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転移国家日本 明日への道  作者: 銀河乞食分隊
第一章 日本 外地進出
14/219

上村 責任だけデカすぎる昇進をする

「失敗したらお前のせい」と言う奴ですね。

現実でも多いと思います。

 タマヨは二人の所に急いで戻った。だっておいしいんだよ。二人の分も有るって。


「ただいま」


「そんなに急いで戻ってくることか?逃げるのか?」


 アビゲイルが聞く。


「違うよ。とってもおいしい物もらった」


「このおバカ」 ゴチ


 モーリタがタマヨの頭をぶつ。


「いったーい。なにすんのー」


「いつも知らない人に、物もらってはいけませんていっているでしょ」


「でもジンイチはいい人だよ」


「ジンイチ?」

「ジンイチって誰」


「んーとね、あの枯れ草色着た人の中で偉い人」


「分からん」

「ほんとに」


「これくれたよ」


 腕時計を見せた。


 え?アビゲイルは驚いた。こんな小さな時計は見たことが無かった。あ、違う。以前に有ったな。俺が帝都で近衛をやっていたときか。贈り物だと言って偉いさんが自慢していた。

 そんなものをタマヨにくれただと。

 

 悩むアビゲイルをよそに、モーリタの説教は続く。


 あ、いかん、タマヨが涙目になってきた。止めなければ。


「モーリタ、もういいだろう。タマヨも分かったよな」


「うん、モーリタ、アビゲイル、ごめんなさい」


「分かればいいのよ。タマヨ」


 モーリタがタマヨを抱きしめる。ちょっとうらやましいぞ。


「タマヨ、彼等の様子を教えてくれないか」


「うん、挨拶したのね。そしたら驚かれちゃって、轟音と凄い煙の出てつぶてを見えないくらいの勢いで飛ばしてくる道具を皆持っているの。それを向けられたの」


 タマヨは自分が驚かせた事を無かった事にした。


 それって鉄砲じゃ無いか。あんな高価な物を全員だと。


「良く無事だったな」


「ジンイチがね、止めさせてくれたの」


「ジンイチか。どういう人だ」


「凄く長い称号を持っているんだけど、私にはジンイチでいいって」


「彼等は多分兵隊だ。長い称号は国とか部隊の名前だからな。気にすることは無いぞ」


 ぷー、タマヨが膨れた。え、俺なんかしたか?


「アビゲイル、駄目よ。タマヨは自分が特別だったんだから」


「あー、ジンイチに良くされたのか。優しかったか?」


 タマヨがにっこりとして


「うん、優しかった」


「そうか、良かったな」


「ねえ、タマヨ。あの人達なにしに来たの」


「わかんない。だけど南じゃ無いよ。東から来たと言ってた」


「東はなにも無い海だけの所だぞ」


「遠いんだよ。船に乗って歩く速さの七倍くらいで七日かかるって。だいたい五千キロメータ」


「遠いな。なぜこんな遠くに」


 アビゲイルはだいたい予想が付いた。土地だろう。


「ひょっとしてタマヨが言っていた大きい船なのか」


「そうみたい。ねっ、行こう」


「如何する?」


「タマヨを信じるわ」


「じゃあ、モーリタを信じる」


「アビゲイル♡」


「じゃあ、案内するね。装備は持ってきて」

 あほくさい。二人っきりの時にお願いします。





 上村達は帰ってきたタマヨを見て驚いた。てっきりタマヨと同じくらいの背格好だろうと思っていたのだ。

 それが、男は一九〇cmくらいの偉丈夫、女は一七〇cmくらいのややぽっちゃりさん。一同一点に目が行ったのは仕方ない。ぽっちゃりさんはとっさに男の影に隠れて顔だけ出している。しかし日本陸軍は紳士で有る。すぐに目をそらす。

 ぽっちゃりさんもホッとしたのか男の影から出てきた。


 タマヨが近づいてきて、


「連れてきたよ」


「ありがとう」


「へへ」


「カミムラ ジンイチ」


 一歩前へ出て言った。


 向こうも一歩前に出て


「アビゲイル」

「モーリタ」


 名前は分かった。


「アビゲイルさん、モーリタさん。初めまして」


「「初めまして」」


「さて、タマヨさんにお願いされて、あなた方にもこいつを食べて欲しいと言うことでした」


 牛缶を持っている。タマヨさんがとても欲しそうにしている。


 アビゲイルが答えた。


「はい、そうです。その前に聞きたいことが有ります。あなた方の所属は。あなた方の目的は。」


 来たか。連隊司令部から先ほど直接連絡があり、正直に言えと言われた。ほかにも、本土と連絡を取っている。絶対に機嫌を損ねるなと厳しく言われた。

 応援はもうじき到着するようだ。いろいろ持ってきてもらっている。


「日本という国です。目的は調査です。我々が住むことが出来るのか。敵対的な人達がいないのか。ケンネルやオークがいないのか。他にもありますが、主な目的はその三点です」

