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正和二十三年 軍備状態 海と陸

最後に向けて登場する予定です

 正和十九年に突然始まった大建艦狂想曲は二十三年になってもまだ終わっていない。

 ディッツ帝国との接触後、様々な理由から大型艦から駆潜艇・哨戒艇まであらゆる艦種が新造・更新されたと言っても良いくらいだった。

 そのため造船業界とその関連業界ではすさまじい求人が発生。国内地図作りが終わり暇をしていた、輸出入不能になってかなり余っている人材も就職先に困らなかった。選ばなければだが。


 海軍では

 大和級四番艦信濃が部隊配備された。対混沌獣を重視したために東鳥島が活動拠点になってしまった。

 現在、伊勢・日向と金剛・霧島を更新するための五万五千トン級戦艦四隻が建造中で年初に一番艦・二番艦が相次いで進水した。三番艦・四番艦も今年中に進水する。

 ようやく国産化に成功した三十八センチ砲を三連装三基九門搭載の高速戦艦である。対混沌獣はさほど考慮されていない。

 本来は四万トン級を目指したのだがやはり混沌獣を無視できず、ボラール程度で損傷しないよう船体外側も装甲板ではないが圧延鋼板三十ミリで建造された。ボラールだけだったら二十ミリで充分だったのだがついでに断片防御もとなった。そのため一万トンほど増えたのである。

 基本的には大和級を短縮して幅を少し広げた感じだろう。大和級の構造をかなり踏襲している。機関は大和級と同じ物だが魔石添加剤使用を前提に構造の強化が図られた。

 速力三十二ノット、航続距離一万二千海里を実現している。

 この戦艦にも自動装填装置が設置され一トン半までの砲弾を毎分三発発射できるようになっているが信濃では十斉射で弾詰まりが起きた。同じ機構だし弾詰まりの可能性はある。三門同時発射の時は毎分二発に発射速度を設定するようにとのお達しが出た。


 空母も雲龍級が数の上で主力になるはずだったが改翔鶴級が主力になっている。雲龍級は急ぎ空母が欲しかった移住者護衛艦隊に高値売却をした。その金で改翔鶴級を造っている。雲龍級を改翔鶴級の値段で売るという暴利だった。

 小型空母は新造を止めた。

 どこへ行くか分からない以上混沌獣への最低限の対応措置は執るべきだった。そうすると小型空母でも二万トン近くなってしまう。

 それなら空母は大型正規空母に絞ろうと言うことになった。この先艦載機の大型化が予想され小型空母の価値が無くなりつつあった。

 現在は改翔鶴級が主力で四隻が就役し後二隻が工事中だ。今年中に進水予定だ。

 改翔鶴級の戦力化に伴い赤城と加賀が一線を退いた。現在は母艦搭乗員や整備員養成の練習艦である。赤城の左艦橋は撤去され右舷前方に移動した。

 五万五千トン級戦艦の船体をベースにした海洋性混沌獣対応の空母は戦艦建造後のドックでキールが座ったところだ。二年後に進水予定だ。この空母からは現在研究中の奮進発動機対応となる。

 現在唯一の鋼製飛行甲板を持つ海龍で奮進発動機対応を如何にするか研究中だ。


 巡洋艦は越百級重巡が順調に完成した。妙高級四隻と高雄級四隻が相次いで一線を去った。程度の良い艦を選んで練習艦になっている。

 阿賀野級軽巡も順調に完成した。五千五百トン級を置き換えている。五千五百トン級は全艦廃艦となった。


 駆逐艦は転移前に設計された量産型駆逐艦が特型・初春級・白露級全艦を置き換えた。重巡と同じく程度の良い艦が練習艦になっている。


 潜水艦はまあアレだ。この世界では海洋性大型混沌獣の脅威もあり実に使いにくいので老朽化した艦の代替しか建造されていない。ただいざという時のために最新技術の開発と投入は行っている。転移前は雷撃機三機搭載の超大型潜水艦なども構想されていたが消えた。

