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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
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魔石

魔石は取れるのか

 ロウガとミカヅキの二人が混沌獣を解体する。

 見学させていたが、所々でえずく音がする。この中で動物の解体をしたことのある者はいない。

 上村も出来れば御免したがったが、立場上頑張るしか無かった。


 上村は思う。


 俺と前島はスペイン内戦でいろいろ見てきたからまだ耐えられるが、初めてこれを見る者はきついだろうな。


 防疫班の兵にカメラで写真を撮らせる。いずれ知れ渡っていくこととは言え、速いほうが良いだろう。

 防疫班と衛生班はまだ耐性があったようだ。教育されているからか。しかし震えていたり顔が青くなったりしている。

 何人かの兵が耐えられなくなったのか、後ろに下がり吐いている。その場で吐かなかっただけ良しとしてやろう。


 混沌獣の血も赤かった。内臓の配置も地球の動物と違いは無いようだ。頭蓋骨の強度を知るために頭部をもらう。九発撃って、六発命中。うち五発が頭蓋骨に当たったが、貫通は一発だけだった。下手をすると、この先混沌獣との戦いで六十七式歩兵銃は頼りにならないことになる。


 持って帰る内臓は、心臓・肝臓・腎臓・小腸だった。残りは穴を掘って捨てるというので、学者先生達のお土産に戴く。セロハンに包んで箱に入れる。大腸はどうしようと思ったが、防疫班の奴が絶対必要ですというので、うんこは如何するのだと聞くと、うんこ込で必要ですと言う。処理はしてもらった。


 そこで不思議なことをミカヅキが始めた。自分の背嚢から魔法陣の書かれた布を出して地面に広げ、そこに混沌獣の肉・皮・内臓を載せて風呂敷のようにまとめた。

 

 何をしているのかと聞くと、この魔法陣が書かれた布は鮮度を保つ働きがあるという。具体的には五日後で一日経った状態という。


 素晴らしい物を見た。皆感心している。まだ有るのだろうか?


「ミカヅキ、悪いがその魔法陣の書かれた布はまだ有るのか」

「後三枚有るぞ、ジンイチ。一枚使え」

「いいのか」

「かまわない。ケイルラウが余分に持たせてくれたからな。多分こんな時のためだったのだろう」

「ありがとう。使い方は如何する」

「出来るだけ、中身が見えないようにすれば良い。中身が見えればそれだけ劣化が早くなるだけだ。多少中身が見えても村に帰るまでは大丈夫だろう」

「すまない」

「気にするな。あんたらのおかげで、あの腹が膨れる病気が治るめどがついた。これだけでも感謝している」

 

 頭を下げてありがたく貸してもらう。


「ジンイチ、これが魔石だ」


 見ると、先ほど心臓の反対辺りに有った自分たちでは何か分からない物だった。大きさは直径で4センチくらい。これが魔石か。


「この魔石は、そこそこ大きいが、まだ古くない。古い魔石だと、もっと色が濃い」


 魔石の色はミカンまでは行かないが黄色を濃くしたような橙色だった。


「古いともっと赤いのか」

「そうだ。大物になると赤を通り越して黒に近くなる。そういう混沌獣だと今のようには行かない。俺たちでも危ない」

「どうやって見分ける」

「イノシシとシカは体の色が灰色だ。濃くなれば古い個体だ。これはまだ明るいからそんなに古くない」

「聞くが、古いと硬くなるとかは無いよな」

「なるぞ。お前達の銃の威力が分からないから、まずは明るい色の若い奴をやらせてみた。中々良い連携だったし、忍び寄り方も良かったぞ」

「ありがとう。褒められたな。それでこの銃は今後通用しそうか」

「ちょっと問題が有りそうだ。こいつ以上の獲物は狙わない方が良いと思う。シカはまだこいつより柔いが大物だとこいつ以上に硬い」

「肉の確保が目的では無く、倒すだけが目的で腹を狙っても駄目か」

「腹だと中途半端に攻撃すると暴れるからな。俺たちも狙うのは頭か首だ」

「急所は変わらないのか」

「普通の動物と変わらない。見た目が同じなら急所も同じだ」


 では、六十七式歩兵銃では滅多打ちにするしか無いのか。


「分かった、ありがとう。この後は如何する?」

「獲物も捕れたしな。もう良いと思うが、、魔石を確保してこいとの仰せだ。まだここで頑張るさ」


「ジンイチ達はここで獲物を見張っていてくれ。俺たちはもう少し奥に行く」

 

 と言って、ロウガと二人で奥に進んでいった。


 全員を集め今聞いたことを話す。歩兵銃が通用しないかもしれないと言うことには衝撃を受けていたようだ。

 無線で後方部隊にも同じ事を話す。とにかく撃ちまくれと。


 交代で休憩を取らせる。

 日が傾き賭けた頃、二人が帰ってきた。デカい獲物をぶらせげてだ。

 タマヨがお迎えに走って行く。タマヨはイノシシ相手の銃撃の音に耳がペタッとなってしまい体裁が悪いらしく、近寄ってこなかった。


 獲物はシカだった。デカい奴で300kg位有りそうだった。けっこう色が濃かった。血抜きはしたようで首の辺りが赤黒くなっていた。これが歩兵銃が通用しそうに無い相手か。皆に見せる。


 そして再びの惨劇。まだ慣れない。イノシシと同じ内臓を持って帰り、残りは捨てるというので同じようにもらう。肺はデカすぎるので、写真に撮って一部を切り取りサンプルとした。


