ガミチス帝国 軍事再編
半年も好き勝手されれば大変です
ガミチス帝国はいうまでもなく侵略性の高い軍事国家である。これは歴史的に虐げられた期間が長く民族的意識として復讐が侵略に変わってしまったもので有る。
それはウィルヘルム五世に強制的に隷属させられ、そこから解放されても変わることはなかった。
解放された帝国民はデストラーを英雄として讃えた。これはあえてデストラーが事実のみを伝えたせいも有る。神の演出には乗らなかった。神が花を持たせてくれようとしても敢えて乗らなかった、その精神性を讃えられたのである。
デストラー自体がそういう英雄像を好きではなかったためだった。また、この方がより上手くいくという確信があった。
デストラーと共に囚われていた三軍の長官と参謀長を中心として軍の再編に入った。
わずかの期間で酷い組織改造がなされてしまった。
世間ではウィルヘルム五世によって復活を遂げた国家安全機構が再びやりたい放題をしたので、やはり全員拘束の上刑罰に処せられた。
ウィルヘルム五世の親族も同じだった。多くの親族が罰せられている。
ウィルヘルム五世はガミチス帝国最悪の指導者として記憶されることとなった。
海軍では空母艦載機で揉めていた。建艦計画も変更されていたがまだ修正可能な範囲であった。
ウィルヘルム五世の影響が強かった頃に導入されたオッサーシュミット社製のOs109の艦載機型である。
この機体は小型軽量をモットーとして主翼に必要以上の強度を持たせないとしたために基部を胴体取り付けとした引き込み式の主脚はトレッドが狭い上に強度不足で離着陸の事故が多かった。揺れない大地でこれである。揺れる上に制御された墜落と言われるほどの着艦では更に事故率が上がった。
主翼が高速性を重視したせいで薄く小さく炸裂弾が使用できる大型航空機関砲の搭載が出来なかった。二十ミリ級大型機関砲は倒立V型のエンジンブロックの間を通りプロペラシャフトから弾丸を発射するモーターカノンの開発がされてるが、どうにもはかばかしくない。結果、武装は八ミリ機銃四丁という情けないものだった。
薄く小さくしたせいで燃料タンクの設置にも困り胴体タンクしかない。設置が可能なスペースはラジエターに取られた。航続距離は七百キロもなかった。
薄く小さい主翼のせいで高翼面荷重となり艦載機には適していなかった。発艦には長い滑走距離が必要だった。カタパルトは実用化していない。
液冷式は高速発揮には良かったが反面緊急発進には向いていなかった。空冷に比べて暖気時間が多く空母での取り扱いでは緊急発進が出来ない事が問題になっている。暖気を随時行えばいいのだが燃料タンクが小さく航続距離が落ちてしまう。
貧弱な武装の上に、とことん艦載機には向いていない機体だ。
また搭載エンジンのマルレーネ・ボンツ社製MB600は熟成されておらず度々問題が出ている。飛行中に故障しても陸上なら帰還できるかも知れないが、海の上だと帰還もおぼつかない。
要するに海軍からしたら不要な機体である。
それがウィルヘルム五世が隷属させていた期間に大増産されていた。
再び海軍長官と海軍参謀長に戻ったヒルベルストとブランデンは困っていた。使い物にならない機体をこんな大量に如何しろというのだ。
替わりの機体として開発中だったユンケルンCは開発中止とされていた。
ユンケルンCは艦載機としての使い勝手を追求した機体で、原型の空軍向け試作機ユンケルン3Bを基本としている。
空冷エンジンと主翼取り付け主脚で広いトレッドと一千五百キロという航続距離、百三十キロ台の低い翼面荷重、主翼と胴体に十四ミリ機関砲MG14を六門装備する。MG18に換装できないか検討中の所で開発中止にされてしまった。
速度こそOs109には及ばなかったものの総合力では凌駕している。
メーカーのユンケルン社では直ちに開発を再開できるとしているので開発の再開を求めた。
Os109は全部空軍に放り投げることにした。
ユンケルンCの完成までは旧式になるが、ハインカースHe58を整備して使うことにした。しばらくは訓練しかしないのだ。離着艦が安全な機体でパイロットを育てる。
オッサーシュミット社が文句を言ってきたが艦載機としての弱点をつらつらと指摘し何故改善しなかったのか問い詰めると、奴らは顔を真っ赤にして帰っていった。もうウィルヘルム五世はいないのだ。優遇してくれると思ったら大間違いだ。
空軍はオッサーシュミットOs109E3の大量配備と共にOs210Bもまた大量に配備されていた。そこに海軍から使えねーとばかりに三百機のOs109Sがやって来た。109Sは109E1に着艦フックと主翼内浮体構造としたもので重量がそれなりに増加している。他は同じだった。
Os210Bはまだ前の世界で地続きの頃企画されたOs110の後継機である。
