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東インド大陸沖海戦 2

佳境へと

 英日艦隊はそれぞれ軽巡一隻、駆逐艦四隻を分離。商船隊の護衛とした。

商船隊護衛

ホバート シェブロン チェビオット チルダース シヴァリス

大井 十六駆 萩 梨 椎 榎



 空母四隻は艦隊から大陸寄りに三十ノットで驀進。艦載機発艦準備をしつつ風を捉えようとした。

 空母の護衛は直衛艦と駆逐艦を二隻ずつ出した。イギリスは艦隊前衛に出してあったカロンとカリスフォートを向かわせた。

直衛艦  山月 望月 夕月 如月

第十五駆逐隊 檜 欅 

カロン カリスフォート


 十五駆の楓と柿は臨時に八戦隊に組み込まれた。


 ガミチスも似たような艦隊構成だったので慌てて上陸船団と空母に護衛を付けて分離したと報告が有った。

 今のところ空は英日の水上機しか居ない。邪魔なのは対空砲火だけだった。




「まだ敵偵察機は落とせんか」

「残念ながら、一機しか」


 艦隊上空に広がる炸裂を見ながら、クリムエ参謀長は艦隊砲術参謀ガリウス大佐と忌々しげに会話をしていた。

 その間にも艦隊はレーダーで捕らえた敵艦隊に向かって進んでいる。単艦を捉えたと思ったら後ろに艦隊がいた。水上偵察機を発艦させたら全機撃墜されてしまった。最後の通信では敵も水上偵察機だという。水上偵察機に空戦性能だと?何を考えている?

(奴らはおかしい)    

 クリムエ参謀長はそう決めつけた。


「クリムエ参謀長、上陸船団分離しました。南西海面で待機させます。護衛はそのままとしましたがよろしいのですか」


 ワイツネッガー大佐が確認する。


「ディッツ帝国沖海戦では、クナップシュタイン級戦艦の遅さが艦隊行動を妨げたという戦訓がある。上陸船団の護衛についているのはクナップシュタイン級戦艦サジウレームとベルリッヒ5世だ」

「確かにそうですが、砲戦力は魅力があります」


 ガリウス大佐だった。


「艦隊の自由度を優先する。それにあの戦艦以外は駆逐艦とも言えないような護衛駆逐艦と護衛空母だぞ」


 上陸船団の護衛だが水雷戦隊と報告されたのは、一千トン級護衛駆逐艦だった。

P級護衛駆逐艦

排水量 一千五十トン 機関出力 七千馬力 二十三ノット

十一センチ対空砲 単装四基

MG37連装四基 MG18連装四基 MG18単装六基

爆雷投下軌条二基 爆雷投射器四基 爆雷百発


 船団護衛用対空対潜艦であり、対空砲は徹甲も積んであるが砲弾数の一割でしか無い。魚雷も積んでいない。対艦能力は正直低いと言わざるを得なかった。

 船団護衛に数だけは二十隻来ているが、船団から外すわけにはいかなかった。

 護衛空母は商船の船体に飛行甲板を付けただけで、多少は防水区画を増やしているようだが装甲は無い。はっきり言って一発喰らえばおしまいになりそうだ。

MA級護衛空母

 九千八百トン 一万二千馬力 二十三ノット 搭載機数二十四機 

 MG37連装四基 MG18連装六基 MG18単装六基 

 カタパルト一基 エレベーター二基


 艦隊の正規空母はアドラス級二隻、アルナヘイムとアイギスラントだった。今はGA級駆逐艦六隻を護衛に伴い風に正対し艦載機発艦準備に追われている。

水上砲戦部隊は

戦艦    ハウスラー マルティン4世

大型巡洋艦 ボルネジ ディスターラント

巡洋艦   ケイルブルク サディスブルク エストブルク

駆逐艦   GA22.23.24.25.26.27.28.29.30

二十隻     31.32.33.34.35.36.37.38.39

      シュワルツグリフ シュワルツメルケ  

だった。

 




「敵艦隊の陣形変わりました。空母二隻が駆逐艦四を連れ風上に推定三十ノットで航行中。水上砲戦部隊とみられる一隊は、水雷戦隊の軽巡一駆逐艦九隻を両側に戦艦二、重巡二、軽巡三、の三本の単縦陣で此方へ接近中」


「オーウェル参謀長。こちらはそんな器用な陣形は無理だな」


「アイ・サー」


「日本艦隊からはなんと?」


「各艦隊単縦陣二本でいいのではないかと」


「無難なところだろう。それでいい。今は我々が西にいる。北から攻撃すると伝えてくれ」


「サー、アドミラル。こまかい作戦は無理です。日本も我々も勝手に動くとなりますと混乱します」


「そう言えば、酸素魚雷があったな。両側で挟み込むと危険か」


「射程が長すぎます」


「では、オーウェル君。伝えてくれたまえ。水雷戦隊は一万五千まで接近。全魚雷を発射すべし」


「よろしいのですか」


「構わん。どうせ打ち尽くしても輸送艦に補給用魚雷が積んである。それと大和は本艦と行動を共にして、敵戦艦の阻止に当たる」


「了解。日本艦隊に伝えます」




「ふ~ん。あちらは北からか。そして戦艦二隻で相手戦艦の阻止に当たると」


「我々は南からですね。無難でこれ以上シンプルには出来ませんな」


「共同訓練もしたことが無いし、他にやりようが無いだろう」


「では八水戦に一万五千で発射と指示します」


「やってくれ。酸素魚雷の射程が二万八千も有るのがいけないんだ。八水戦には肉薄襲撃の機会は無いが勘弁して貰う。それともう旗艦として指示を出せない。八戦隊司令が指揮を執れとも」


「了解しました」


          ガミチス海軍

サディスブルク            ケイネブルク  

                   

