ディッツ帝国 反攻 航空撃滅戦 2
主役は爆撃機です。
敵前線飛行場群へ強襲を行ったディッツ・日本連合。対応する時間を少しでも減らそうと、巡航速度よりかなり速い速度で飛行する。
これは爆撃機も高速だったので可能な飛行だった。クライスB3爆撃機の巡航速度は三百七十キロ/時だった。
敵飛行場までは三百キロ。途中の敵野戦レーダーで発見されるのが二百キロ手前と仮定して、その二百キロを通常の巡航速度ではなく四百五十キロ/時まで上げて飛行しようというのだ。さすがに全速で二百キロはエンジンが持たないとして四百五十キロ/時にされた。
当然、燃料消費は大きく、攻撃過加重時で航続距離二千七百キロなのだが、一千八百キロ飛べるかどうかだった。往復六百キロで戦闘十五分として余裕なのだが。
クライスB3爆撃機は、新基準に則った性能表示で実用基準の性能表示だった。これは実戦部隊から評判がいい。
以前は軽荷状態での計測で、戦闘機なら武装無し燃料半分、爆撃機ならそれプラスで爆弾無し、と言う無意味な表示だった。航空機の性能が低かったせいも有るが、少しでも良い数字を残したかったのだ。
それが変わったのは、日本軍との出会いだった。公試状態での計測なら実戦で同じ性能が出せる。
クライスB3爆撃機は爆弾二トン搭載、燃料七割、弾薬基準量搭載で時速五百キロ出た。
クライスB3爆撃機のパイロットの一人、カールマイヤ少佐は良くこんな機体が用意出来たものだと思う。日本との接触前、爆撃機は高速と言っても巡航速度二百キロ出るかどうかだったのに。全速で三百五十キロだったしな。だが、速いは正義だ。それだけ危険な時間が少なくなる。爆撃手は照準が大変だろうが。
五人乗りだが一人は上部動力銃座専属だ。二人がパイロット。爆撃手と通信手にとられるので、余る銃手はいない。なのに機関砲は単装が三基ある。誰だ、こんな設計した奴は。まあ前方機関砲は爆撃手が動かすのだが爆撃態勢に入れば機関砲を操作出来ない。やはり、誰だ、こんな設計した奴は。結局通信手が左右の側面機関砲を掛け持ちすることになった。
おかげで戦闘中は無線の切り替えが出来ない。隊長の命令を聞くために隊内無線を全部受信することになるので五月蠅いこと。
『ケスラーだ。二十三飛行隊三小隊、四小隊は二時方向高度五千まで上昇。敵機を迎撃』
『三小隊了解』
『四小隊了解』
え?オスカー2が上昇していく。敵機なのか。
『三小隊、四小隊。そこから十一時、高度四千五百に敵機がいるはずだ』
『三小隊視認。向かいます』
『四小隊、迎撃します』
レーダーによる空中指揮か。これなら敵機に迎撃されずには、うん、すまないな。
『二十四飛行隊全機、十時方向高度四千、三十キロに敵機多数。上昇中。迎撃に向かえ』
『二十四飛行隊コールマン少佐、了解』『二十四飛行隊全機、聞いたな。続け』
敵も方向を変えて迎撃することで護衛を剥がすことに成功している。これは、不味いのか?
