日英協定
どうなるんでしょうね。
少し短いです。
日英の交渉は他に地球国家が無いという事実から比較的順調に進んだ。
主に資源協力を主体として貿易の復活。
ガミチス帝国対策としての軍事協力。
ガミチス帝国対策の一環としてディッツ帝国へイギリスを紹介。
お互いが知る、ランエール事情の交換。
医療協力。
学術協力。
等多岐にわたる。
困ったのは為替レートだった。十年前とは違うのだ。金で交換にしても転移前以上の値が付いているイギリスと、転移前以下の値が更に下がらないよう金の放出を制限している日本では金の交換は出来ない相談だった。
暫定として転移前の水準での取引となった。
話がスムーズに進んだのは途中に置いてきた通信中継艦のおかげだった。両国間の通信は日本が資金を出してイギリスの会社が海底ケーブルを引くことに決まった。
海底ケーブルの被覆に向いているインドゴムノキが栽培されていることも良い条件だった。
イギリスが大量に欲しい物として、コーヒーと紅茶の増産を切にお願いされた。綿はディッツ帝国との相談だが、よいワインが有ると聞きそれも欲しいと言い出す。
砂糖はサトウキビの苗と種子を欲しいと言ってきたので渡す事となった。
交渉が大凡纏まり、遣英艦隊が日本に帰るときが来た。1952年4月だった。
商船と輸送船には目一杯の交易品が積まれた。多いのは羊毛と毛織物、皮革製品、電気製品、高級乗用車 (ロールスロイス)等だった。日本に有るイギリス製車両や機械の整備用部品も多数積まれた。
イギリスとしては、ロールスロイスの航空機用エンジンを期待したのだが既に空冷化してしまっている。無理だった。
ディッツ帝国向けにスピットファイアMkⅤaをサンプルとして積んだ。Os109F/2相手なら充分以上に対抗出来る性能であった。
軍事協力は緊急性が高く遣英艦隊の帰国に合わせイギリスからも艦隊が日本に向かう。当然大使や各種役人や経済関係者が乗る客船や商船も着いてくる。豪華な護衛付きだ。こんな航海は滅多に無いだろう。
東インド大陸南端にいる日本の通信中継艦に代わりイギリスが通信中継艦を配置する。
日本派遣艦隊
旗艦 ライオン
戦艦 ライオン
空母 インプラカブル インディファティガブル
重巡 アバディーン ニューカッスル
軽巡 リアンダー ホバート エイジャックス
駆逐艦 カプリス カサンドラ シーザー キャベンディッシュ
十五隻 カンブリアン カロン カリスフォート キャヴァリア
チャプレト チェッカーズ チーフテン シェブロン
チェビオット チルダース シヴァリス
輸送艦 四隻
タンカー 四隻
通信中継艦 一隻
護衛駆逐艦 二隻
補給船 一隻
客船 クィーン・メリー
商船 六隻
旗艦である戦艦ライオンはライオン級一番艦。工事停止後、改設計をしたため初期の二隻だけ大型バルジ装着をしており排水量が大きい。この時点で四番艦サンダラーまで竣工している。ベレロフォン、シュパーブは工事中。
ライオン
排水量 五万一千トン
十八万馬力
三十ノット
四十八口径十六インチ砲 三連装三基
十.二センチ高角砲 連装十基
ボフォース四十ミリ機関砲 連装十基
HS.404 二十ミリ機関砲 連装二十基 単装十八基
インプラカブル インディファティガブル
改イラストリアス級
こちらも転移の影響で工事停止後、改設計。排水量は三万トンまで増えた。飛行甲板の装甲はイラストリアス級と同じ。
排水量 二万九千六百トン
十六万五千馬力
三十三ノット
十.二センチ高角砲 連装八基
ボフォース四十ミリ機関砲 連装八基
HS.404 二十ミリ機関砲 連装十基 単装八基
搭載機数 八十五機 補用機四機
カタパルト二基
アバディーン ニューカッスル
転移後、ビクトリア砂漠での油田発見で浮かれポンチの内に承認された重巡。
排水量 一万五千トン
十五万馬力
三十二ノット
五十口径八インチ砲 三連装四基
十.二センチ高角砲 連装六基
ボフォース四十ミリ機関砲 連装十基
HS.404 二十ミリ機関砲 連装十二基 単装十二基
リアンダー ホバート エイジャックス
転移前の仕様のまま。都合が悪くなれば改装する予定。
駆逐艦 C級
転移後、ビクトリア砂漠での油田発見で浮かれポンチの内に承認された駆逐艦のうち大型のタイプシップ。
排水量 二千五百トン
六万五千馬力
三十四ノット
四十五口径十一.三センチ高角砲 連装三基
ボフォース四十ミリ機関砲 連装四基
HS.404 二十ミリ機関砲 連装四基 単装八基
五十三センチ魚雷発射管 四連装二基
ヘッジホッグ 一基 爆雷投下軌条二基
今回同道しているのは全てC級。
かくして1952年4月、日本向け大艦隊がイギリスを出発した。
東インド大陸南端まではイギリス海軍日本派遣艦隊司令長官ケネス・D・ヘンリー大将が指揮を執る。
そこからは遣英艦隊司令長官島崎中将が指揮を執ることになっている。上級者を指揮するのには抵抗が有る島崎だった。
油断が有ったと言えば、有ったのだろう。10年ぶりの出会いだ。心も緩むのは仕方が無い。しかし、軍人がそういう事ではいけなかった。
「レーダーに反応。方位九十度。距離五十五海里。艦影!」
「なんだと?」
「サー。キャプテン。艦影、IFF応答無し。敵の可能性大」
「通信。旗艦に連絡。敵と思われる艦影を探知。方位九十度。距離五十五海里」
「レーダー。日本艦隊は後方にいるな?」
「確認できます」
「なら敵だろう。艦内、戦闘配置急げ」
CICに詰めている艦長を始めとした要員の間で反応は早い。直ちにブザーが鳴らされ戦闘配置の放送がなされた。
前衛として航行していた駆逐艦カロンのレーダーが敵と思われる艦影を探知したのは東インド大陸南端まで後二百海里と言うところだった。
敵発見の報に艦隊は騒然とした。皆、なんで哨戒機を飛ばしていなかったのだと悔やむ。
商船は全速でと言っても十八ノットまでしか出ない船がいるためそれ以上は出さなかった。それでも機関一杯で速度を上げ、東インド大陸沿岸に近づく。
空母は緊急発進の準備だ。艦隊内では水上機の発進準備だろう。エンジンを暖機し始めて爆音が聞こえる。
駆逐艦と巡洋艦が商船・輸送船の盾になるため艦隊右舷へ出て行く。
水冷よりも空冷の方が暖気が早く終わり、日本艦隊から次々と水偵が発艦していく。
敵も増速しているようで、水偵の発艦が終わる頃には四十五海里まで近づいていた。
ヘンリー大将からは「民間船を全力で守るべし」との通達か有った。
次に
「空母は護衛を伴い、発艦速度まで増速。艦隊前方への突出を認める」
と指示があった。風向きはやや斜め前二十度方向からだが敵には近づきたくない。カタパルトで発進すれば可能と思われた。
不意遭遇戦になってしまいました。
次回 6月14日 05:00予定