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東インド大陸沖海戦 4

艦隊運動で終わりそうな

 二万五千で撃った主砲弾は相変わらず諸元に苦労している。自転速度、緯度、重力、惑星曲率、大気密度など、いずれも地球と違い、まだ正確な数値は出ていない。観測機無しでは遠距離射撃の修正には苦労する。

 先程まで敵艦隊上空にいた水上偵察機は敵戦闘機に追い払われてしまった。

 射撃管制電探によると、百前二百近と言う事だった。この世界に来た時は実弾演習で五百から千はズレたからな。この世界に慣れたと言うことか。

 後数回の試射で夾叉を出せそうだ

 大和艦長波田野大佐は敵艦に命中することを確認した。

「新たな敵編隊接近中。高度五百と三千に分かれています」

 この報告で現実に戻る。



 敵はライオンと大和を挟むように飛んでくる。敵ながら見事な機動だ。それに機体が違うのか報告書に有った動きが鈍い機体ではない。

 既にライオンも高角砲は撃ちまくっている。本艦も盛大に撃っている。何機かは木っ端みじんになった。見張り員によると機体を左右に振って狙いを逸らしていると言う。しかし、ライオンも本艦も射撃管制電探を装備している。特にライオンの制御技術は素晴らしいらしい。

 

「長官。どうも敵機は新型のようです」


 航空参謀が話しかけてきた。


「報告書の機体ならあのようには動けないか」

「そうです。速度も五十ノット以上速そうだと言う報告です」

「我が軍で言うとどのくらいの機体に相当する?」

「九十七艦攻かと」

「じゃあ、あいつは引込脚の二号か」

「そう思われます」


 そんな会話をしていると声が聞こえた。


「艦長、ライオンからです」

「なんだ」

「回避自由と」

「分かった」

「見張り、本艦には降爆は来ていないのだな」

「はっ、視界には確認できません」

「電探はどうだ」

「本艦周辺には低空の機体だけです」


「どちらへ切るか」


 艦長は考えているようだ。俺の出番でも無い。お任せだ。こういう時はもどかしい。


「左舷雷撃機接近、機数五」

「右舷雷撃機接近、機数八」


「面舵用意」

「面~舵よ~い」


 機銃が撃ち始めた。左舷で一機落ちたな。


「左舷一機撃墜」

「右舷二機撃墜」

「左舷一機撃墜」

「右舷一機撃墜」

「右舷一機撃墜」


「面舵一杯、急げ」

「面~舵いっぱ~い。いそ~げ~」


 でかい船はなかなか向きを変えない。


「左舷。投雷」

「右舷。投雷」

「左舷一機撃墜」

「右舷一機撃墜」


 左右同時か。高い練度だ。大和がようやく向きを変え始めた。当たるなよ。


「左舷雷跡二本離れます」

「左舷雷跡一本近い」

「右舷雷跡一本通過」

「右舷雷跡一本通過」

「右舷雷跡二本近い」

「右舷雷跡近い!当たります」


 ドーンという音共に右舷二番砲塔付近に水柱が上がった。衝撃はあまりないな。揺れたかくらいだ。

 直ぐに次の水柱が右舷中央に上がる。

 終わったのか。敵機は去って行った。

 

「舵戻せ」

「戻~せ~」

「損害報告。応急長は急げ」

「左舷注水。百トン」


 艦長が報告を受けている。こちらへ顔を向ける。


「長官。本艦右舷に被雷二本。バイタルパート内異常なし。右舷防水区画が幾つか破られ現在復旧中です」


「分かった。敵との砲撃戦に問題は」


「トリムに苦労するでしょう。全速航行は隔壁に不安があります。ライオンには二十五ノットまでと報告してあります」


「そうか」


 次の言葉を言いかけた時


「味方機。上空通過します」

「四機上空を旋回中」


「長官。味方戦闘機、零戦です」


 俺と艦長は言ってはならない言葉を口にしようとしていた。(あと十分早く来い)




 凍鶴戦闘機隊の香川中尉は遙か向こうに遁走する機影に、追撃を諦めた。

 燃料を入れ弾薬を補給し暖気をして母艦の速度が十分なことを確認した後、発艦が許された。四機編隊二個八機にこだわったからだ。単機で良ければもっと早く発艦できたのであるが、敵戦闘機が確認されており現状では一機や二機の小数機での突入は危険とみられた。

 黒鶴戦闘機隊の四機は味方戦艦上空で旋回している。 

 香川中尉達の任務は、味方攻撃隊が敵艦隊攻撃を開始するまで味方艦隊上空を守ることだった。発艦する直前、母艦では整備兵達が必死になって爆弾や魚雷の取り付け、燃料の補給などを行っていた。

 最大武器である魚雷は調定に手間が掛かり「何本用意できるか」と顔見知りの整備兵は言っていた。


 味方攻撃隊が近づいてくるのは大和からの無線で知らされていた。敵と誤認するなと。俺たちも一緒に進撃したいが許されることでは無かった。真面目に任務を務めよう。




 日本海軍攻撃機部隊は零戦二十機、彗星二十六機、天山二十四機だった、彩雲四機が先行している。

 天山に雷装出来たのは二十六機中十六機だった。八機は八十番を抱いて水平爆撃だ。

 零戦は開発側が最終型と見做している五十五型だった。彗星は金星装備の三十四型。天山は誉装備の二十三型。

 いずれも最新型である。

 零戦五十五型は金星発動機を魔石添加剤5%以上使用のみにチューンされ5%添加時で一千五百八十馬力を絞り出した。普通のガソリンでは一千三百馬力出ない。おかげでイギリス本土の陸上運用時には性能が低く合同演習では苦労した。

