その後生き残った全員でなんとか物資を持ち出し機体を離れ、機体には火を付けました」


「そうか。その時は機長はまだ生存していたのだな」


「はい。機長と私たち4名です。私が通信を終え機体を離れた後に火を付けました」


「分かった。ここにキャンプを張る。安静にしてくれ。先ほど物資が投下された。医薬品も有るだろう。部隊の二人は医療教育を受けている。力になれる。時間は掛かると思うが本国に必ず帰ろう」


「はい。ありがとうございます」


 キャンプ場所を決めないとな。こういうときはあいつか。


「ヒラオカ。部隊はキャンプを展開する。残骸そばでは、敵に発見される可能性がある。付近に良い場所があるか確認せよ」


「イエッサー。周辺調査に向かいます」


 ヒラオカが帰ってきて勧めた場所は小川が下に見えるやや傾斜地だった。周囲は森に囲まれ小川方向は開けて日が当たるが、上空からは見えにくい。そんな場所だった。

 

「もっと下の方が良いのでは無いか」


「サー。確かに、もう少し下には平地が有りますが、上から丸見えです。また、水が出た跡が有ります。大雨が降れば水害、鉄砲水ですね。可能性はあります。水場からの距離も考えて、ここが良いと考えました」


「洪水か。それに丸見えではな。分かった。ここにキャンプを張る」


 そう決断した。後はここを整備して、あの三人を収容するとしよう。本隊の通信機を使って状況報告をしなければいけないが、衛生兵替わりのあの二人は動かせんし、日系人コンビも必要だな。

 ブルックナーとモリスにサンダースとフォードを付けて帰還させよう。


動かせない三人の保護と、敵基地観察任務の両立は出来ないですよね。人数が少ないと思います。


次回、更新日時未定ですが閑話を入れます。何故かストーリーは進まないが、閑話は出来るという。

東大陸の話も少し入れます。

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