 この世界に来て一番割を食った艦種だろう。


 巡洋艦と駆逐艦の海洋性混沌獣対応は見送られている。同じ能力でボラール対応とすれば重巡・軽巡・駆逐艦では倍の排水量になると予想されている。

 どうすれば良いのか検討中だが、大型化は避けられないものと考えられている。

 東鳥島で使われているボラール対応駆逐艦を量産しようかという話もあるが、アレでは艦隊戦はきついだろうと思われている。

 一部には重巡は大型化するのだから移住者護衛艦隊で建造中の超甲巡にしてしまえば良いという乱暴な意見もある。


 

 移住者護衛艦隊では、八万五千トン級戦艦が順調に工事中だった。当初、基準排水量七万トン四十六センチ砲三連装三基九門の三十ノット以上発揮可能な高速戦艦になる予定だったが、やはり海洋性混沌獣の脅威があり最低限の対応としてボラール対応となった。そのため一万五千トン増えている。

 艦政本部の彼は再び祇園で散財させられたようだ。

 増えた排水量に対応するため機関の強化をしたが、それでも完成後の予想最高速力は三十ノットに届かないだろうとされる。

 A-150だったら十万トンを超え二十七ノット程度になるのではという予想もなされた。

 

 超甲巡二隻は建造予定であったが、場所待ちと構想が固まらないためようやく二十二年になってキールが据えられた。

 この艦の装甲板には最新の魔石装甲板が使われることになった。

 魔石装甲板の開発は総技研がドワーフと交流を持つうちに、道具や武具に魔石を混ぜ込んだりして強度の向上や魔力の通りをよくしているのを見たからだった。

 装甲板制作時に魔石粉をまぶして温間プレスをしてみたのだが、均一な硬度や強靱性が確認されなかった。

 確かに硬く強くなったのだが、ムラがあった。ムラ無く仕上げるドワーフの技は凄い物だと確認された。

 そこで冷間プレスを試みた。鍛造油に魔石添加剤を混ぜ冷間プレスをしてみた。

 温間プレス時ほどの硬さや強さはなかったが、多少は向上していた。

 では、温間プレスをした後で冷間プレスをしてはどうかとしてやってみた。

 かなりの均質性と強靱性が確認された。もう一歩何かあれば装甲板として合格が出せた。

 次に通常の製作方法で作った装甲板の表面硬化層に魔石添加剤使用鍛造油を使い再度圧力を掛けた。

 これは冷間プレスと余り変わらなかった。

 色々試した結果、表面浸炭処理した鋼板に高濃度の魔石添加剤を加えたペーストを出来るだけ均一に塗布。その後ペーストが燃え出さない程度の温度で温間プレスすると一番良い結果が得られた。使う魔石はやはり海洋性混沌獣の物や上位種の物が良いようだ。

 従来の三倍の性能を持っていた。ただしオーク上位種の魔石使用時。ボラールでは二倍。原因は不明だが上位種は決定的に何か違うようだ。

 表面浸炭処理のノウハウは軍事機密で総技研でも詳細は分からない。何回も通うがだんだん強くなってくるので注目された。

 この方法は魔石粉のロスが大きいが、装甲板の性能向上という事実の前には些細な問題だった。

 魔石装甲板の基礎研究をしたのは総技研であるが、この時貴重な上位種の魔石を潰してしまったことはかなり各所から非難を浴びた。総技研には上位種の魔石を渡してくれくれる部署がなくなり、魔石回収部隊を自力で設立。山東半島のダンジョンで上位種の魔石入手を始めるのだった。

 

 ボラールの魔石粉を使った装甲板は従来の二倍の性能を持っていた。ただ溶接すると溶接ヶ所が弱くなるため注意が必要だった。それでも一倍半くらいの性能は残るのだが。


 超甲巡は舷側装甲厚最大三百ミリを当初設計段階で持っていたが、この装甲板を試験的に採用。

 舷側装甲厚二百ミリとして傾斜装甲とした。浮いた重量で船体外板を三十ミリ圧延鋼板とすることが出来た。

 ただこのクラスの船だとボラールの魔石を一隻当たり二十個使う。ギルガメス王国連邦沖の大規模海洋性混沌領域でボラールが群れをなしていなければ実現は難しかっただろう。当地では南アタリナ島を基地にした民間捕鯨会社が競ってボラールやシロッキを捕獲している。

