ディッツ帝国 反抗 フェザーン強襲 始まり
久しぶりです
なんとか前進を
完結は必ずします
駆逐艦のL型はディッツ帝国でした。
ガミチス駆逐艦の型をLからRに変更しました。
ディッツ帝国が攻勢を強める中、対ディッツ帝国戦線担当である東部戦線司令長官ドメル中将は入院していた。
これによる軍務の混乱は酷かった。
面会謝絶が二週間続き、その間に溜まった書類や刻々と変化する現地の情勢は入院中の彼と現場にかなりの負荷を掛けていた。
面会が可能になった途端、司令長官の決裁が無ければ動かせない書類と現状報告が山のように病室に押し寄せるのだ。いくら中将の執務室と軍病院の病室が近かろうと、溜まった書類と距離の問題は時間を食い潰していた。
ドメル中将は、デストラー総統に東部戦線司令長官の座を辞任する意思の有る事も伝えたが慰留された。総統からすれば、彼以上や彼並みの人物は皆重要な仕事を任せており他に人材が見当たらなかったせいもある。いくら総統が入院原因に怒り心頭だったとしても。
ドメル中将の入院原因は交通事故である。表面上は。
酔っ払って階段を踏み外し、骨盤骨折、尾てい骨骨折、手指3本骨折、頸椎損傷ほか数針縫う裂傷など、絶対に外部に漏らせない醜聞だった。
なので、その怪我にふさわしい状況が用意された。交通事故である。ご丁寧に軍施設内での事故として、警察の手は入らないようにまでした。
一時は頸椎損傷の影響で寝たきりや最悪植物状態も考えられたが、ディッツ帝国から手に入れたポーションで多少良化した。ポーションは効能の弱い物だったが、それでも意識を取り戻し精力的な会話を可能にした。身動きできるほどの回復はしなかったが。
ポーションは、見本として鹵獲した物資の中にあった物で質量とも少なかった。大部分は前線で消費してしまっていたのだ。鹵獲した物資の優先権は前線部隊に有り、後方へはサンプルを送るだけで良い場合が多かった。前線部隊では負傷者の回復に使い、非常に役立ったと報告されていた。
非常に有用な物資であると考えたガミチスでは協力関係にある部族連合から入手しようとするが、部族連合ではほとんど作られていなかった。また、上級ポーションはすべて外部からの入手と聞いては、歯噛みするだけだった。
つまり、欲しければディッツ帝国を蹂躙するしか無いのであった。
ここで、選択肢が発生する。
有用性は低いが弱敵であろう大英帝国なる国家を先に征服するか?
将来的にガミチス帝国がこの星を席巻するに有用な物資であろうポーションを優先するか?
前者の場合、情報量が少なく本当に弱敵であると判断を出来るのかという疑問もあった。ただ接触したり交戦した感触では軍備はガミチスよりも数段少なく、攻勢に出れば少なからぬ犠牲はあるが早期に撃破可能であると考えられた。
後者の場合、ディッツ帝国の撃破は多大なる犠牲を払って可能であると考えられるが、ディッツ帝国と共闘している日本の存在が不気味であった。現状では日本の情報は不足しており、正確な国力は不明。
また大英帝国とも共闘しているようであり、海軍力は強力と思われた。
その中でディッツ帝国によるフェザーン強襲が行われたのである。
ドメル中将と東部戦線所属でも本国勤務の参謀達は各軍の協力を得て、フェザーンを必ず取り返しに来るであろうディッツ帝国の戦力を返り討ちにすべく方策を練っていた。研究に次ぐ研究とシミュレーションの繰り返しで7割方完成しつつあった。
だが、そこにドメル人事不省事件であった。
優秀な人材がそろっている参謀達であったが中心人物が人事不省ではいかんともしがたい物があった。
とりあえず先行させている補充部隊を速やかに戦線へ展開させるべく努力をしていく。
だが、それは現地で持久を図り補充部隊を集団として運用し、一気呵成に敵戦力を撃滅せんとした当初目標から外れる物だった。
もっとも、ディッツ側戦力がドメル中将達の予想の上限を超えた戦力だったので、補充部隊の展開はフェザーンの維持には必要だった。
この補充部隊の投入により戦線は保たれたが、反撃して敵を撃滅できるほどの戦力とはならなかった。
本来ならすでに移動済みの補充兵力だけでも、反撃は可能なはずであった。
しかし、フェザーン強襲の少し前から展開された通商破壊戦が全量の補充を不可能にしていた。潜水艦と空母部隊による通商破壊戦だった。
ディッツ帝国海軍は、陸軍と空軍からの非難を耐えこの日までは通商路の把握や船団護衛体制を調査していた。
本当はガミチス帝国の正確な位置も割り出したかったのであるが、そこまで長距離長期間の行動が出来る潜水艦が無くバラン島から少し西までが限界だった。
