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その頃大英帝国では

英国面は炸裂しません

 オーストラリアのビクトリア砂漠で発見された大規模油田で沸く連邦国内。幾つかの浮かれポンチな計画も承認されてしまった。


 オーストラリアとカナダは主要取引先であるアメリカ合衆国との連絡途絶によりイギリスとファイウォール公国を主要取引先に据えることとなった。これにより経済的破滅から逃げることが出来た。


 転移時、オーストラリアとカナダは最低限の補助しか受けることが出来なかった。これは当地を守護している精霊が先住民に対する侵略者達のやり方が許せなかったためである。援助は先住民に優先的に与えるとしてしまった。

 移住した白人達は五年分の最低限と言える物資とイエスから分けて貰った物資しか無かった。イエスは信者が多すぎてひとりあたりの分け前は少なかった。

 なので転移後、両国はイギリス本国以上に節約しなければいけなかった。早期にイギリス本国と連絡が付き通商も再開されたのでホッとしたのだ。そして南半球にあった地域の建て替え特需が始まった。

 資金は少ないが、イギリスが第一次世界大戦と今回も起こった対ドイツ戦の借款を償還相手がいないことを良いことに無しにしてしまった事で出来た余裕から捻出が試みられた。

 上手くはいかないもので借款していた相手の国に有ったイギリス資産は無くなっている。総計で言えば借款の方が多いので収支で言えばプラスだが資産の多くは民間が保有していた。このような天災は補償する必要は無いのだが政府はそれらに対して倒産・破産しないように配慮した。

 国家財政の六十倍という神倉庫内の貴金属を元本として無利子・超長期返済の融資を行った。神倉庫管理人はこういう使い方なら許可を出している。彼が警戒したのは貴族の道楽に野放図に資金が使われることであった。

 一般市民に対しても家屋建て替えや教育資金、商店・会社運転資金などが対象だが同じ事を行った。失業保険の給付も条件をかなり緩くした。

 失業者は失業保険よりも地図製作事業で発生する日雇いの方がかなり賃金が良く、日雇いで生活する者が多かった。

 ファイウォール公国からの石油製品輸入と神倉庫内の石油を節約しながら連邦内の経済を何とか廻しているところに大規模油田発見であった。浮かれポンチも無理はない。


 建て替え特需は南半球だった地域だけでは無く、連邦全体に広がった。石油の供給は日を追うごとに潤沢になっている。そのうち制限が無くなるだろう。期待させた。



 そこに不安を投げかける潜望鏡発見であった。すわドイツかと思ったが、ドイツからの帰還者が「ドイツも北半球に転移したが夜空が全く違う。ドイツはこの世界には来ていない」と言ったのを思い出しホッとした。


 海軍が警戒を強化したのは当然だった。と言っても石油は民間優先でまだ軍には潤沢な石油の提供が届いていない。以前よりましになったが節約しながらの警戒だ。

 転移後資源不足に悩まされながらも開発を続けたレーダーとアズディックを装備した船が次々と南方に向かった。

 空母はなけなしの重油を廻して空母一隻、巡洋艦二隻、駆逐艦六隻の機動部隊を二個編成。対潜警戒と長距離哨戒を行うことにした。

 それら艦船はバージン諸島バージン島にようやく使用可能になった軍港を拠点に展開した。地上設備がまだ不十分でありタンカーと補給艦も当地に展開した。

 

 その哨戒中にバージン諸島クック島に未確認の勢力が展開しているのを確認。

 ソードフィッシュが接近するも戦闘機に追い払われた。戦闘機はBf109に酷似していた。

 その時撮影した写真に国籍標識があった。機体の色は緑の迷彩色で有り黒い線に黄色の丸という初めて目にするマークだった。


挿絵(By みてみん)



 この情報に軍と議会は緊張した。

 国王陛下の裁可もあり、接触を図ることになった。しかし、戦闘機で追い払いに来る相手である。方法が協議され実行に移されたのは1950年11月だった。


 この時にはディッツ帝国ベルフィスヘルムが陥落している。




 イギリスはクック島に向けて艦隊を派遣した。

 空母イラストリアス、戦艦レパルスを基幹とする小ぶりな艦隊で外交官を乗せていた。クック島は遠くタンカーも付いている。出しゃばりたがるマールバラ公も来たがっていたが、さすがに高齢と言うことを理由にお断りをされた。

