ディッツ帝国 反攻 戦線西進
かなり苦しい。作者の脳ミソが。
戦線は一度破られた後はズルズルと後退していくだけだった。
ガミチス帝国の五個在る前線飛行場の内二箇所を完全に使用不能にされ、現在も復旧されないよう継続的な空襲は行っている。
残りの3箇所の内、最大級の飛行場は半壊していてやはり復旧されないよう継続的な空襲を行っている。
そちらの空襲は日本軍が行っていた。
ディッツ空軍は残り二箇所の飛行場を無力化することに注力した。
そして反攻が始まって一ヶ月。遂に五箇所の飛行場全ての無力化に成功。
陸上部隊も空軍援護の下、前進していった。空軍の援護が無い陸軍は、援護がある空軍に勝てようも無かった。
戦線を膠着していた所から百キロは西へ進めることが出来た。
ただ、ここまで来ると、ガミチス帝国の後方飛行場からの空襲があり損害も増えている。旧最前線付近に臨時飛行場を造り、戦闘機や対地攻撃機を配備。味方への援護を続けた。
反攻開始二ヶ月で遂に敵四番飛行場まで西進。ここを一時的な根拠地にするための工事を始めた。敵機の妨害はあるが味方戦闘機の援護の下で工事が続けられ、小型機の運用可能な飛行場が整備された。運用可能機数は四十機ほどだが、戦闘機はやって来た。
しかし、ここでおかしなことに気がついた。敵の反撃が少なすぎるのだ。偵察機による結果では敵の勢力に変化は無い。だが静かだ。一つしか無かった。
攻勢を掛けるのだろう。大規模な攻勢を掛けるには膨大な物資と兵力の蓄積が大事だ。敵はそれを行っていると見られた。
航空撃滅戦で飛行場を攻撃したのとは別に対地攻撃機が積極的に敵の物資集積所を破壊していた。前線にある物資が攻勢に出るには足りないのでは無いか。
こちらは、後方から復旧された鉄道を使って物資が送られてくる。ガミチスも同じだが物資の源泉たる本国は遠い。この大陸に蓄積された物資を使うのだろう。どれだけあるのか。
ディッツ帝国陸軍参謀本部はそう考え、攻勢に対処出来るような陣地の構築を急がせた。更には飛行場整備も行った。敵五番飛行場はエリア15と名前を変えて整備。ただ大穴が大変だった。四番飛行場はエリア14になった。
エリア11とエリア12はまだ使用出来ない
高速を誇る百式司令部偵察機で偵察を繰り返すが、まだ兆候は無かった。
「バイエルライン少将、ですから兵力が不足していると申しております」
「だがなファーレンファイト大佐、本国からはこれ以上出せんと言うことだ」
「何故ですか」
「本国はこちらよりも北を重視しているらしい」
「ではドメル司令が本国に行ったままなのも」
「こちらへ兵力を出すようにと言う交渉のためだろう。他には考えられん」
「敵の地元で戦っているのです。補給は敵が有利です」
「分かっている。アイゼナッハ中佐も頑張っている。だが,努力が実らない。我々が必要とする兵力・物資の三割程度しか確保出来ない」
「ではもっと尻を叩いてください。それか戦線のさらなる後退許可を」
「戦線か。少し待て。考える。それまでは攻勢を掛ける振りをして耐久だ」
「それしか無いですね」
「分かってくれて嬉しいよ」
「少し順調に過ぎましたか」
「そうだな。本国の引きこもり共はもうこの兵力で相手を降伏させることが出来ると思っているかも知れない」
「幸せな奴らです」
「前線に出ない連中だ。こちらの苦労など知らないさ」
「困った物です」
東部戦線ベルフィスヘルム司令部総代理バイエルライン少将と東部戦線攻略部隊作戦参謀ファーレンファイト大佐の間で意見が交わされていた。本来ファーレンファイト大佐のやる仕事では無いのだが、ドメル司令長官直属だった事もあり、折衝にはよく引っ張り出された。
