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見た物は

話が散らかっておりますがご勘弁。

 ディッツ帝国海軍第一機動部隊から次々とと言うほどのことは無い機数が発艦する。

 所詮は商船改造の軽空母。搭載機数は二十機に満たないし、カタパルトを装備していないので一回に発艦できる機数も五機だ。

 現在日本と交渉して正規空母の図面と船体を売って貰う交渉をしている。

 日本はどうしようかと考え中だ。空母に早く慣れるように瑞鳳級なら売っても良いかなと。中古格安で。


 ディッツ帝国初の艦載機であるFG11は、もう訓練にしか使われなくなった旧型の複葉戦闘機を改造した機体で新型番が与えられている。ただ着艦フックと不時着後浮いているように浮体構造にしている。それだけだった。

 他には復座の偵察爆撃機で、やはり同じ改造をして新型番の複葉のSB11がある。


 パイロット達は空母という物に最初はこんな狭いところに降りられるかと不安だった。陸上で散々定着訓練をやっても動いている小さい板に降りるのだ。何人水泳をしたのだろう。

 日本人がいきなり高性能な機体で始めないようにと言ったのも納得できる。


 発艦した五機は戦闘機二機と爆撃機三機だった。洋上での編隊飛行訓練兼航法訓練兼哨戒訓練だ。何でも兼ねる。

 陸上での経験は長くても艦載機の経験は始まったところだ。早く後続を教育できる練度になるのが目標だ。とても実戦部隊など編成できない。まだその段階だった。

 空母を見失うのが怖いので五十キロしか離れない。三百海里 五百五十キロ 進出は遠い。


(チクショウめ、なんでこんな物導入するんだ。目印の無いところを飛べとか、そのあげくあんな小さい物を発見、そこに降りろとか冗談じゃ無い)

 

 空軍から海軍に所属が変わったパイロット達は皆ブーたれる。



 





「聴音どうだ」


「およそ八千くらいかと」


「潜望鏡を上げる。副長三十秒だ。カメラ用意」


「了解」


「潜望鏡上げ」


「潜望鏡上げ」


 グリューネ大尉は潜望鏡をまず一周させ周囲の確認をする。目標以外見えない。


「目標、巡洋艦一。なんだアレは、空母か!小さいな。発艦中」


「三十秒」


「潜望鏡下げ待て、カメラ急げ」


「カメラ撮影します」

「撮影終わり」


 グリューネ大尉は潜望鏡をもう一度覗く。


「潜望鏡下げ」


「潜望鏡下げ」


「動力潜行深度三十。ベント開けるな。コンプレッサー始動、メインバラストへ注水。電池並列、モーター始動、速力四ノット、潜舵下げ舵、針路このまま」


「動力潜行深度三十了解」


「ダウントリム五度。前部バラストへ移水」


「メインバラストタンクへの注水開始」


「電池並列、モーター始動、速力四ノット、下げ舵」


「深度三十です」


「トリム戻せ、モーター停止、」


「後部バラストへ移水」


「モーター停止」


「釣り合い取れました。バラストタンク注水停止」


「艦長、如何しました」


「空母がいた」


「空母・・」


 潜水艦の天敵が駆逐艦と航空機であることは共通のようだ。


「どういう空母ですか」


「チラッと見ただけだが軽巡とさして変わらん大きさだ」


「軽空母ですかね」


「そうかもな。飛行機は遠目でよく見えなかったが複葉機みたいだ」


「今時複葉機ですか」


「ウチの事故だらけの空母でも単葉機だ」


「空母が悪いとか飛行機が悪いとか海軍と空軍で争ってますね」


「飛行機も海軍によこせば良いのにな」


「空母の運用権も空軍の管轄にしようとしましたからね」


「さて、4時間ここで待つ。夕方になればいくら何でも居なくなるだろう」


「了解です」

「お前ら、トリムに注意しろ」


「了解」


 V-105は日の暮れるのを待って潜望鏡を出しその後浮上。


「ディーゼル始動、艦内換気急げ」


「艦長、タバコは如何しますか」


「まだダメだ。この海域を離れてからにしろ」


「ウィ~ッス」


「俺だって吸いたいんだよ。我慢しろ」


(如何するかな。今回も良い情報を収集できた。命令はこの海域で期間一杯粘るか、有意な情報があれば持ち帰れと言うからな。

 これは有意な情報だが。あんまり早く帰るとなにか言われるか、もう一回行けだよな。

 う~ん)


