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東大陸 エンキドダンジョン 秋津口一層

更に奥に進む一行

 一行はその後も探索を続けた。

 日本軍は初めて手にした拡張袋の威力に目を見張った。手に入れた小でも二メートルの立方体だという。二メートル以上の物が入らないかというとそうでも無く、対角線に入ればいいらしい。中身の確認は出来ないので入れた物を記録しているという。だから、拡張袋を持つ者は必ず表を作ることになる。

 使い方は魔力を通すことによって対象物を収納する。これには必ず触らなければいけない。袋の口は小さいが最大で収容可能物までなら問題なく収容できる。

 出すのは必ず入れた人間で無ければならない。これは個人の魔力の違いだろうという推測がされている。

 集団で使う場合は、魔力を通した状態で一緒に拡張袋と収納物に触っていればいい。そうすれば誰かが取り出せる。

 等、色々説明を受けた。

 

 最初の交差点から左に行くと部屋が有った。幾つか見える。それはどれも最初の部屋同じで部屋に誰か入ると隠し扉が開きウザミとハイシシが出てくる部屋だった。

 最初の部屋と同じだといやだと思いながらも、調査のためである。あえて入っていく。その通りの最初の部屋は混沌獣を始末した後でやはり上から落ちてくる物が有った。金タライだ。出入り口のブロックに触ってみるが、やはり動く。ただし、そのブロックの届く範囲に人が居ないと動かないという人を馬鹿にするためだけにあるような仕掛けだった。ブロックも重くないし微妙に柔らかい素材である。


 次の部屋は凶悪だった。同じように混沌獣を始末した後で上に注意しながら部屋を出ようとすると誰かが「アレ?」と言った瞬間上を見たがその部屋は違った。下から起き上がった細い棒がマラドーナの股間にヒットしたのだ。しかもも当たった瞬間に「カキーン」という効果音付きで。

 蹲るマラドーナ、ざまあみろという感じで見るキャリー。

 男達は全員戦慄した。一斉に部屋を出ようとしたが、出入り口で詰まった。アホである。しかも出入り口のブロックに手を突いてしまった。その勢いでブロックが回り誰かにヒットする。

 余裕なのは重戦士だ。金属鎧を着込んでいる。股間も金属鎧でガードされている。他の男は股間部はいいとこ革の防具だ。探索役などは身軽さが心情であり、革の防具でも薄い気休め的な物だった。

 棒はよく見ると木で出来ていた。ご丁寧に当たる部分にはクッションが巻いてある。

 これは殺しに来ては居ない。馬鹿にしに来ている。皆そう思った。

 マラドーナはしばらく呻いていた。男達は「まあなんだ大変だったな」程度しか言えない。


 マラドーナが動けるようになると次の部屋に向かった。全員警戒が凄い。しかし、殺しに来ているレベルの仕掛けでは無いのでスキルが反応しないようだ。前の部屋は有る意味殺しに来ているのだが。

 今度は最初から混沌獣が居る部屋だった。部屋に入る人間を半分にした。アイテムが欲しいのだが全員仕掛けに引っかかってはいけない。

 部屋に入った連中は、気がすさんでいるのか皆オーバーキルだ。

 最後の混沌獣が死んだときにそれは起こった。

 ザーと音がした。マズい水攻めかと一斉に出入り口に向かう。酸だったら全滅もあり得る。スキルに反応しないので致死性では無いはずだが。

 一人も部屋から出ないうちに、水が落ちてきて全員ずぶ濡れだ。通路で待機していた連中もだ。これには女子が怒った。マクマスターとキャリーの三階建てが目立つ。マライアは二階建てだが見れば電撃が飛んでくるだろう。皆真剣に目をそらす。ルクレールとトンプソンは平屋であった。