「日本ですか。聞いたことがありません。東に五千キロメータも離れたところにあるとは」

「アビゲイルさん、あなたは神を信じますか」

「勿論。主神ランエールに誓って」

「それなら良いです。お話ししましょう。我々は神に助けられました」

「助けられた?」

「はい、まあ長くなります。タマヨさんもアビゲイルさんもモーリタさんもどうですか。この食べ物をご一緒に」

「はあ」

「アビゲイル、食べよ」

「気楽だな、タマヨは」


「むー」


 クスクスと笑うモーリタ。部下達は見惚れているのだろう。


「食べましょ、アビゲイル」


「そうするか。話を聞きながら」


「では、どうぞ」




 布を引いた所に案内された。屋外だ。たいしたもてなしは期待していなかったが、簡易な台が用意されていた。

 そこにあったのは、なんだこれ?円筒形の入れ物だな。その中には濃いスープの中に肉が浮かんでいる。これか、タマヨがおいしいと言ったのは。

 ジンイチがスプーンを持っていた。


「これがスプーンです。その入れ物の縁は凄く切れるので、絶対に縁に口を付けないでくださいね」


「私も一口ずつ食べて、毒では無いことをお見せしましょう」


 と言って、いと口ずつすくって、皿に入れて食べた。皿は食べたことを我々に見せるように傾けた。


「まあいいでしょう。モーリタごちそうになろう」


「ええ、そうね」


 タマヨは速攻で食べていた。先ほど食べたから毒味の儀式など関係かなった。


「おいしい」

「確かに」


「ね、おいしいでしょ」


「そうだな、疑って悪かった」


 食べながらだが、ジンイチはこちらに気を遣いながらゆっくりと説明してくれた。とてもじゃないが信じられなかった。

 もうすぐ細かい説明が出来る者がやってくると言うことだった。まあ変なことをしたら魔法で吹き飛ばすだけだ。


 食べ終わった我々に、お菓子を出してくれた。お菓子だよな。なんだこのきれいなトゲトゲは。この茶色いのは?これビスケット?初めて見る物ばかりだ。

 甘いお菓子と聞いて、モーリタとタマヨがこちらをチラチラ見る。いいよね、食べてもいいよね。言いたいことは分かる。分かるが・・負けた。いいよ食べて。うなずいた。

 二人の手は速かった。きれいなトゲトゲを口に入れて目を見開いている。二人で見つめ合ってもっと食べようというのか、手を出そうとしたが、タマヨが村の皆にも食べさせたいと言った。

 二人の手は止まった。


「如何しました。食べていいのですよ」


 ジンイチが聞く


 タマヨが「村の皆にも食べさせたい」と言っている。


「優しいですね。タマヨさんは」


 止めてくれ、タマヨはすぐ調子に乗るのだから。


「でも大丈夫ですよ。この袋一杯持ってきますから」


 足下の袋?背負い袋だな。あれは。あれに一杯だと。そんな高価な物をもらういわれは無かった。


「申し訳ないが、我々にはもらういわれが無い」


「大丈夫です。友好の印に差し上げます。上から言われていますから大丈夫です。お気になさらず」


「「ねえ、アビゲイル」」


 こういう時には息が合うね、君たち。


 


 女子をお菓子責めにして好感度を上げようとは、分隊の吉岡上等兵の案だった。宿営地では乾パンの袋を開けて金平糖を集めるのに必死だったことだろう。甘みは戦場でも大事だった。おかげでキャラメルと合わせて五十kgくらいは集まったそうだ。

 しけるといけないので、二日くらい乾パンが主食だな。済まんな皆。



 そうこうしているうちに、応援がたどり着いた。

 大隊長がいるよ。学者さん達も大勢いる。防疫部隊も、まあ当然だな。相手がどういう病原体を持っているか分からない。


 大隊長の所に向かう。


「上村曹長、ご苦労だった。いい状態を作れたようだ」

「ありがとうございます」

「ついては、連隊長とも相談の上だが、本官が現地到着時に良い関係が築けていたら、以降もそのまま接触・交渉を任せる事になっていた。分かるな」

「分隊ごとでありましょうか」

「当然だな」

「上村分隊、接触を続行します」

「うむ。でだ、上村曹長、貴公を野戦任官だが中尉に昇進させる」


「は?」


 なんだ?中尉だ?意味が分からん。俺はまだ戦死していない。二階級特進でも少尉じゃないか。三階級だと?