 やがて先行するソードフィッシュから国籍不明艦艇発見の報が入る。


「ネルソン司令。相手は撃ってくるだろうか」


「ヘルシング卿、こればかりは分かりません。接触した航空機を追い払う国です」


「そうだね。それは気になるところだ。戦闘機がアレにそっくりだと言うことも」


「アレは見たくないですから、皆嫌ですよ」


 アレとはBf109のことである。


「相手がそこまで野蛮では無い事を祈ろう」


「期待していますよ。外交官殿」


「期待に添えればいいが」


 そこへ通信参謀がやって来た。


「ネルソン司令、哨戒機から相手が「付いて来い」と言うような動きを見せていると言うことです」


「ヘルシング卿」


「うん、そうだね。付いて行けばいいだろう」


「分かりました。コナン通信参謀。従うよう通信を」


「了解しました」


「チャプマン航海参謀、艦隊陣形はこのまま。哨戒機に追随。位置情報に注意して針路を設定」


「了解です」


「われらはいかにあるかを知るも、われらがいかになるかを知らず。だ」


「不安定な航海で無い事を祈るのみです」




「不明艦、速度を落としていると通信有りました」


「待っているのかな。まあいい。急ぐことも無い。艦隊速度このまま」


 やがて、不明艦が見えた。待っていたようだ。


「ネルソン司令、前方に小島や暗礁が在ると哨戒機から通信」


「艦隊は不明艦に追随する」


「了解しました」


「不明艦速力上げました」


「追随せよ」


「了解です」


 不明艦は艦種不明だ。そもそも自分達の基準で当てはめることが出来るのかさえも分からない。

 強いて言えば、でかい駆逐艦か小さい巡洋艦。一見三千トンクラスに見える。単装砲塔四基と連装以上の発射管二基を確認したと哨戒機から報告があった。

 後の写真解析でおそらく十四センチ砲四基と五十三センチ程度の魚雷発射管三連装二基、他機銃を少し装備していると分かった。

 Z級だという声が上がったのは事実である。


 やがてクック島が見えてきた。その手前には数隻の艦艇が待ち構えていたが。

 駆逐艦と思える艦が近づいてきた。こちらも駆逐艦を併走させる。


「ネルソン司令、アマゾンから隊内電話です」


「取ろう。アマゾンか、ネルソンだ」


「アマゾン艦長フィリップスです。不明艦から口頭での応答有り「我々はガミチス帝国である。邂逅を歓迎する。付いて来られたし」以上です」


「如何しますか。ヘルシング卿」


「どうするも無いだろう。付いて行こうじゃ無いか」


「分かりました。艦隊、追随する」


 我が艦隊の先頭をアマゾンが、その前をガミチス艦が先導している。

 やがてクック島の南側に有る大きな湾に入っていく。

 我々は信じがたい物を見た。

 巨大港湾施設と多数の艦艇だ。


「これは如何かな。歓迎されている雰囲気では無い。そう思わないですかヘルシング卿」


「そうだね。でも敵対的でも無い?」 


「主砲は全て水平ですが、両用砲と機関砲が格納位置ではありません。初めて接触する国が取る態度とも思えません」


「いつでも撃てると?」


「格納位置にあっても多少遅くなるだけですが撃てます。それよりも態度の問題です」


「歓迎されてはいないか」


「小官はそう考えます」


「ありがとう。ネルソン司令。腹をくくらなければいけないようだ。交渉の席で事件があっても艦隊の保全を第一に考えるように」


「有るとお考えで」


「友好的では無いのだろう?何が有ってもおかしくない。私は友好条約が結べるなどと言う甘い考えは持っていないよ」


 そう言って、ヘルシング卿は艦を降りていった。同行するのは艦隊から参謀長と数名の護衛。後は数名の外交官だった。

 一行は案内されて立派な建物に入っていく。



老兵は死なず。まだ去らないと言うか去れない。

---------------

ソードフィッシュ

複葉艦上機であるが


未だ生産と運用が続けられている。


もう15年になる。

理由は後継機であるアルバコアが新機軸を採用しようとも基本設計が進化を拒否したような機体で額面上の性能は大して上がっていない。速度が二百二十キロと二百六十キロでは五百キロ越が普通の戦闘機の前にあっては大差ない。前作であるソードフィッシュの方が現場では扱いやすく、抜群の運動性もあり好評だった。

なぜアルバコアが他の国では低翼単葉が主流となる時代に複葉機としたのは謎である。

結局アルバコアは1942年に生産が1943年には運用も終わった。これは燃料不足のせいも有り機体のせいでは無いと思いたい。

更に後継機のバラクーダは高翼配置という謎の構成で無駄に複雑な主脚とか日本やアメリカから見れば?が多数付く設計だった。飛行性能もそれなりだった。原因不明の墜落事故が発生しており無理に運用を続けることは無いとして1942年には運用中止がされた。生産も終わった。ただ、その巨大な機内スペースは対潜哨戒機器の設置スペースには都合が良かった。問題は相手の潜水艦がいないと言うことだが、潜望鏡発見で復活させようという動きがある。その前に墜落事故の原因を究明する必要があるが。

上記の理由で


未だソードフィッシュは生産・運用されている。


大切なことだから2度書いた。

バラクーダ以降も後継機の開発は続いている。

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何故兵器に英国面が強く炸裂するのだろうか。

作者が英国面を表現出来るか不明です。




次回 四月二十六日 05:00予定

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ガミチス側が、英国に対してやけに丁重なのは、なぜなのでしょうね? もしかして、自国よりずっと遅れた国だと、戦わずして屈伏させられると、舐めてかかっている?
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