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カストロプの乱 5

作者疲れてきました。


 カストロプ子爵領大規模混沌領域から発生した大規模なスタンピードは日本が経験した中では最悪の物だった。

 東鳥島の言わばルーチンのように発生するスタンピードなど目では無かった。山東半島のダンジョンスタンピードを超える規模であることは間違いない。

 問題はあの時のオーガやモスサイのような上位種を超える存在がいないかどうかだ。アレさえいなければ今の戦力なら問題なく撃退できると考えられた。

 後始末の事は頭になかった。


 統合ギルドには日本が正面から当たるので討ち漏らした奴らの相手を依頼する事となった。

 これには多くの冒険者が不満を漏らすが、日本からもたらされた偵察結果

---------------------------

 混沌獣は二つの群れで西進中。ワナイ川を挟み南の群れが一千五百程度。北の群れが二千五百程度。

 前進集団合計は推定総数四千を超える。上位種を複数確認。更にほぼ同じ規模の後続有り。また後続にも上位種を確認

---------------------------

 の前に静かになった。

 集まった冒険者は合計九百人余り。その内五級以上が二百人だ。更に七級以上の大型種や上位種に対抗出来そうな人間は三十人程度しかいない。

 通常のスタンピードであれば統合ギルドの戦力と王国連邦の戦力で撃退できるだろう。ただ今回は数が多すぎた。おまけに王国連邦の戦力は対抗上、カストロプ軍に向き合っている。統合ギルドの戦力ではどうあっても阻止は不可能である。


 素直に王国連邦が打ち出した方針に従うことにする。




挿絵(By みてみん)


 

 エンキド街道周辺の戦線では、カストロプ軍がその数によって押してはいるが、日本軍による指揮官狙撃によって統率が取れていない。一進一退であった。

 狙撃兵の狙いは顔面だった。この世界の防具は物によっては七ミリ小銃弾を防ぐ。確実を期すには顔面を狙うしか無かった。七ミリ弾なら射入口は小さいし頭部を粉砕してしまうことも表面上は無かった。

 十ミリ小銃での狙撃は威力が大きい分色々とアレだった。耐えられずに交代する狙撃班も居た。


 人と人の争いは夜になる前に終わる。今日も終わった。

 混沌獣は夜を徹して進んでいるらしい。と言うのも、前日夕暮れ時に確認した場所から確実に動いている。偵察機も刺激するといけないので、夜間照明弾を落とすようなことはしない。九十七大艇の後続性能からすれば午後偵察に上がり夜中上空を旋回、午前中に帰投も可能だった。

 その事から、明日混沌獣が川を越えるかどうかが焦点となった。今までは川を越えたことは滅多に無く、有っても少数だったと言うことだが、今回の事例はどうなるかわからない。


 翌朝、混沌獣の群れは川を越えた。うん。奴ら泳げるのね。知らんかった。ただ、ケンネルは泳ぐのが下手で後続のより大型の混沌獣に踏まれて橋の代わりにされている。

 川の手前に混沌領域が出来ていた。山東半島のダンジョンスタンピードの時と同じだ。

 日本軍は小さい奴よりケンネルの方が相手をするに楽なので嫌なことだと思った。

 こうなると戦場が汚くなるとか素材が取れないとかの前に阻止が優先されるようになる。

 航空攻撃を沖にいる空母に要請。空母から航空隊が飛んできた。戦闘機が混沌獣を撃ちまくり、艦攻・艦爆が群れを逸らさないように爆撃をする。群れが人の戦場に向かわないようにするためだが、何かおかしかった。ひたすらエンキドダンジョンを目指している。

 機銃弾は特製の対混沌獣弾を使っている。二十ミリも十三ミリも炸裂弾は抜かれた弾帯を使用する。


 見えてきた混沌獣の群れに距離三千で自走機関砲車から三十三ミリ機関砲弾が撃ち込まれる。次いで二千で二十五ミリが、最後にトラックの荷台から一千で十三ミリ重機関銃が撃ち始めた。

