日英同盟か?前交渉
タイトル通り。
サクサク進めます。作者的に
シベリア大陸南端の泊地で給油したポーロ艦隊は日本輸送船の先導で一路台湾は高雄へと向かう。直線上には危険海域が有って迂回航路を取らないといけないと言った。暗礁や岩礁が多い海域があるそうだ。一応海図を貰ったが仕様が異なり参考にしかならない。しかし、高雄まで遠い。E級駆逐艦では燃料がカスカスだろう。
先日貰ったコーヒーと紅茶はとても嬉しかった。どちらも民間で生産が順調であり、輸出は可能という有難い返事があった。
本国とは距離がありすぎて連絡が付かない。私が艦隊最高責任者であり、言わばイギリス代表だ。しっかりしないとな。
ドレーク少将は思う。
高雄に着くと、台湾道知事や高雄市長、海軍根拠地隊司令などから歓迎を受けた。艦は全て軍港に接岸。久しぶりの大地だ。
私たち艦隊首脳は一泊した後、航空機で日本の首都・大阪へ向かうと聞かされた。
何故か日本語が分かるようになっていた。日本人達も英語が分かると言うことだった。神の加護らしい。神に感謝をだが、どの神なのだろう。日本人に聞くと、神は神です。どの神でもいいのではないですか。と言われた。大雑把な連中だ。
マルコ・ポーロ艦隊には未確認種族や日本との接触に備えて、外交官を始めとする文民も乗っていた。
外務省、農業省、貿易省、大蔵省、保健省の実務者だ。農業と保健は実物の確認や衛生状態を見極めるため技術者・医師・研究者も来ていた。
面倒な展開になること必至の偉いさんとプライドが高すぎる者は連れてきていない。
ドレーク一行は二機の中島・NP1に乗せられて種子島経由で大阪に乗り込んだ。
空港では外務大臣が代表で待ち構えていた。
首相官邸に向かい、歓待を受ける。
翌日、実務の時間がやって来た。
「ようこそ。外務省次官田村和夫です」
「通産省次官谷中功一郎です」
「逓信省次官浜村宗二です」
「保健衛生省鈴木恭司です」
「農林水産省大原啓介です」
「こちらこそよろしく。外務省アジア課長フィリップ・ジョージです」
「貿易省リチャード・マンスターです」
「農業省マイケル・ダグラスです」
「大蔵省ヘンリー・サーストンです」
「保健省ジョン・ラッセルです」
軍人達は別の場所で会合を開いていた。
「帰還者からの情報はありましたが、まさか今お会いできるとは思いませんでした」
田村がまず言った。
「こちらも出来ればお会いしたかったのですが、時間が掛かりました」
フィリップ・ジョージである。
「全くです。さて時間の余裕はおありですかな」
田村が言う。隙を見せろ。
「全く問題ありませんな」
ジョージが答える。足下掬われて堪るか。
「そうですか。ガミチス帝国対策は軍人達が行っております。我々は両国間の問題を提示し解決すべきかと」
田村だ。
「同意します」
ジョージが答える。
「まあそこらでいいでしょう。我々には解決すべき事がある。違いませんか」
マンスターが諫める。
「「失礼しました」」
お互いに非礼をわびる。
「では、有り体に申しましょう。どうせ後で分かる。牽制などして時間を無駄にしてはいけない」
「賛成します。時間は有限であり、今も進みつつあります」
浜村が賛同の意を示す。
「我が国では、コーヒーと紅茶の生産が安定しています。イギリスの人々の舌を満足させることも可能でしょう」
谷中が言う。先制である。
「フム、では言いましょう。我々にはこれらが特に必要です」
マンスターが差し出したレポートには
綿・絹・紅茶・コーヒー・砂糖
胡椒など香辛料各種、ただし有る物も有る
オリーブオイル
幾つかの鉱物資源
生ゴム
「そしてこちらが余裕を持って出せる物です」
羊毛・食肉・肉製品・乳製品・皮革・酒
電気製品・自動車・建設機械
考え込む一同。
「では日本が出せる物ですね」
谷中が同じようにレポートを出した。
香辛料各種・酒・絹・オリーブオイル・コーヒー・紅茶・砂糖
キニーネ・生ゴム・建設機械
「こちら出来れば入手したい物です」
羊毛・皮革・自動車
「ほう。幾つかの事項では同意できそうですな」
サーストンが言う。
「これはいいですな。しかし日本ではオリーブの栽培はあまり盛んでは無いと聞き及んでおりました」
ダグラスだった。
「栽培に適した地域がありまして、盛んになりました。話は変わりますが羊毛は転移前のように手に入るのでしょうか」
大原が言う。
