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帝国対帝国

ベルフィスヘルム守備隊は奮闘しました

 サジウル曹長達の分隊の戦闘結果は無事本国参謀本部まで届いた。

 初の敵戦車詳細である。貴重な資料だった。


 敵戦車は

名称 Ⅲ号二型

砲口径 四十七ミリ

砲身長 二十二口径 推定

車体正面装甲 三十五ミリ 推定

砲塔正面装甲 四十ミリ  推定

乗員四名

出力・速度は不明

ガソリンエンジン


 ディッツ帝国陸軍現行主力戦車のR4では撃破不能となった。

 R4の戦車砲は五十ミリ二十口径の榴弾砲で、初速410メートルと遅く、弾も榴弾と破甲榴弾しか用意されておらず三十五ミリ装甲を抜くのは難しいと思われた。

 R4の正面装甲三十ミリ、砲塔正面装甲四十ミリをこの砲で撃ち抜くのは至近距離で無ければ不可能とされた。

 取り敢えず離れた戦車戦ではお互い撃破不能と言うことだった。


 ただ、空軍のガンカメラには砲身長の長い戦車や大きめの戦車も写っており、そちらは強力だろう事は予想された。


 現在量産に入った新型戦車R5には四十五ミリ対戦車砲が積まれている。この資料にある戦車なら撃破可能で有ろうと考えられたが、大きい戦車に通用するかどうかは不明だ。新型戦車R5の装甲は車体正面四十ミリ、砲塔正面五十ミリだが間に合い次第十ミリずつ増厚を図るとした。

 開発中の六十ミリ戦車砲の完成を急ぐとし、間に合わない場合は七十五ミリ野砲を戦車砲に改造するとされた。

 新型戦車R5は日本の九十七式中戦車を参考に傾斜装甲と溶接車体、ディーゼルエンジンを採用していた。ただし空冷では無く水冷である。あの足回りは採用しない。駆動輪を後方として車内容積を上げる構造も参考にした。車体幅を初期計画よりも広げ五名乗車と大型砲塔の採用をしている。これにより七十五ミリ野砲改造の砲塔も搭載可能になっている。その場合は車内スペースの不足で四名乗車になるが。


 他の報告では敵歩兵銃はこちらと同等の性能で同じくボルトアクションである。装弾数は不明。

 拳銃弾程度の弾を連射できる機関銃を個人装備として五人から十人に一人程度が所持しており、至近距離では弾数に圧倒されたという。


 戦闘機は向こうの方が性能は上のようで苦戦したと聞いた。ただ通用しないわけでは無いと言う。強がりで無ければいいがと、皆思う。

 おそらく艦上爆撃機であろう機体は鈍重な上に低速で的で有るとされた。防弾も十四ミリ機銃の連射で打ち破ることが出来たという報告がある。戦闘機も十四ミリ機銃は通用したと言うことが報告にあった。


 ベルフィスヘルム戦の被害

 巡洋艦 五隻喪失

 駆逐艦 八隻喪失

 貨物船 四隻喪失

 航空機 空軍戦闘機二百五十七機喪失 爆撃機四十七機喪失

  ベルフィスヘルム航空基地所属機

   戦闘機二百二十機 爆撃機四十七機

   戦闘機三十七機が後方から救援に向かい未帰還

 戦車 全九十六両喪失 *十三両は後退中燃料切れで放棄

 榴弾砲、カノン砲 高射砲 全喪失 

 対戦車砲十四門喪失 二門後退成功

 トラック 四百台以上喪失 三百二十台ほどが後退に成功

 建設用重機 全喪失


 人員

 戦死・行方不明、または捕虜  一万八千五百名余り

 艦艇・船舶乗り組み員を含む


 ベルフィスヘルムには守備隊や開発関係の民間人を含めて四万人近くいたが、守備隊と空軍の献身により二万人以上の脱出に成功。

        