まだ爆弾を送り届けるまで五十キロ有るぞ。
『三百二十五爆撃隊全機、ハウホルト中佐。高度と速度を上げる。酸素用意。我に続け』
「『『了解』』」
爆撃隊隊長からお告げがあった。五十キロで上がれるだけ上がるのか。先程からじわじわ上がっているが、足りないと見たようだ。
「機長だ。全員酸素用意。通信手マイカルは安全ベルトの確認を」
『了解』
『ケスラーだ。目標飛行場周辺に迎撃機多数。直衛機以外は上昇、迎撃せよ。これ以降は数が多く、距離も近いため指揮は出来ないと考える。各機注意せよ』
無責任なと思うが、後四十キロだ。時速五百キロで四十キロ、五分以下か。指揮しているうちに着いてしまいそうだ。
『ケスラー中佐、三時、同高度、敵戦闘機接近中』
「ヘインズ、回避だ」
『了解』
もうレーダー画面は反応が多すぎて訳が分からなくなっている。しばらくは回避に専念するか。今のところこいつに追いつく敵機はいないと言うが、回り込まれたり囲まれたりすれば不味いだろう。
『四時上空敵機!戦闘機はどこに行った?』
『来るなバカヤロー』
『三中隊隊長機、墜落』
『二中隊四小隊隊長機、墜落』
『一中隊二小隊ザイツェン少尉、被弾左エンジン火災発生、爆弾投棄。帰投する。みなの健闘を祈る』
『頑張れよ』
ザイツェンか。無事帰れよ。
『三百二十五爆撃隊、爆弾倉扉開放、爆撃用意』
嚮導機のハウホルト中佐から指示がある。
あれから二分しか経っていない。もっと長く感じる。
『三中隊四小隊、リヒター機、墜落』
たった三分の間に、他にも火災発生や被弾落後する機体が、墜落報告と同じくらい出ている。殴り込みの一番手はやはり不味い。
『各機、爆撃針路に入った。編隊を崩すな』
そうだな。飛行場は目視出来る。ここまで持っていた二百キロ爆弾十発を落としてやる。
『投下用意、五、四、三、二、一、投下』
『投下』
嚮導機に従って投下する爆撃手のマッケンゼン二飛曹の声が聞こえる。機体が軽くなった。
『投下終了。爆弾倉閉鎖』
『ハウホルト中佐だ。投下終了した編隊から設定に従い離脱せよ。損傷機の援護を忘れるな』
『『『了解』』』
さて、帰るか。着陸するまでが爆撃だぞ。
反攻の口火を切った俺たち航空撃滅戦第一陣は、ディッツ帝国空軍野戦飛行場エリア4へ帰投した。帰りは襲撃されることもなく、拍子抜けだった。考えてみれば第二陣、第三陣が敵迎撃機を吸収するので第一陣は無事に帰ることが出来たのだ。
第一陣は、エリア4に展開する二十三、二十四、二十五の三個戦闘飛行隊と三百二十五爆撃隊で編成されていた。
戦闘機百四十機と爆撃機六十機だ。帰投したのは戦闘機百十機と爆撃機四十五機。かなりの損害だ。
戦果は同行した百式司令部偵察機五型が確認した。
敵四番飛行場の左側に集中した投弾は、誘導路と対空砲火をかなり吹き飛ばした。左側にあった格納庫も結構やれたようだ。数機が積んでいた四百キロ徹甲弾はそこかしこに大きな穴を開けていた。
作戦目的は敵四番飛行場の機能停止なので、概ね成功という所だろう。
飛行隊長からは未帰還十五機のうち、十一機が敵領域に墜落。生死は絶望的だろうと。四機のうち一機は味方領域で墜落。最前線に近いところだったが味方歩兵部隊が救出に向かい落下傘降下した二名を救出。三名は敵弾で死亡していたと言う。三機は味方領域内で不時着。十二名が生還。三名戦死。
第二陣は俺たちほどの迎撃を受けなかったようで、戦闘機百三十機と爆撃機四十二機が帰還。爆撃機に損害が出た。滑走路中心から左側に投弾したようだ。
第三陣は第二陣と同程度の迎撃を受けたようだ。実は飛行場爆撃は第三陣が本命だったりする。ディッツ空軍が装備していない八百キロ徹甲弾を使い、飛行場をボロボロにしようというのだ。六十機のうち半数に八百キロ爆弾四発を装備。規定は三千キロまでだが二百キロ程度増えても問題ないと言うことだ。残りの機体は二百キロ爆弾二十発を搭載。燃料を減らして対応した。日本空軍仕様だと二百五十キロ爆弾十二発なのだが、投弾装置をこちらで改造して積めるようにしたらしい。
さすがに四発機だ。クライスB3爆撃機の倍積める。
戦闘機九十機と爆撃機六十機の編隊は、敵飛行場の二本有る滑走路に大穴を開けたという。残っていた右側の設備にもかなりの損害を与えた。帰還したのは戦闘機六十八機と爆撃機五十三機。
敵四番飛行場への攻撃判定は成功。二日程度は飛行場として使えないだろうと。
第二陣の爆撃機の損害は敵新型機によるものだった。報告されていた正体不明の双発機だ。機首周辺に機関砲を集中配置。MG18を八基積んでいる。一連射でクライスB3爆撃機は撃墜されたという。速度もオスカー2ほどではないが六百キロ近い速度だという。驚異で有った。双発重武装なので運動性が悪いのが救いと言えば救いだが、こちらよりも身軽なのだ。出来れば戦場で会いませんように。
日本軍の攻撃隊は五番飛行場を目指し、高速での低空侵攻-低空攻撃-低空離脱を行ったという。
ディッツの爆弾規格です。海軍機は日本製の機体そのままですので日本規格です。近い将来ディッツ規格になる予定。
五十キロ 瞬発弾のみ
百キロ 榴弾のみ
二百キロ 榴弾。徹甲弾。
四百キロ 榴弾。徹甲弾。
次回 七月五日 05:00予定