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南大陸攻防戦 10 ヘパストイ島沖海空戦 中

第一檄を凌ぎきった第一機動艦隊

反撃のお時間です


 日本海軍機動部隊の攻撃隊は艦隊が見える前から迎撃を受けた。どうやら電探による誘導技術がガミチスにも有るようだ。

 

「不味いな。どんどん零戦がいなくなる」


 攻撃隊指揮官岡島中佐は天山の偵察員席で思わず口にした。各隊から損害を知らせる報告が相次ぐ。


「総隊長、前方信号弾です」


「見えたか」


 張り付いている彩雲が信号弾を上げたのだ。その下に敵艦隊がいる。見れば爆炎が所々にある。あの中で張り付いていたか。感謝だな。


「全機突撃開始せよ。繰り返す。全機突撃開始だ」

「「「「了解」」」」


 その間にも指は忙しくト連装をしている。


「上空機影」

「何?」

「敵機です。被ってきます」

「早いが降下だ」

「了解」

「付いてくるか」

「全機後続します。あ!二機落ちました」

「分かった」


 海面に近づくまでに更に三機落とされた。ここまで進撃中の七機と合わせれば十二機の損失か。六十四機であの大艦隊に何発喰らわせることが出来るのか。


「各機、散開。事前の手筈通りにやれ」

「一機墜落。また一機」


 敵艦隊が撃ち始めた。敵戦闘機はもう来ない。代わりに砲弾が飛んでくる。

 空母が見えるが、クソッ、位置が悪い。




「高度五千。後続は来ているな」


 艦爆隊を仕切る仙鶴艦爆隊隊長佐々木少佐が後席に聞く。


「追随しています」

「各機、爆弾倉開け。事前の打ち合わせ通りに行動しろ。空母以外の目標には集中するな。散開」


 彗星は高速だ。爆弾を抱いていても敵戦闘機よりも少し速い。が、爆弾倉を開ければぐっと速度は落ちる。

 追いすがる敵機には的になるだろう。


「敵機来ます」


 後方から機銃の音が聞こえる。周囲を見ると落ちていく機体が幾つか有る。敵機なのか味方なのか。

 敵機が離れた。と同時に爆炎が辺り一帯に散らばる。


「味方二機落ちます。三機後落」

「行くぞ。目標空母。攻撃開始」


 佐々木少佐は機体を傾けると眼下の空母めがけて降下し行く。降下角は深い。七十度は行っている。照準器の中でどんどんでかくなる艦影。面舵を切っているか。機体を滑らす。更に降下角を深める。


「三千五百、三千……千四百、千二百、千」


 後席が読み上げる高度が千を告げたとき計器板上、照準器下に取り付けられた高度警告灯が赤になる。


「テッ」


 八百くらいで投弾できただろう。引き起こしが重い。九九艦爆と違い投弾速度が速い。五百までなど降りられない。高度五十で水平飛行に入る。更に高度を下げる。爆弾倉を閉める。二十以下で無いと危険だ。


「命中、命中。命中です。二発命中、一発至近」

「俺のはどうだ」

「・編隊で命中弾です」


 そうか。外したか。


「帰投する。編隊全機続け」

 



 同時に突入しても速度差から艦攻の攻撃が後になる。が、奴らやってくれたな。何隻かから黒煙が上がっている。すでに行き足が止まった艦もいる。最初は空母をやるつもりでいたが、位置が悪く更に転舵のせいで射線から遠くなってしまった。


「空母に追随できる者は空母を、無理に射点を確保するな。手当たり次第で良い。高度に注意しろ」


 命令が命令だ。沈めなくてもいい。足を止めろだ。

 目の前の大型巡洋艦をやる。


「三機付いてきます」


 機銃員の香川二飛曹が報告する。


「そうか、四機になったか」

「四本ぶつけましょう」

「当然だ」


 大型巡洋艦は面舵を一杯切ってこちらと相対する気でいるが、その前に魚雷が命中するはずだ。しかも、転舵しているので対空砲火の狙いが甘くなっている。


「ちょい右、チョイ、チョイ、定針」

「定針」

 

 操縦員の真中少尉が答える。叩き上げの特務少尉だ。

 安定感と低空飛行の技術は抜群だ。


「ヨーイ、テッ」


 重量物の縛りが解けた機体は一瞬浮き上がるが直ぐに抑えられた。

 そのまま敵艦の甲板とほぼ同じ高度を維持して横滑りに敵後方へと抜ける。

 その時、衝撃と激しい痛み?熱さ?を足に感じた。機銃員の香川二飛曹はうめき声を上げている。


「香川、無事か。おい、香川」


 答えが無い。振り向くと頭を垂らしている。ダメなのか?なんとなく他人事のような世界が自分の足の激痛で現実に帰る。右足をやられた。足首から下の感覚が無いし痛みも足首の上からだ。慌てて包帯代わりにマフラーを右足ふくらはぎにきつく巻き付ける。が、そこまでだった。クラクラと来て


