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東大陸 エンキドダンジョン 方針変更

エンキドダンジョンはこれで終わりです。

あとで少し話しが入るかも知れません。多分入ります。

 日本軍の方針変更は山東半島の奥で発生したダンジョンからと思われるスタンピートが想像以上に大規模であり、初期の偵察以降も続々と増え続けたためである。

 東鳥島主力の第十三師団からも現在の主力である第十九連隊を引き抜いたのもその対策のためだった。第十九連隊は現在陸軍最強の対混沌獣部隊である。

 ムカライなどの上級冒険者を呼び戻したのもその一環だ。これはカラン村村長の要請だった。

 

 またエンキドダンジョン秋津口は拡張袋や魔道具職人が製作出来ない高度な保存袋の供給先とされた。拡張袋 中 を得た宮田中尉には個人感状が送られた。個人感状など滅多に受けられない。名誉である。経過を知らなければ。

 一時的に東鳥島で混沌領域に入ることが出来る人数の減少に伴う高級薬草の減少に対して、薬草類の供給先ともされた。


 そのため先の区画の偵察よりも現状で判明している区画の探索でのアイテム入手が主眼とされた。これにはギルガメス王国連邦の統一ギルドが難色を示したが、理解を得ることには成功した。

 エンキド口は四層まで踏破されており現在五層を調査中である。三層までは解放された。

 ケネディ口も現在三層を調査中だ。ここはまだ一層だけが解放である。

 それに対してほぼ初心者が主力といえども上級冒険者多数がサポートしているのだ。更に行っていて欲しかったに違いない。


 増援が来援するまでの一ヶ月間は、行ってもB湿原1とA7、C通路はC2-1までとされた。特部屋や隠し部屋には入らないとされた。

 日本軍はその間は探索能力の向上に努める事となった。それらの部屋に対するには戦闘能力は充分だったから。とにかく罠を見破る事。それが出来なければ先には死が待っているだけだろうから。

 残ることになっている冒険者の中から六級探索であるルクレールの指導を受ける。わずかなブロックの色の違い。不自然な段差。とにかく周辺と違う物が有れば疑えと教えられる。探索のスキルが習得できれば更に見分けが出来るようになる。罠はある程度の荷重がかからないと作動しないので、判断が付かなければ棒で軽く接触して動く物は罠のスイッチである可能性が高い。などと教えを受けながら部屋をクリアしていく。


 初期に得られた拡張袋や薬草類は大半がムカライ達と共に大艇で山東半島に向かった。これは緊急なので自前の大発でキドレン河を下ったのであるが、これからは輸送業者に依頼してセーラム港まで配送を頼むことになる。

 これは出来るだけ国内産業に配慮して欲しいとのギルガメス王国連邦からの要請を満たすためだった。


 そんな中、向井三曹と原田少尉にロンメル上等兵が探索系のスキルを取得したようだ。砂田二曹は重戦士を取れたようだ。大ハンマーを振り回していたのだ。有る意味当然とも言えたが本人は何故だ?と首をかしげる。

 宮田中尉にはおかしなスキルが出来た。


 [神のおもちゃ]


 こんなのスキルじゃ無いと悲しむ宮田中尉だが、周りからは褒められる。

 宮田中尉以外の気持ちは「良かったオレ(わたし)じゃ無い」

 

 ただこのスキルでダンジョン秋津口が完全に神が見ているダンジョンとされる。


 今では二勤二休で探索に励んでいる。二休なのは部屋の復活が48時間と目されているためだ。二分隊で有ったが、すでに亜天慕楼少佐ほか七名が去っており現在では1分隊九名として活動している。

 冒険者によるとこの区画では六人もいれば大丈夫らしい。が、半分に割ると今度は危ないと言うから仕方なしにやっている。


 半月が過ぎた時点で

拡張袋

 ポーチ   26個

 小     33個

 中      1個


保存布    

 各種    45枚


保存袋

 弁当入れ  31袋

 小     43袋


薬草

 各種    178束 内トキワ草各種3束


その他

 カッ草    8束


が日本軍に送られている。


しかし最近出が悪くなってきた。混沌獣がアイテム化しない。隠し棚も発現が少ない。と言うことで、統一ギルドで聞くと「おそらくは取り過ぎでダンジョンが疲れてきた。しばらく休めた方が良い」との見解。

 ダンジョンが疲れたってなんだ、と思ったがここで1週間の休みを取ることにした。わざわざ秋津口内に「1週間お休みします」との看板を置いてきた。冒険者達はギルガメス王国連邦の許可を取り、首都に繰り出すようだ。

 だが、兵隊さんは待機である。



 ダンジョン探索以外の日本軍はと言うと他の混沌領域へと出向いて混沌獣の押し込みに協力している。

 ただこれを良しとしない王国もあり、今のところエンキド周辺の直轄領・自治領・同意した王国のみの活動だ。

 王国連邦では混沌領域からの混沌獣進出減少という利益でもって連邦各国を説得している。

 今のところ良い感触が多い。

 問題はエンキド北方に有りエンキド直轄領と接しているカストロプ子爵領とその本家であるカストロプ王国だった。

 カストロプ子爵領にはエンキド混沌領域のおよそ10倍規模という連邦内でも上位に入る混沌領域が在り、度々スタンピートを起こしている。かなりの頻度で押さえ込みに失敗し本家と王国連邦の介入を招いている。

