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東大陸 エンキドダンジョン 日本軍攻略開始

始めに言っておきます


 済まん


 あるいは、堪忍な

 三日の内に日本軍が二パーティ編成された。

 日本陸軍エンキドダンジョン攻略小隊

 小隊長 亜天慕楼少佐


 第1分隊 分隊長 亜天慕楼アテンボロー少佐 小隊長兼任

         芸鈴具ゲーリング中尉

         尾頭オットー中尉

         上因ウェイン少尉

         土尊ドーソン少尉

         フィリップス二曹

         ロンメル上等兵

         ポルシェ上等兵


 第二分隊 分隊長 毘天ビッテン大尉

          宮田中尉   

          原田少尉

          鈴出満リンデマン少尉

          ベッカー軍曹

          砂田二曹

          向井三曹

          山田兵長


 以上十六名だ。

 中でも最強の戦闘力を誇るのは毘天大尉であった。

 得物はスコップである。もちろんボラールや大型上位混沌獣モスサイの素材を使った強化品だ。

 継いで亜天慕楼少佐だ。シェーンカップ少佐に負けんとして砲撃でよろめいたオーク上位種に銃剣突撃していった正真正銘のおバカである。部下三名と頑張ったが結局倒せずとどめは吠える口を二十ミリ対戦車銃が狙撃して終わった。それでもかなり強化されたようで部下三名と共に東鳥島では毘天・シェーンカップに次いで三番手に付けている。 

 武器は短槍。もちろん強化品。


 この二人は実力的に五級から六級前後と見られている。

 ちなみに二人とも指揮を執る気は無い。

 戦闘時の指揮は芸鈴具中尉と宮田中尉が取るように命令された。


 他の面々は四級から三級と行ったところ。現状では日本軍の中でも上位陣だ。

 原田少尉と砂田二曹・山田兵長は、金山工兵隊からの出向である。開拓するのに邪魔な混沌獣を斧や大ハンマーなどで退治している内に自然と強くなっていた。これが終わったらまた工兵隊に復帰することになっている。いつ終わるかなど聞いてはいけない。         


 武装は各自好みの物であり、強化品で有るのは言うまでも無い。

 防具はボラールを始めとする混沌獣素材で作った上質な物である。このクラスの普通の冒険者ではまず買うことが出来ない。最初の四人は目立つことを嫌い現地で手に入れたマントを装備の上に纏っていたが、これからは纏わない。


 この小隊はクラン日本小隊でギルドに登録した。チーム名は第一分隊がユリシーズ、第二分隊がティーゲル。第二分隊は最初ヴァルハラにしようと毘天が言ったのだが、あの世は勘弁して下さいとティーゲルになった。


 

 三日後、秋津口に入っていく面々。

 日本軍からの提案で通路の罠を作動させることになった。

 マッピングが済んでいるので印は無くてもどこにあるかは探せばすぐ分かった。

 日本軍はあれなのかと言いつつメモを一生懸命取っている。カメラも持ち込んで写真も撮る。


 遂に罠作動である。全員が下がった中、盾持ちの二人が前に出る。重戦士の二人はその脇を固める。

 後方では映写機とカメラが待機している。そんな中、大ハンマーが武器の砂田二曹が盾の間からハンマーを振り下ろす。


 綺麗に敷き詰められた謎素材のブロック。剥がそうとしても剥がれなかった。ダンジョン構造の一部だろうと推測される。

 その一部がわずかに盛り上がっている。こういう罠は多いと教えて貰う。

 そこに打ち下ろされるハンマー。棒でつついたくらいでは罠は作動しない。人が乗るくらいで無ければだめだと聞き、ハンマーを打ち下ろすことになった。ムカライがダミーを放り投げてもいいのだが、それでは実地教育になら無いとしてハンマーの出番となった。

 

 ゴンと言う音と共にブロックが沈む。カチという音がして通路右側高さ1.5メートル部分のブロックが数メートル跳ね上がる。そして長さ数メートルの棒状の物が手前を支点に叩きに来た。