「ジンイチ、これで十分だ。小さい奴もいくつか仕留めたので魔石の数も十分だ。明日帰る」

「分かった。それでシカは二人で持つのだろう。イノシシは俺たちか」

「頼む。けっこう良い肉なんだ。持って帰りたい」

「分かった。ただ俺たちの力ではイノシシでも重い。歩みは遅いぞ」

「仕方が無い。俺達もこれを担ぐのはけっこうきつい。遅くて良い」


 部隊は予定通り、二泊三日で前進基地に戻った。皆、獲物に驚いている。

 ここで一泊し、翌日留守部隊と合流すべく出発した。


 翌日留守部位隊と合流した。獲物を担いできた連中はホッとしている。ここからは軽輸送車がある。

 参謀中尉に聞くと遠くに動物が見えたが、混沌獣かは分からなかったという。

 シカはさすがに一頭載せるのは無理と言うことでバラして積み込んだ。ここでも気分を悪くした兵が出た。


 そこで一泊する。久々の暖かい飯だ。皆嬉しそうに食べている。

 上村は、軽輸送車の追加配備と進出距離を伸ばすための道路整備を上申することにした。あるいは強固な前進基地を作っても良いのかもしれない。


 翌朝、村へ向かって出発する。合流してホッとしたのか気が緩んでいる。引き締めるのに気を遣う。

 



 

 村では、医師達の依頼で南の川周辺へ狩りに行った者達が戻ってきた。

 腹の膨らんだ動物を狩ってきて欲しいとのお願いだった。

 腹の膨らんだ動物は肉がまずいので狩らないというと、腹が膨れる病気の解決に繋がると言われ、それではと言うことで狩りに行ったのだ。

 狩ってきたのは小型のシカだった。村から離れた所で穴を掘り、内臓以外は捨ててガソリンをかけて燃やした。生石灰も多少は持ってきたのだが、とても足りなかった。


 肝臓を切り取り顕微鏡で見ると、見えた。卵だ。血液中にも幼生が認められた。腸にも卵が有った。ケイルラウに見てもらう。腹が膨れる病気の元になる寄生虫の現物を見て初めて見ると言う。まあ顕微鏡でないと見えないし、仕方が無い。

 

 別の医師が慎重に門脈の切開を行っている。住血吸虫の成虫を傷つけてはならなかった。

 切開が成功したようだ。ケイルラウに拡大鏡を貸して見てもらう。


「こいつか、こいつが皆の命を奪ったのか」うめくように言う。


 医師達は言葉も無く見つめた。皆気持ちは分かるのだ。



 柳沢達、植物研究者は見たことも無い野菜や薬草に興奮していた。

 特に薬草はその高い効能に驚いた。基本的に組み合わせて使うと言うが、漢方薬など目では無いな。

 それどころか大手薬メーカーも危ない。

 それほどの薬効だった。


 野菜・果実はまだ生食が許可されていなかったので、生の味が分からず見るだけだった。煮た野菜をごちそうになったが、おいしかった。将来が楽しみだった。

 

 泊地近くに農業試験場を作りたい。植物研究者達は切に思った。





 魔石収集部隊が村に帰還した。

 タマヨはやっぱり長とランランばあちゃんの所へ走って行った。


 村人達はイノシシとシカを見て、あのシカは旨そうだな。ああ、色が濃い。あれは旨い。等と話し合っていた。


 ロウガとミカヅキの二人は、細かい解体は村人に任せ、ケイルラウの所に魔石を持って向かう。上村もついていった。


「ケイルラウ、魔石持ってきたぞ」

「ありがとう。ロウガ、ミカヅキ」

「こんなもので良いか」

「これは上物じゃない。これならあの魔法陣を五回以上発動出来る。私とタガナキとカイルが補助すれば十回近く発動するわ」

「それなら」

「おなかの膨れている人達は助かるわ」

「「「おお」」」

「でもね、まだ患者はいると思うの。だからもっと魔石を取ってきてね」

「任せておけ」

「あのイノシシの魔石は如何なのだろうか」

「あれは若いからな、如何だろう」

「なに、まだ有るの」

「まあな、消臭と滅却の魔道具用とかに小さい魔石を取ってきた。イノシシは日本人達の練習用だ」

「そうなんだ。でどれ。見せてみて」

「これだ」

「うーん、これではせいぜい二回ね。他の用途に使う方が良いわ」

「俺もそう思った」

「すまんが教えてくれないか。あの魔法陣という奴は発動に力が必要で良いのか」

「そうね、それでいいわ」

「あの魔石を二個とか三個使うわけには行かないのか」

「ああ、それね。皆考えるの。でもね大きさが違うとうまくいかないのよ」

「どううまくいかないのですか」

「強い魔石が弱い魔石に引っ張られるというか、強く作用しないの。弱い方の力しか出ないわ」

「では強い魔石が無駄になると」

「そう、だから単独で発動させるの」


 大きさが違うとうまくいかないか。なら同じ大きさにすれば良いんじゃ。いや、そんな事とっくにやっているだろう。なんだろうな。よし、この魔石を借りてみるか。魔石の研究は重大事になる気がする。


 混沌獣の肉は、色が濃いなりに寝かせる期間を取った方が旨くなると言う。今回のイノシシで二日、シカで四日だという。その頃が良い具合だろうと言う。


 

 明日、村長が自ら志願して寄生虫対策の魔法陣を使うという。皆反対したが、まず村長が試すべきと意志は固く、実行されることになった。




無事魔石採取が出来ました。

村長が自ら志願してきました。成功すると良いです。


次回  駆逐 


九月二十二日 06:00予定

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