「中尉だ。貴公を現地住民交渉部隊の頭にする。貴公に二個小隊を預ける。小隊長はいずれも士官学校出の駆け出し少尉だ。まだ現実を知らん。中尉で無いと命令も聞かんだろう。部隊には部隊参謀として中尉一名と主計中尉一名を付ける。ではいいな」


「はっ、上村中尉、命令を拝命いたします」


 俺が二個小隊の指揮官だ?


「大隊長、質問よろしいでしょうか」

「かまわない。戸惑う事だらけだろうし」

「はっ、部隊指揮官と言われましたが、学者さんや防疫部隊の指揮も執るのでありましょうか」

「当然だ」

「出来るでしょうか」

「そのために部隊参謀と司令部部隊を付けた。彼等を活用せよ」

「了解です」

「では頼むぞ。成功すれば、野戦任官では無くなるからな」


 うえ。肩がどんと重くなった気がする。



 

 ジンイチ、早く帰ってきてよ。この人達私たちの事じろじろ見るの。気持ち悪いの。それにパシャパシャ音がする箱をこっちに向けるの。なんか怖い。


 ジンイチさん、この人達なんとかしてください。目つきがおかしいの。村の若い男みたいなスケベな目じゃ無いけど、なんかいやだ。


 ジンイチ、早く帰ってこい。偉いさんと話をしているようだが、モーリタやタマヨが怯えている。俺にもおかしな目つきでじろじろ見てくる。いい加減辛抱が切れそうだ。魔法で吹き飛ばそうか?



 ジンイチが帰った来た。思わず駆け寄って袖をつかんでしまう。


「心配かけたね。私の仲間がごめんな」


 そう言って、頭をなで出くれた。エへへ。なんかいいな。




「皆さん、失礼な真似は直ちに止めてください」

「なんだね君は」

「この部隊の指揮官に任命された、上村曹・もとい、上村中尉です。交渉には特別な指示が無い限り全権を持たされています」


 このくらい言ってもいいだろう。責任の所在はぼかされたしな。


「では聞くが、今後どうする気かな。言い遅れた。私は、種苗研究所の柳沢と言う」


 種苗研究所の柳沢って、関係ないじゃ無いか。見回せば注目されている。分かった。この人が学者さん達のリーダー格だな。


「では、柳沢さん。まずは失礼な真似を止めさせて、全員一旦離れてください」


「分かった。そうしよう。私も酷いとは思っていた所だ」


 なら早く下げてくれ。


 柳沢の一言で学者さん達が離れていった。凄いな。今後出来るだけ大切に扱おう。


「タマヨ、アビゲイル、モーリタさん、済まない。謝る」


 頭を下げた。


「さすがジンイチだね」


 いや、タマヨ。そうじゃないんだ。


「謝罪は受け取った。許そう」

「私も、いいですよ」


「ありがとう」


 今後如何するか三人に説明する。受け入れてもらえるとありがたい。


「村に来たいと?」

「はい、そうです。我々の目的は一に調査です。制圧とか征服ではありません」

「ジンイチ、君のことは信じたいが、さっきのような真似をする集団を受け入れろと」

「今後失礼なまねをしないよう言い聞かせます」

「君に出来るのか」

「一応全権を任されました」

「一応か」

「一応です。それ以上の事は言えません」

「正直だな」

「国から誠意を持って当たれと言われています」

「では我々に対して、なにが出来る?」

「食料や様々な物資の提供でしょうか。現状ではそのくらいしか」


「現状ではか」


 アビゲイルは少し考えてから言った。


「医者はいるか?」


「いるはずです。三人はいるはずです。そういう部隊編成ですから」


「我々は物資以上に医者が必要だ。魔法治療でもどうにもならない病人がいる。是非見て欲しい」


「直ちに確認してきます」


 上村は部隊と学者の方へ急いだ。




野戦任官とは言え、准尉・少尉を飛び越える三階級特進をさせられた上村。

村の病人とは。


次回 九月一五日 〇五;〇〇予定

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