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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
19/219

混沌獣

道中は長いなっと。

 上村中尉は訳が分からなくなっていた。

 なぜ自分なのか。

 なぜ混沌獣退治なのか。

 他に適任者はいないのか。


 話は前日にさかのぼる。

 寄生虫対策としての魔法陣が完成した。それは報告にあった。

 そして、魔法陣の動力源が足りないことも。

 混沌獣が持つ魔石という物なら魔法陣が発動すること。

 だから、混沌獣を倒して魔石を取り出す必要がある。


 それは理解した。

 しかし、理性と感情は違う。

 感情は全力で拒否をしている。理性は行かなければと考える。


 これはもう、大隊長、連隊長案件だと思い報告をするも、上村中尉の責任において実行するようにと、つれない返事だった。ただ、必要な支援はするとしていた。

 艦隊司令部も陸上は陸軍の管轄だからと、責任を放棄しに掛かった。ただ航空支援は行うと。


 未だ、この大陸の防疫上の安全性が確認されないため、接触人員を多くしたくないのは分かる。

 分かるが・・・


 諦めるか。どうせ半年は帰国出来ないのだ。ならば、現地住民接触最高責任者として振る舞ってやる。開き直ればいいじゃないか。


 連隊に重機関銃部隊と迫撃砲部隊の派遣を要請した。擲弾筒の増量を頼んだ。輜重部隊の強化もお願いした。

 結果、重機関銃二基二個分隊と八〇ミリ迫撃砲二基二個分隊の派遣が認められた。

 擲弾筒は、擲弾筒小隊ではなく擲弾筒一個分隊が派遣された。

 輜重部隊に関しては各地で不足気味であるとして、増員は無しとされた。ただ、新型の軽輸送車を人員込みで送ってくると言う。

 この軽輸送車は、十馬力のガソリンエンジンで動き、二百kgの貨物を載せ歩く程度の速度で移動できる新装備だった。

 この装備は、本土出発に間に合わず、後から追加で送られてきた装備だった。


 うん、中隊になってしまった。しかも重機関銃と迫撃砲装備の増強中隊だ。


 

 混沌獣退治が決まってから二日後、各種物資の補充と共に頼んでいた部隊が到着した。曹長・軍曹クラスの知り合いも多く、うまいことやりやがってとか、お悔やみを申し上げますとか縁起でも無いことを言う奴までいた。

 顔なじみに会えて、軽口を言い合って、少しホッとした。


 新装備の軽輸送車は十台やってきた。内訳が重機関銃分隊の使用分が二台、迫撃砲分隊の使用分が二台、残りが物資輸送用だった。この中には渡河装備も含まれていた。渡河装備と行っても大げさな物ではなくアルミ製の折りたたみボートと渡り板くらいだった。船外機が有るのが意外だった。


 軽輸送車は、前半分がエンジンと駆動輪で後半がリヤカーだった。リヤカーの前面に席が着けてあり、そこに乗って操縦するという。席の幅は狭いが無理をすれば三人乗れるという。非常時には担架を四人分運べるようになっているという。確かに担架も物資の中に入っていた。


 ありがたいのは、握り飯を持ってきてくれたことだった。ここに来てから四日だが、缶詰と乾パンの食事には皆うんざりとしていた。


 

 出発をする。

 歩兵一個小隊、重機関銃一個分隊、迫撃砲一個分隊、擲弾筒一個分隊、防疫部隊一個分隊、衛生一個分隊、軽輸送車八台の堂々とした部隊だった。

 目指すは村の西に有る山脈。この山脈の北側に山東山脈から流れてきた混沌獣が住み着いているという。

 村の住民が歩いて二日掛かると言う。この部隊だと四日だな。


 道案内と混沌獣の知識が無いので、村に誰か一緒に来てくれるようお願いした。

 狼獣人のロウガとクマ獣人のミカヅキ、なぜかタマヨも着いてきた。これは本来、ロウガとミカヅキの二人だったのに、タマヨが上村にべったりだったせいだ。村長が連れて行けと言った。


 軽輸送車で行ける所まで行って、そこに宿営地を作り留守部隊と魔石部隊に別れることにしている。

 留守部隊の指揮官は参謀中尉だ。

 ロウガとミカヅキの二人は、これなら大量に持ち帰ることが出来ると行って喜んでいた。

 二人によると、混沌獣は魔石のみならず、皮や肉、果ては内臓まで使えるという。いつもは重さの関係で、魔石と一部の皮と内臓だけだったが運ぶ手段が出来た事で大量に持ち帰ると気合いが入っていた。


 道中は村の北に有る広い川沿いなら車でも行けると言うことで川沿いに進む。途中小川程度は有るが渡河装備を使うこともなく進む。ここらには小さな巻き貝はいないと言うことで防疫部隊員が確認後歩いて渡った。

 意外に機動性の高い軽輸送車に驚きながら、あと半日歩くと混沌獣と遭遇する可能性の有る地点まで進めた。ここからは車は無理と言うことだった。ここまでこれたこと自体ありがたかった。 


 宿営地と決めた場所で野営準備をする。もう午後になっている。出発は明日、朝とした。

 連隊本部から、現地の水使用の許可が出た。ただし、生水は厳禁。必ず煮沸後飲用という条件の下だった。これは米が炊ける、皆喜んだ。タマヨと他の二人はなぜ喜んでいるのか分からなかったが、説明すると良かったと言ってくれた。

 付近の湧き水を汲んできて、防疫部隊の簡易浄水器で濾過する。湧き水でも水脈が地表近いと寄生虫がいたり、動物の大便由来の大腸菌が検出されることが有るので、絶対安全ではないと教わる。水質によっては腹を下すとも言われた。幸いここの湧き水は良好だった。


