ディッツ帝国 反攻 フェザーン攻防
お久しぶりです。
長く休みすぎました。
これからは少し更新の間隔が開きます。
ディッツ帝国はホイカルに前進拠点を築きフェザーン奪還の布石としていた。
連日のように戦闘機と対地攻撃機が敵に向かっていく。
春になる前に物資の蓄積と戦力の集合は成功した。
ホイカルに
歩兵一二個師団、うち機械化八個師団
戦車二個師団
砲兵三個師団
周辺飛行場に
戦闘機四個飛行隊
対地攻撃機二個飛行隊
偵察一個中隊
それに補給や工兵などの補助部隊六個師団相当が集結している。
ホイカルより一段後方に
歩兵二十個師団、うち機械化十個師団
戦車四個師団
砲兵四個師団
戦闘機十五個飛行隊
対地攻撃機十個飛行隊
爆撃機八個飛行隊
偵察一個飛行隊
やはり補助部隊二十個師団相当が展開している。
さらに後方に待機部隊多数が控えている。
偵察結果だとフェザーンまでに歩兵八個師団、砲兵二個師団、戦車二個師団相当が展開。こちらへ抵抗線を築いているとの情報だった。
フェザーンには歩兵三十個師団、砲兵五個師団、戦車六個師団相当が展開していると見られた。周辺飛行場には航空機各種一千機程度が展開していた。
こちらの第一陣兵力が少ないが、これは現地に大部隊を展開する余裕が無いためと、大規模な空襲で戦力が削られる事への警戒もあった。
冬の間にホイカルまで複々線を開通させ、更に少し離れた所に複線を敷設。輸送力を強化。一気に大戦力を送り込める手筈だった。ただ予備とも言える新設の複線は道床を固める時間的余裕が無く、重量と速度にかなりの制限が設けられている。
同時に並行する道路も拡幅されている。
「フェザーンには一千機近い敵機がいるという報告だが、ハインツ君、航空参謀としてこの機数はどう思う?これだけあればホイカルなど灰燼に出来るはずだ」
「はい。ガミチスの戦闘機は我々と同じで航続距離が短くフェザーンからホイカル往復だと滞空時間がほとんど取れません。フェザーン手前の飛行場は常に攻撃して無力化していますので、帰路に問題が有り無理な攻撃は避けていると思われます」
ウムと頷く、ディッツ帝国陸軍フェザーン方面軍司令長官ケッセルリンク大将。
「では、構想通り再び航空撃滅戦の後前進で良いな?」
「参謀本部でもそう結論づけています」
「航空部隊はホイカル周辺が丘陵地帯で飛行場を広げることも増やすことも難しいと言うが、後方からで届くのか」
「はい。ホイカル周辺は完全に前線飛行場として運用します。航空撃滅専用の戦闘機も爆撃機も後方から進出。ホイカルは迎撃と非常用としての役目が多くなります」
「ならいいが。空軍の方は何と言っている?」
「春の長雨の前に終わりたいと」
「戦力に自信が有るみたいだが、油断していないか」
「機数が凄いですから自信は有ると思います」
「そんなにか。私の所まで回ってきていないが、確かなのか」
「現在、参謀と空軍で作戦計画を練っていますのでお待ちください」
「基本方針は変わらんぞ」
「承知しております。その上で更に戦力の上積みを図るべく日本に協力を求めます」
「大丈夫なのか」
「良い感触は有ります。ただ専用飛行場が用意出来ないので、運用面に若干の不安があります」
「一つ空けても良いだろう。空軍に伝えてくれ。司令長官の指示だと言ってな」
「了解しました」
「作戦開始まであと二週間です。何としても展開は完了させます」
「頼んだぞ」
日本軍の航空戦力は結局二箇所に展開をした。戦闘機隊の半分がホイカルへ、爆撃隊と残りの戦闘機隊が新たに空けられた飛行場に展開した。後方の飛行場がやや小さめだったのでホイカルへ戦闘機隊を分駐させることにしたのだ。
ホイカルではそのしわ寄せで飛行場が窮屈になってしまった。駐機場や誘導路を大急ぎで増やしている。
飛行場には轟音が鳴り響いている。航空撃滅戦がいよいよ始まろうとしていた。
先陣はディッツ空軍で新型高速爆撃機ミレリアM7百二十機を中心とし、護衛戦闘機二百二十機を持って飛行場一つを完全に使用不能とする計画だった。
新型高速爆撃機ミレリアM7は日本の一式陸爆を参考により対地攻撃を重視した機体だった。雷撃能力は無い。その代わり小型爆弾多数を一気にばらまくための設計になっている。
機体規模は一式陸爆よりも大きく一式陸攻よりも小さいが主翼は大型化している。これはエンジンがディッツ航空史上空前の大出力となったためで、ガラハド社の超野心作G2104空冷三重星形二十一気筒を搭載。その出力は二千四百馬力に達した。今後さらなる大出力化が期待される。問題は重くデカいことだが、双発爆撃機であればたいした問題にはならなかった。
一式陸攻が相当のじゃじゃ馬だと聞いて飛行特性を穏やかにするため主翼を大型化したというもっぱらの噂である。
ミレリアM7は偵察状態で六百三十km/hの最高速度と高度百でも五百五十キロ以上出せる低空性能が売りだった。爆弾は百キロ爆弾を十八発一気に投弾出来た。胴体下に一トン爆弾一発と主翼下に五百キロ爆弾二発を搭載可能でもある。爆装時の最大速度は各高度で八〇キロ近く落ちる。これは爆弾はすべて機外搭載であり空気抵抗が増大するためだ。
次いで第二陣として、戦闘機百五十機に護衛されたモスキート八十機が他の飛行場へ襲いかかる。
モスキートの整備にはイギリス人が態々やって来て指導している。
イギリスは、こちらの戦線へ物と人を出すことで自国への圧迫を少しでも減らそうとしていた。
イギリスは先の海戦の後、東インド大陸に橋頭堡を作られてしまいそこの部分で大きく迂回する航路をとらざるを得なくなっている。双方の輸送船を護衛する部隊との間で小規模な海戦がいくつか発生しているがお互いに決め手を欠いている。ガミチスも戦力の回復を図っているらしく、大規模な艦隊は当面出てこないというのが海軍の考えだった。
イギリスや連邦各国では、ようやく戦時体制への移行が終わり戦備の充実が図られている。これから反抗と言う時に、少しでも相手に損害を与え自身では戦訓の収集を図ろうという図々しい行動であった。
また、実力が未知数であるモスキートが「使い物になるのか」の確認もあった。速度が有るので大丈夫なはずだが、実践は初めてだ。どんな齟齬があるか分からない。
夜明け前、最初の攻撃隊が発進を始めた。