 以上の被害をもって、ベルフィスヘルムは陥落した。   







 ベルフィスヘルムに上陸したガミチス帝国は同地の占領を成し遂げた。

 被害は戦死者四千人、戦闘不能な重傷者二千人、軽傷者四千人だった。


 艦艇の被害は駆逐艦が二隻小破した他は輸送船三隻が座礁した。


 航空機はJu98十六機被撃墜、Ju86三十六機被撃墜、Hi33十四機被撃墜、七十六機の完全損失だった。他に修理不能な機体や不時着した機体は四十機に上る。

 この損害の多くは奇襲後にやって来た敵戦闘機による被害だった。

 敵戦闘機はJu98と同等の速度で旋回性能は悪いのだが、技量がこちらを上回っていたようで性能差を無しにされてしまった。

 また、敵の装備する航空機関砲はこちらと同じ十四ミリ径であり、こちらの装甲をたやすく抜いてきた。

 MG14も敵機の防弾に有効打を与えており、防弾能力に差は無いと思われた。


 問題は敵機が搭載している航空機関砲がガミチスで採用されているMG14よりも三割増しの重量弾頭をMG14よりも高初速で発射できる優秀砲だった。今後が厄介だ。

 

 戦車は敵に対して優位に展開した。ただ台数的に主力であるⅢ号二型が敵戦車を倒せない。代わりに敵戦車では倒せない。どうも砲が同程度であるようだ。

 五十ミリ四十口径戦車砲を装備し装甲厚を増したⅢ号四型なら楽に撃破できた。

 厄介なのは敵の対戦車砲で四十五ミリ五十口径となっているがⅢ号二型は遠くからでも、四型でも近距離では撃破される。今回はこの対戦車砲で撃破された戦車が多い。


 今回、捕虜に出来た六千人余りは高級将校以外全て南ソレイル島に送り、基地建設に従事させる。怪我人はガミチス帝国の寛大なところを見せなければいけない。治療してやろう。幸い治癒魔法のレベルは高い。奴らも感謝するだろう。初心者治癒魔法師の練習台にもうってつけだ。


 バラン島にある東部戦線司令部では参謀達がそんな事を話し合っていた。


 ドメル司令は無関係に置かれていた。島の最高責任者と戦線司令部は別とされたのだった。これは当然の事なのだが、兼任させるという約束を反故にされて面白いわけも無かった。 

 

「ドメル中将、浮かない顔だな」


「これは、ゼークト中将では無いですか」


「判らんでも無いがな。島の主と戦線司令長官では重要度が違うのだよ。おとなしく我々の活躍を見ているといい」


「まあのんびりさせて貰うよ」


「休暇だと思えばいいだろ」


 ゼークト中将はそう言って取り巻きどもとドメルを嘲るような表情で去って行った。



「ドメル司令!」


「なんだ、見ていたのか」


「あんな事を言われていいのですか」


「事実だしな。それにまだ始まったばかりだ」


「しかし「まあ聞け」、はあ」


「いいか、ファーレンファイト中佐。どうも彼等は我々と同じ情報で戦争をしているとは思えん」


「どういう事ですか」


「私と共に、この作戦を立てたな?」


「はい」


「あの戦力で占領するにはかなりの犠牲が必要になるとして、戦力の追加を要求したはずだ」


「確かに」


「それがいつの間にか、作戦は奴らが立てたことになり、戦力は逆に少なくなった。おかしいと思わないか」


「変ですね。誰かが介入していると」


「そのせいで、陸軍にあれだけの損害が出た。海軍航空隊もあれほど落とされなかったはずだ。追加とまでは言わないが、元の計画通りならあれほどの損害は出なかったはずだ。それに湾内だけでは無く海岸からの上陸も最初の作戦には入れてあったが消えている。二方向から攻めれば敵戦力が分散されて戦死者などはあの七割程度で済んだだろう」