「副長、機関長、水雷長、集まってくれ」


 集まれるところがないので潜望鏡の周りだ。艦長室は室と言っても2メートルと1.5メートルの広さしか無い。おまけにドアは無く、カーテンだ。個室なだけましだが。

 内緒話など出来ない。


「今回も重要且つ有意な情報を入手できた。諸君の努力の御陰でもある。感謝する」


「艦長」


「なんだ、機関長」


「気持ち悪いです」


「じゃあどう言えば良いんだ」


「それはですね艦長。帰ると言えば良いんです」


 水雷長が言う。


「言うのは簡単なんだよな」


「艦長、良いですか」


「副長、良いぞ」


「ちょっと海図への書き込みをいじります」


「?」


「あと四日ここに居ることにします。どうせ見張りはいません」


「そうだな。国家安全機構の奴もこの小さい船はお気に召さないらしい」


「明日一日ここに居て、あとは引き上げましょう」


「そうするか。途中の時間調整はあの島にする」


「あの島ですか、良いですね」


「またバナナ有るといいです」


 十分後には全員が知ることになる。小さい船だった。

 翌日夕方、待てども船影が無くあと三日いたことにして引き上げるのだった。









 紫原中佐は皇宮へ招かれていた。普段滅多に来ないし、自分が似合わないことは十分承知している。

 居心地が凄く悪かった。


「やあ、紫原中佐。久しぶりだな」


「レンネンカンプ子爵もお変わりなく。そちらの方々を紹介して貰っても?」


「構わんよ。彼が新任の海軍大臣。ウィリバルト・ゼークト伯爵だ。そちらの細っこいのが同じく新任の財務大臣、フリッツ・ケイマン子爵だ。よろしくな」


「日本移住者支援機構、紫原中佐です。お見知りおきを」


「海軍大臣、ウィリバルト・ゼークト伯爵だ。こちらこそ宜しく」


「ケイマン子爵です。宜しく」


「さあ、席について飲み物でも」


 レンネンカンプ子爵に促され、ソファーに座る。メイドが紅茶とカヒを入れてくれる。


「紫原中佐、日本からの援助には本当に感謝しています。財務卿になって良くわかります」


「紫原中佐、彼は感激屋でな。少し大げさなんだ」


「そんな事ありません。レンネンカンプ子爵、最近の帝国財務内容の見通しの良さは日本無しではあり得ません」


「少し落ち着いて下さい。日本も見返りを期待していないわけではありません。そこをお間違えなきよう」


「それでも感謝しています。最近の貿易量の増加により国の収支がどれだけ良くなったか」


「そんなにですか。量的にはたいした量ではありませんよ」


「綿です。ディッツ帝国は綿で大きくなったと言っても過言では無いくらいです。その誇りである綿製品を大量に買ってくれる。それだけでも国内産業に活気が戻ります」


「はい、良いことですね」


「石油・石炭・お茶・カヒ・生ゴムまで、いずれも産業と国民生活には欠かせない物です」


「はい」

 

「それらが潤沢に供給されるようになり、産業が生き返ったみたいです」


「はい」


「まあまあ、ケイマン子爵。そのくらいにしておきたまえ」


「まだ言い足りませんが」


「ほどほどにな、ケイマン子爵」


「分かりました」


 疲れた。紫原中佐はもう帰りたかったが、おそらく本命である海軍の話がこれからだ。


「紫原中佐、ゼークト海軍大臣だ。階級は中将だ。いきなりで悪いが日本海軍に頼みが有る」


「そういうお話は、新設された代表部へお願いしたいのですが」


「あそこを通すと公式な話になってしまうし、正規空母?か、と新鋭機の提供を要請はしている。ただ、希望は通らないことも承知している」


「何か都合を付けるようなことが?」


「うむ。空母と艦載機を纏めて売って貰えないだろうか」


「それですか。本国からは小型空母と旧式機であれば構わないと非公式に伝えられています」


「何!では売ってくれるのか」


「ですが日本に金が戻ってくる形になります。あ、それで財務卿もですか」


「そうです。日本国代表部の方は政治と通商が主ですからね。軍事は連絡官が居る程度です。ですから、あなたにお願いに上がった」

 

 ケイマンが答える。財布の紐は固いようだ。


「紫原中佐、具体的にはどの程度の船と機体を売って貰えるのだろうか」


「そうですね。船は小型空母四隻が譲度可能と聞いております」


「ほう四隻もか。でも小型というとどのくらいなのだろう」


「我が軍では瑞鳳クラスと呼んでいますが、一万五千トン、搭載機三十機です・速力は三十一ノット。航続距離は七千海里です」


「わが海軍が試験的に造った船の二倍近いのか」


「そちらの船を詳しくは知りません」


「まあいいか。八千トン十八ノット、搭載機は十八機だ」


「その大きさならそのくらいでしょうが」


 紫原は鳳翔を思い出していた。


「でも良いのか」


「空母はこの先機体の大型高性能化に伴いどんどん大きくなっていきます。この船はもう補助的な空母になっています」


「補助的でそんなのか」


「今の主力はこの倍です」


「そんなにでかいのか」


「このくらいで無いと新型高性能機を運用できないんですよ」


「そのズイホウとかでは無理なのか」


「かなり無理が生じるようです」


「そうか。では売ってくれる機体は旧式と言うことだが。どの程度古いのか」


「いや現役ですよ。瑞鳳で現在運用している機体です」


「では性能が相当落ちるのだろう」


「爆撃機は爆弾の搭載量は変わりませんが、速度と航続距離が違います。戦闘機も同様ですね」


「それなら問題は無いか。我が艦載機よりも相当上だろうしな」


 紫原には海軍から瑞鳳級四隻と零戦、九十七艦攻、九十九艦爆を予備機を含めて売却して良いとの訓令が届いていた。俺は、移住者支援機構の人間で海軍じゃあ無いんだぞと言ったが「正式な国交もまだ締結していない。頼みにくいことはお前に頼むしか無い」と言われるとしょうがないかと思う。


 ゼークト大臣の自虐を聞きながら、空母初心者はこれで慣れてくれと海軍は言うが、いいのか?






遂に空母を艦載機込みで売却か


V-105はサボっています


次回 三月十九日 05:00予定

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― 新着の感想 ―
[一言] この後V-105の報告を聞いたナチスもどきの国は、空母や艦載機の貧弱さに呆れてしまうんですね。その結果、日本もディッツも弱小国と思い込んでしまうのだと? もしそうなら、「群盲、象を撫でる」を…
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