コマンド行動開始
本年最後の更新です。
ボンド中佐率いるSBSコマンド部隊は、南を目指していた。敵基地周辺での破棄工作では無く、情報収集がメインだった。航空偵察では分からないが、地上からでしか分からない情報もある。
持ってきた食糧は2ヶ月分。良くも持ってきたもんだ。ハードビスケットが主なのは勘弁して欲しかったが。途中に隠し場所数カ所を設定して、分散して置いている。
この島の果実は食用になるので、ハードビスケットが飽きたら口にして良い事になっている。まず一人が試験的に食べ始めた。数日後、仲間が増えていた。3週間後の今、ボンド中佐さえ食べている。報告書では毒虫も居ず寄生虫も居ない、さらに毒性の強い細菌もブリテン島並みという奇跡的な島だという。果実も調べた範囲では食用に出来ると言うことだった。ただ、調査期間が短く資料に載っている物以外は口にしてはいけないとも。
コマンド部隊は1日平均15キロを進み、今は敵基地が見える山の斜面に陣取っている。
ステーションは山の中腹斜面に設定し、敵基地からは視認できない場所だ。
「ハミルトン伍長、ステーション到着の電信を」
「了解」
ハミルトン伍長が手慣れた様子で、無線機に向かい発信する。少々重いが、自動モールス送信機を持ってきている。テープに穿孔するのが面倒だが、短時間で発信が終わるので探知される危険性を減らすためだ。
「送信完了」
「よろしい」
山を迂回したとは言え距離の割に時間がかったのは、通信機と発電機とガソリンが重いためだ。通常装備なら半分の時間で済んだだろう。
「各自、ツーマンセルでの行動を徹底せよ。ここは演習場では無い。未知の土地だ。どんな危険が有るか分からん」
「「「サー。イエッサー」」」
ここで次席指揮官のムーア少佐が聞いてきた。
「ボンド中佐、ローテーションですが、当初の割り当てでよろしいですか」
「変にいじるのは危険だが、何か有ったか?」
「クリヤキン中尉とソロ大尉なんですが、ペアで組ませると抜群です。単独でもかなりいけますが。ただ、他のペアとの差が大きく、ばらして平準化をしてもいいのではないかと思いまして」
「今か」
「まだ偵察が本格化する前にです」
「止めておこう。あの二人はあれでいい。それよりも、デューク・西郷とキートン・平岡の日系人ペアが俺は気になる」
「優秀狙撃手とサバイバルの名人ですか」
「エンフィールド小銃で1,000ヤード向こうの標的に集弾させる腕前と、多分どこからでも帰ってくる奴だ。ここでは頼りになる」
「そうですね。彼らはソロペアの次に頼りになります」
「まああの二組を主力に組んだんだ。今更変更は止めよう」
「そうですね。気になったものですから」
「今回は時間も無かった。仕方がない面も有る。練度のことを言うのは帰ってからにしよう」
「了解です」
「サー。お話中失礼します」
「何か。ハミルトン」
「指令です」
「もうか」
「電文です。お読みください。至急になっています」
「至急だと?」
「はい、レスキュー任務です」
「パイロット救出か」
「そうです。サー」
「少し考えてから返信を打つ」
「了解。サー」
ハミルトン伍長が解読した電文は
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ステーション西50キロ付近に味方爆撃機墜落。
救難信号有り。乗員4名生存の可能性有り。至急救助されたい。
第4戦略爆撃群司令 空軍中将 エドワード・トムソン
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「戦略爆撃群司令からの指令ですか」
「レスキュー任務だ。誰が出したかは問題では無い。話は付いているのだろう」
「失礼しました。しかし、誰を向かわせますか。まず私ですね」
「そうだな。君と、衛生兵の資格を持つハーツ1曹とジョンソン兵長のペア。他は日系人ペアだな。あのサバイバル技術は必要になるだろう。それに、ブルックナー中尉とモリス少尉のペアは経験を積んでもらう。彼らの補佐として、誰を付ける?」
「それなら、サンダース軍曹とフォード伍長が良いかと思います。あの二人なら士官学校出のペーペーにデカい面させません」
「そうするか。装備はどうする」
「ブレンはここに置いておきます。とても持ち運びたい物ではありません。トランシーバーを2台。食糧・医薬品は多めですね」
「それでいいのか。いいならいいが。迷彩テントだけは重くなるが持っていけ。空軍さんだぞ。歩くのもいやだろう。ましてや、露天で寝るなど」
「そうですね。椅子に座って戦争してますものね」
「冗談はともかく、負傷している可能性が高い。体力を削ぐような行動は慎まないとな」
「了解」
ムーア少佐はレスキュー任務部隊をまとめると、早速出発した。
地図は航空写真から書き起こした物と、航空写真のみ。
今年もヘボな小説、閲覧ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。