 その本家にしても子爵領と同じ規模の混沌領域二ヶ所と小規模な混沌領域が三ヶ所有り、同じようにスタンピートを起こしている。連邦の介入も多い。

 それでも日本軍の協力を拒否している。

 王国連邦首脳部としてはこの二家には無くなって欲しいので有るが、スタンピートとやや税が重い以外は失政が無く対処に苦慮している。これはイシュタル派もエンメルカ派も同じ思いだった。この二家は両派に属していない少数派だった。二家の領地は肥沃で農産物の有力な産地でもあり独立してもやっていけると思っているらしい。それだけに王国連邦の施政に反発することも多い。

 スタンピートを押さえ込めない時点でお察しなのだが、自分達は気がついてはいないらしい。



 

 蓮見少将が秋津少将を尋ねてきたのは、そんな頃だった。

 東大陸西岸の大まかな測地が終わったらしい。さすがに測量船は出せないので航空写真から起こした物なのだが、おかしかった。

 ほぼ円弧を描いているのである。その中心部には大規模な海洋性混沌領域が存在しているという。

 航空観測なのだがその直径はおよそ二百海里で東鳥島南方の海洋混沌領域に比べると面積で数十倍、中心にいる奴はどんな物か想像も付かないと言っている。


「隕石でも落ちたのだろうか」


「ユカタン半島ですか。アレで生物相がすっかり変わってしまったという」


「違うだろうか」


「専門家ではありませんので」


「そうか。話は変わるが、海洋性混沌領域なのだが海軍で対処可能なのか」


「まだなんとも」


「今のところはどうか」


「今確認できているのが、シロッキ、ハネウオ、ボラールです。そいつらが周辺に出てきていますので、今いる艦隊では数的に対処不能です」


「そんなに多いのか」


「ボラールが群れています。東鳥島南方の海洋混沌領域だと精々三匹から四匹です」


「シロッキもか。ひょっとしてハネウオも?」


「そうです。ハネウオはトビウオのでかいのですな。幸いボラールほど硬くないですし、速度もいいとこ五十ノットです。迎撃は可能です」


「大きさは?」


「シロッキ以上ボラール以下ですな。上空から見ると中々飛ぶ姿は綺麗ですよ」


「そう言えば、資料にはハネウオなど無かったが」


「セーラムのギルドで教えて貰いました。シロッキを度々水揚げしていますので、仲はいいですよ」


「我々も時々ごちそうになる。あれは有り難い」


「もっと揚げることは出来るのですが、余り揚げすぎてもいけませんので制限しています。残りはこちらに送っています。もっと持ってきましょうか」


「いや、余り贅沢はいかん。たまにで良い」


「それで、話は変わりますが、相談したいことがあります」


「何でしょうな」


「海軍陸戦隊をご存じか」


「言葉は。乗り組み員で構成された臨時編成の歩兵部隊でしたか」


「まあそんな物です。ただ陸戦専門の部隊も二個連隊は海軍に有ります」


「待ちなさい。まさかダンジョンを狙っているのか」


「よくお分かりで。その通りです」


「今回は来ているのか」


「泊地警備という名目で一個中隊を」


「陸軍も余裕が有るわけではないのだが」


「山東半島の奥のことは存じております。協力できないかと思いまして」


「白々しいでしょう」


「良く言われます」


「目的は?」


「ダンジョンアイテムの奪取ですな」


「それだけではないだろう」


「まあ。実績を作って海兵隊を作りたいのです」


「何故?」


「今の日本には海外に緊急展開できる歩兵部隊が有りません」


「可能性があると?」


「予想はされているはずだ」


「確かにな。陸軍でも海外緊急展開部隊は必要だと研究はされているよ。揚陸母艦もその現れだ」


「我々日本が知っているのは西にシベリア大陸、南にディッツ帝国、そしてここです。他は知りません」


「陸軍でもそう予想は立てている。悪いシナリオだな」


「想定して準備するのも軍の役目です」


「現実にならないといいが」


「でも現実かも知れない」


「我々と同等または超える技術力・経済力の好戦的・覇権的国家の出現か」


「そうです。ディッツ帝国は可能性がありますが、今の皇帝の内は大丈夫でしょう」


「または、魔王か」


「それが一番不安です」


「第六天魔王がいたらしいな」


「ウェーク島で聞いたらしいです」


「それとダンジョンの関係は有るのか」


「我々海軍も独自に拡張袋とか保存袋が欲しいのです」


「正直なことだ」


「ですから陸戦隊のダンジョン進入許可を頂きたい」


「いいが、1個分隊だぞ。世話も出来ん」


「構いません。実績が大事です」


「それなら許可しよう。入り口付近なら大丈夫だと思う」


「感謝します」


 後に秋津少将は、蓮見の入り口付近はどこなのだと言ったという。

 そして、なるほど評判通りだとも。


 

海軍陸戦隊にあの人か。そして海兵隊へ。


次回から山東半島の奥の話です。


次回 二月十六日 05:00予定

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