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カストロプの乱 3

まだ前哨戦です

 カストロプ子爵領から街道沿いに侵攻してきた部隊は王国連邦エンキド守備隊が撃退した。

 問題はカリス自治領をかすめるように侵攻してきた小部隊であった。連邦直轄領の村落を荒らして回っていると言うことだ。

 これに王国連邦エンキド守備隊は対処出来ず、日本に協力をお願いされた。



「こういうときこそ飛行機だな」


「海軍から出しましょう」


 海軍の代表として来ている小早川少将が言った。


「お願いする」


「承知しました。伺いますが彼等の存在は判別が着くのでしょうか」


「取り敢えず村落を荒らしているのは撃退対象です。盗賊でも何でもいいですが撃退して下さい。王国連邦エンキド守備隊は必ず旗を持っています」


 そう言って旗を持つ守備隊の写真を見せた。


「兵装も統一されていますな。これなら見間違いは減るでしょう」


 そう言ってお借りしますと写真を持って副官に指示している。キドレン河に水上機が来ている。それで飛行隊まで運ぶのだろう。

 そう思っていた。副官の若井中佐が戻ってくるまでは。


「若井中佐、小早川少将は飛行隊へ向かったのかな」


「いえ、自分で確認すると言って水上観測機で出ます」


「「はあ?」」


「有り体に言えば、撃滅のために出撃しました」


「なんだそれは」

「指揮官先頭も程がある」

「やっていいなら自分もやりたい」


 など、ひとしきりざわめいた。最後の言葉が指揮官や高級将校になってしまった者の本音を物語る。


 若井中佐の説明によると、二機編隊でここまで来たのだが、一機は零式三座水偵で自分と小早川少将が乗ってきたと。後一機は零式水上観測機でこの機体の偵察員を降ろして自分が乗り込み飛んで行くのだと。


