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イギリス やっと会えた 日本

第二西方警戒戦隊とポーロ艦隊が出会います。

 吉野を発艦した零式三座水偵は一路西へと進路を取った。二百海里進出、二百海里南下、百海里東進後帰投といういつもの進路だ。

 こんな粗い哨戒飛行で何かが見つかるとは思わないが、任務は任務だ。今日もくたびれ損かと機長で操縦員の桑田大尉は思う。


「機長、変です」


「なんだ、杉田。腹でも痛いのか」


「違います。本機搭載のトランスポンダが味方以外の電波に作動しています」


「なに?」


 偵察/航法/通信を兼ねる杉田少尉がおかしな事を言った。トランスポンダだと。IFFの自動応答装置じゃ無いか。味方以外か。杉田少尉の言う味方は日本とディッツ帝国だろう。彼が兵学校に入ったのは転移後だ。イギリスが味方など噂に過ぎないのだろう。

 本機搭載のトランスポンダは古い周波数も入っている。具体的にはイギリスのだ。転移後制式化された機体のトランスポンダには簡略化のため日本と追加されたディッツ帝国のものしか入っていない。


「杉田。吉野に通信『IFFが動作。イギリスの可能性有り』以上だ」


「は?イギリ ス ですか?」


「復唱どうした!」


「申し訳ありません『IFFが動作。イギリスの可能性有り』送ります」


「機長十時方向、煙です」


 機銃手の中村飛曹長が報告してきた。左斜め前じゃ無いか。何故気がつかんかな、俺。


 じっと見る 我が目で見えず 誰か見る 

 俺風。 字余りだがいいじゃないか

 こんちくしょう。どこだ、見えん。

 しばらくすると見えてきた。中村どれだけ目がいいんだ。噂の坂井大尉にも匹敵するかもしれん。


「杉田『水平線上に煙り見ゆ』だ」


「『水平線上に煙り見ゆ』送ります」


「機長、吉野から返電。『確認せよ』です」


「了解した『これより確認に向かう』だ」


「『これより確認に向かう』送りました」


 しばらくすると見えた。小さいな。駆逐艦か。慎重に接近していく。打たれたら水偵などひとたまりも無い。


「機長、『駆逐艦と思われる艦影発見』打電します」


「ああ、やってくれ」


「機長、イギリスのE級駆逐艦のようです」


 中村飛曹長が報告してきた。双眼鏡で見ている。ベテランだ。間違いないだろう。近づくか。

 旗が何とか見えるな。マストには青っぽいのが。艦尾には白っぽいのが。


「機長。ユニオンジャックとホワイトエンサインを確認」


「杉田、打電だ『イギリス海軍を確認、これより接近す』」


「了解『イギリス海軍を確認、これより接近す』打電しました」


「中村、通信頼む。無線で話しかける」


「了解。英語ですが、私はちょっと」


「俺が話す。これでも兵学校では良評価だ」


 もっとも使っていないので通じるか不安だが。

 中村に通信を任せたのは、近年機銃手にも通信手としての技能を持たせるようになっているからだ。中村は持っていた。それに中村くらいの軍歴だと簡易な英会話講習を受けているはずだ。杉田には吉野との通信に専念させる。


「機長、通じました。替わります」


「おう、受ける」


『上空に在る機体へ。こちらHMSエコーだ。日本海軍で間違いないか』


『こちら上空に在る日本海軍機。そちらはロイヤルネイビーで間違いないか』


『邂逅を歓迎する』


『……』 困った。意味が分からん。


『上空の機体、返答されたし』


『こちら上空の日本海軍機。英会話は苦手なり』


『了解した』


『周波数を@@.@@MHzで通信されたい。母艦である』


『エコー、了解』


『航海の無事を祈る。オーヴァー』


『汝に幸運が有らんことを。オーヴァー』


 最後何言ったのか分からんが、終了だな。


「中村、回線を切っていい」


「了解」


「杉田、中村。本機はこのまま西進、任務を続行する」


「「了解」」


 しばらく西進する。杉田からはやたら電波が飛び交っていると報告が有った。IFFも作動しっぱなしだと。

 ん?十一時に艦影。この角度なら中村でも見えまい。俺が発見者だ。


「杉田、中村。十一時に艦影。これより接近する」


 さて、円弧を書くようにゆっくり近づくか。



 桑田機はポーロ艦隊と接触した。吉野には連絡済みだ。ゆっくりと外周を回り徐々に近づいていく。時々バンクを振るのも忘れない。


 ああ、イギリスのR級戦艦と軽巡洋艦にE級駆逐艦だな。転移前、散々艦影を覚えさせられた。軽巡は何級だろう。覚えていない。

 輸送船とタンカーを従えている。かなりの遠距離進出をする気なのか。

 低速で艦隊内を低空飛行すると艦の舷側に鈴なりに乗り組み員が出て手を振っている。杉田、中村。頑張って振り返せ。


 桑田機は三回ほど艦隊内を航過すると任務に戻るべく西へ進路を取った。



 吉野はイギリス駆逐艦発見の報を受け戦隊全体を増速していた。一時間後電探に艦影を認め、三十分後には見張り員が目視できるまで近づいた。



「戦隊速度落とせ、巡航速力」

 