ガミチス本国探索の任は、日本海軍のイ号潜水艦が行うことになっていた。
転移前にディッツ帝国海軍が保有していた潜水艦は転移前の環境が内海だったため、航洋性や航続距離が外洋での使用に耐えうるのもでは無く、転移後も必要性は分かっていたが軍事予算のほとんどを大陸制覇を行う陸軍と空軍に取られ、事実上開発されていなかった。少ない海軍予算のほとんどは周辺探索の巡洋艦と駆逐艦に与えられていた。
外洋で使用に耐えうる潜水艦が作られたのは日本との接触後であり、ようやく予算が回ってきたからだった。
当初建造された外洋対応潜水艦はまだ満足いく性能では無く、開戦後、日本との軍事協力強化で入ってきた日本海軍の潜水艦技術によりようやく満足いく性能の潜水艦が完成するのだった。
だが、この時期は建造中であり、外洋で行動する潜水艦は日本から急遽供与を受けたロ号潜水艦とイ号潜水艦各十隻だった。日本海軍の機密兵器である酸素魚雷関係の装備と自動懸吊装置が付けられたまま。
「ブラウンプフェルトⅢに水柱!被雷した模様」
左舷の見張り員から報告が上がる。
「潜水艦警報を出せ。煙幕展開。取り舵。増速。両舷前進第1戦速」
「船団指令に「我、敵潜水艦を補足せんとす」だ」
「了解しました「我、敵潜水艦を補足せんとす」送ります」
各部で復唱が行われ実行されていく。
「我が艦の練度は高いな」駆逐艦RD-28艦長のワイマン中佐は思う。
ガミチス海軍のRD型駆逐艦は、R型をベースにディーゼル機関の採用と魚雷発射管1基の撤去と引き換えに対潜能力の向上を図り若干大型化した大型護衛駆逐艦だった。大型化したのは1千トン級護衛駆逐艦数隻の指揮を執る司令部設備も付けたからだった。最も司令は艦長が兼任でそのための中佐だったが。
「KD11とKD13、本艦に続きます」
「KD11は本艦後方2千へ、KD13は本艦右舷前方2千へ」
KD級護衛駆逐艦が指示通りの位置まで展開しようと舵を切り増速する。
KD級護衛駆逐艦は転移前に計画されていた1千トン級船団護衛用駆逐艦で、砲力を減らしてまでも対潜能力を確保した、従来のガミチス駆逐艦とは一線を画す船だった。
数をそろえることが目的なので、極めつきに簡素化されている。人員も大尉が艦長なのも珍しくない。
雷撃された船を見ると、すでに減速して酷く傾いている。よほど幸運でない限り、ただの貨物船には雷撃されて生き延びる術は無い。ましてや補給任務で大量の積み荷が載っている。助からないだろう。
「艦長、船団指令からです「右舷でも避雷した船が出た。敵に拘束されること無く撃沈よりも排除を優先するように」です」
「言ってくれる。出来れば苦労しない。通信「了解した」と伝えろ」
やっかいな相手だった。航跡の見えない高速魚雷。当初、電気魚雷かと思ったが高速すぎた。以前の海戦で無航跡高速魚雷が確認されており、潜水艦でも使用していると思われる。
バラン島とベルフィスヘルム間の航路は危険な航路になっていた。対潜哨戒機は飛ばしているが、どうしても間隔が空く。ガミチスのレーダーはまだ潜望鏡を捉えるまでにはなっていない。様々な要因で部族連合沖は危険な航路だった。
ディッツ帝国海軍潜水艦部隊は、この海域に六隻一個部隊として交代で投入していた。イ号とロ号計二十隻は決められた編成で出撃している。未帰還や損傷もあり、きついローテーションだ。
大陸南部から出撃した潜水艦部隊は一番危険なバラン島と南大陸の間を海流を使ってすり抜けていく。
海流は赤道付近からベルフィスヘルムまで届く巨大な物で、バラン島と南大陸の間は南大陸寄りに平均四ノットという高速で流れる。この海流に乗って流し込んでいくのだ。代わりに帰路は非常に苦労することになる。
ガミチス輸送船団は潜水艦部隊の網を抜けると一息付けた。最初に沈められてから十航海目だが一三隻の貨物船が沈んだ。護衛駆逐艦も一隻沈んで一隻が損傷した。対して戦果は撃沈確実三と撃破二である。ただ司令部では沈めたのは一隻だろう。後の二隻は撃破程度と見ていた。臭いパンツや重油放出は沈んだように装う常套手段だ。護衛艦隊司令部はもっと沖を航行するよう要請を出しているが、そうすると往復で一週間違ってくる。敵の攻勢にさらされ多くの兵力を欲している前線にそんなことを言えるのかと言われ引き下がる。
後二個輸送船団が用意できればローテーションも出来るのだが、本国でドメル司令長官が事故という事で交渉もうまくいかない。
それでも物資を運び込む船団と妨害する潜水艦の戦いは続く。
フェザーンは出てきませんでしたね
次回は出てきます