 凄い勢いで混沌獣が減っていく。

 群れの後方にいる大型種は戦車が狙い撃ちをしている。三十七ミリ。五十七ミリ。七十五ミリ。各戦車砲が対混沌獣用無垢弾を惜しみなく撃ちまくる。ケンネル上位種もいたが七十五ミリが命中したのかバラバラに吹き飛んだ。

 小さい奴が阻止用の堀を越えてきた。ここからが小銃の射程内だ。四式自動小銃も一式自動小銃も撃ちまくる。

 対混沌獣戦線全面に歩兵一個師団が展開している。後方へ抜ける混沌獣はいないと思われた。

 しかし抜けてくる奴はいる。主にゲズミ・ウザミ・コーチン・ハイシシの小型種だ。ケンネル以上は阻止されている。

 日本兵を無視してエンキドダンジョンへと一直線に向かっている。

 おかしいがそんな事を考えている暇は無かった。抜けた奴らの相手は冒険者の仕事だ。冒険者の後詰めに日本軍秋津口ダンジョン攻略隊が控えている。

 第一波でエンキドダンジョンに辿り着いた混沌獣はいなかった。上位種も戦車砲の乱打で潰された。素材のことなど考えない。

 第二波も辿り着けない。

 ただ第三派が来ている。数を減らすのに有効だった自走機関砲車や重機関銃が長時間の連射で銃身交換や故障などで後退し穴が開き始めている。

 その後方に第四波・第五波が来ているという偵察機からの報告があった。

 第三波は撃退できそうだが、第四波・第五波が危なそうだ。




「ようやく出番が来そうだ」


「お待ちかねだぜ」


 そう不敵な発言をするのは東鳥島から応援に来た十三師団所属十六連隊と十九連隊の面々だった。増援の内一個師団が此奴らだった。十六連隊十九連隊以外の面々は入れ替わっているが十六連隊と十九連隊は日本陸軍最強として東鳥島で強化され続けている。冒険者で言うと七級相当の人間も数人いる。

 もちろんお目付役は八雲円利少将と村井大佐だ。村井大佐は八雲少将が昇進を拒否しているため付き合わされている。まあ本人は営門将軍でいいと思っている。


 今回の大規模スタンピードでは日本軍が正面を受け持つことが決められていたが、それでは余りにも冒険者とギルドの実入りが少ない。召集されてきた冒険者の報酬問題も有り、最後は冒険者と日本軍が協力して素材回収が可能な形で終わらせることになっていた。

 もちろん危険な場合は戦車砲が火を噴くことになっている。


 十六連隊と十九連隊はそこに投入されることになっている。

 五級以上の冒険者と共同であり、彼等も体を休めていた。突破してくる小型種を片付けるのは四級以下の役目だった。


 三波の突撃が終わった。小型種がかなり突破してきて四級以下の冒険者と十三師団でも新人が必死になって追いかけていた。


 九十七大艇の報告では五波が最後と言うことだった。撃滅した混沌獣の中央で何かうごめいている物が有り要注意ともあった。他の混沌獣を喰っているのだろう。ただ死骸が多すぎて近づけない。艦爆の出番なようだ。五十番の対地爆弾を数発叩き込んだようだ。これで生きていれば大型上位か上位種と言う事になる。


 四波が来た。三波よりも阻止火力が落ちているせいか突破してくる奴が多い。遂にグレーボアやグレーウルフにハイクマと言うすばしっこい奴が突破してくるようになった。


 上位の冒険者と十六・十九連隊も腰を上げる。四級以下の冒険者や新人を手伝っている。

 四波は終わった。後方でかなり素材回収が出来ているようで冒険者は喜んでいる。四級以下の冒険者がこれだけの獲物を手にすることは滅多に無かった。

 

 五波がやって来た。大艇の報告では最後と言うことだった。もうカストロプ子爵領の混沌領域からは出てくる混沌獣がいない。そう報告された。


 多少間引いた後で銃撃はやんだ。

 ここからは冒険者と野蛮人の出番だ。

 最高位の金級冒険者が叫んだ。

「行くぞ!死ぬなよ」


 冒険者と野蛮人が最後の集団に立ち向かう。

カストロプの乱は次回で終わりです。

 

ガンディス帝国とラプレオス公国の魔王戦はさらりと済ませる気でいます。


次回 五月九日 05:00予定

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