「あの方は出世街道に乗っていたのですが、蓮見中将に目を付けられまして」


 ああ…、わかったような気がした派遣軍司令部一同だった。





「お前達こちらへ来い。出撃するぞ。説明する」


 搭乗員は何だという顔で近づいてきた。


「連邦直轄領内で村落を荒らしている盗賊もどきがいる。それを捕捉撃滅する」


「司令、まさかゼロ観でですか」


「他に無いだろ」


「そうですが。それで敵の識別が付くのでしょうか」


「この旗が無い武装集団が盗賊もどきだ。遠慮はいらんぞ」


「水偵は如何しますか」


「周辺監視に決まっているな。わかりきっていることを聞くな」


「搭乗割は今のままで良いのですね」


「俺がゼロ観の後席に乗る」


 やはりか。搭乗員の諦めた表情がわかる。


「では私は水偵の後席で機銃手をやります」


 諦めた顔でゼロ観の偵察員である疋田二飛曹が言った。


「頼むぞ。それでこれが攻撃してはいけない武装集団だ」


 写真を見せる。



 魚住准尉は河原で桟橋に繋がれているゼロ観に乗り込む。

 安全確認後、始動する。最近、自力始動が出来るように改良されたので楽だ。無事始動した。


「舫い解け」


 手信号で合図する。地上員が舫いを解く。

 出力を上げ徐々に桟橋を離れる。船は来ていない。水深の有るところまで進み川下目かげて加速開始する。離水した。

 高度を一千まで上げ目的地に向かう。水偵も付いてきている。

 腿に括り付けてある地図をもう一度確認し間違っていないことを確かめる。

 そろそろかなと言うところで


「魚住准尉、カリス街道に沿って進んでいるな。カリス自治領まで飛んでからサラム川まで南下だ」


「了解」


 順調に飛行を続けるが盗賊もどきの影は見えない。

 どこにいるのか。そんな時、水底から通信が入る。


「カリス川サラム川合流点ややカリス自治領寄りに武装集団発見。旗は見えず。装束は統一されていますが写真の者達と違います」


「小早川、了解」

「魚住、聞いたな。向かうぞ」


「了解」


 機首を返してから、魚住准尉はスロットルレバーの機銃発射把柄に安全装置が掛かっていることを確認。OPLを起動。安全装置を外し発射把柄を握り試射をする。

 タタタッ、快調だった。


 水偵が見えてきた。旋回している。高度を落とし機体を傾けて確認する。

 居た。


「小早川だ。確認した。まずゼロ観で機銃掃射する。逃げた奴らは水偵の後部機銃で攻撃。いいな」


「「了解」」


「では行くぞ」


「行きます」


 魚住准尉は機体を傾け緩降下で接近していく。

 逃げ惑う集団に対して機銃掃射を始める。7.7ミリでも対人なら大威力だ。バタバタと倒れていく。思うところもあるが村落を襲撃していると言うからには撃滅しなければいけないだろう。

 上昇して再度攻撃を掛ける。

 水偵は周辺で機体を傾け後席機銃で撃っている。

 その時、水偵に向かって地上から炎が走った。?なんだ。


「魔法か!!」


 小早川司令の声が伝声管から伝わる。初めて見た。いかん!当たる。

 水偵は咄嗟に機体をひねるがいかんせん鈍重な機体だ。右主翼に命中した。

 命中後、少しふらついたが水平飛行に入った。高度を上げて離脱していく。無事なのだろうか。


「魚住准尉、あいつだ。魔法使いを殺る」


「了解」


 目標を視認した。無抵抗で無い。吹っ切れた気がする。

 火線が走るが機体を滑らせて回避する。

 撃った。命中した。後は反撃の手段が無いのだろう。逃げ惑う集団を殲滅した。


「良し攻撃終了。水偵と合流する」


「了解。無事でしょうか」


「特に無線も入らん。無事なのだろう」


「無事であって欲しいです」


「そうだな」


 水偵と合流。破損が無いか水偵を確認する。右主翼に焦げた痕がある。小早川司令が水偵と話している。


「魚住准尉、水偵はこのまま基地に帰投する。我々はキドレン河の桟橋だ」


「了解」


 小早川司令によると、操縦に異常は無いが基地に返して詳細な点検をさせるという。確かに未知の攻撃を喰らったことだし、その方が良いと思う。


 魚住機は桟橋に帰った。小早川司令は再び派遣軍司令部に向かう。 




「お待たせした。盗賊もどきは無事殲滅した」


 小早川少将は司令部会議室に戻ってくるなり発言した。

 帰ってくると言うので再度会議室に集まった面々は唖然とした。


「もう撃滅したと」


 秋津中将が問う。


「はい」


「写真も撮ってあります。先ほど司令部の写真班に渡しました。じきに現像できるでしょう」


「どうでしたか」


「参りました。対空攻撃をしてくるとは思いませんでした」


「「「「何ですと」」」」


「魔法を撃ってきた。水偵が被害を受けたが軽微だ。だがこれは重要な情報だと思う。これからは迂闊に低空に近づけん」


「どのくらいの高度ですか」


「五十くらいだ」


「それは低いのですか」


「かなりの低空飛行だ。多分陸軍と空軍でも対地攻撃なら降りる高度だろう」


「そうか。情報として全軍に上げないといけないな」


 秋津中将が言う。


「もちろんです。かなり上級の魔法使いだと思われますので、ギルドに依頼を出した方がスムーズに情報収集が出来ると考えます」


 情報参謀の秋山中佐が発言する。


「ああ、そうか。自分の切り札のことは秘密か」


「はい、ですからギルドの資料から割り出せればと思います」


「実行してくれ。金は必要なだけ使え」


「ありがとうございます」


 新たな脅威だった。魔法の射程が予想以上に長い。今までは魔法などと馬鹿にしていたが勉強し直しだな。秋山中佐は思った。






 OPLは通称で使われていたと思います。ゼロ観は望遠鏡ですがここではOPLで。


 魔法の射程は山東半島に駐留している部隊なら、かなり知っています。ただ冒険者の切り札ですし仁義も有り、また個人差が大きく報告書にはかなりの射程としか上げていません。上層部も知っていますが不問としています。

 ドラゴン・ロアなど報告も出来ません。多分軽巡主砲以上の威力。射程はそこまで無いですが。


次回五月七日 05:00予定 

 カストロプの乱 4 いよいよ乱戦か


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