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東部方面前進基地

対ディッツ帝国及び東方進出拠点になりますね。

 ガミチス帝国が東部への進出拠点として整備中の外周三百キロほどの島。バラン島と名付けられた島の中央やや北寄りに標高三百メートルほどの山と言うか高台地帯がありそこから結構豊富な水量が流れ出している。南部にも二百メートル級の高台地帯があり同じように水量豊富な流れがある。水に恵まれた島だ。

 この島に進出後、この星の三年が過ぎたが雨期は無くほどよく降る雨でこの水量が保たれているようだ。

 開発部隊の司令はこの南北の高台や山周辺を立ち入り禁止にして水源の清浄さを保つ気でいる。

 進出してきた陸軍とは

「山を訓練に使わせろ」

「山でクソと小便をするからダメだ。お前らも飲む水なんだぞ」

 と言い合っている。多くは開発部隊の司令に賛成だ。ちなみに開発部隊の司令はそのままこの島の最高責任者になることが決まっている。陸軍は逆らわない方が良いのに。

 結局山岳訓練は北部半島の百メートル級の小高い山で行われることになった。


挿絵(By みてみん)



 植生は豊富であるが食用になる物は少なく、また動物もいてもウサギ程度で肉の入手もままならない。

 北の方にバナナが採れる島が有るというので、移植も考えている開発部隊の司令だった。本土から農民や失業者を入植させて自給自足を考えているらしいが、この人物はどこへ行こうとしているのか。

 後に聞いたところでは、このバラン島は領土で在り恒久的な基地にすると言うことで総統命令でやっていると聞いた。

 それは責任重大だ。


 現在、各軍港と至近の飛行場は簡易鉄道で連絡されているが、将来的にはガミチス軌で複線化をするという。

 軍港間にも鉄道を敷設する予定だ。

 ガミチス軌は、元の世界で鉄道が普及を始めたとき規格が乱立した頃がある。その時鉄道王と言われた人物が規格統一しようとした。一説では彼の孫の身長を元にしたと風説がある。

 彼は国際社会に働きかけ、戦乱の時代で無かったことも幸運だったのだが国際標準規格にする事を成功した。

 しかし既に敷設されている鉄道も多く、統一以降の鉄道という条件が付いた。それ以前の鉄道は努力目標とされた。 

 当時、社会資本の整備が遅れていたガミチスではこの規格を採用。既に敷設済みであっても国家の強権で付け替えを行わせた。もちろん国も補助はしたが。

 この時、国内全線で同一規格鉄道の輸送効率の高さが各国に注目され、他国でも国際標準規格化を始めた。

 先進国に先駆けて行った軌道標準化はガミチスの自慢であり、国内ではガミチス軌と呼ばれるようになる。




 実際、東の大陸を制覇するに当たって、この島の位置は重要になるだろう事は明白であった。この島をベースに更に北方へ足を伸ばすという。現状ではそこまで手を広げるのはガミチス帝国の国力を持ってしても難しく、まずは東の国に手を出し征服してしまう。と言うのが従来の考えであった。しかし、[ウィルヘルム五世の乱]の混乱で軟禁中考えていた首脳部は、威力偵察をして問題なければ一気にやるという考えに変わっていた。

 前の世界なら情報は十分すぎるほど得られた。だがこの世界では無いと言っても過言では無い。今頃気がついたと焦ったようだ。ひょっとしたら魔神に思考誘導されていた可能性もあった。魔神との繋がりが切れたことで影響は残っているが一気に正気になったのかも知れない。


[ウィルヘルム五世の乱]の時この島でも隷属化は起こった。工事自体は中断されなかった。ただ品質は落ちたようで、その後の確認作業が大変だった。幾つかの建物が解体された。ドックも工事日を割り出しその部分は解体再工事となった。

 これはガミチス帝国全体にわたっての品質低下であり、隷属化最中は思考力が相当落ちていたようだ。隷属化中に作られた機械製品や部品は全て点検されダメな物ははねられた。

 オーレリア島の前進基地も大変だという。

 あの乱によって帝国の世界征服スケジュールは一年以上延びてしまった。その分潜水艦による偵察は増えている。

 Ⅶ型潜水艦の長距離偵察仕様であるLR型はグリューネ少佐らの実績によって有用であるとされた。現在一〇隻程度が運用されている。更に増やす予定である。

 海軍は前の世界の三千キロも行けば他の地面にぶつかるような海では無いこの世界で、偵察潜水艦部隊を独立して運用する気でいるようだ。

 帝国の西は化け物だらけの海なので当面進出は控え、北と東に全力を投入するらしい。



 最近、又東部侵攻スケジュールが変わった。

[ウィルヘルム五世の乱]で起きた動員を利用して軍備の増強が行われている。海軍力と空軍力がかなり強化されたため、従来のスケジュールからやや遅れるくらいに戻すというのだ。