 盾に当たって盛大な音を立てる。


 幸い盾で阻止できる物だったが、冒険者達はなんだこれと思った。日本軍も同様であったが、ただ一人「ハリセンやん」と言った者が居た。宮田中尉だった。

 時々「突っ込みがいやここはボケで」とか「ここはコケてなんぼ」とかおかしいことを言っている人間である。ここに来させられたのもそのせいかも知れない。


 ハリセンはスーと下がって壁の中に消えていった。壁も元に戻った。

 皆に説明を迫られて説明をする宮田中尉。紙で実際に作って実行し「音は盛大だがほぼ痛くない」と言う。ただアレは紙だったかどうかは分からないので威力の程は不明と言った。

 盾役のサンダースによると衝撃は少なかったと言う。じゃあ余り凶悪では無いと結論づける。

 

 次の罠もハンマーの出番だった。今度は畜生後ろから来やがった。ピコ?

 「ピコピコハンマーやん」また宮田だった。確実にケツを狙ってきた。また説明する宮田。

 ケツバットじゃ無いだけいい。日本人はそう思った。


 次は大きな手が出てきて無理やり後ろに押しやろうとする。手は柔らかい素材だったが、どうやっても手が壊れない。冒険者が攻撃してもダメで、ボラールの武器もダメだった。

 また宮田登場である。

「フッフッフ、やったるで~」

 そう言って、自ら頭を手に押しつける。危ない!皆そう思った。だが手は頭を潰すこと無くグイグイと押すことも無い。そのうち宮田が手をグルグル振り回してからこう言った。

「よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ」

 その途端手が引っ込んでいく。通路はクリアになった。唖然とする面々。

 宮田が説明する。


 そして部屋1にやってきた。罠は分かっている。入った瞬間に隠し扉から混沌獣が出てくる。先日通過した時は部屋2が復活していた。この部屋も復活しているはずだ。


「よし、ここは俺が」


「いや、少佐は後ろでどっしりして下さい。ここはこの毘天が」


「「フッ」」


「「じゃんけん、グー(チョ・パー)」」


「俺の勝ちだな、大尉」


 だが、一部の人間は亜天慕楼少佐が素早くチョキに指二本を出しそうな態勢からからパーに変えたのを見た。


「なぜだ」


「修行が足りないんじゃ無いか」


 あきれる冒険者達。


「良し、第一分隊戦闘準備」


「「「了解」」」


 そこからは早かった。即席のチームであるがそこは軍人、ツーマンセルで次々と撃破していく。

 混沌獣は全部アイテム化したようだ。アイテムになる場合とそのまま残る場合が有る。不思議だった。終わった後で壁をあさっているが隠し戸棚とかは見つからなかった。


 部屋2へ行く前に罠が一つある。こいつもハンマーの出番だった。

 ゴン


「ッァアッー」


 後ろから声がした。変な声だ。

 見れば土尊少尉がケツを押さえていた。太さ五センチくらいの棒が土尊少尉のケツめがけて出たのだ。ゆっくりと下へ降りていく。土尊少尉がケツを押さえながら真っ赤な顔をして棒を蹴るがグラングランするだけだった。ランボーが上から叩き潰そうとするがスッと降りるとゆっくりと上がってきた。もう一回叩くとスッと降りる。また上がってくる。

 どうやら貫通しない程度の圧力しか掛かっていないようしずいぶん柔らかいようだ。だがそれは別でこいつは許せない。特に女子は仇を見るような目をしている。


「確かに殺しには来ていないが精神的に死ぬな」


 亜天慕楼少佐がボソッと言った。

 部屋2は毘天大尉の分隊だった。サクッと終わる。ここでも全部アイテムになった。隠し棚や扉は見つからない。前回と違うがひょっとして入る度に違うのだろうか。

 部屋を出ようとしたときだ。カチッ。え?

 カン!「ウッ」カラン・カラ~ン・カラララ~ン。

 今度は宮田中尉の頭に落ちてきた。鉄鉢をかぶっているので怪我は無い。驚くだけだ。だが出口である。今度は砂田二曹が出口のブロックに手を突いてしまった。クルッ、「あイタ」原田少尉が喰らったようだ。誤る砂田二曹。

 

 外で笑っている面々。恨めしそうに見る1分隊。

 だが、マップと踏み位置が違うということが分かると真剣な表情になる。


「部屋が復活する時に踏み位置も変わるのか」


 誰かが言った。そうだろうと結論づけた。


 交差点までは罠は無い。ここで意見が分かれた。ずぶ濡れかB通路か。

 B通路に行くことにした。女子はいやそうだった。何しろ女子が嫌いな物が沢山居るのだ。

 B通路の罠もハリセン、ピコピコハンマー、アーな棒だった。アーな棒は立ち位置を変えて見るが狙ってくるようで位置は関係なかった。見ているのか?