   GA30              GA39      

     29                38 

     28    シュワルツメルケ    37  

     27     エストブルク     36 

                     

     26     ディスターラント   35

     25     ボルネジ       34

     24     マルティン4世    33

     23     ハウスラー      32

   GA22    シュワルツグリフ  GA31

              ↓

              


  日本海軍 ↖         イギリス海軍 ↗           

         

利根    北上    カプリス      アバディーン    

筑摩    梓     カサンドラ     ニューカッスル 

楓     栃     シーザー      ホバート       

柿     菱     キャベンディッシュ イギリスA部隊        

      榊     チャプレト           

      藤     チェッカーズ

      葦     チーフテン

      葵     キャバリア

      蓬     カンブリア

            エイジャックス  

            イギリスB部隊            


         ライオン  

         大和



 日本艦隊は南から、イギリス艦隊は北から一万五千で同時遠距離雷撃を行うことになった。そんなに都合良く中間点にいてくれるかどうかは知らないが、とにかく遠距離雷撃で同士討ちの危険を避けると言うことだ。

 水偵からは『敵隊列に変化有り』と報告が有った。細かく分かれたそうだ。

 現実は都合良く行かない。奴らこっちへ来やがった。何でだ!


「司令、福島司令」

「まだ直進だ。我慢しろ」

「いいのですか」

「とにかく水雷戦隊が射点に着くまで我慢だ」


 利根艦橋では八戦隊司令部と利根艦長が色々言い合っている。


「何でこっち来やがった」

「駆逐艦はこちらの方が一回り小さいですから」

「与しやすいってか」

「有り体に言えば」

「フン。普通は強い方から相手にするだろ。とにかく針路は水雷戦隊に任せる。本艦は水雷戦隊支援だ。射程に入り次第八戦隊撃ち方始め」

「八戦隊撃ち方始めます」


 利根と筑摩は一番砲塔二番砲塔の一門ずつ策勢のための射撃を始めた。二万以上有る。当たるなど期待していない。


「八水戦、取り舵」

「なんだ?頭を抑える気か」

「利根続航しますか」

「艦長、続航だ。操艦は任せる」

「了解。取り舵三十」


 利根は大型艦で取り舵は十五度となっているが水雷戦隊は軽巡以下なので取り舵は三十度だ。気を付けないと突っかける。

 阿賀野級くらいまでならなんとか素直に向きが変わるが、利根クラスになると向きが変わるまでの時間が長くなる。それも艦隊行動での要注意点だ。


「八水戦「百二十度面舵」信号です」

「八水戦、面舵。大舵角で転舵します」


信号員と見張り員からだった。


「敵も回頭しましたから、同航戦にしようとしているのでは」

「それなら、そろそろ発射か?」


 と言っていると。


「偵察機から無線。敵戦艦発砲」

「何?」


 どいつが狙われた?


 水柱は一本、前に上がった。本艦なのか、水雷戦隊なのかイマイチ分からん位置への着弾だった。下手くそめ。

 また発砲したらしい。 


「八水戦発射始めました」

「八水戦発射終了」


 敵と同航になったときに魚雷発射を始めた。ご丁寧に右舷側オルジスで教えてくれている。あと何分だろうか。


「一万二千で発射しましたから、角度にも依りますが、あと七分から八分くらいかと」


 水雷参謀か、済まんな。じゃあそれまで直進だ。

 楓と柿には発射は待てと言ってある。切り札として使わせて貰う。

 イギリスA部隊B部隊と三万近く有るからイギリスさんには届かない。挟撃は嵌まれば凄い結果が出るが、魚雷の射程が長すぎて危険なのはアホらしい。そうしたらイギリスさんも発射したと符丁で連絡があった。


「弾着、本艦前方二百」


 不味い。戦艦となど撃ち合えるか。


「敵戦艦周辺に弾着、赤です。大和が撃っています」


 日本海軍は主砲弾に染料を混ぜて総天然色の水しぶきを上げるので有名だ。

 赤は大和の色だ。

 

 戦艦から砲撃されたのが分かったのかガミチス主力艦隊はライオンと大和を相手にするようだ。こちらへの砲撃は止んだ。

 戦艦と巡洋艦が分離したと上空の水偵から報告が有った。

 

「司令、利根目標敵駆逐艦のままでよろしいですか」

「艦長、敵巡洋艦か」

「水雷戦隊まで一万七千まで近づきました。本艦からは二万です」

「まだ遠くないか」

「策勢程度です。八水戦に近づけないようにと八水戦が撃たれないようにです」

「策勢なら後部二砲塔で敵巡洋艦、前部二砲塔は引き続き敵駆逐艦だ」

「砲術が文句を言ってきそうです」

「魚雷到達時間まではとにかく水雷戦隊支援だ」

「了解しました」

「通信参謀。筑摩にも水雷戦隊支援を徹底させよ」

「了解しました」


 時間が経つのが遅い。海流も分からない場所での遠距離雷撃だ。当たるかどうかは日頃の行い次第だろう。

 八水戦には被弾して煙が上がっている艦もいる。もちろん敵にも相応の被害は与えている。


「葦「ワレ機関損傷」落後します」


 まだか。


「司令、推定時間です」


 水雷参謀が教えてくれる。まだ報告は無い。八水戦全力雷撃で四十六本だ。一割でも当たれば大被害だろう。




 

 敵未来位置を狙ってやや斜めに進んだ九十三式魚雷の群れは、数本が途中故障で自沈した。



 残りの四十本以上が未来位置に辿り着いた。

 

 










次回こそ

うなる砲弾。炸裂する魚雷。


(奴らはおかしい)   *いえ、イギリスよりはマシかと*


次回 六月十八日 05:00予定

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