「つらつらと思いましたが、実現可能なのでしょうか。司令」


 副官のバイエルライン大佐が疑問を呈する。


「だが、決定されたことだ。我々は命令に従うだけだよ。抗命するようなことでも無い。違うかな」


 バラン島開発部隊の司令、ドメル少将が言う。


「確かにその通りですが、早すぎないでしょうか」


「国内の開戦圧力が強いようだ。内部で暴発しないようにガス抜きをしなければいけないらしい」


「[ウィルヘルム五世の乱]の影響ですか」


「そうらしい。情報部の分析ではそうだ。それに我々も影響を受けたのは変わりない」


「総統も大変ですね」


「まあな。そのとばっちりがこちらに来るわけだが。たまったものでは無いな」


「本当ですね」


「空軍だが、あの飛行機で正気なのか」


「Os-109ですか?」


「そうだ。七百キロしか飛べないだろう。精々この島の防衛、いやそれも怪しいか。そんな戦闘機ばっかり持ってきてどうしようと」


「司令は最新計画書にまだ目を通されていないのですか」


「ここにある」


 机の上に有った。これから目を通すようだ。


「君はもう目を通したな。どう思う?」


「例の救助者が本当のことを言っていれば良いのですが」


「あの情報を元に立てた計画か。裏付けも取れない情報を元に立てるのか。おかしくないか」


「最近偵察も強化されていますし、こちらが知らない情報が有ってもおかしくないです」


「だが、向こうの上空を飛んだわけでは無いだろう」


「そんな事出来ませんよ。まだ接触もしていないのに」


「だからおかしいんだ」




 数日後、デストラー総統の視察が有りそこで疑問は解決された。


「総統閣下を見たか。あの覇王のような威圧。凄かったな」


 ドメル少将が言う。


「全くです。あのような方が帝国を率いれば必ずやこの世界ランエールに覇を唱えられるでしょう」


 バイエルライン大佐が肯定するどころか更に持ち上げる。


 二人の目は白目部分が赤くなっていた。


「以前強制的に隷属化されていた時は、なんとなくモヤモヤしていたが今は実に爽快だ」


「はい、素晴らしい気分です」


「「真の魔王とはあの方しかいない(ません)」」


 二人は、いやこの基地にいる全員が魔王と化したデストラーの影響を受けていた。



 デストラー総統はその後、極秘裏に部族連合と称される地域を訪れた。




 東の国に関する情報は、以前救助した漂流者から聴取した内容だった。

 彼の者は漁師で、出漁したはいいが酷い嵐に巻き込まれ難破・漂流していた。それを偵察に出ていた潜水艦が発見。バラン島に連れ帰ったものである。

 バラン島でも聴取したが本国に連れ帰って詳細な聞き取りをした。


東の国は

国名 ディッツ帝国。政体は皇帝を頂点とし、議会が補佐する中央集権国

人口 一億二千万人 プラスして征服した人口がおおよそ二千万人

軍事力 

 一般市民であり田舎の漁師と言うことも合って多くを知らず

 陸軍は五十万人 徴兵制有り 漁師も陸軍で二年間過ごした

 徴兵で入った者であり訓練と陸軍以外の詳細は知らず

 陸軍についても詳しいことは知らない

 ほぼガミチス帝国と同様の編成と思われる

 移動は鉄道と徒歩が主体 トラックの台数は少ない

 戦車は四十ミリ砲搭載

 百五十ミリ級大砲有り 

 海軍は内海艦隊 戦艦はある 三十四センチ砲八門装備 他不明

 空母の存在は知らない 空母の意味も知らない

 空軍はある。最新爆撃機が時速四百キロだという


 ディッツ帝国も転移してきた国で内海の穏やかな海だったという

 外海の荒波には苦労している 

 燃料には不自由していない

 最近外の国と貿易が始まり国内に活気が出てきた

 外の国の名は 日本


 人口は大陸東部に集中している

 西部は開拓が始まったばかり


 自分は最北端の漁師町の住民

 西岸へ新しい漁場の開拓に出て嵐に巻き込まれ難破した


 

 この不幸な漁師が難破したのはグリューネ少佐が聴音だが艦隊を発見した後で現時点で最新情報。

 デストラー総統が魔王の能力を使いウソでは無いことが分かった。 

 現在の計画はこの情報を基にしている。


 戦車はⅣ号戦車、いやⅢ号戦車でも充分勝てる。四十ミリ砲がどのくらいの威力か判らないが威力次第ではⅡ号戦車でも対抗は可能だろう。Ⅴ号戦車では大げさだろう。

 航空機は艦上機で複葉機である。陸上機なら単葉機もあるだろうが、わがガミチス帝国の機体が圧倒するであろう。

 戦艦は強敵だが、たかが三十四センチ砲搭載艦がガミチス帝国の誇る四十センチ砲戦艦には勝てるわけもない。




 正常な思考力があればこの程度の情報に基づいて行動計画を作るのはおかしいのだが、魔王化の影響か思考がおかしいことになっている。




 

ちょっと本編内部事情で「ガミチス帝国 軍事再編」で最後の方に南ソレイル島基地の開発をより促進するような記述を加えました。


*****

だが、せっかく動員したついでに失業者だった連中を動員解除せず南ソレイル島基地の開発に充てるとした。また動員から漏れた失業者の軍需工場へ就職と言う名の労働力斡旋、ただし強制力強い、を行った。


 幸いなことに南ソレイル島の基地建設は続行されていた。反って力を入れてあった。それを加速する。

*****

 

 ガミチス帝国の軍備は増強が進むことになります。これで半年とその後の遅れを取り戻す。


 ご都合主義万歳


 次回 四月十九日 05:00予定

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