 最初の混沌獣部屋は問題なく片付いた。こちらも数の暴力で押し切る。グレーボアとハイシシ数頭の他はアイテムとなった。前回よりもアイテムが多い。何故だろう。帰ってからの課題だな。


 湿原1に向かうまでにも罠は有る。今度は横からブロックが飛び出てきた。柔らか素材で当たっても痛くないが万が一倒れるときに武器を持っていたり他の人間の武器に当たると危険だった。

 次は上から袋が落ちてきた。とっさに避けたがちょうど頭の上辺りで破裂した。皆咳き込む。何だと思ったら、小麦粉のようだ。もう女子はげんなりしている。タオルを出して顔を拭いている。

 もう1回ハリセンが有った。今度は横からでは無く上からだ。それも3個落ちてきた。さすがに皆避ける。

 が、仕掛けが引っ込んで歩き出したところでカチ!もう一回ハリセン出現で有る。今度は避けるスペースが無かったのでシモンズの盾に当たった。

 

「無かったよな」


 フェルナンデス。


「アレしか無かった」


 サクリエス。

 と言う事は誰か引っかかるまで続くということか?


 湿原1に着いた。今日はもう終わりにする。フェルナンデスが決めた。亜天慕楼少佐も賛成した。


 そこにはミズスマシカクセイが居る。

 今度は1分隊の番だ。

 唯一対決したことの有るムカライによると、鳴き声では無く何か言っているように聞こえるのだが意味が分からないと言う。

 恐らく意味が分ければ攻略は楽なのだが意味が分からないので力業になってしまうと言う。七級の剣士か攻撃魔法使いでないと倒せないだろう。自分の経験からだった。

 まあやってみろ。あいつは自分から攻撃はしない。反撃も五月蠅いだけだ。体験すれば分かる。


 1分隊が部屋に入った。

 ミズスマシカクセイが寄ってきた。数匹居るうちの1匹だ。色は赤い。無視にしてはやけにでかい口?が有る。拡声器のようだ。


 [アメンボアカイナ][アメンボアカイナ][アメンボアカイナ]

 繰り返すうちにどんどん大きな声になってくる。

 ボラールの武器も通用しない。やがて亜天慕楼少佐が「撃ち方用意」と言った。四式小銃と芸鈴具中尉だけ二十ミリ対戦車銃を手持ちで構える。

「テッ」

 パン・パン・ドコーンと銃声が聞こえるが一向に堪えないようだ。

「撃ち方止め」「撤収」「「了解」」

 1分隊は部屋から出てきた。亜天慕楼少佐の良さは判断の速さだ。主に撤退時の。


「参りました」


「そうだろう」


「失礼します。自分がやります。やらせて下さい」


 またも宮田中尉だった。亜天慕楼少佐は少し考えた後でやって見ろと言った。


 

 [アメンボアカイナ][アメンボアカイナ]


 五月蠅くなる前に宮田中尉が呪文を唱える。


「アメンボアカイナ、ア、イ、ウ、エ、オ」


 赤いミズスマシカクセイの動きが止まり色が薄くなる。そこを宮田中尉の短槍が突いた。

 ガクッと足を折るミズスマシカクセイ。突き入れたまま手元に引き寄せる。倒せたようだ。念のため2分隊の隊員が足を掴んでみるが動かない。そのまま岸に揚げる。次は少し小さい赤い奴が寄ってきた。


[アカマキガミ][アカマキガミ]


「アカマキガミ、アオマキガミ、キマキガミ」

 

 宮田の対抗呪文だ。

 そいつも動きが止まり色が薄くなる。そこを二分隊員が短槍で突く。やったようだ。


 出入り口から見ていた他の面々は開いた口が塞がらない。特にムカライ。自分の努力は何だったんだろうという顔で首をかしげる。












済みませぬ

お許しを


次回 二月一三日 05:00予定

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