Os110は爆撃機を援護し長駆敵地に侵入、迎撃機から爆撃機を守るというコンセプトで開発された。当時開発されていたOs109では航続距離が短く無理で、どうしても双発になってしまう。
それならOs109を二機並べて双発双胴にしてしまえば、部品の多くをOs109と共用でき生産性が高いのではとの発想から生まれた狂気の飛行機だった。
とにかくそのまま使ったので主脚は四本有った。復座でひとりやられても帰還できるように操縦系統は並列で左右切り替え可能となった。酷い整備性である。
航続距離を稼ぐ燃料タンクは中央翼に大型のものが設置された。これで二千キロという航続距離を稼いだのだが燃料配管も左右エンジンに供給可能でどちらのパイロットでも配管を操作可能なように二重系統としたために整備性が更に悪化した。
戦闘機としての性能は最高速度こそOs109よりも少し遅い程度だったものの、上昇力で酷く劣り、旋回性能はOs110が一周する間にOs109なら二周以上できるほど鈍重だった。
武装も八ミリ機銃六基と言う弱武装で結果、高価で生産性も悪くどうにも使い物にならないとしてお蔵入りになった機体だ。
Os210は普通の双発戦闘機として開発された。見た目は普通の双発機である。
ただこの機体も対戦闘機を意識されていた。Os110の旋回性能の劣悪さを回避するために低翼面荷重とした長大な主翼とそれを支える胴体などですっかり重くなってしまい、速度は五百十キロしか出ない戦闘機になった。同時期のOs109は五百四十キロ出る。
さすがに武装は十八ミリ四丁となり機首に集中配置され破壊力はあった。この十八ミリ機関砲はウェルベメタル社製MG18でガミチス帝国初の炸裂弾を使用できる航空機関砲だった。砲口初速八百三十メートル、発射速度毎分八百五十発という優秀砲であり、弾道も八ミリ機関銃以上に伸びた。
問題は信頼性と整備性を重視したため若干大きく重いのと精密加工が必要なことだがガミチスの銃器製造レベルなら問題なかった。
作動機構や弾薬も含めたシステムでプロペラ同調が可能であり、ガミチス帝国軍用機の標準装備となっていく。
Os210Bは量産試作機ともいうべき210Aに爆撃能力を持たせた機体で一トンの爆装が可能だった。
対爆撃機用戦闘爆撃機という双発復座戦闘機にありがちな所に落ち着いた。
空軍は主力戦闘機としてのOs109には拡張性と将来性が低いため期待せずにいる。現在各社にMG18二丁・MG14二丁以上装備した次世代主力機の開発指示を出したところだ。
陸軍はこれまたおかしくされてしまった。強襲上陸用揚陸艦の建造が打ち切られ起工済みの船体はスクラップにされてしまった。替わりの計画だと普通の貨物船を使って揚陸で十分となっている。誰がこの計画を立てたのか知らないが復帰した陸軍長官モーデルと陸軍参謀長ハルダーは怒っている。
それだけではなかった。せっかく試作まで行った画期的戦車と言えるⅤ号戦車を白紙にされた上に再設計だとばかりにⅣ号戦車をただ単に大きくした戦車をⅤ号戦車として制式採用していた。三ヶ月で三百両も作られてしまった。生産ラインも作られてしまったので今更無しにも出来ない。困ったものだ。
Ⅴ号戦車を試作していたヘンケン社はⅤ号戦車の製作を受注できたのでどうでもいいらしいが、あの戦車の推定能力は素晴らしいとしてⅥ号戦車を発注した。八十八ミリ高射砲の砲身を戦車砲に転用した陸の王者とも言える重戦車になる予定だ。
強襲揚陸艦は新たに発注した。
一番の問題は動員だった。五百万人という狂った人数の動員だった。対象年齢を十八歳からはいいとしても上が四十歳というのが問題だった。
各所で中堅処の人員がいきなり徴兵されて混乱していた。更に徴兵すべきではない人材、医師や研究者まで徴兵していた。
まさしく無能の仕業だった。
当然動員は解除。現在は社会的混乱を鎮めているところだ。だが、せっかく動員したついでに失業者だった連中を動員解除せず南ソレイル島基地の開発に充てるとした。また動員から漏れた失業者の軍需工場へ就職と言う名の労働力斡旋、ただし強制力強い、を行った。
幸いなことに南ソレイル島の基地建設は続行されていた。反って力を入れてあった。それを加速する。
すっかり戦争計画が狂ってしまった。奴らはこれで真面目に戦争をするつもりだったのだろうか。隷属化されて知能まで低下したとしか思えなかった。
こういう動員をした国が身近にありますが、一銭五厘とかほざいた連中の仕業ですね。
アメリカにはツインムスタングという機体があって一応成功作のようです。
双戦は書けるかな。書いてみたいな。
陸軍さんはいきなりケイニッヒスティーガーが登場しそうです。
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