 ドワーフによると魔石で鍛えた金属は二年から十年が最大強度を発揮するという。その後徐々に弱くなっていくが新品時より低下しないと言う。

 お礼に高濃度の魔石添加剤を渡したらとても喜んだ。



 超甲巡

 基準排水量三万四千トン

 最高速力 三十三ノット

 航続距離 一万海里

 三十センチ砲三連装三基 九門

 一式十二,七センチ連装高角砲 十基

 一式三十三ミリ四連装機銃 八基

 同連装 四基

 同単装 四基

 99式二号銃 単装 8基

 二式散布爆雷 二基

 電探各種

 音波探針儀

 聴音機


 部隊配備は二十五年中の予定だ。


 海軍にしろ移住者護衛艦隊にしろ海洋性混沌獣対応艦はボラール対応として頑丈なスクリューガードが付けられた。

 これは後の海戦でも役に立った。また船体外板を三十ミリとしたのは断片防御も兼ねてであった為、至近弾や航空機の機銃掃射でも被害の減少に役立った。



 

 陸軍は中型混沌獣対策として四式小銃を強化歩兵向けに配備している。かなり強化すれば二十ミリ対戦車銃を手持ちで撃てた。為に配備数が増えた。

 問題は山東半島のダンジョンスタンピート発生時、上位種でも特殊な(こいつは特異種と名付けられた)個体に一式中戦車の七十五ミリ砲が通用しなかったことだ。

 陸軍にはこれ以上強力な砲は十センチ加濃砲しか無くこれで戦車を作れば五十トン級になってしまうことが予想された。

 海軍に良い砲が無いか聞くも答えは長十センチ砲だった。更に重いとなった。

 陸軍は自主開発をすることにした。十加の弾薬を流用することを考え口径十センチで四十口径程度の短砲身で強装薬を使い初速を得るという砲だったが、試作砲の反動が強すぎて今の戦車技術では使用困難とされた。

 後に各種砲弾が開発され冶金技術の進歩で軽量化も図られ正和四十年に二十五式戦車に搭載、実用化された。この時はライバルとしてディッツ帝国の百八ミリ戦車砲やロイヤル・オードナンス百五ミリ戦車砲が名乗り出るが、さらなる高性能化を無理やり行いライバルに勝った。


 この時は、結局急がば回れで七五ミリ戦車砲を九十ミリまで拡大した戦車砲の開発をした。

 この砲の開発は成功で八式九十ミリ戦車砲として採用された。

 八式戦車が同時進行で開発されている。砲がダメだったらどうする気だったのだろう。

 八式戦車にも新型魔石装甲板を採用した試作戦車があった。軽すぎて砲の反動に負けた。着弾が安定しないのである。結局二倍強度の魔石装甲板を使用して軽量化は諦め通常板厚で冷間プレスの魔石装甲板使用となった。これでも三割は向上している。

 この装甲板は他国にも輸出された。対魔王戦の戦車戦で活躍する。




海の方がちょっと盛りすぎた気がしますが、良しで。

史実の日本帝国海軍では大和を造るときに自前の機械で分厚い装甲板を造れなかったため、ドイツから高性能水圧プレス機を導入しています。そうだったですよね。


次回は飛行機


次回 三月十二日 05:00予定

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― 新着の感想 ―
[一言] 今頃なんだ、かもしれませんが。大和武蔵甲斐の主砲を45口径18インチ連装砲に換装して(連装なので速射装填機構もつけて)、降ろした15インチ3連装砲塔12基を5万5千t級戦艦4隻に使うってのは…
[一言] ドイツぽい国は、わざわざ近隣以外の他国にリソース確保するメリットあるんですかね? 近隣諸国ならまだ解るけどね。
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