 今回艦隊が持ってきている燃料は5%添加燃料である。

 彗星も同じ発動機を使用しており、全速で三百四十ノットという艦上爆撃機なのかと言いたい速度を発揮した。イギリス本土で陸上運用時は零戦と同じ結果となった。

 天山は誉に換装して成功した。機首が細くなったことで得られた優れた前方視界。出力向上と共に空気抵抗の低減で三十ノットも速度が上がった。



 同じ頃イギリス海軍航空隊も攻撃隊を発艦させていた。敵情報は彩雲が送ってくれる。

 シーファイア二十八機、ブラックバーン・ファイアブランド二十二機、フェアリー・ノッケン二十六機だった。雷撃機であるファイアブランドは日本同様魚雷の調定が、間に合わなかったのか雷装は十八機で四機は一千ポンド爆弾二発だった。

 シーファイア二十八機はスピットファイア艦上機型であるシーファイアⅥeだった。エンジンを千六百四十馬力のマーリン54を搭載。キャブレターは中島系の特殊飛行時でも燃料供給がされるものだった。

 艦上戦闘機としての弱点である短い航続距離と狭い主脚は、主翼側に主脚ピボットを移したeウイング採用で解決した。

 eウイングはそれまでの薄い断面から厚い断面に変更。主脚ピボットを主翼に移すことと燃料タンク容量の増加を可能とした。ただ胴体下面にタイヤ収納スペースが無い上、主翼上反角とのかね合いで主脚を長くしなければいけなかった。そのため主脚は一段伸縮式となっている。武装は二十ミリ機関砲イスパノMk.Ⅱ 二丁、ブローニング七.七ミリ機関銃四丁。

 ブラックバーン・ファイアブランドは当初艦上戦闘機として開発されたがシーファイアに勝てずその大きな搭載力から雷撃機となった。優れたイギリスの電子装備のおかげで単座でも雷撃・爆撃が可能。いざとなれば二十ミリ機関砲四丁という重武装で結果を出してくれるような気がする。

 フェアリー・ノッケンは、さすがに複葉機をいつまで使うのだという批判と現場からは戦闘機が編隊を組めないという苦情が有り、転移後細々と開発がされていた。

 空冷単発復座低翼単葉でエンジンは実績のあるブリストル・ハーキュリーズを選択。

 雷撃と急降下爆撃が可能な上、最大速度三百マイルと二千ポンドの搭載量を示した。

 だが完成時にはブラックバーン・ファイアブランドが雷撃機として採用されおり、急降下爆撃機として採用された。もちろん雷撃も可能。


 日英合計百四十四機の編隊は合同訓練などしたことがないしお互いの機体の性能もよく知らないので編隊を組めるわけも無く国別に分かれていた。

 お互いにフラフラと相手を窺う機体が多いので編隊長達は神経を使う。



「こちら彩雲二号機。後続の各機へ。敵艦隊は水雷戦隊を両側に戦艦二隻を挟んだ隊形」

「こちら彩雲三号機。敵艦隊より三十海里西南西に三十隻以上の輸送船団、戦艦二隻、小型空母二隻、小型駆逐艦二十隻余りを確認。上空に直衛機数機」


 いずれも瑞雲が確認した敵だが、艦隊は隊形が少し変わったようだ。正規空母はどこだ?輸送船団にいる小型空母では、先程の攻撃隊を出せない。瑞雲が見た空母はどこへ行った。

 黒鶴雷撃隊隊長で今回の攻撃隊隊長を兼務する杉村中佐が疑問に思う。

 先程のやりとりで英国部隊が戦艦を、日本部隊が空母をやることになった。


「こちら彩雲一号機。輸送船団南十四海里に大型空母二隻と護衛駆逐艦六隻を発見。上空に直衛機数機」

「彩雲一号機。黒鶴攻撃隊。誘導願う」

「こちら彩雲一号機。了解」

「誘導電波確認した。直ちに向かう」


 編隊針路を誘導電波に乗せる。巡航二百ノットだが距離が短い。燃料消費を気にせず速度を上げた。


「こちら彩雲一号機。敵戦闘機が報告にある機体と違う。速度が速い。気を付けられたし。一時避退する」


 この通信のあと、通信は無かった。ヒ連装は届いているのでまだ落とされてはいない。優速の彩雲が逃げるのだ。厄介と言えた。


「戦闘機隊。敵は新型らしい。速いという。気を付けろ」


 隊内無線で知らせた。戦闘機隊の士気は高い。多少の性能差が有っても護衛を完遂してくれるだろう。

 ヒ連装はまだ途切れない。彩雲一号機の無事を祈る。



「隊長、零戦が二時方向上昇していきます」


 操縦員の川原中尉が報告する。来たか。


「各機、高度を下げる。編隊を密にせよ。火線を切らすな」


 前方では対空砲火が炸裂している。彗星は速いな。

 後ろでは機銃の音がする。機銃員の太田一飛曹が撃ち始めたか。

 零戦は頑張っているが、既に数機が敵味方分からないが落ちている。雷撃隊にも一機被害が出た。

 どの船だろう、黒煙を上げている。彗星が護衛艦を攻撃し対空砲火が弱くなったところで突撃という作戦は、ヘパストイ島沖海空戦の戦訓から導き出された。以降初の海戦だ。戦訓が生かされればいいが。


「雷撃隊各機。片舷からの集中攻撃だ。行くぞ」

「「了解」」


 天山は空母の右舷から突撃を開始した。













空母が二対四では結果は見えているような


ガミチス戦闘機Ju98の後継がDo/SVと書いちゃいましたが、ブラックバーン・ファイアブランドと同じ結末になりなしたとさ。CP/Mの後継機でした。当然、ある程度の戦闘機としての能力はあります。


次回 六月二十一日 05:00予定


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