「おっしゃるとおりです」


「誰か知らんが、帝国の足を引っ張ってどうするのだ」


「司令、引っ張るのは帝国の足では無く、戦線司令長官の足ではないのですか」


「ん?そういう見方もあるか。では誰だ?」


「中央に詳しくありませんので」


「私もそうだ。前線が長いからな」


「得をするのは誰なのでしょう」


「どちらにしても許せんな。おかげで不要な損害が増えた」



 そんな東部戦線司令部でも真面目な仕事をする人間はいるもので、今得られた資料から彼我の実力を測ろうという人間もいた。

 敵の戦車は問題ない。勝てる。三号二型では引き分けだが三号四型なら問題ない。

 Ⅲ号では四型でも敵対戦車砲に危ないが、Ⅳ号二型なら近寄らなければ問題ない。三型なら更に強力なのだが主砲とエンジンの開発の遅れから先日量産に入ったところだ。こちらに配備されるのはまだ先だろう。


Ⅳ号二型

五十ミリ四十五口径戦車砲装備

重量 23.5トン

車体正面装甲六十ミリ、側面三十ミリ、後部二十ミリ、上面十五ミリ

砲塔正面装甲七十ミリ、側面四十ミリ、後部三十ミリ、上面十五ミリ

三百馬力ガソリンエンジンで舗装路三十五キロ、不整地十五キロの速度が出せる


Ⅳ号三型

六十ミリ五十口径戦車砲

重量 25.5トン

車体正面装甲七十ミリ、側面三十五ミリ、後部二十五ミリ、上面二十ミリ

砲塔正面装甲八十ミリ、側面四十五ミリ、後部三十五ミリ、上面二十ミリ

四百馬力ガソリンエンジンで舗装路四十五キロ、不整地二十二キロが出せる

これなら負けることは無いだろう。


 航空戦が問題だった。

 戦闘機Ju98は確かに敵を退けたが、Ju86の犠牲が大きかった。Ju86の犠牲は速度が遅く運動性が悪いことが主原因だが、連携が悪く戦闘機の有効な援護が得られない場合が多かったという。

 水平爆撃に使われた雷撃機Hi33がそれ程犠牲が出ていないことからJu86の低性能が大きな要因と言うよりは戦闘機隊の問題だろう。後で艦隊に報告書を上げておこう。

 Ju98とHi33は海軍専用機だが、Ju86は空軍の主力爆撃機だからな。機数は多い。新型の開発に難航しているとも聞く。開発を早めるよう報告書を上げるか。

 敵戦闘機の性能はJU98と速度は同等。運動性能は劣るとされた。それにしては撃墜百十八に対して被撃墜七十六、不時着など修理不能四十機と機数差が少ないが、海軍航空隊は敵の練度が異常に高かった。と報告している。

 それが事実なら敵全体がその練度なのかそれともたまたまだったのか、調査が必要だろう。

 


敵戦闘機推定性能対比

敵戦闘機は飛行可能な機体が無いため推定値

六千メートルでの速度は捕虜からの聴取によるもの


Ju98         シュニッツァー4

速度

五百三十キロ/時     同程度

三千メートル       同じ

五百五十キロ/時     五百五十キロ

五千八百メートル     六千メートル

航続距離

一千二百キロ+五百キロ  一千四百キロ


対地攻撃をする爆撃機への襲撃と援護だっため、三千以上の高度での戦闘は発生しなかった。高高度性能は不明。過給器が一段二速なので、JU98と同等かそれなりに有ると思われる。


武装

MG14         

十四ミリ航空機関砲    十四ミリ航空機関砲

四丁           四丁

爆弾搭載可能       主翼下懸架可能

最大二百五十キロ     百キロ左右一発

 

航空機関砲は敵の方が優秀。

重量弾頭を高初速で発射可能。発射速度はMG14の方が高い。

更に我が方はドラム給弾だが、敵はベルト給弾である。

MG14の弾倉が最大百五十発であるのに敵はベルト給弾二百発以上を実現している。

我が方の航空機関砲の能力向上が望まれる。


敵とは会話可能であるが、敵言語の読み書き不能であり、早急に言語解析が望まれる。




ガミチス戦車のスタイルはアレを思い浮かべて貰えれば

JU86は逆ガル翼で固定脚です。

Ju98はそのうちDo/SVと言う機体に更新されます。


次回 四月二十五日 05:00予定

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