「問題ありません。以前と同じように取引させて頂けますよ」
ダグラスだ。
「それは良い。私どももスーツが作りにくくて」
浜村が言う。
「是非お使い頂きたい。イギリスの毛織物は最高ですぞ」
ダグラスだ。乗り気である。ひょっとしたら合意第一号になるかも知れない。本国帰還後の評価が楽しみだ。
その後話が進み、日本からは絹・コーヒー・紅茶・オリーブオイル・砂糖・キニーネ・生ゴム、が第一陣で輸出される運びとなった。建設機械もバックホーを数台見せてみる。これら貿易船は海軍護衛の元、ポーロ艦隊帰国に合わせて出航する。
綿はディッツ帝国に聞いてからだ。彼等は余裕をなくしているかも知れない。
「日本としてはイギリス支援に問題は有りません」
「有難いですが、やけに素直ですな」
「ガミチスとはもう戦端を開いております」
「ほう。なかなか手広くやっていますな、ガミチスとやらは」
「先日手ひどくやられました。弱敵ではありません。要注意ですぞ」
「そんなにですか。我々はまだ正面から当たっていないのです」
大阪市内のホテルで日英の陸海軍軍人は膝を突き合わせていた。
「取り敢えず分かっている資料をお渡しします。」
「有難いです。我々からの資料はあまり有りません」
「その内溜まるでしょう。その時また分けて貰えれば」
「感謝します」
お互いランエールで出会う唯一の地球人であろう事を認識する。
イギリス人は気になる言葉を聞いた。
魔王 魔法 混沌獣 混沌領域
日本は分かっている範囲で説明をする。日本だって理解していないのだ。説明しきれるものでは無い。
整備と補給を済ませイギリスへ帰国する日がやって来た。ポーロ艦隊は高雄から日本・佐世保へ到着後、観光に勤しんで貰った。乗組員達ははしゃいだ。
帰路、日本の船団と合同での航海になる。
マルコ艦隊は、シベリア大陸南端で任務に就いている西方警戒隊が邂逅すべく捜索活動をしている。
高雄には空母二隻と輸送船多数を伴う艦隊がいた。日本もイギリスに行くのだ。かき集めたコーヒーと紅茶など第一陣を積んでいる。通信中継艦もいて上手くいけば通信可能になる、と言う事だ。
高雄にいる艦隊は大型空母二隻を中核とした機動部隊だった。
遣英艦隊 旗艦 大和
第一戦隊 大和
第四航空戦隊 凍鶴 黒鶴
直衛艦 山月 望月 夕月 如月
第八戦隊 利根 筑摩
第七水雷戦隊 大井 (旗艦)
第十五駆逐隊 檜 欅 楓 柿
第十六駆逐隊 萩 梨 椎 榎
第八水雷戦隊 北上 (旗艦)
第十七駆逐隊 梓 栃 菱 榊
第十八駆逐隊 藤 葦 葵 蓬
艦隊型タンカー 四隻
艦隊型輸送船 六隻
商船
橿原丸
貨物船八隻
第三西方警戒戦隊
軽巡 十勝
駆逐艦 初梅 早梅 飛梅 白梅
艦隊型タンカー 一隻
艦隊型輸送船 一隻
凍鶴・黒鶴はドックから出たばかりである。翔鶴・瑞鶴がギルガメス王国連邦支援の任を解かれ帰国し代わりにドック入りした。
戦艦は大和と武蔵を出したかったが、国内に残る戦艦がいなくなってしまう。甲斐は東鳥島以東の海域支援で離れられない。新造の磐城・淡路は慣熟が終わっていない。大和一隻だけの派遣となった。
橿原丸には外交団と経済関係者、医療関係者が乗っていた。橿原丸は日本外交の切り札的船舶で政府に借り上げられたらしい。もっともイギリスの高級客船とは張り合えない。何しろ純然たる客船で橿原丸の三倍はあるクイーン・エリザベスがいるのだから。
貨物船には第一陣の貨物だ。バックホーは艦隊型輸送船に載せてある。
貨物船は五千トンから八千トン級で巡航速力十四ノット出る船で構成された。
第三西方警戒戦隊は西方警戒隊の強化として送り込まれる。
シベリア大陸南端の泊地まで同行する。
1951年11月初旬、ポーロ艦隊と共に遣英艦隊はイギリスに向けて舵を取った。
綿はディッツ帝国に問い合わせたところ、日本と同程度の量であれば余力が有ると回答が有った。
ついでにワインも売り込まれた。
綿と一緒にワインも仕入れることになりそうなイギリスだった。
日本外交団の秘密兵器は日本生まれの葉巻を咥えるブルドッグだった。
長門と陸奥がアレしたので戦艦に余裕がありません。信濃は損傷して長期ドック入りです。
無事にイギリスへ着けるはず。
中島NP-1 NP=中島・パッセンジャー
四式爆撃機改造の旅客機。胴体を中心に旅客用として改造された。
次回 六月十一日 05:00予定