全員無い物を出せないのでどうにかしようという気持ちは有ったが、無い物はどうしようも無かった。
やがて後退許可を出す。
後退許可はドメル司令長官の了解をもって行われた。第3飛行場群までの後退許可だった。
それから一月、攻勢を警戒するディッツ帝国軍と攻勢の振りを旨くやってのけたガミチス軍との間で戦線は膠着していた。
そして、雨の良く降る次期になった。ディッツ帝国軍は元々この時期までの作戦行動として行動しており、予想外に戦線を西進させることが出来たのと、消費物資が予定よりも少なく済んだことにホッとしていた。
一ヶ月くらい降ったり止んだりが続くこの時期は作戦行動がとりずらかった。フェザー平原には恵みの雨であるが、整備された道路以外は軍用車両の行動を酷く嫌う。装軌車両で在っても容易に沈み込んでしまうことがある。
雨が上がれば寒くなる時期だ。両軍とも防寒装備の充実を図る。
今度戦うのは木枯らしが吹く頃になる計画を立てている、ディッツ帝国参謀本部だった。
陸上は戦線が一休みになっているが、北部の海面では休みなど無しで戦争は続く。
「もっと潜るぞ。百五十まで行く」
さっきから艦の外板を叩く探針音がうるさい。ガミチス海軍Ⅶ型潜水艦S-326艦長アンデルセン少佐は思った。
「艦長、今深度八十です。船体が持ちません」
「安全係数は2だ。設計と建造を信じよう。深度百五十だ」
「メインタンク注水。深度百五十了解」
「敵艦接近、爆雷!」
聴音手がそう叫んでヘッドフォンを耳から外す。
「総員掴まれ。衝撃注意」
深度計を見ると百だった。
ドーンと言う音と共に激しく艦が揺らされた。一発、二発、三発、四発。
四発で終わりだった。助かった。敵の爆雷調定深度は百まで有るのか。
配管から海水が噴き出す。応急で継ぎ手を閉めるが完全には止まらない。
「艦尾発射管室。浸水発生。応急中」
「前部電池室。電池ケース破損、有毒ガス発生」
「電池だと?電池は使えるのか」
「何個生きているのか分かりません。とにかく静かにならないと入った人間が危険です」
「閉鎖はしかかりしているな?」
「もちろんです」
「無音浮上、深度百へ」
「無音浮上、深度百了解」
「艦内、前部電池室で破損が出た。有毒ガスも発生している」(後部電池室の電池は後どれだけだ機関長)(およそ三時間、モーター全力運転なら精々十五分という所でしょう)
「後部電池で行動出来るのは二時間だ。それまでに敵が消えてくれるか、勝負に出るか決めなければならない。
深度百まで上がったところで各部の水漏れは何とか落ち着いた。だが相当量の海水が艦内に入った。
敵の探針音は聞こえない。さっき航海長と機関長の臭いパンツと板きれを放出した。更に普通は潜らないところまで潜った。誤魔化されたのか。
今度は誰のパンツとシャツにするか。
「ソナーどうだ。聞こえるか」
「ダメです。アクティブ、パッシブとも失探。変温層があるようです」
「そうか。航海長、この海域に変温層有りだ。記録を」
「了解」
「艦長、先の木片とパンツは?」
「あんな物、欺しに決まっている」
「どこに居るんでしょうね」
「さあな。どのみち潜水艦の水中行動半径は知れている。可潜時間もな。じきに根を上げる。その時が勝負だ」
ディッツ帝国海軍駆逐艦CA13はガミチス潜水艦を海上で待ち構えていた。機関の運転は微速程度まで落とし艦内の移動時も出来る限り音を立てないよう注意されていた。
戦争はどこかで続いている。
陸上の次の行動は寒くなってからです。
海は休み無く。
次回 七月十二日は怪しいです。更新無かったらごめんなさい。
七月十四日かも知れません。