 米を炊き缶詰を副食に晩飯を食う。久々の暖かいご飯だった。タマヨには、ご飯に牛缶をぶっかけた物を出した。耳がピンとなるのが分かる。うまかったのだろう。ロウガとミカヅキの二人も真似をしてみたらしい。ガツガツと食っていた。



 翌朝、留守部隊を参謀中尉に預け、山の奥に向かう。食料は三日分。のんびり飯を炊いている暇があるかどうか分からないので、主食は乾パン。副食に小型の缶詰。水は各自四リットル。弾薬は定数。重いだろうが頑張ってくれ。俺も重いんだ。

 留守部隊は簡易陣地を作り、待ってもらう。留守部隊の陣容は、重機関銃分隊、迫撃砲分隊、小銃二個分隊だ。防疫と衛生は二班に分かれてもらい、一班は我々に随行する。


 休憩を挟みながら昼になる。彼等の話によると、そろそろ混沌獣と出会う頃だという。


「この地域で確認された混沌獣は、イノシシ型とシカ型だけだが他の種類もいる可能性はある。混沌獣は混沌領域から外に出ると全体的に弱体化する。弱体化した混沌獣の価値は下がるがそれでも一般の獣に比べると高い。それと小さいからと油断するな。奴らの牙と爪は強い。ウサギみたいな外見をしていても混沌獣独特の赤く光る目をしていれば、混沌獣だ。外見にだまされるな」と言う説明を出発前に受け、再び確認する。


 あと二時間前進してその日の前進を終えることにすると、ロウガとミカヅキの二人にいうと承諾してもらえた。


 二時間前進し、その日の行軍は終わりとする。すぐに背嚢を下ろさせる。重かった。

 歩兵二個分隊は、周辺警戒として見える範囲で行動させる。残りは軽機関銃分隊と擲弾筒分隊を中心とした陣地作りだ。防疫班には危険度の判定をしてもらう。

 

 周辺偵察の者が蛇を狩ってきた。銃剣で突いたという。ロウガとミカヅキの二人に見せると食えるという。毒は無い。中々うまいぞと。わざわざ毒は無いと言うことは、毒蛇がいるんだな。

 衛生班に聞くと、マムシ・ハブ・コブラ・サソリの血清は持っているが人数分は無いと言う。


 上空を飛行機が飛んでいる。日の丸が見える、友軍機だ。心強い。近寄ってきた。皆手を振っている。 タマヨは俺にしがみついてきた。なんだ怖くないぞ。頭をなでると少ししがみつく力が弱くなった。ロウガとミカヅキの二人はかなり警戒していたが、手を振っているのを見て警戒を解いた。

 通信筒を落としていく。

 通信筒の内容は、近辺に獣の集団確認されず。明日朝より上空直援を行う。符丁は・・・と書いてあった。


 翌朝、乾パンと缶詰の朝食を済ませ重機関銃分隊、擲弾筒分隊、防疫班、衛生班に小銃一個分隊を残しす。

 当日の昼食分と水及び少々の物資を背嚢に詰め、残りは陣地に置いて出発する。


 先導はロウガ。一番感覚が鋭いという。最後尾にミカヅキがついてくれた。ありがたい。タマヨは自分と一緒にいる。いいのか?


 二時間くらい進んだ頃、ロウガが待ての合図を出す。近づくと、指で示した先に灰色のイノシシが居た。

 小声で「あれがイノシシ型の混沌獣だ。餌を探している。やって見ろ」と言う。


 自分の分隊を集め

「この先にイノシシ型の混沌獣が居る。我々だけでやることになった。各自着剣しろ」

 地面に簡単な絵を書き指示をする。

「前島は、伊東・中川とここに廻れ。いいな静かにだぞ」

「了解です」

「吉岡は、村田と香川を連れてここだ」

「了解しました」

「和田と阿藤は俺に続け」

「はっ」

「狙うのは頭か首だぞ。腹に当てるとモツを傷つける。これは避けたい。だが緊急の場合は仕方ない。いいな」

「「はっ」」


 風下からじわじわと近づいていく。幸いなことに混沌獣は風上に居た。奴は木の根っこを盛んに掘り起こしている。芋でもあるのだろう。


 各自配置についたのを確認してから、初弾装填し、安全装置を外す。カチャリと言う音がする。混沌獣が顔を上げた。聞こえたようだ。しまったな、最初に装填しておけば良かった。

 しばらくじっとしていると再び土を掘り起こし始めた。攻撃用意の合図をする。


 撃った。まずは俺と和田。阿藤だ。二発当たったが一発は頬に、一発は頭蓋骨にはじかれたようだ。混沌獣がこちらを見て構える。突進してくるのか?だが、そこに吉岡・村田・香川の銃弾が殺到する。一発当たったようだ。混沌獣が体勢を崩す。いいとこに当たったか?とどめとばかりに、前島・伊東・中川が発砲した。さすがに分隊の中でも腕がいい連中だ。三発とも頭に当たった。

 混沌獣が倒れる。やったのか?分からん。イノシシならこれで大丈夫だが、初めて相手にする奴だ。油断は出来ない。クマなどはやられたふりをして、突如襲いかかってくると言う。

 次弾を装填しじわじわと近寄っていく。前島と吉岡はその場で待機だ。近づくと腹が動いていなかった。息はしていないようだ。銃剣でそっと頭をつつく。動かない。死んでいる。どっと疲れが出た。


 ロウガとミカヅキを呼んで、処理をお願いする。我々は全員やったことが無かった。鶏を絞めたことのある奴はいたが、そこまでだった。




ようやく混沌獣と遭遇。

イノシシクラスに一個分隊、この先大丈夫なのだろうか。


次回  魔石


九月二十二日 05:00予定

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