「・・・、・・長、総隊長」

「ん?真中か。ここはどこだ?」

「ご無事ですか。ここは空中集合場所です」

「もうそんなところか」

「今から帰還します。負傷者がいる場合は海龍に降ります」

「了解した。任せる」

「真中、戦果は如何なのだろうな」

「分かりませんが、何本か水柱が上がっていましたので全体では戦果はあったとしか」

「本機は如何なのだろう」

「申し訳ありません。後方を見る余裕は無く」

「いや、いい。詮無いことを聞いた」


 再び激痛に気絶した。

 次に目を覚ましたのは海龍のガンルームだった。負傷者が多く、医務室だけでは収容できないらしい。


「岡島中佐、ここは海龍です。私の言葉が分かりますか」


「軍医殿。そうか、俺は負傷者なんだな」


「聞きたいですか」


「お願いします」


「右足首切断です。艦内では応急しか出来ません。義足を付けるなら、本土に帰って海軍病院への入院をお薦めしたい」


「不思議なのですが、痛みがありません」


「ああ、アレです。魔方陣です。麻痺の魔方陣を使っています。怪我用魔方陣は他の人に使っています。数が足りないのでね」


「俺よりも重傷者がいるのか」


「何人かね」


 軍医がぽつりと漏らした独り言に反応した。






「急降下来ます、速い!」

「速いだと?」

「Ju86よりも遙かに速いです」

「信管秒時を変更だ。高射装置、出来るな」

「やります」


 空母アルスケムの砲術長と見張り員、高射装置の会話だが艦隊では至る所で交わされていた。

 信管秒時は高射装置で決定される。砲側でも出来るが高射装置でやれば一括で出来る。

 それでもほとんどの艦で信管秒時の調定変更が間に合わず、爆発するのは敵急降下爆撃機の通過後だった。


「敵投弾」

「衝撃防御」


 敵機は一本棒で突っ込んできた。かなりの手練れだ。五機で突っ込んできたが五機目は対空砲火で撃墜した。先頭機は艦の回避運動に追随しきれずに左舷に落としていった。だが残りの三機が修正してきた。一発目は左舷艦首至近弾。二発目は艦首飛行甲板。三発目は中央エレベーターを吹き飛ばした。


 だが災厄はこれだけでは無い。雷撃機が見える。こちらを無視していく。何故だ?

 その後、アルスケムは二機の雷撃機に狙われたが回避できた。

 アルスケムの空母としての機能は奪われた。幸い、艦隊司令長官の命令で格納庫の機体には燃料も爆弾も搭載していない。火災が発生したが直ぐに鎮火できた。


 艦隊も至る所で黒煙を上げている。巡洋艦は傾いている艦も。アレはG級駆逐艦か、停止して退艦している。


「酷いな」


 ケルトマイヤ中将は嘆く。彼の所に損害報告が手渡されたのだ。

 そこには、


空母 アドラス  

二本被雷*一本は前回、爆弾一発命中、至近弾三発

傾斜復旧できず。発着艦不能。

出しうる速力二〇ノット。


空母 アルスケム

爆弾命中二、至近弾一

中央エレベーター損傷、復旧不可能

飛行甲板損傷、発着艦不能

航行に問題なし


空母 アリアドネ

至近弾三、魚雷一命中、ボイラー室に浸水。ボイラー二基使用不能

発着艦可能なれど出しうる速力二五ノット


戦艦 クナップシュタイン

魚雷二命中、至近弾一

傾斜復旧、砲戦可能

出しうる速力十二ノット


戦艦 ウィルヘルム三世 

魚雷三命中、爆弾四命中、至近弾一

対空砲四基使用不能、副砲一基使用不能

傾斜復旧ならず

出しうる速力八ノット


高速戦艦 アームストロング

魚雷一命中、爆弾命中二、至近弾一

対空砲三基使用不能、対空機関砲数基使用不能

戦闘可能なれど魚雷が命中したのは艦首直ぐ後方で

高速発揮時隔壁に不安有り



大型巡洋艦 カルスケム

魚雷二命中、爆弾二命中、至近弾一

主砲二基使用不能、対空砲二基使用不能、対空機関砲数基使用不能

推進器損傷で航行困難 


巡洋艦 カイエスブルク

爆弾一命中、至近弾二

魚雷誘爆にて大破、機関停止

戦闘不能、航行不能


巡洋艦 ウォスターラント

爆弾一命中、至近弾一

回避運動中舵機室付近に命中、舵故障にて直進できず


駆逐艦 G9

至近弾一

傾斜復旧中なれど困難


駆逐艦 G10

魚雷一命中

機関停止

漂流中


駆逐艦 GA3

爆弾一命中

艦橋に命中したため指揮・操艦不能


以上が損傷艦だ。

以下は沈没か。

大型巡洋艦 ハンカルム

駆逐艦 G8

駆逐艦 GA4

駆逐艦 GA6


 大損害だな。帰ったらクビか。前の総統なら物理的にクビだったがデストラー総統なら配置転換で済むだけ有難い。

 敵に向けて突撃していたが、帰るか。

 

「ハルダー参謀長、ウォスターラントの舵は爆破できんかな。そうすれば推進器の調整で直進も可能だと思うが」


「そうですね。やらせてみましょう」


「カイエスブルクとG10は自沈させる。乗り組み員の移乗急がせろ」


「了解しました」


 通信参謀に通達を任せる。


「カルスケムだが、困ったな」


「そうですね。艦長が推進器復旧可能と頑張っています。舵は無事なので何とか直進は出来ますが、五ノットしか出せません」


「スクリューシャフトの異常だろ。二基が動かないと聞いた。よりによって艦底の基部に命中するとは」


「もう一度敵襲があれば持ちこたえられないでしょう」


「止まっていてはな」


「攻撃隊帰還しました」


 ブリッジから外を見る。編隊がまばらだ。攻撃隊も相当やられたと見える。彼等の降りる場所は残っている。

 それだけが幸いか。


ガミチス艦隊は損傷艦を引き連れて逃げ切れるのか

次回は砲雷戦か


次回 五月三十一日 05:00予定


痛みでクラクラして気が遠くなりかけたことがあります。

尿管結石は痛かった。


やはり完結には遠いデス

英帝様が出てくるので更に長引くのは見えているデス

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