 第二西方警戒戦隊司令川上少将が指示する。

 反航状態となったエコーと戦隊はエコーが戦隊に併走する形になった。直接会話をするために更に速度を落とし、八ノット程度だ。無線で既に挨拶を終えているが、やはり直接見たいもの。

 戦隊の乗員もエコーの乗員も手空きは皆甲板に上がっているようだ。信号員は張り切って旗旒信号を掲げている。

 

 十年ぶりの日英邂逅だった。


「こちら戦隊司令川上少将。良き出会いを祝さんとする」


「こちらHMSエコー艦長グライムズ少佐です。今日の良き日を祝します」


 幾つかの会話をして、そのままポーロ艦隊との邂逅へと向かう。

 川上司令が変な指示をした。各艦補給品の中からコーヒーと紅茶を全部出せ。と。

 イギリスさんに渡すと言う。エコーとの会話で、グライムズ少佐がコーヒーと紅茶が足りないとぼやいていたのだった。

 帰還した桑田機を収容して、しばらくするとポーロ艦隊が見えてきた。無線と信号灯が激しく行き交う。

 洋上ででの邂逅である。少し離れて停止した。指揮官は同格の少将だが、戦艦が旗艦と軽巡が旗艦である。川上少将が礼を持ってレゾリューションへと向かう。その途中で各艦からコーヒーと紅茶を回収する。

 川上少将がレゾリューションの舷側を上がると号笛が鳴らされ登舷礼がなされた。

 ポーロ艦隊司令ドレーク少将が挨拶をし川上少将が答礼をする。

 ドレーク司令とレゾリューション司令公室へと向かった。


「日本海軍第二西方警戒戦隊司令川上悟少将です。今日は良い日です」


 英語は苦手だった。だいたい十年以上は使っていないのだ。下手なのが更に下手になっている。


「イギリス海軍ポーロ艦隊司令ジャン・ドレーク少将です。実に良い日ですな」


 ゆっくり喋ってくれたので、かろうじて理解できた。ここからは英語に堪能な戦隊通信参謀太田少佐に通訳に入ってもらおう。


 会話の中で日本本国と連絡が取れていることは教えておいた。

 日本からの指示は「招待したいがシベリア大陸南端の泊地は小さいので、距離はあるが台湾・高雄へと招く」となった。軍港とドックもあるので、都合が良いだろうと言うことで決められた。ポーロ艦隊上層部はそこから大阪へと飛行機で向かうことになる。


 ガミチス帝国と戦争中だというと、イギリスも同じでガミチスと戦争中だという。驚いた。二正面で戦っているのか?


 そして、コーヒーと紅茶が送られた。

 イギリス海軍軍人と言うことを忘れたかのように、喜んでいた。




 川上少将は泊地経由で本土と連絡を取っていた。シベリア大陸南端から東部海岸沿いには無線中継基地が幾つか設置され、本土との直接交信が可能になっている。 

 その中でおかしな現象が報告された。英会話が出来ないと言うか、ランエールの人やディッツの人と会話が出来るのにイギリス人とは会話が出来ない。おかしい。

 政府は管理者との対話を求めた。


「やあ、良く来た。今日は何の用かな。金が足りないわけでは無いのだろう」


「はい。予算は十分すぎるほど有ります。今日伺ったのは会話、他言語との会話ですね。ランエールの人やディッツの人と会話は出来ますが、同じ地球人だったイギリス人と会話が出来ないのです」


「え~と、それは翻訳されないというか言語変換されないと言うことなのかな」


「翻訳されて聞こえると思うのですが、翻訳されません」


「おかしいな。会話程度の言語理解は付けたはずだけど。少し待ってくれ」


「はい」


(日本の管理者だけど、地球の神々とランエールの神々。聞いてますか)

((はい、なんだい))

(日本人が英会話出来ないと)

(え?)

(翻訳されないそうです)

(確認する。少し待って欲しい。・・ランエールと日本との言語理解は出来ていると。ディッツとの会話も成立している)(何故だろう)(アレ?)(どうした?)(地球言語、まあこの場合は日本語だな。とランエール各言語にランエールに来た地球以外の言語は会話できるようになっているが、地球言語同士は会話できるようにしていなかった)

(どういう事ですか)

(何、ただの初期設定のミスだ)

(修正は可能ですか)

(一週間程度で出来る。それまでは現状だな)

(分かりました。一週間ですね)

(余裕を見ているから大丈夫だ)

(では、一週間後と答えてもいいのですね)

(いいぞ)

(ありがとうございます)

(こちらのミスだ。上手いこと伝えてくれ)

(分かりました。以上です)


「待たせたね」


「いえさほど」


「神々が答えてくれたよ。一週間後に会話可能になるそうだ」


「おお!一週間ですか」


「そうだ」


「ありがとうございます」


「会話だけだよ。読み書きは出来ないからね」


「そこは各言語とも努力します」


「いいことだ」






無事会いました。

会話できないのは神様のミス。読み書きまではサービスしてくれません。


阿賀野級軽巡洋艦の搭載機は二機。瑞雲と三座水偵。

機載電探はまだ全機に行き渡っていません。


この当時イギリスとファイオール公国に無い物

 お互いに無いかほぼ無い物

 綿・絹

 お茶・紅茶・コーヒー・砂糖

 胡椒など香辛料各種、ただし有る物も有る

 オリーブオイル

 幾つかの鉱物資源

 生ゴム



次回 六月九日 〇五:〇〇予定

大阪で交渉?

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