 落ちてきたのはただの水だった。水温は熱湯でも凍る寸前の冷水でも無い。日向水だった。


 重戦士のマクドォウガルとランボーは鎧の中に水が入ったのだろう。抜けきらない水がチャポチャポいっている。


「鎧脱ぎてえ」


 これはチームが違っていても近くにる人間に同じ事が適用されるのだろうか。分からない。


 女子達は男に見張ってろと言って、拡張袋から衝立を取り出し着替えを始める。見たら殺すと言うのも忘れない。


 皆の目が死んでいる。今日はこれで帰ることにした。 

 足取りは重い。


 トボトボとお早い時間に帰ってきた秋津口調査隊をみて、訝しがるギルド職員。誰も欠けていないし怪我人もいない。なのにこの意気消沈ぶり。おかしかった。

 ギルドにアイテムの鑑定をお願いする面々に恐る恐る聞いてみた。

 なんと言っていいのか分からなかった。聞いたことの無いダンジョンだ。

 自分ならどうするか迷うな。アイテムの質はいいが、馬鹿にしに来ているダンジョンでは。


 アイテムは混沌獣部屋と小部屋三ヶ所の探索で

拡張袋 ポーチ 六個

拡張袋 小   五個

保存布     八枚 五分の一 五枚 二十分の一 三枚

保存袋 極小  三枚     

保存袋 小   四枚 二十分の一 四枚 

ヨクキキ草   三束

モットキキ草  二束

カッ草     二束

 が得られた。

 外れとして

キカナ草    三束 日本人が拾った

キットヨクナリ草 二束

 を持って帰ってきた。


 その日の夕方、秋津少将を交えて会議を開催した。

 議題はもちろん巫山戯たダンジョンについてだ。




「この依頼は日本政府からギルドへ公式に出された依頼なのですが、それでも中断すると?」


 秋津少将が問う。


「依頼失敗の違約金も払うので止めさせて欲しい」


 ムカライが代表して答える。


「怪我人も出ていませんし、装備の損害も無い。アイテムは多数取得している。何が不満なのでしょうか」


「そういう意味での不満では無く、ダンジョンの内容が精神的に堪えるのだよ」


「内容ですか?」


「そうだ。そこの四人に聞いてみれば良い」


「土尊少尉、何が精神的に堪えるのか」


「はっ、実は自分達をからかいに来ているとしか思えない仕掛けがあります。あれは心に堪えます」


 土尊少尉は少将などと言う遠くから見ることしかしないし話す機会も無い上官に緊張する。


「何が有った?」


「はっ、金タライが頭に落ちてきました。次はどんでん返しですが、大怪我をさせ無いようあまり重くない柔らかい素材でした。次は股間に棒が打ち付けられました。その棒も布を巻いて有りました。そして水が落ちてきました。ただの水です。全員ずぶ濡れです」


「それはまた・・」


 秋津少将はあきれた顔で全員を見渡す。

 そして自分の過去を思い出す。

 市街戦の訓練時、教官の悪ふざけで生徒全員が酷く怒れたことがあった。アレと同じだな。あの教官達は吉本が好きだったらしいから。


「分かりました。しかし我々はダンジョンの経験を積まなければいけないのです。もう少し協力願えないでしょうか」


「そうは言われてももう部屋に入るのがいやなのですよ」


「困りました。規定により秋津口は日本専用でこの国の人は入ってはいけないことになっています。そうすると軍だけでやらなければいけませんが、どれだけ損害が出るやら」


 情に訴える秋津。


 ディッツ帝国から助けて貰った事もあり、強気に出られない面々。


「少し相談するがいいか?」


「どうぞ、私は席を外しますよ。三十分くらいしたら戻ってきましょう」


「すまんね」


 秋津が退出した後で


「どうする」

「どうすると言われても、あの仕掛けは体験した者で無いと精神的な苦痛は分からないだろう」

「確かにそうだが、落ち着いて考えればこの程度で依頼中止もなんだと思う」

「それはそうだけれど、もう濡れるのはいやだし」

「「そうそう」」

「俺はアレが堪えた」

「「あんたはいいの」」

「はい・」

「ほんとどうしよう。日本は私たちしか頼れないでしょう?」

「そうだな。でもこんな仕掛けばかりだと慣れるのがマズいと思う」

「確かにそうですね。殺しに来ている仕掛けを馬鹿にしにて殺されそうです」

「それが一番の問題なんだよな」

「あのう、よろしいですか」

 ベッカー軍曹だった。

「何でしょうか」

「皆さんが部屋に入らなければいいのでは?」

「どういう事でしょう」

「つまり部屋の中は全て日本軍が対応します。皆さんは警戒すべき仕掛けの存在や探索で注意すべき所を教えて下さい」

「それは、私たちは通路だけで良いと言うことですか」

「そうですね。今は四人ですが、応援を呼べば増えますから」

「それならいいかな」

「入り口から離れていれば被害に遭わないかも」

「それならいいか」

「どうする?反対の者は手を上げてくれ」


 手は上がらなかった。やはり依頼失敗はいやなのだ。


「ではそうしよう、日本軍の方達もそれでいいですね」

「「「「はい」」」」


 少尉辺りでは話にならないのであった。ベッカー軍曹、さすがベテランである。



「決まりましたか」


 秋津少将がそう言いながら入室してきた。


「そうですな。決まりました。日本軍にお願いしたいことがあります」


「何でしょう」


「我々は監督や非常時に備えて、後は全部日本軍にお任せするという事です」


「そうですか。村井参謀長、契約条項はどうなっている」


「そうですね。何しろ未確認かつ異常事態ですから、途中での内容変更は依頼主の意向で可能だったと覚えています」


「では、この内容に書き換えの可能なのか?」


「可能と考えます」


「では、こうしよう。先ほど言われたように冒険者の皆さんには監督と非常時の対応をお願いする。部屋の中は日本軍が担当する」


「いいと思います」


「皆さん、それで良ければ契約内容の変更をしたいと思います」


「「お願いします」」


「さて、日本軍ですが、ダンジョン内部へ行けるだけの技量を持つ者はここにはその四名しかおりません。増援よ呼びますのでそれまでは部屋に入らずに通路の探索をお願いしたい。よろしいか」


「任されましょう」


 その後もう少し細かく詰めて会議は終わった。

 方面軍総司令官と参謀長がいる。

 最下位とは言え将校である三人と違い兵卒からたたき上げたベッカー軍曹にはきつい会議だった。



精神的に来るんだよな攻撃の数々

ここより奥には更に


やはり全員集合はいい

今だったら到底許可されないようなセット

定番のコント

一斗缶は危険、誰か角が当たって縫うような怪我をしたはず

効果音も良かったね


次回 二月八日 05:00予定 

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